2020年11月12日
横浜市長 林文子様
日本共産党横浜市会議員団
団長 荒木 由美子
新型コロナウイルス感染症の拡大は日本の医療・福祉・公衆衛生の体制がいかに脆弱なものであったかを浮き彫りにしました。コロナ危機で明らかになった社会保障の弱体化を引き起こすおおもとにあるのは、歴代政権がとってきた社会保障削減路線です。コロナ危機は、人は誰しも、他者によるケアなしに尊厳ある生活を送れないことを明らかにしました。必要なケアを安心して受けられるよう、社会保障・ケアを抜本的に強化することが今こそ求められています。日本共産党は医療・介護・障害福祉・保育など、命を守るケアに手厚い社会をつくることを政策として掲げています。
介護保険制度は施行後20年間、サービスの削減や負担増をはかる見直しが繰り返されてきました。さらに総合事業の対象に要介護者が含まれることとなり、ケアプランの有料化など検討されています。サービスの削減や負担増一辺倒では、高齢者の生活を守り、支えることはできません。
本市が「第8期横浜市 高齢者保健福祉計画 介護保険事業計画 認知症施策推進計画」(2021~23年度)を策定するにあたり、住民の要求や実態を反映した住民本位の計画となるよう、市民要望を最大限盛り込んだものにすることが重要です。介護保険法第1条「介護が必要になっても尊厳を保持し、能力に応じ自立した生活を営めるよう必要な給付を行う」に則り、お金の心配をすることなく、必要な介護サービスを必要なときに利用できること、また、自立困難や生活困窮であっても人として尊厳のある暮らしが送れ、市民が安心して生活できる計画となるよう、素案に対して提案するものです。認知症については、早期発見・早期治療を進めるために、もの忘れ健診・医療体制の整備を抜本的に拡充することを求めます。
提案の第1は、支払える保険料とすることです。
厚生労働省の調査で、介護保険料を滞納して差押処分を受けた高齢者が、2018年度は過去最高の19,221人に上っていることが明らかにされました。介護保険制度が始まった2000年度から保険料が約2倍に上昇していることが影響したと見られていると報じられています。本市では2020年3月末現在16,709人が滞納、2019年度差押実施は382人です。本市の保険料基準額は、1期3,165円から7期6,200円と約2倍に引き上げられ、8期素案ではさらに約10%増の6,800円と示されています。保険料負担の軽減と減免制度の拡充が求められます。
第2は、お金の心配なく介護サービスが受けられることです。
2020年3月に公表された横浜市高齢者実態調査では、介護保険のサービスを全く利用していない理由として、「介護サービスを利用したいが、経済的な負担が大きい」と7.5%が回答し、2013年の2.3%の3倍以上となっています。年金はマクロ経済スライド制度により給付額が削減され、医療費の負担増、消費税10%への増税など、高齢者をより一層厳しい生活へと追い込んでいることが、介護サービスを利用したくても利用できない高齢者を生んでいると考えられます。また、同調査では、高齢者の経済的な状況について、要支援・要介護・各種サービス利用となるにつれ、「苦しい」が高くなり、“特別養護老人ホーム申込者”では、56.1%が「苦しい」と答え、介護費用が高齢者の生活を圧迫していることが示されています。介護保険料を支払い、いざサービスを利用しようと思ったら、お金がなくて相談すらできない、特養入所者が支払い困難を理由に退所するなど、経済的な理由で介護サービスを受けられない高齢者をなくすことが必要です。低所得の高齢者に対する支援の拡充も求められます。
第3は、介護サービスが確実に提供される体制づくりに市が責任をもつことです。
公益財団法人「介護労働安定センター」が公表した2019年度介護労働実態調査で、介護現場の人手不足が過去最悪の水準であることが明らかにされました。訪問介護員(ホームヘルパー)、介護職員の1年間の離職率は15.4%。人手不足に加え高齢化も進んでいます。介護サービスが確実に提供されるには、人材の確保は不可欠です。事業者まかせにせず、市独自に人材不足の実態調査と需要調査を行い、それに見合った育成計画をつくり、人材育成・確保に責任を負うべきです。
特別養護老人ホームについて、年間600床の整備計画としていますが、このペースでは現状の入所待ち期間11か月を短縮することはできません。横浜市高齢者実態調査では、特養申込者のうち、「今すぐに入所したい」が48.7%と最多、「3か月から半年」が9.9%と回答しています。高齢者のニーズに応えて、半年以内で入所できるよう整備が求められています。
以上の問題意識と課題認識を踏まえて、8期計画策定にあたり以下の措置を講じられるよう要請します。
記
1. 介護保険の基金を活用するなど、あらゆる手立てを講じて保険料負担の軽減をはかること。
2. 保険料段階を増やし、より応能負担とすること。
3. 保険料の本市独自減免の対象者を拡大し、拡充すること。
4. 生活困窮による滞納者には、救済措置を講じること。
5. 介護サービス利用料の負担軽減策を拡充すること。
6. 低所得者の住まいの確保を盛り込むこと。
・高齢者向け市営住宅の増設、養護老人ホーム、軽費老人ホーム(A型)、軽費老人ホーム(ケアハウス)の想定利用者数を引き上げて増設すること。
7. 特別養護老人ホームは入所待ち期間を半年以内に短縮されるよう整備すること。
8. 総合事業については、2021年度以降も現行相当サービスと報酬を維持すること。
9. 総合事業は保険給付から外された要支援者1,2の事業であることから、サービス見込み量の算出に、要介護者を含めないこと。
10. 8期計画で見込まれるサービス量を確実に提供できるよう、市独自に人材育成計画を作成・推進すること。介護職員の処遇改善に向けて、横浜市独自の直接支援策を講じること。市独自に資格取得のための研修や更新研修、事業所研修の費用助成、潜在的な介護福祉士等の復職支援を実施するなど、責任を持って介護人材の定着と育成をはかること。
以上