2018年7月19日
横浜市教育委員会教育長 鯉渕信也 様
日本共産党横浜市会議員団
団長 あらき由美子
2019年度、2020年度に使用される中学校道徳教科書の採択が、8月1日(水)開催の横浜市教育委員会会議で行われる予定です。本年度の教科書採択は「平成30年度横浜市教科書採択の基本方針」にもとづいてすすめられています。
日本共産党は、民主主義社会の道徳教育は、すべての人に人間の尊厳があることを土台にし、子ども一人ひとりの選択による価値観形成を大切にする、市民道徳の教育として行われることが大切との考えに立っています。安倍政権は「道徳の教科化」によって、国が教科書検定などを通じて上から子ども、ひいては国民の道徳を管理しようとしています。このような国定道徳の押しつけに反対です。憲法や子どもの権利条約などの学習、いじめや人間関係のトラブルなどをみんなで解決していくクラス討論や学校行事などの自治活動、すべての授業や生活で子どもが人間として大切にされ体罰などがきびしく批判されること――そうした教育全体をとおして市民道徳の教育が行われるべきです。「道徳の時間」はそれらの一つとして位置づけてこそ有効なものになります。
そうしたことから市民がどの教科書が採択されるのかに特別の関心と注目を寄せるのは当然のことです。戦前の偏狭な愛国心教育の弊害を認識している市民にとっては尚更です。安倍首相の真珠湾での演説の掲載、伊勢神宮を「ご鎮座以来、国家の繁栄と国民の幸せを祈って」と描写、植民地台湾でのダム建設を指導した土木技師を紹介する教科書に対して、子どもの心を特定の方向に誘導するものではないか心配する声が集中しています。教科書会社8社のうち3社が、学習指導要領が示す22の徳目毎に数値で自己評価することを生徒に求めていることに対しても疑問や不安が多く寄せられています。
日本共産党市議団は、市教委の教科書採択の在り方について、これまでも、繰り返し問題点を指摘し、改善を求めてきました。横浜市の最大の問題点は、学校現場の意見を調査・集約しないことです。本年3月の予算特別委員会の教育委員会審査では、県内の多くで実施されている現場の教員と学校の意向を尊重する仕組みを横浜でもつくること、教科書展示会のアンケートに寄せられた市民意見を審議に活かすことなどを要望しています。
しかし、示されている採択の基本方針では、学校現場の声を聴取することを定めていません。党市議団が視察した中央図書館の教科書展示会のアンケートは、「今後の展示会運営の参考にさせていただきます」と、教科書についての意見は拒否するかのような記述となっていました。採択の会場は教育委員会会議室とこれまでと同じです。昨年の小学校の道徳教科書の採択時には、各委員から何を基準に自分は選ぶのか意見が表明されますが、教科書会社については一切言及がありません。そのうえに無記名投票です。「権限と責任」と云うならば、選択理由と教科書名を堂々と明らかにすべきです。
教科書の採択は、主権者・国民の教育権にかかわることであり、その方法は、教育に携わる教職員と市民への説明責任をはたし、納得が得られるものにすることこそ教育委員会の責務と考えます。採択まで実質的に二週間前という時点においてもその意志さえあれば改善できることが多くあると思います。以下改善点を提案しますので、実現に向けてご尽力されるよう申し入れるものです。
1、教科書展示会で寄せられたアンケート用紙は事務局扱いに留めることなく、審議に活かされるよう教育委員全員に届けること。
2、審議に当たっては、委員が教科書名をあげて評価や意見を述べるよう改めること。
3、投票は記名投票とすること。
4、会場についても傍聴希望者全員が直接傍聴できる会場に変更すること。あわせて資料を配布すること。
5、学校現場の意見・集約は、調査員に留まることなく、緊急に学校の意向を把握する手立てを講じること。
6、教科書取扱審議会の答申は、答申時点で市民に公開すること。
以上