国の地方自治への不当な介入を許すのか
私は日本共産党を代表して、今臨時議会に提案された「横浜市常勤特別職職員及び一般職職員の給料及び手当の臨時特例に関する条例」については反対の立場から、「横浜市市会議員の議員報酬及び臨時特例に関する条例」については賛成の立場から討論を行います。
今回の本市職員等の給料及び手当削減のための条例改正は、国による地方公務員の給与削減の一方的な押し付けを是認し、地方自治への不当な介入を結果的に許すことになります。
この議場に出席の議員各位に私は問いたいと思います。たとえ、地方公務員の給与や定数の削減に関わって意見が異なっているとしても、今回の措置のように国が地方自治体の固有の財源である地方交付税を削減して、地方自治体を強制的に政策に従わせようとするやり方には反対されると思うのですが、いかがでしょうか。今回の国の措置は、地方6団体が指摘しているように地方自治体に対し国によるさらなる関与を強め、地方分権を遠ざけ、地方自治そのものを変質させるものです。市民生活と市政に責任を持つ横浜市会として、地方自治を守るためにも、国の要請に従い提案された今回の条例案に反対をしようではありませんか。
国会・民主:閣議決定を政権交代で反故にするのは裏切り行為
国会では、民主党は、政府の一方的なやり方が地方自治の原則を根本から揺るがすものであるという観点などから、「絶対に容認することはできない」として地方交付税法の一部を改正する法案に反対されています。さらに民主党は、「政府は一昨年の6月、国家公務員給与削減措置は、あくまで東日本大震災からの復旧・復興の財源とするための臨時的措置として行うものであって、地方交付税減額などによって、この引き下げを地方に強制することは考えていないと閣議決定をしていることから、政権が交代したからといって、国との約束が反故にされ、信頼関係を著しく損なう裏切り行為だ」と政府を糾弾しています。正論ではないでしょうか。この立場に立てば、国の要請に沿ったこの条例案に民主党横浜市会議員団のみなさんも反対されると確信しています。
全国市議会議長会の共同抗議声明は自民・佐藤前議長が関与
全国市議会議長会は、地方6団体のメンバーとして総務大臣が出した地方公務員の給与減額要請に対し、「そもそも地方公務員の給与は、公平・中立な知見を踏まえつつ、議会や住民の意思に基づき地方が自主的に決定すべきものであり、国が地方公務員の給与を削減することは、地方自治の根幹に関わる問題である。ましてや、地方交付税を国の政策目的を達成するための手段として用いることは、地方の固有財源という性格を否定するものであり、断じて行うべきではない」と声明を出しています。私は、今回の問題はこの声明に尽きると考えます。仮に、今回、本市議会が条例案を賛成多数で成立させたならば、この全国市議会議長会の共同声明に反する行為となります。この声明に関わったのは当時の自民党の佐藤茂前議長です。自民党のみなさんも筋を通せば、今回の地方自治の否定につながるこの条例案に賛成するわけにはいかないのではないでしょうか。
給与削減分で行う事業は実は起債100%で削減措置とは関係ない
今回の地方公務員の給与引き下げについて、国は防災・減災事業への積極的な取り組みと地域の元気づくり事業の財源の確保としていますが、2013年度の国家予算では防災・減災事業として計上された全国防災事業、緊急防止・減災事業費は地方債100%の起債事業となっています。つまり2013年度では、今回の給与削減措置とは財源的に関係はありません。結局は地方公務員給与削減そのものが目的であり、昨年の総選挙で自民党が掲げた公務員給与の削減という公約実現の達成のためにほかなりません。
政党が掲げた公約を実現するために努力するのは当然です。しかし、何をやってもいいということではありません。今回のように地方自治の根幹に関わるような地方交付税を削減してまで、自党の公約実現の達成を図ることは、権力をもつものの横暴だというそしりを受けざるをえません。
地方交付税の削減額が明らかになった時点でも遅くない
今回、条例を提案するにあたって市長は、国から要請があり、地方交付税の減額は既に法改正が行われ決定しているので、このままでは市民サービスに影響が生じる恐れがあるとして、職員等の給与減額措置をとらざるを得ないとされました。しかし、今年度の地方交付税額発表は7月後半から8月中旬にかけてとされています。減額される額もはっきりしていません。削減額が明確になった段階で、その額に合わせ、様々な知恵を集め、本市職員の給与削減を回避すべきです。横浜環状道路北西線など大型開発の中止・凍結による一般財源の確保。2012年度決算の実質収支は57億円の黒字です。この数年20億円台から50億円台の黒字になり、2013年度の実質収支も黒字になるとのことです。さらには財政調整基金等の基金の取り崩しなども含め、補正予算を組み、対処すべきです。
また、今回、国は長引く景気の低迷を受け、一層の地域経済の活性化を図ることが喫緊の課題であり、そのために地方公務員の給与等の減額を行い、その財源の一部を地域の元気づくり事業に配分するとしています。しかし、この事業を成功させるには地方公務員が元気でなければうまく進みません。人員を減らされた上、その上給料も減らされては元気が出るはずがありません。しかも、自らも被災しながらも住民の先頭に立って、地域復興のため懸命に働いている被災地の自治体職員のみなさんに対し、今回の措置はあまりにも理不尽なものです。医療、介護、保育、教育などあらゆる分野で住民の生活を支えているのが地方公務員です。地方公務員の生計費をこんな乱暴なやり方で削るのは間違いです。
全国で164自治体が要請拒否、埼玉県和光市では市議会が否決
6月13日に発表された総務省の都道府県及び指定都市における給与減額措置の取り組み状況では、東京都や愛知県、仙台市など164自治体が要請を拒否し、736団体はまだ態度を保留しています。新聞報道では要請を受諾した自治体では要請に応じなかった場合、国からの報復措置を受けるのではないかと警戒しているとも報じられています。このような状況の中で、埼玉県和光市議会は17日、市職員給与を削減する条例案は否決しました。わが横浜市会においても、地方自治を守る立場に立ちきることが全国最大の政令指定都市の議会として、果たすべき役割ではありませんか。
地方公務員給与の減額によって、景気を一層悪くすることを考えれば、政府のいうアベノミックスについても言及したいところですが、今回は、地方自治と地方分権を守るという点のみに絞って、議員各位に条例否決についての賛同を求めるものです。
引き下げ努力の一点で、議員報酬削減条例案に賛成
次に、横浜市市会議員の議員報酬及び臨時特例に関する条例については、今回の条例の提案理由は、職員等の給与が国の要請によって引き下げられるので、議員も同調して報酬を一年間引き下げようとするものです。この提案理由には賛成できません。
しかしながら、わが党はかねてより、本市の議員報酬を政令指定都市議員報酬の平均に引き下げることを要求しています。今回、条例改正による議員報酬の引き下げは、金額的にも期間を限定するという点でも問題はありますが、議員報酬の引き下げ努力という一点で、条例案に賛成します。
以上で、私の討論を終わります。