是々非々をつらぬき、一般会計予算案に反対
過大規模を見直さない花博、デリバリー方式の中学校給食、大型開発事業などに反対の姿勢示す
2025年3月26日
日本共産党市議団団長 古谷やすひこ

1月28日から開催された2025年横浜市会第1回定例会は、各局の予算案を審議する予算特別委員会を経て、3月25日に閉会。山中竹春市長が編成した1兆9,844億円の新年度一般会計予算案などは、自民党が提案した付帯意見を付けて、公明、立憲、維新、国民 (民主フォーラム) などの賛成多数で可決されました。
日本共産党横浜市議団は、一般会計予算案で、新しい地震防災施策、地域交通や敬老パスの拡充、補聴器購入費補助や帯状疱疹ワクチンの予防接種費用補助の導入、各種がん検診の充実など、前進した施策を評価しつつ、過大規模を見直さない園芸博覧会、デリバリー方式にこだわる中学校給食、大型開発に多額の公金を投入する事業、国際プールのメインプール廃止に賛同できないことから、抜本的な見直しを求めて反対しました。
また、特別会計1兆3,649億円や予算関連議案も賛成多数で可決。党市議団は、公共性の乏しい関内駅前の2つの民間のタワービル建設に2030年までに217億円の補助を出すとした(新年度予算は51億円計上)市街地開発事業費会計に反対。他にもリニア残土を受け入れる新本牧ふ頭整備事業が含まれる港湾整備事業費会計、みどりを守り切れず市民への超過課税となっているみどり税(みどり保全創造事業費会計)、高い保険料の介護保険事業費会計と後期高齢者医療事業費会計、保険料が引き上げられた国保事業費会計についても、市民のくらしを圧迫する会計であることから反対しました。
維新と国民民主の賛否は…
今期から会派結成された日本維新の会8人は、敬老パスについて、市長提案の75歳で運転免許返納者への3年間無償化や、地域交通への適用拡大などは「公平性に問題」として該当会計に反対しました。また、2月の南区補欠選挙を通じて5人の市会交渉会派になった国民民主党(民主フォーラム)は、市長提出議案の全てに賛成しました。
一般会計予算の特徴と党市議団の主張
新年度の一般会計予算は、前年度より686億円、3.6%増の予算です。市税収入は好調で、前年度比で629億円増の9,459億円を見込んでいます。9,000億円超は史上初となります。税収増の背景には、納税者数の増や給与の引き上げ等による増、定額減税の終了による増などをあげています。なた、物価高騰に伴う地方消費税交付金は160億円となります。市民のみなさんから預かった財源は、暮らしを支えることに厚く振り向ける必要があると考えています。
子育て支援強化を強調
予算を編成する上で、山中市長は子育て支援を強化したと強調。小児医療費助成中3まで所得制限・一部負担金の撤廃の予算を継続、出産費用助成は国における出産育児一時金(50万円)に加え、上限9万円を追加支給などの予算も継続されます。放課後キッズクラブなどでの昼食提供事業は冬休みと春休み期間にも拡大です。
また、国から示された「誰でも通園制度」の具体化も進めます。「預けやすいヨコハマ」を目指すとして、全国初となる乳幼児の「短時間預かり」を始めます。ただし、予算額は少なく、受け入れ側の体制整備や保育の質担保について、関係者団体から懸念が出されています。懸念の声を議会で取り上げ対策を求めました。引き続き注視が必要です。
地震防災対策、ワゴン型バスなど地域交通の拡充で前進
能登半島地震を教訓にした新しい地震防災戦略を策定。戦略に沿った予算計上が進みました。強化の柱の一つである「避難所の環境改善・備蓄品の拡充」では、「雑魚寝状態」を解消するための備品拡充や、食料・水の備蓄数の倍化、空調整備設置の加速、災害用トイレの充実などに取り組みます。市民の不安に応えるもので歓迎しますが、5年かけて整備するとしており、スピードアップを求めました。また、市民の6割が暮らしているマンションなどの集合住宅の防災対策については、住民向けの啓発用のパンフを作成し配布する等、市としてイニシアチブを発揮することを要望しました。
また、地域交通の拡充については、市内に点在する「交通圏域外の地域」の解消に向け、5年かけて50の地域でプッシュ型でミニバス等の地域公共交通の運行を目指すとしています。これは、市民の足を確保しようとする前向きな取り組みであり歓迎できます。ただ、交通圏域外地域は、市の試算でも約200か所あり、更なる前進が必要です。また、市営・民営バス乗務員の確保の取り組みの強化も盛り込まれています。市民の「移動の権利」を支える公の役割を発揮するよう求めました。
敬老パスの拡充、補聴器購入補助や帯状疱疹ワクチン助成、各種がん検診の拡充を歓迎
敬老パスについては、制度を後退させず発展させました。ワゴン型バスなどの地域交通への適用拡大を行い、75歳以上で免許返納した方は3年間無料。要介護認定リスクのある方を対象にモニター調査を実施するなどの制度を創設。この取り組みを評価し、引き続き、横浜が誇る現制度を守るよう強く要望しました。しかし、市会の多数の議員が、世代間分断を煽り、制度を敵視する発言が繰り返し行われていることは、大変問題です。制度を守り充実を求める市民の声の後押しが必要です。
また、予算額は少ないですが補聴器購入補助制度の導入(上限2万円予算800万円)や、長年の要望だった帯状疱疹ワクチンの予防接種費用補助の実施、65歳がん検診、70歳以上ガン精密検査の無料化、子宮頸がん検診の年齢拡大など総合的ながん対策の強化も図られます。これらも市民の要望を受け止めたものだと評価し、引き続き予算増など制度を前に進めることを要望しました。
市民のくらしを支える予算には遠い
一方で、物価高騰で苦しむ市民の生活を支えるために必要な予算配分は、歴代市長から続く不要不急の大型開発や大企業優遇施策に圧迫され、広く薄くなってしまったことは残念です。教員の未配置解消の施策、介護職員の確保施策、赤字の医療機関、介護施設への支援、小規模事業者の生業を支える施策などに必要な手立てがとられているとは言えません。毎年、必要な高校生全員が利用できないいない高校生奨学金制度も予算増にはなりませんでした。引き続き、拡充をするよう求めました。
2027国際園芸博覧会はこのままだと成功しない 党市議団が指摘してきた懸念が表面化
2027国際園芸博覧会が開催される上瀬谷の地域は、長年米軍施設だったことから、多くの自然が残されており、日本共産党しては、豊かな自然を生かすとした理念や、環境と共生する未来社会の在り方を市民とともに考え、発信するとしたコンセプトには賛成するものです。そのため、単に人を集める集客型のイベントにならないよう、また、市民の将来負担が増すような多額の税金がつぎ込まれることのないよう、有料入場者数目標が半年で1,000万人集めるとした、過大な目標を改めるよう繰り返し求めてきました。
過大な計画の全体を見直さないと、費用が膨らみ続ける
そんな中、園芸博の実施団体である博覧会協会は、2021年に示した建設費320億円について、物価や人件費上昇のため最大で417億円まで上振れするとの見通しを発表。本市へ負担増の要請を行いました。市負担の増額分は、28億円で 111.2億円まで膨らみます。山中市長は、上振れは「妥当」との認識を示し、負担増を受け入れる姿勢を示しました。この増額分は、来年度以降の予算に計上される見通しです。
建設費同様の理由で、チケット代などで賄うとされている運営費360億円も当然膨れ上がることが予想されます。運営費の引き上げはチケット代の値上げを招きかねず、購入者が少なくなれば、赤字という悪循環になりかねません。また、途中で増額を繰り返すやり方は、大阪関西万博で大きな批判を浴びたものと同じです。これを回避するには、有料入場者目標を、引き下げて、規模の縮小化をすること以外ありません。
また、会場建設費以外にも、本市が主導する出展に関する費用、派遣している職員の人件費など、多額の公費負担があります。それらの費用は、会場建設費の倍以上になるのではないかと危惧しています。そして、その費用負担を市民はまったく知りません。市民とともにつくるというのであれば、こういう税金の使い方をすることを明らかにすることが不可欠です。
「環境との共生」のコンセプト危うし
市民と議会のチェックが働かない
さらに、環境との共生を謳ったコンセプトが実現できるのか、大変危うい状況です。例えば、環境との共生を掲げる博覧会にもかかわらず、ビレッジ出展の一次公募で内定した8社は、スーパーゼネコンや、自動車メーカーと、これまで環境を二の次に開発を続けてきた企業ばかりです。これらの企業がどのようなコンセプトで地球的規模で環境に貢献しようとしているのか見えません。3月19日発表の二次募集の内定企業の多くも同じような企業です。
そして、どんな展示になるのか詳細が示されておらず、これでは、内容が園芸博のコンセプトに沿っているのか分かりません。情報開示の責を負わない「協会」の中で物事が決まり、その決定過程は見せないというやり方は、市民と議会のチェックが働かない問題ある仕組みです。協会のほぼ半数を占める市職員のイニシアチブも見えず、花博の運営に開催地の横浜市が、まともにコミットできていない状況です。そのような組織の計画に、多額の市税を投入していいのか、市民の皆さんに納得がいく説明をすることはできません。
輸送計画を見ても破綻は明らか
さらに、この計画に無理があることは輸送計画を見ても明らかです。シャトルバスの運行は、最大来場者日で、1時間に60本以上という道路混雑必至の輸送計画であること、バス運転手のなり手不足が一切解決されていないどころか深刻化しているなかで、開園までに運転手の確保ができるのかも大きな不安を抱かざるを得ません。人件費とガソリン代の高騰も軽視できない負担です。環境破壊の排気ガスの排出も危惧されます。こういった懸念材料は、何一つ解消できていません。半年で有料入場者1,000万人目標は、まったく現実的ではないと考えます。
これらのことから、このままでは、国際園芸博は掲げた理念や開催意義を達成することはできないと考えます。改めて現実的なものに見直すことを求めました。
中学校給食…全員制は歓迎だが、様々なリスクのあるデリバリー方式は容認できない
予算案では、喫食率を60%にするための推進費が計上されています。2026年度から全員制で中学校給食が実施されることは、長年市民のみなさんが求めてきたことで歓迎します。しかし、実施方式が、大型の給食工場で調理し、弁当に詰め、輸送車で運ぶ「デリバリー方式」にこだわっている計画を良しとはできません。
24年度は、喫食率46%を目指し、34校を推進校として指定し、食缶による汁物の提供など、より良い給食の提供に向けて効果検証を実施。2月で喫食率は44.6%へと目標に近接しましたが、そもそも夜中から工場で作られ、食中毒のリスク軽減のためにおかずを急速冷却して運ばれるデリバリー方式が本当に多くの生徒から望まれているのでしょうか。食べ残しの量では、小学校の副菜は8%である中で、中学校は、34.1%と大量廃棄されていることから、栄養摂取も万全でなく、教育現場での食品ロスを起こす事態は大問題です。これで食育が進むとは言えません。
デリバリー方式は、導入時には、安価で始めることができるものの、長期的に見れば、輸送コストがかかり続けるうえに、一度事故が起きてしまえば、多くの生徒が食事をとれなくなる可能性もはらんでいます。様々なリスクを抱えるデリバリー方式を全員制にすることにこだわらなくても良いのではないでしょうか。教育委員会自身が半数以上の中学校で学校調理方式での提供が可能と試算しています。また、予算審査では、市会最大会派から「可能な学校から自校方式・学校調理に転換し、温かいおいしい給食を実現すべき」という要望が出されています。今、立ち止まり、先行実施している他都市に倣い、学校調理方式を柱にした計画に見直すことを改めて強く求めました。
大型開発に行き過ぎた公金投入の問題も深刻
予算案では、旧上瀬谷通信施設跡地と東名高速道路を直結するインターチェンジの整備に向けた本格的な検討費2億6,000万円が計上されていますが、高速道路でのトラックの自動運転走行の計画があり、インターチェンジ整備には物流事業者の負担も予定されています。また、瀬谷駅から同地区をつなぐ新たな交通の整備事業も3億9,000万円が計上されています。新たな交通と新たなインターチェンジの整備は総額1,000億円は下らない事業費が見込まれます。このまま押し進めていけば、市債発行など後年度負担をも増やし、財政を硬直させる事態を招くのは火を見るよりも明らかです。
また、インターチェンジ事業を「災害時のため」と、本来の狙いをそらす形で示していることは市民に不誠実であり、まったく納得できません。インターチェンジも新たな交通も最大の利益を得るのは極一部の物流事業者と巨大テーマパーク事業者であり、市民の納めた税金を充てて進めることではないと考えます。
関内駅前地区市街地再開発事業も問題です。関内駅前で高さ制限及び容積率の規制緩和がされる3棟の民間タワービルの建設計画が進んでいます。その内2棟のタワービルの建設に本市が217億円を補助するとしています。新年度は、51億円を計上。この2棟は、富裕層むけの賃貸住宅、オフィス、商業施設に供されるものと聞いています。当該地区は、老朽化したオフィスビル、道路の狭あいなどの防災上の課題がありますが、課題解消で得られる利益の大半は、民間事業者のものになります。約200億円の公金を投入する公共性はないと考えます。このような民間の開発事業は民間資金で行うのが当然です。
予算特別委員会(2/25~3/18)の取り組み
全27部局別の審査を行う予算特別委員会(2/25~3/18)は、日本共産党横浜市議団5人は、会派に割り当てられた持ち時間1日11分(一日2局合計)をフルに活用して、市政の重大問題を追及、市民・団体から寄せられている市政要望を各局に届け改善を求めました。
●老朽化した「給水管」の更新が進む助成事業の拡充・予算増と市民周知を 【水道局】
●国際平和推進事業が前進!戦争体験・被爆者の生の声を聞く講演会や、平和パネル展を18区図書館でも開催【国際局】
●老朽化が伴う建替え等立ち退きの要望が寄せられている消防団器具置き場80棟の早期対応を。【消防局】
●新年度からはじめる補聴器購入補助事業の対象件数・助成額の引き上げを【医療局】
●脱炭素リノベ住宅と、マンション耐震化促進のための予算増を【建築局】
●市として守るべき緑の面積を引き上げ、みどり税は廃止を。横浜繁殖センターの指定管理化は行わないこと。【みどり環境】
●戸塚資源選別センターの老朽化対策・再整備促進を。【資源循環局】
●自衛隊に市民の個人情報(名簿シール)を渡すな。各地区センターの図書コーナーに司書を配置して図書館分室へ拡充しもっと図書が市民の身近になる取り組み強化を。【市民局】
●米軍・自衛隊基地周辺の土地利用を規制する「重要土地等調査法」の市内注視区域について詳細を当該区域の市民に知らせること。【都市整備局】
●「こども誰でも通園制度」は、新たに発生する保育園の負担軽減を。保育士確保大作戦は、賃上げと働きやすい職場環境の整備が不可欠。市として役割発揮を。【こども青少年局】
●川和踏切の立体交差計画の早期実現を。狭あいな通学路の安全対策強化を【道路局】
●ふ頭における災害時の帰宅困難者対策強化を。臨港幹線道路計画は凍結・中止を【港湾局】
●中学校のいじめ問題について、一人一人の先生がきちんと向き合える体制を。【教育委員会】
●特養ホームへ必要な方が入れる支援強化を。紙の保険証存続を。【健康福祉局】
●さらなるバス減便を出さないよう乗務員確保の強化を【交通局】
請願・意見書について
今定例会には、5本の請願が出され、「訪問介護の基本報酬をはじめとする介護報酬の引上げを求める請願」と「従来の健康保険証の発行存続を求める請願」の紹介議員となりました。また、他の情報公開に関する請願や市庁舎管理に関わる請願にも賛成しましたが、賛成少数で否決となりました。
また、核兵器禁止条約にふれた「核兵器や戦争のない世界の構築に向けて主導的な役割を求める意見書」等3つの議員提出議案は賛成、可決に。

各会派の議案への賛否一覧(市会HP)
【本会議場等の登壇者】
2月7日 現年度議案関連質問 宇佐美さやか
2月18日 現年度議案討論 みわ智恵美
2月20日 予算関連質問 白井まさ子
3月18日 予算総合審査 古谷やすひこ
3月25日 予算議案討論 宇佐美さやか
採択された意見書はこちら