泥田の軟弱地盤が宅地開発に不適当であることは一目瞭然だ
日本共産党を代表して、請願第16号の不採択に反対の立場で討論します。
まず、請願は何を求めているかです。請願第16号「栄区上郷猿田地区の都市計画案について」の請願趣旨は、都市計画案は、「国の国土利用計画の重点施策『自然災害の未然防止』に逆行しているうえ、市街地造成後、長期にわたる『市民の安全・安心』の保証について不安があるので、市会として市長に対し、この安全面について十分な検証をおこなうよう要請してほしい」と市会の対応を求めたものです。
次に、そもそも上郷猿田地区が宅地開発に適した土地なのかどうかです。現地はどういうところかと言いますと、上郷開発は、深さ10~20mの谷部を埋め立てる大規模な盛土造成計画です。谷底部は、地元で深田、猿田と呼ばれる泥田状態の区域です。地盤の専門家が宅地にしてはいけないとしている典型的な場所であり、開発に最も不適当な土地柄です。先日、改めて現地に行って来ました。谷底に当たるところには、かなりの水量の地下水が湧き出していて、周辺一帯は、長靴が役に立たないほどぬかるむ泥田です。請願者が、「当該地域が軟弱地盤の上にあり、開発に不適当な土地柄であること」、「大地震の際、軟弱地盤のため表層地盤の震度増幅率が1.4~1.8倍になること」、「開発に伴い豪雨時に、いたち川下流域で氾濫の危険性があること」など、自然災害に対する安全性の心配点を具体的に挙げています。現地の実状を知れば、宅地開発に不適当な土地であることは一目瞭然です。
現地の実状を調査せず、災害を未然に防止することはできない
次に、大規模自然災害の未然防止にとって何が問題かです。災害の未然防止の見地から、多くの懸念があります。一つは、上郷猿田地区の開発計画は、既存の盛土区域の上に、新たに大規模盛土を行う計画であることです。現地の谷底部分は、市が滑動崩落の可能性を指摘している大規模盛土の区域が、大きく存在しています。造成予定面積は、今のところ確定していませんが、これまで公表された資料から見ておおよそ10ヘクタールあります。その内、既存盛土は約3ヘクタールあります。この点について、当局は「一部存在する」とことさら問題を小さく描いていますが、実際は、造成予定区域の約3/1、大きさで言いますと横浜スタジアムのグラウンド3面分に匹敵する広さです。この3/1を占める大きな部分になる訳です。決して軽視することはできません。このままでは、新たな造成地が、滑動崩落のリスクを下部の層に抱えたまま築造される恐れがあります。
さらに、問題は、谷部の既存盛土がどのように形づくられたのか、その経緯、組成などの実態把握さえせずに、当局が都市計画決定を行ったことです。
3月15日建築都市整備道路常任委員会、20日の総合審査を通じて、「滑動崩落の可能性のある既存盛土部分が含まれている」こと、及び、「既存盛土部分がつくられた時期、経緯、目的、組成は何かなど災害の未然防止対策の上で一番重要な基本的事項について、市は調査をしていない」ことなどが、答弁で明らかになりました。
安全性の保証について十分な検証を、その責任は市と市長にある
次に、「技術基準に適合」ということについてです。建築局長は、「請願の有無にかかわらず『法にもとづく技術基準』に適合するか審査して、安全性についてしっかりと確認を行う」と答弁しています。これは当然のことです。
しかし、この技術基準に適合しただけでは、安全性の確保や大規模自然災害の未然防止の取り組みに、市が責任を果たしていることにはなりません。当局の言う「法にもとづく技術基準への適合」ですが、建築基準法第一条で、「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する『最低の基準』を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする」と規定しているものです。つまり、建築基準法や都市計画法等の「基準」は、最低の基準であって、もともと大規模自然災害を未然に防止する強度を求めていない訳であります。したがって、「法にもとづく技術基準への適合」だけでは、災害の未然防止を担保できません。
次に、市町村は、「災害の未然防止に取り組む責務を有する」と法定されていることについて述べます。そもそも大規模自然災害を未然に防止する取り組みの責任について、災害対策基本法では、「市町村は、住民の生命、身体及び財産を保護するため・・・(防災対策等を)・・・実施する責務を有する」と規定しています。また、国土強靭化基本法では、「大規模自然災害に対する脆弱性を・・・地域の特性をふまえ、最新の知見に基づき、科学的に評価すること」と求めています。以上のとおり、安全性の保証の責任は、一部局ではなく市、つまり市長にあるというのが法の規定です。
本請願は、地域住民の安全・安心にかかわる重大な問題提起であり切実な要望
次に、安全性の十分な検証は、いよいよこれからの課題であるということです。これまで述べてきたように、今回の請願の対象になっている土地は、これだけの不安要素・懸念材料があり、しかも、関係当局は現場の実態さえ把握していない。これでは、安全性の保証ができるはずもありません。関係地域住民が、市長に対して、「安全性について十分な検証」を求めるのは、当然であります。建築局長は、「開発許可がなければ開発はできない」、開発許可にあたって、法にもとづく技術基準への適合や市の行う災害の未然防止の取り組みへの対応等を厳格にチェックすると言って、「チェックに合わないものは開発許可が下りない」と明確に答弁しています。安全に対する十分な検証は、市にとっていよいよこれからの課題です。
市会として請願を採択し、市長に対し、「安全性の保証について十分な検証」を求める必要があります。本請願は、関係地域住民の将来にわたる安全、安心にかかわる重大な問題提起であり、切実な要望です。請願第16号を採択することを求めます。
以上で討論とします。