◎実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように対応する質疑と答弁を交互に記載しました。
特定秘密保護法で米軍基地の固定化や機能強化のおそれ見出し
あらき議員:私は、日本共産党を代表して市長に質問いたします。
まず、市長の政治姿勢についてです。
現在国会で審議されている特定秘密保護法案は、審議すればするほど、その法案の恐るべき中身が明らかになっています。政府・与党は、今日の参議院本会議で特定秘密保護法案の採決を強行しようとしています。しかし、どんな世論調査を見ても、この法案に反対する声は5割にも広がり、賛成の声は2~3割にすぎません。そして、8割の国民が「慎重審議」を求めています。
青森市長や尼崎市長は反対を明言し、福井県知事や福島県浪江町長は慎重審議を求めています。
国民の「知る権利」をじゅうりんするこの法案が、憲法の根本原理である国民主権を踏みにじるものであることは、明らかです。私たちは、この法案については廃案を求めていますが、国民の知る権利を奪い、民主主義を根底から覆す悪法だという認識が市長にあるかどうか、まず伺います。
横浜市内に、現在6か所の米軍基地を抱えています。この米軍基地があることにより、市政の発展に大きな支障を及ぼしています。横浜ノースドックを例に挙げれば、今も米軍が東富士演習場などの軍事演習に使用する軍事物資の搬出入に使われています。これらの軍事活動については、現在は国が概要を公表していますが、法案の成立後隠ぺいされる恐れがあります。この法案が成立すれば、これまで公表されてきた米軍に関する情報が秘密にされることにより、市内にある米軍基地の固定化や機能強化につながる恐れがあると考えられますが、市長はこの点どう認識されているか、伺います。
林市長:あらき議員のご質問にお答え申し上げます。
政治姿勢について、ご質問いただきました。特定秘密保護法案についてですが、国および国民の安全を確保するためには秘匿性の高い情報の漏洩を防ぐ法整備は必要だと考えています。一方で、総理自らもおっしゃっているように、秘密の範囲などに不安や懸念の声があがっているのも事実です。少なくとも私は、運用状況をチェックするための第三者機関については設置すべきと考えています。いま、まさに国会で議論されていますが、市民のみなさまの不安を解消する対策をしっかりととっていただきたいと考えております。
これまで公表されてきた情報が秘密化され、米軍施設の固定化等につながるおそれがあるとの考えですが、法案が規定する特定秘密とは、防衛や外交等に関する公になっている情報のうち、その漏洩がわが国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要なものとされています。米軍施設に関してこれまで公表されてきた情報については、今後も適時適切に提供されるよう引き続き国に対して求めてまいります。
(第2質問)
あらき議員:市長にお答えいただきました2点について、再度お聞きします。
まず1点目、特定秘密保護法案についてお聞きします。この法案が成立することにより、米軍基地を抱える沖縄県や横須賀市では国に対し情報を開示するよう意見を言っています。基地返還を市是とする立場から、市長自ら米軍基地に関わる情報開示をしっかりするよう国に申し入れる行動を起こすことが大事だと思います。ぜひ、この点について明確にお答えください。
林市長:あらき議員のご質問にお答えいたします。
いま、米軍基地に対するさまざまなご心配をお話いただきました。まずは、市民のみなさまの不安を解消するという観点から、厳格にこの法については運用していただきたいと思います。その上で、本当に市民のみなさまのくらしの安心安全を確保するために必要な情報については、私どもも国に対して強く情報提供を求めてまいります。
新市庁舎建設計画は変更案について市民意見を聞け
あらき議員:次に、新市庁舎建設についてです。
現在、20か所の民間ビルを借り上げてタコ足状態になっている現庁舎の状況を変えるというのは、市民の理解を得られるものです。私たちとしては、現在の市庁舎を使い、予算をもっとも抑える方法で建設する案が良いと考えています。
市長が今年の3月に北仲通南地区に建設すると決めた基本構想は、資金計画で賃貸床や現行政棟・市会棟跡地を貸すことを前提にし、それを返済に充てるということでした。ところが、基本構想に基づいて基本計画の検討に入ってわずか8か月後に、基本構想の骨格となっている賃貸床等は整備しないことに変更しました。北仲通南地区での建設が選ばれた主な理由は賃貸収入による収支シミュレーションの優位性でした。今回の変更で、北仲通南地区の優位性が喪失したといえます。基本構想の根幹が崩されたわけですから、これをベースに基本計画を立てることは間違いです。北仲通南地区に建設する基本構想そのものを白紙撤回し、新市庁舎建設計画を最小限の資金計画でできる計画にするよう、最初から考え直すべきです。この点での市長の決断について、伺います。
2020年の東京オリンピックに向けて前倒して新市庁舎建設をすると市長は記者会見などで発言していますが、完成時期を早めれば、オリンピック関連施設の建設ラッシュと重なり建設費が高騰するだけでなく、単年度当たりの建設負担も増加となります。この点について「コスト削減の努力をする」と市長は記者会見で述べていますが、これこそ根拠のない主張です。東京オリンピックまでに移転する理由として、外国要人の招待と市のプレゼンのためというのでは、市民の理解は得られないと考えますが、この点での市長の見解を伺います。
市長がおっしゃっている「市民の皆様と直接お話しする機会を設けてまいります」という言葉どおり、市民への説明責任という点からも今回の変更を含む新市庁舎建設について、ていねいに時間をかけて、市長自ら市民の意見を聞く機会をつくり、その意見に基づいて再度計画を検討することが必要だと考えますが、市長の認識を伺います。
林市長:新市庁舎整備基本構想についてですが、昨年度取りまとめた基本構想は、整備場所と整備パターンを決めるために相対的な比較検討を行ったものであり、その結果として北仲通南地区を整備地区と位置づけました。今年度は、基本構想に基づき、整備予定地を北仲通南地区として、より具体的に整備方針の検討、規模や事業費を精査したうえで、収支シミュレーション等について、必要な見直しを行ったものです。
事業期間短縮による財政負担についてですが、オリンピック・パラリンピック東京大会はMICE都市横浜を世界に発信する絶好の機会であり、ぜひ新市庁舎で世界の賓客をお迎えしたいと考えています。単年度当たりの負担が増えることが予測されますが、庁舎の分散化を解消して、市民のみなさまにはわかりやすく、職員にも働きやすい庁舎を実現する視点や、災害時の危機管理機能を強化する視点などからも、新市庁舎の早期整備は必要と考えています。その必要性については、市民のみなさまにご理解いただけるよう努めてまいります。
市長自ら市民のみなさまのご意見を聞く機会をつくるべきとのことですが、私自身もさまざまな場面で新市庁舎整備の必要性について、直接発信してきており、明日港南区で行う大都市制度フォーラムの中でも、今回精査した結果についてもご説明させていただくことにしております。また、市民のみなさまや関係団体のみなさまからの要望があれば所管局が直接出向いてご説明をしております。こうした中でいただいたご意見については今後の検討の参考にさせていただきます。
(第2質問)
あらき議員:次に、新市庁舎建設について、再度伺います。
来年4月には消費税が上がることになれば、市内経済に影響を与えることは必至です。賃料収入が見込めなくなったように、今後の社会状況の変化で、北仲通南地区の整備案がその通りにいくという根拠はありません。しかも、より具体的にシミュレーションを行ったもので変更したとおっしゃっています。ならば、なぜ(基本構想案がでた)その時点で市民に意見を聞いたのでしょうか。それこそ市民を紛らわしい、私たちを混乱に陥れている現状をあなた自身がつくったということになります。再度この点についてもしっかりとした基本構想にして、市民の意見を聞くべきだと思っています。この点での市長の明確なご答弁をお願いいたします。
林市長:それから、新市庁舎の整備についての話でございますが、基本構想におきましては整備場所と整備パターンを決めるため、相対的な比較検討を行ったものでございまして、そこでお示しした規模や事業費について、改めて精査するとしておりました。今後、基本計画策定に向けて精査をきっちりした上で、改めて市民のみなさまの意見をきく機会を設ける予定でございます。以上、ご答弁申し上げました。
予算の使い方を大型公共事業優先から福祉・子育て・教育優先に
あらき議員:次に、予算の使い方についてです。
市長は、2020年の東京オリンピック開催をテコに、横浜での大型公共事業を新市庁舎だけでなく、他でも進めようとしています。具体的には、高速横浜環状道路の北西線の早期開業や南線の事業本格化を進めるとしています。今後、毎年高速道路関連支出額は320億円から400億円と試算されます。このほかに、本牧沖埋め立てやエキサイトよこはま22の事業が加わればさらに予算が増えます。今でも、一般道路維持費や整備費などを含む公共施設の保全費は960億円を必要額としているのに、今年度予算では570億円にとどめています。これらの大型公共事業を進めれば、ますます保全費を捻出することが困難になることは明らかです。
来年度予算編成に向けて、中期的な財政見通しとして、財政局の試算では2014年度から2016年度までの3か年の収支不足は1470億円とされています。しかも来年4月から消費税値上げが予定され、さらに景気に大きな影響を及ぼすことになり、現時点においても市長が進めようとする大型公共事業の予算を組めるような余裕は本市の財政状況にはありません。また、大型公共事業の事業期間を短縮すれば、単年度収支に大きく影響することは避けられません。この点の市長の認識を伺います。
私が今年の春に行った南区民アンケートで要望が多かったのは、特別養護老人ホームに待ちがなくても入れるようにすること、小児医療費の対象年齢の拡充、中学校給食の実現などでした。川崎市長が2年以内に中学校給食を実現する、横須賀市では小学校3年生まで小児医療費無料化を拡充するという方針で動いています。市長がくらし満足度ナンバーワンというのであれば、財政負担の肥大化をもたらす大型公共事業推進から、市民の切実な要望である特別養護老人ホーム建設戸数の増加、小児医療費無料化の年齢拡充、中学校給食の実現など市民生活の向上と子育て応援へ舵を切り替えるべきですが、市長の決意を伺います。
林市長:本市の財政状況についての認識ですが、市税収入の大幅な伸びが見込めない中、少子高齢化に伴う扶助費の増大や、防災減災への対応など、今後も厳しい財政状況が見込まれます。しかしながら、将来に向けた成長・発展のための投資は必要であり、市民生活の安心や市内経済の活性化につながる施策の推進と財政の健全性を両立した持続可能な財政運営を進めていくことが重要と考えています。
高齢者福祉や子育て、教育などの充実へ舵をきりかえるべきとのことですが、高齢者福祉の分野では、特別養護老人ホームや小規模多機能型居宅介護事業所などを計画的に整備してきました。子育て支援の分野では、人や予算を集中投入することにより保育所待機児童ゼロを実現しました。教育の分野では、いじめ、不登校等への対策としての児童支援専任教諭の配置や、読書意欲の向上などを目指した学校司書の配置など教育環境の充実を図りました。今後とも将来にわたり、持続的に成長・発展し、市民のみなさまが安全安心を実感できる都市を目指し、必要な施策を展開してまいります。
放課後児童クラブの利用料引き下げと分割・移転の支援を
あらき議員:次に、放課後児童育成事業について伺います。
横浜市は、子ども子育て支援制度への移行に先立って、国が定める「基本指針」に即した5か年の事業計画を策定することになっています。その内容は、地域の実情を踏まえて、今後どのような施設・サービスを、どのくらい、いつまでに整備・実施していくかを定めるものです。
この事業計画を策定するにあたり、市は、今年の7月から8月にかけて、市内に居住している小学校就学前の児童及び小学校就学児童がいる家庭を対象に、家庭の現状把握とニーズ調査を実施しています。その結果、学童クラブを利用している保護者のうち、利用料負担についてやや高い・高いと答えた方が約6割、今後望むこととの質問では、保護者の負担軽減、施設の拡充、スタッフ体制の充実の順で要望がありました。この調査結果から、学童クラブの計画策定にあたり、平均保育料の1万6,491円を引き下げること、スタッフ体制については複数配置を堅持することは必要不可欠と考えますが、どうでしょうか。
耐震上危険と判定された施設で移動できず困っている学童クラブがあります。この実態が改善されないのは、区に責任をもって進める部署がないこと、また局との連携ができていないことが大きな原因です。局区連携で用地の確保など必死な取り組みをした保育所待機児童解消の経験を生かし、市長自ら陣頭指揮をとり、学童クラブについても同様の位置づけと体制をとることが必要だと考えますが、その決意を伺います。
はまっこふれあいスクール、放課後キッズクラブを利用する保護者のニーズ調査では、今後望むこととして、プログラムの充実、児童の安全確保、施設の充実、スタッフの確保の4項目が上位を占めています。今後、事業計画を策定するにあたり、学童クラブを含む放課後児童健全育成事業については、こうした保護者の要望に応えるために、現行の運営基準を落とさないことと利用している子どもたちの健全育成のために予算を増やすことが不可欠だと考えますが、市長の見解を伺います。
林市長:放課後児童健全育成事業について、ご質問いただきました。
利用料の引き下げおよび指導員の複数配置についてですが、放課後児童クラブの利用料については基本的に運営主体が定めていますが、本市としても生活困窮世帯の減免制度など検討課題があると考えています。また、指導員についてはすでに複数配置しており、今後も原稿の水準を維持するとともに、国が定める新たな基準を見極めながら必要な支援を行っていきます。
放課後児童クラブの分割・移転を進める上での区と局の連携についてですが、現在全市的な制度設計や事業計画策定は主にこども青少年局が、また放課後児童クラブ等の運営に関する相談や補助金交付などは各区が行っています。新法への移行に伴い、移転・分割をこれまで以上に進める必要があり、地域情報が得やすい区と局が連携して取り組んでいく必要があると考えています。
放課後児童クラブを含む放課後3事業充実のための予算の確保についてですが、留守家庭の子どもたちが安心して過ごせる放課後の居場所を提供し、小1の壁を解消することは喫緊の課題だと認識しています。今後とも、放課後児童クラブをはじめ放課後事業の充実を図っていきます。
バス路線廃止地域の住民の足の確保を
あらき議員:最後に地域住民の足の確保について伺います。
南区の南太田駅からどんどん商店街を通る相鉄バスは2系統あったうちの浜4系統が赤字を理由に4月15日から廃止したため、1時間に2本のバスがたった1本になってしまいました。このように民間事業者が赤字路線を廃止する事例は今後の人口減少とともにさらに起きると考えられ、公共交通機関がないと陸の孤島になりかねない現状は深刻です。この状況を改善するためには、民間事業者まかせにせず、区職員等がその地域へ出向き、陸の孤島状態などの実態把握や現地調査を行い、必要な対策を講じる必要があると考えますが、どうでしょうか。
この対策として、地域交通サポート事業がありますが、年間1500万円の予算ではあまりに少なすぎます。この予算を増やし事業が実現できるように体制をとり、地域住民まかせでなく行政主導によるコミュニティバスを運行するなど様々な形態を検討すべきです。特に、駅まで15分の足の確保、また区役所や病院など地域住民等が必要とする公的公共施設への足を確保する考えはないか伺い、私の1回目の質問といたします。
林市長:地域住民の足の確保について、ご質問いただきました。
バス路線の廃止に対して必要な対策を講じるべきとのことですが、既存のバス路線が廃止されることによる交通不便地域の発生を回避し、市内の生活交通として必要なバス路線の維持を図るため、生活交通バス路線維持制度により、市民の日常生活の利便性の確保に努めています。ご指摘の路線については、交通空白地域が発生しないため、当該制度の対象路線とはなりませんでした。今後も事業者との情報交換等を密に行い、区局連携を強化し、当該制度や地域交通サポート事業により、生活交通として必要な交通手段の維持確保に努めます。
地域交通サポート事業の拡充およびさらなる施策展開についてですが、本事業は昨年度は泉区緑園地区など4地区、今年度は緑区武蔵中山台地区など3地区にて取り組みを開始するといったように、多くの地区で取り組みが進められています。今後、制度のさらなる充実を図り、より多くの地区で地域に適した交通手段が確保できるよう積極的に事業を展開してまいります。
以上、あらき議員のご質問にご答弁申し上げました。