首都高トンネル工事の地盤沈下は人災、市は市民の財産を守る立場で臨め
岩崎議員:スライドの使用許可をお願いします。横環北線トンネル工事に伴う地盤沈下による被害住民への補償と、その支援について伺っていきます。
私は、先日、地盤沈下の現場を視察してきました。スライドをご覧ください。(スライド①、スライド②、スライド③、スライド④)
JRの線路を支える擁壁等に、その痕跡がはっきりと表れています。
線路沿いの住宅地域は、大きく波打ち、近づくと土台が割れ、基礎周りの沈み込み、犬走に多数の亀裂が入っていました。下水のU字溝は分断されて、排水が逆流するなど、公共施設にも被害が出ています。
私は、直下型地震の神戸、長野県白馬村、熊本と、地盤沈下の現場をいくつか調査をしていています。今回の現場を見て、震源域にいるのと同じ感覚を持ちました。
地震による地盤沈下は、瞬時におきます。しかし、今回のような工事の影響による沈下は、ゆっくり進み、気が付いた時には、すでに被害が出ているという特徴があると思います。
今回の地盤沈下は、事業者の当初の想定よりかなり離れたところで起こっています。私が見たところは、谷戸の一番下流側で、元は沼地だったようです。なお、地盤沈下は、続いているように見えました。
まず、この地盤沈下の状況を、中島道路局長はどのように認識しているのか、伺います。
中島道路局長:馬場入り口の工事に伴う地盤沈下が、馬場出入口南側の一部地域で発生しています。現在は落ち着きつつあって、首都高速道路株式会社がモニタリングを継続しているところです。
岩崎議員:今の答弁は、事業者の認識だと思います。
首都高は、事態を小さく描こうとしています。中島道路局長は、現場を見に行かれたようなので、自分の言葉で感想を述べてほしかったのですが、先にいきます。
被害の規模と性格をどうとらえるかが大事だと思います。トンネル工事では、地盤変動が避けられないということは、地盤の専門家や工事関係者の常識です。昨年11月、博多駅前での道路陥没事故は記憶に新しいところです。
被害の規模ですが、住宅などの個人の財産に加え、公共施設の下水施設や道路にも被害が出ています。そして、なによりも市民の生活がこの上にあるわけですから、生活設計が狂わされました。
今回の被害は、広範囲にわたっています。復旧工事や被害補償などは当然です。しかし、復旧工事や損害補償があったとしても元には戻りません。大変大きな事故、災害です。今回の地盤沈下は、トンネル工事が引き起こしたものです。したがって、今回の被害の性格は、自然災害ではなく「人為的被害=人災」です。
そこで、重大な事態と認識しているのか、また、トンネル工事が原因であると認識しているのか、伺います。
中島道路局長:トンネル工事については、最新の技術を使い、また十分な調査を行い実施しましたが、残念ながらこういった被害が出てしまったということだと認識しています。
現時点で詳細な地盤沈下の原因とそのメカニズムは、まだ結論が出ていませんけれども、首都高速道路株式会社の工事に伴う地下水位の低下に起因して、馬場出入口周辺の一部の地域で地盤沈下が発生したものと想定されます。
岩崎議員:事態の認識、重大かどうかの認識はどうですか。
中島道路局長:先ほど申し上げたとおり、最新の技術と十分な事前の調査を行った上で実施をしたものですが、委員ご指摘の通り、ある意味では想定外の場所で、ああいった地盤沈下が生じてしまったということです。本来であれば、もちろん、そういった被害がないことに越したことはないわけですが、今後は、確実に対応ができるよう、首都高速道路株式会社と横浜市で連携して頑張っていきたいと思います。
岩崎議員:重大な事態だという認識のもとで答えられたと思いますが、ここからは地盤沈下に関わる損害補償の仕組みと、その法的根拠について伺っていきます。
まず、地盤沈下による被害の補償に関わって説明会が行われました。住民説明会開催後の状況について、伺います。
島田担当理事:相談窓口設置及び補償に関する説明会が、首都高速道路株式会社により開催された後に、相談窓口等に寄せられたご相談を受けて、同社が家屋の調査を順次行っています。
岩崎議員:説明会では、事業者である首都高速株式会社の説明は、全く不誠実で、不十分なものでした。そのため本市は説明会後、首都高に対応の改善を申し入れたと聞いています。その申し入れの理由と具体的内容を伺います。
中島道路局長:地域の皆様のご不安ご心配が解消されるよう、本市から首都高速道路株式会社に、丁寧な対応を行うように依頼をしたものです。具体的に申し上げると、地盤沈下の原因メカニズムを分かりやすく取りまとめ、各戸へ個別配布により、広く周知してもらいたいということ、それから、あくまで各町内会の意向をふまえる必要がありますが、町内会単位での説明会を開催すること、また、適切な保障がなされるよう個別対応で丁寧な説明を行うことと、そういった内容です。
岩崎議員:次ぎに、北線では、地盤変動に関わる第三者委員会が設置されていて、本件も審議されたと聞いています。そこで、この地盤変動監視委員会は、誰が設置したものか、また役割は何か、伺います。
島田担当理事:委員会は、首都高速道路株式会社により任意に設置されたものです。委員会の役割は、学識経験者等が公平中立な立場で、地盤沈下の事実判定、発生原因の審議、地盤沈下状況についての報告を定期的に受けること、及びトンネルに起因する地盤沈下の収束を宣言することです。
岩崎議員:次に、被害の補償です。説明会では、家屋被害に対する対応は、首都高が行うと説明されました。そこで、被害の保障の基準と、その法的根拠を伺います。
島田担当理事:補償基準は、国から通知されている公共事業に係る工事の施行に起因する地盤変動により生じた建物等の損害等に係る事務処理要綱になります。法的根拠ですが、損害を生じさせたものが損害を賠償する責任を負うという民法の考えに則っています。
岩崎議員:それでは、被害に対する責任は、首都高にあるということなので、伺います。家屋被害に気づいた住民が補償を求めるためには、どうしたらよいのか具体的に教えてください。
島田担当理事:首都高速道路株式会社により、相談窓口が設置されています。生じた被害についてご心配の方は、申し出ていただくことで同社により個別に対応がなされるようになります。
岩崎議員:地盤沈下による被害の補償は、首都高が全面的に責任を負うということは、確認できました。
次に重要なことは、横浜市の今後の対応です。本市は、事業者の一員であると同時に、市民の命と財産を守る責任を負っています。実際、市長は度々「市民の命と財産をお守りする」と言明しています。
地盤沈下で大きな被害が出ている以上、本市は市民の財産を守る立場で被害の補償を確実に、完全に行うことを首都高に対して強く迫るべきです。今後どのように対応するのか伺います。
中島道路局長:今後被害を受けた皆様には、首都高速道路株式会社により適切な補償がなされることになります。本市としても、先ほど答弁した通り、首都高速道路株式会社に対しては、いくつかの点でお願いを依頼をしているところです。引き続き地域の方々のご不安やご心配が解消されますよう、引き続き、首都高速道路株式会社と連携してしっかりと取り組んでいきます。
岩崎議員:今、中島道路局長の答弁にあったように、首都高と連携して、確実に補償されていくということは、非常に大事なことだと思うので、ぜひしっかりやってほしいと思います。ただ、この補償交渉っていうのは、「民民」の問題ですよね。行き着くところは。ということは、色々市民がやる場合は、困難が予想されるわけです。だから、そういう問題とか、それから被害対象の世帯が、今はそう多くないと聞いてますが、区域が広いですから、どういう被害が出るか、まだ予測つかないわけです。相当の数が出たということになると、これは地域全体の問題になってくるわけですから、そういう点で、この地域の市民の不安や困りごと等を相談できる行政の側、市の側に何か対応する方法を考えておく必要があると思います。これは都筑のマンションの事件で、横浜市は、関係局連携して窓口を設置しました。こういうこともぜひ考えるべきだということを要望しておきたいと思います。
南線でも地盤沈下が起こることを想定した対応を
岩崎議員:次に、南線について伺います。次のスライドを見て下さい。(スライド⑤、⑥)
南線は、大部分がトンネル区間であり、しかもその大半が100m近い標高差の谷戸、斜面を埋め立てた大規模盛土造成地の下を通ります。したがって、北線以上に地盤変動のリスクの大きな区間となります。
地元住民は、トンネル工事で家屋、敷地等に被害が出ることを恐れています。南線での地盤変動対策は、北線のように起こってからではなくて、工事が本格的に始まる前、今です、未然防止対策と万が一被害が出た場合の対応策をしっかりおこなっておくことが必要だと思いますが、市はどう対応する予定ですか。
島田担当理事:国からは、万が一、施工により地盤変動が生じた場合には、既に設置している地盤工学の専門家を含む有識者検討委員会が対応等について検討する予定であると、聞いています。
岩崎議員:それでは、ここからは、地盤変動への対応の仕組みや責任の所在について確認していきます。北線と同じように、第三者委員会の形で地盤変動監視委員会を設置すべきと考えますが、伺います。
島田担当理事:ただ今申し上げたように、万が一の地盤変動に対しては、すでに設置している地盤工学の専門家を含む有識者検討委員会が、対策を検討する予定であると聞いています。
岩崎議員:その有識者検討会の役割は、何ですか。
島田担当理事:東日本高速道路株式会社が設置したものですが、トンネル工法に応じて施工性や安全性、周辺環境等への影響等に関する技術検討を行うものと聞いています。
岩崎議員:ということはですね、今の委員会はトンネルの工法などの検討が主な役割だということです。それでは、先ほどの北線の地盤変動監視委員会のような役割は、全く果せないと思います。これでは困るわけで、北線と同様の役割を持つ委員会にすべきではないのか、この点では、市はどう対応するのでしょうか。
島田担当理事:万が一、施工により地盤変動が生じた場合ですが、先ほど答弁しましたが、すでにしている専門家を含む有識者検討会が横浜環状北線に設置されている、地盤変動監視委員会と同様の役割を担うと考えています。
岩崎議員:(事業者である)NEXCO東日本は、地元に対して「家屋調査の範囲外であっても、何かあれば申し出てもらえば対応する」と説明会で話しています。地元の住民は、NEXCOの対応を全面的に信用している状況ではありません。
本市は市民の財産を守る立場で、事業者に、地盤変動の未然防止と被害が出た場合の補償責任を果たさせるよう、強く迫るべきですが、どのようにやりますか。
中島道路局長:これまでも、事業者は、必要なか所への地下水対策工事などを行っている他、測量や家屋調査の実施をし、安全に工事を進めていると認識しています。委員がおっしゃられるように家屋調査の範囲外でも、万が一トンネル工事の影響で家屋に被害が生じた場合には補償がされると事業者からも聞いていす。横浜市としても、地域の皆様にしっかりと丁寧に対応を行うよう事業者に働きかけていきます。
岩崎議員:最後に、脱硝装置について伺います。
北線は、脱硝装置が設置されています。その設置効果はあると聞いています。南線については、事業者が「環境基準を満しているので、設置の必要性がない」と考えていると聞いています。これでは地元の心配は、解消されません。
本市は、これまで「脱硝装置設置の必要性を認め、事業者に設置を働き掛ける」と、地元と合意しています。NEXCOが「脱硝装置を設置する」と、地元にはっきりと約束するように、強力に働きかけることを求めますが、どうですか。
中島道路局長:環境影響評価の手続きにおいても、脱硝装置の導入が市長意見として出されています。地元の栄区連合町内会からも換気所の環境対策についてご要望頂戴しています。横浜市としても、脱硝装置は必要と考えていますので、引き続き事業者に強く設置を働きかけていきます。