2012年8月10日
横浜市長 林 文子 様
日本共産党横浜市会議員団
団 長 大 貫 憲 夫
横浜市は、「障害者の外出支援制度見直し案」の市民意見募集を6月から行っておりますが、この見直し案は一定評価すべき点もあるものの様々な問題点を抱えています。日本共産党横浜市会議員団が7月に行った障害者団体との懇談や党市議のブログでも見直し案についての意見や要望が出され、福祉パス有料化の記事が読売新聞に掲載された7月23日には電話での問い合わせや反対の声が日本共産党市議団に寄せられています。
本市の障害福祉計画にある「障害者が自らの意思により地域で自立した生活を送れる社会を構築する」との考えにも反する“見直し”になるのではないかと危惧しています。
そこで、見直し案についての問題点を指摘し、以下のとおり改善・見直しを求めます。
1.ガイドヘルプ・ガイドボランティアについて
ガイドヘルプ・ガイドボランティアの対象者、対象範囲を拡大し、対象者の定義を明確にしたことは評価いたします。
一方、ガイドヘルプ利用について、月の基準時間を48時間から30時間に削減したのは問題です。基準時間の考え方として、現在の平均利用時間13.4時間をもとにしていますが、障害の種類や程度によってガイドヘルプ・ガイドボランティアの利用方法は様々であるのに、単純に合計利用者数と合計利用時間数から計算した利用時間をもとにすること自体が間違いです。
ガイドボランティアの奨励金を一律500円に変更するのも問題です。現在は一般利用が障害種別に1450円か1900円(交通費含む)、通学・通所利用が交通費別で500円となっていますが、見直し案では交通費を含んで500円としています。ボランティアとはいえ、研修を受け、時間を削って活動しているわけで、500円では場合によっては交通費さえ出ないことになり、いまでこそ不足しているボランティアがますます減ってしまうことになりかねません。
ガイドヘルプ利用の基準時間とガイドボランティアの奨励金は、増やす方向で再検討し、少なくとも現状維持とすべきです。
2.福祉パス、福祉タクシー券について
福祉タクシー券の月制限を撤廃すること、福祉パスの対象者に愛の手帳B2所持の知的障害者を加えることについては、評価いたします。
しかし、福祉パスに利用者負担を導入し、一律年間3200円とすることは大きな問題です。 見直し案では、福祉パス利用者アンケートの結果から、福祉パスをもらっているけれども「利用していない」「月に1~5日」しか利用していない方が全体の4割以上を占めているため、使う人にだけ渡し、安定した制度継続にするとしています。
アンケートは障害者手帳要件による福祉パス交付者を対象として行ったものですが、対象者がすべてバスや地下鉄を利用できる条件にあるわけではなく、車椅子を利用している人や引きこもりなどで外出が困難な人、無職で出かける機会があまりない人、鉄道沿線に住んでいる人、自家用車利用の人などは福祉パスをあまり利用しないことが考えられます。一方、有職者や学生、作業所に通っている人は毎日のように利用します。このように、障害者の実態を踏まえず、アンケート結果の平均利用日数だけから結論を出すのは、あまりにも乱暴です。
また、アンケート結果では「1ヶ月あたりの収入が10万円未満」が30.9%、「決まった収入がない」が30.6%となっており、障害者の多くが低収入の状態です。低収入の障害者にとって3200円は高額であり、1家族に障害者が複数いる場合にはさらに大変な額です。
そもそも福祉パス交付事業は、「障害ゆえに外出しにくい点に配慮し、障害者の社会参加の促進を図る」ことを目的として実施されているものです(健康福祉・病院経営委員会、2012年4月19日配布資料、事業概要より)。ここで、「障害ゆえに」というのは単に障害そのものによる外出しにくさに加え、障害があるゆえに低収入であることも含まれていると解釈され、事業の目的に沿うならば福祉パスは有料化すべきではありません。
福祉パスを使う人だけに渡すというならば、配布時に返信用の封筒を同封して使わない人には返してもらうなど別の方法を考えればいいことで、有料化とは別の問題です。
有料化の理由として事業費の増加を上げていますが、交通事業者と話し合って事業者への支払額を抑えることも検討すべきです。
なお、透析者の中には自家用車で透析に通う人も多く、下肢障害者の中にも移動手段として自家用車を用いている人もいることから、横須賀市や厚木市など多くの自治体で行われているようなガソリン券の導入も検討すべきです。
3.市民意見募集について
現在行われている見直し案に関する市民意見募集の設問および選択枝は、きわめて不適切な表現です。
設問2、3、4はガイドヘルプ、福祉パスなどの見直しの考え方、利用者負担について問うものですが、その回答として、理解できるかどうかを選択するようになっています。「考え方を理解できるか」と「考え方に賛同するか」は別問題です。市の考え方はわかったが、自分としては納得いかない、反対だ、困るということは大いにありうる話です。「理解できる」=「賛成」というのは極めて“お役所的”な言葉の使い方で、一般的にはそういうふうに受け止めるとは限りません。
また、設問4は、限られた市財政で福祉施策を行うためには利用者負担や利用制限も仕方がないという考え方を認めさせるような質問内容で、極めて作為的です。
見直し案を実施するのも仕方がないと思わせるような今の市民意見募集は直ちに中止し、設問、選択枝に誤解を与えないようなわかりやすい書き方に改めて再度実施すべきです。
以上