2018年7月25日
横浜市長 林 文子 様
日本共産党横浜市会議員団
団長 あらき由美子
横浜市地球温暖化対策実行計画の改定にあたってのパブリックコメントとして、大都市横浜が率先して全国自治体の先頭を立って温暖化対策を推進することを期待して、再生可能エネルギーに限定した日本共産党市議団の意見を述べます。改定素案への反映を要望するものです。
1、脱原子力発電、脱石炭を計画の基本に据えること。
日本の温暖化対策、エネルギー政策は3・11東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所事故によって大きな転換を強いられています。2014年3月策定の前計画はこの認識をもとに作成されています。前計画は、2011年3月に策定した計画の改定版ですが、計画作成の背景として「東日本大震災以降、我が国の温暖化対策やエネルギー政策をとりまく状況は大きく変化しており、再生可能エネルギーやコジェネレーション等を活用した自立分散型エネルギーシステムの導入による、災害に強く低炭素な地域づくりが国を挙げての課題となるとともに、原子力発電への依存を引き下げていくことが方針として打ち出されている」と説明しています。そして、第二章「計画の基本的事項」では、基本方針として「原子力発電や化石燃料に過度に依存しない、地域におけるエネルギーの創出と地産地消の推進」を掲げています。基本認識と方向性は、脱原子力発電、脱石炭という世界の趨勢に沿ったものでした。しかし、改定素案には、脱原子力発電、脱化石燃料という視点が全く欠落しています。人類にとって未完成の技術である原子力発電への依存からの脱却は今や世界の流れとなっています。再稼働をめざす国の政策はこの世界の流れに逆行するものです。国策への追随では、地方自治体の存在意義が問われます。横浜市の自主的判断で原発ゼロの旗を掲げることが必要です。
2、市内温室効果ガス排出削減の中長期目標の設定にあたっての電力の想定排出係数を見直すこと。
改定素案は、2013年度を基準年とした削減目標を2020年度は22%、30年度を30%としています。国の目標(30年度26%)より高く設定していることは評価できます。しかし、そもそも国の30年度目標は、国際的基準である1990年比に直すとわずか18%削減にすぎません。日本政府の対応の抜本的見直しが求められます。
また削減目標を設定するにあたって、電力の想定排出係数を、2020年度は原発事故前の2010年度の係数としています。排出係数は、電気の発電の際に燃料の燃焼に伴って排出されたCO2量を供給した電力量で除した数値です。東電の2010年度の排出係数は、0.375kg-co2/kwhですが、2016年度は0.486 kg-co2/kwhです。原発事故以降の石炭火力発電による大量のCO2排出の実態を示しています。2010年度の係数で20年度の排出量を測れば実際の排出量より低くなることは明らかです。その分削減量が増えるのは確かですが、それはあくまで机上の計算であり、環境負荷の実態を覆い隠すことにつながるだけです。2030年度の排出係数は、国の計画を踏まえた係数0.370 kg-co2/kwhとしています。そもそも国の計画は、2030年度の電源構成を原子力22~20%としており、原発に固執したものです。原発の再稼働・老朽原発の運転延長・既存原発の建て替え・新設を前提とした国の政策に同調することを市民は求めていません。国の枠内での取り組みに拘らない計画に見直すことを求めます。
3、前計画の到達点と総括を明らかにした上で、再生可能エネルギーの設備導入量目標を引き上げ、その目標を達成するための具体的対策を盛り込むこと。
前計画は、再生可能エネルギーに関して、短期・中期の目標とともに事業量目標を示し、目標達成のための取組方針と主な対策・施策を定めています。しかし、改定素案には、この取組みについての到達点も総括も明らかにされていません。前計画が掲げた、設備設置のための誘導策の検討、太陽光発電等設備への設置費助成、再生可能エネルギー導入検討報告制度の充実、地域密着の普及啓発、設置事業者に対する優遇措置などの施策ごとに到達点を把握し、課題を整理することなくして次の手立てを講じることは不可能ではないでしょうか。
改定素案は、横浜の将来像の各論の一つとして「再生可能エネルギーを主体として巧みに利用しているまち」を掲げ、基本方針として最大限の再エネ導入と水素社会の実現を謳っています。そして再生可能エネルギーの設備導入量目標を20年度43万KW、30年度59万KWとしています。目標は、前計画を踏襲したものであり、パリ協定の締結、猛暑・豪雨の多発など異常気象現象を踏まえた目標とは到底言えません。引き上げが必要です。
再生可能エネルギーの特性は、市民、地域主体が取り組むのに適したエネルギーであり、それが可能だということです。自治体政策として市民の取組を支援するソフト・ハード両面の支援策が奏功すれば、普及が急速に進むことは間違いありません。この視点からの再生可能エネルギー普及に関する対策・施策の抜本的拡充が求められます。改定素案のそれは、再生可能エネルギー導入検討報告制度の実施、市内の再生可能エネルギー・未利用エネルギーの導入・自家消費の促進、公共施設等における再生可能エネルギー等の導入拡大、ごみ焼却工場の長寿命化工事・建替等による発電能力の向上を掲げています。この記述は方針を示しているだけではないでしょうか。はたして実行計画と云えるでしょうか。これでは市民、企業は何をすればいいのかわかりません。
また、その内容も不十分です。これまでの庁内での検討を積み重ねてきた到達点と知見を踏まえた先進的で先駆的な施策に果敢に踏み出すことを求めるものです。この点では、2011年3月策定の横浜市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)は学ぶところが多いと受け止めています。同計画では、普及の事業主体をつくること、普及の仕組みとして規制的・経済的・事業的手法を駆使する、地域密着の普及啓発をはじめとした社会的手法を総合的に組み合させて再生可能エネルギーの飛躍的拡大をはかるとしています。これを踏まえた施策の拡充と具体化をはかるべきです。
4、再生可能エネルギー条例の制定検討を明記すること
地球温暖化の防止に関する取り組みについて横浜市は、「横浜市生活環境の保全等に関する条例」で規定しています。条例は、地球温暖化の防止に関する横浜市、市民、事業者の責務等を定めた上に、市長には排出抑制に関する指針を、事業者には地球温暖化対策計画の作成と市への提出等を求めています。しかし、再生可能エネルギーの導入・使用の促進についての規定は見当たりません。
2011年の福島原子力発電所の事故を受けて、29自治体(2016年4月現在 龍谷大学・櫻井あかね)が脱温暖化とエネルギー転換、安全なエネルギーの確保を目的に再生可能エネルギー導入の利用促進を掲げた再生可能エネルギー基本条例を制定しています。長野県飯田市の条例はその目的を市民が主体となって地域の自然資源を再生可能エネルギーとして利用することを「市民の権利」と謳い、その市民の権利を保障するために市の政策を定めると規定しています。全国的には条例制定によって、地域での事業計画の把握、地域住民と合意形成、庁内統制、住民による再エネ事業への支援が促進されています。全国最大の基礎自治体の横浜市での条例制定は、全国に波及します。条例制定を盛り込むことを求めます。
以上