市の基本構想は国費を呼び込み大規模な基盤整備前提の、花博本来の目的からズレたもの
かわじ議員:かわじ民夫です。日本共産党を代表し、只今上程の議第15号案「国際園芸博覧会の横浜開催を求める決議」案に反対の立場から討論を行ないます。
2016年に米軍から返還された旧上瀬谷通信施設跡地は242ha(国有地45%、民有地45%、市有地10%)の平坦で首都圏に残された貴重な土地です。わが党は同地での国際園芸博覧会(以下花博といたします)の開催自体に反対するものではありません。
そもそも国際園芸博覧会は、花や野菜の品評会、見本市という欧州の伝統的なイベントであり、生産者の利益を図り、技術の向上をはかるためのものです。それが1851年のロンドン万博以来、国威発揚の場になりました。しかし、近年では、人類共通の課題解決にむけて、先端技術など世界の英知を集め、新たなアイデアを創造・発信する場、多様な文化や価値観を共有し、相互理解を促進する場へと総じて進化しています。横浜市での「花博」開催は、この限りで意義があると考えます。
本年2月、花博招致検討委員会から基本構想案が答申され、3月に横浜市の基本構想案となりました。示された開催意義として「国際園芸博覧会は、首都圏に立地する横浜の立地と特性を生かし、訪日外国人や国内旅行の増加を通して観光立国に大きく貢献することが可能である」「博覧会の展示や行事を通じて来訪者の関心を喚起し高速道路・鉄道網へのアクセスにより国内各地を訪れるハブとして機能することにより、国内各地の地方創生・経済活性化への寄与も見込まれる」等としています。これは国威発揚という古い発想そのものです。観光立国や高速道路・鉄道などの高レベル交通アクセス網の建設など、国の進める大規模開発のための手段に花博を利用しようという意図が透けて見えます。
提案されている議案は、「横浜市では政府主催の国際園芸博覧会の基本構想案をまとめ、2026年の横浜誘致を求めている」「この基本構想により国際園芸博覧会を開催することは大変意義がある」として、基本構想案に基づく花博誘致を求めるものです。しかし基本構想案は、国費を呼び込み大規模な基盤整備を前提にするものであり、そのまま認めることはできないものです。
基本構想案では、会場規模を国有地の80ha~100haとし、入場予定者を1500万人と想定し、開催経費の運営・建設費を510億円から600億円と見込んでいます。この規模について、私たちは、2009年開催の横浜開国博Y150の有料入場者数実績が目標500万人の1/4に留まった事実を踏まえると、懐疑的にならざるを得ません。
1990年開催の大阪花博は、入場者数2300万人、建設・運営費は892億円で、入場料で賄えたのは半分余にすぎません。公営ギャンブル団体・企業寄付金が、国と自治体の負担を上回る188億円にも及んでいます。多くの入場者数も多額の民間資金の拠出もバブル経済という時代背景があったからではないでしょうか。
しかし、横浜の場合は2026年開催であり、少子高齢化の進展、生産年齢人口の減少という逃れようのない要素を考えると、大阪花博のような事態再来は全く期待できません。
また、基本構想の交通アクセスも懸念します。その輸送計画は現実性に欠けるものです。花博の開催期日・期間は2026年4月から9月までの6か月間であり、単純に割り返せば1日平均8万3千人以上の入場者となります。開催予定地(旧上瀬谷通信施設跡地)は相鉄瀬谷駅から約2㎞、道路は環状4号線が貫通だけで、交通アクセスは脆弱です。しかし、基本構想案の輸送計画では、会場は「JR横浜線、東急田園都市線、相鉄本線、小田急江ノ島線の4つの鉄道路線に囲まれている」「東名高速道路や保土ヶ谷バイパスに接近しており、交通アクセスの優位性がある」と真逆に描き、そして「幹線道路と接近し、鉄道路線に囲まれている立地を生かし、近隣駅からのシャトルバスの運行を検討する等、多方面に分散させる輸送計画とする」としています。はたしてシャトルバスによる輸送計画が参加者の魅力につながるものなのかが疑問です。
繰り返しになりますが、あくまでも花博を跡地開発の手段にするべきではありません。
花博開催は、これまで瀬谷区役所をはじめ地域連合会や地権者で策定された「米軍施設返還跡地利用指針」等で示されている「広域の防災拠点」「緑を享受する自然リクレーション空間」「都市型農業の振興」をベースにした跡地利用計画にそった構想にすべきです。そして土地の跡地利用やまちづくりについては十分な時間をかけ、地権者をはじめ市民との合意形成を慎重におこなうことを何より重視するべきと考えます。よって基本構想案をそのまま推進しようとしている「国際園芸博覧会の横浜開催を求める」議第15議案には賛成できません。以上で討論を終わります。