日本共産党横浜市議団は25日、横浜市立上菅田特別支援学校、同北綱島特別支援学校、神奈川県立中原養護学校を視察しました。視察には、日本共産党の9人の横浜市議全員と政務調査員4人の他、大山・君嶋両県議、日本共産党南関東ブロック事務所の2名、はたの衆議院議員秘書の後藤さんが参加しました。
横浜市立上菅田特別支援学校(保土ヶ谷区)
230人の巨大規模化に対して増えない予算
比較的軽度の肢体不自由児が通う小・中・高の学校です。佐塚丈彦校長が説明と校内案内をしてくださいました。
約230人の子どもを約200人の職員で対応しています。開校41年目を迎え、肢体不自由児の学校としては全国的にみても1・2の大規模校です。近年、医療の進歩などによって児童・生徒数は増えており、教育と医療の連携がますます必要になっていますが、そのパイプづくりが今後の課題だそうです。
児童・生徒は11台のスクールバスで横浜市内全域から通学しています。学校のバス乗り場にはバスの床に合わせたプラットフォームがあり、車椅子で直接バスに乗れるようになっていました。
校内には、教室や音楽室、理科室など施設のほか、自立活動室や生活学習室などの特別支援学校ならではの施設がありました。
小学部の教室は床暖房になっており、体温調整が難しい障害児に対応しています。おむつ交換などの介助には、小学高学年からは同性が行うようにしているそうですが、男性教員の数が少なく困っているそうです。
自立活動室では、生徒・児童一人ひとりのスケジュールにそって訓練を行っています。各1名の理学療法士と作業療法士が市内4つの特別支援学校を巡回しているということでした。
給食は障害にあわせて5段階になっており、わずかな謝礼でボランティアによる介助員さんが配膳下げ膳の手伝いをしてくれています。あと3人ほしいが、現在はお金がないため介助員を増やしたくてもふやせない状況だそうです。
校長先生は、「みなさんが特別支援学校に関心をもって見学にきてくれるのはうれしい」と述べるとともに、個別に対応できる小さい部屋がたくさんあった方がいいが今は部屋を仕切って使っている、高等部の京都への修学旅行は教職員全員が協力して行っているなど、少ない予算で工夫している様子を話されました。また、特別支援学校に通う子どもが増えていることから市内北部に肢体不自由児のための学校がもう1校できるといいと話されました。
横浜市立北綱島特別支援学校(港北区)
分教室としてではなく学校として存続を
同校は重度の肢体不自由児が通う小・中・高の学校で、現在の在籍数は83名です。そのうち5名が東部病院内にあるサルビア分教室に所属し、8名が週に2~3回先生が家庭を訪問する訪問籍の児童・生徒です。教職員数は72名です。
同校は横浜市が策定した支援学校再編計画により2019年に閉校します。閉校にあたって市教委は保護者向けの説明会を10、11月に3回行いましたが、保護者たちは閉校の理由などに納得できず、閉校反対の署名を集めて市に提出。その後、市教委は、3年後の閉校は変わらないが、今の在校生がいる間は現在の職員体制のままで分教室として残すと発表しました。
村上英一校長の説明では、同校の児童・生徒はほとんどが車椅子かストレッチャーで移動する子どもたちです。歩行訓練を行っている子ども、自分で食事ができる子ども、会話ができる子どもは数名で、60%の子どもが医療ケアを必要としており、常に目が話せない状態です。床へのあげおろしや食事の介助は教師が行っています。基準に沿って子ども1.5人に先生1人が配置されていますが、同校でも男性教員が少ないため、教師への肉体的負担が大きいそうです。
障害児の母親であるPTA会長と副会長のお2人に、閉鎖問題についてお話を伺いました。3週間で3万筆を超える閉校反対の署名を集め、11月30日に市教委に提出したそうです。会長さんは、3年後の転校は免れたが、PTAと北綱島支援学校を考える会では新入生も受け入れるように今後も運動を続けていきたいと話されました。副会長さんは、医療ケアが必要な子どものケアだけでも大変なのに閉校問題が持ち上がって大変だった、先輩の保護者の苦労や歴史、今後の子どもたちのことを考えると分教室では安心できない、早く安心して学校に通えるようにしてほしいと訴えました。
教室には床暖房があり、おむつ交換や着替えのためにカーテンで仕切れるようになっています。水治療室として、子どもと先生が一緒に入れるプールがありました。プールでの様子はモニターですべての部屋で見られるようになっており、緊急時はすぐに駆け付けられる体制です。
ちょうど食事時で、食事の様子を見せていただきました。調理はきざみ、ミキサーなど8種類に分けられ、トレーには色別カードに個人名が書かれたプレートが載せられ、間違わないような工夫がされています。先生が子どもに1対1で食事の介助を行っていましたが、障害によっては2人がかりでの介助が必要な子どももいました。食事は全職員で対応するため職員室には誰もおらず、職員体制に全く余裕がないことがうかがわれました。
神奈川県立中原養護学校(川崎市中原区)
雨漏りの校舎で
同校は、小・中・高校生の肢体不自由児(98名)と、高校生の知的障害児(本校64名、分教室44名)が通う特別支援学校です(児童・生徒数は2015年6月1日現在)。片山由美校長先生、及川副校長が説明・案内してくださいました。
築41年の古い校舎で、渡り廊下の壁にひびがはいり、廊下には雨漏りにそなえてのバケツが置かれ、屋根の防水シートが一部めくれていました。県教育委員会に修理を依頼すると応急修理は行われますが、本格的な修理が行われないそうです。トイレの脇を通った時には臭いがしました。
知的障害の高等部の生徒のための食堂、自立活動室、水治療室などがありました。
特別教室として音楽室と多目的室はありましたが、上菅田特別支援学校にあった理科室、美術室、技術室はありませんでした。
校内見学のあと、校長、副校長と、県教育委員会教育支援部特別支援教育課の大野課長より、お話を伺いました。
入学する児童・生徒はどのように決められるのかとの議員からの質問に、小・中については義務教育なので市町村教育委員会で決められ、高等部については選抜が行われるとの答えでした。高等部については、実際には希望者全員を受け入れているが、希望者が多い場合は、県内の他の高等部に行ってもらう場合もあるということでした。
過大規模化は県立でも進んでいるのかとの質問に対しては、近年入学希望者が増えており、特に高等部への入学希望者が増えているということでした。
スクールバスの乗車時間についての質問には、来年度海老名に新しく支援学校が開校するので、計画上は60分以内になる、自宅からバスが止まるところまでは歩いても30分以内になっているという答えでした。しかし、大山県会議員の話では、90分位かかる例もあり、県議会で取り上げたということでした。
北綱島支援学校が閉校した場合に受け入れられるのかとの質問には、完全に閉校が明らかになり、横浜市からの依頼があってから検討するとの答えで、受け入れの余力があるのかとの質問に対しては答えられないという返答でした。
今回、3つの特別支援学校を視察しましたが、先生方が親身になって子どもに寄りそっている姿がみられました。一方、3校とも児童・生徒が増えて過大規模化し、教職員の不足、学校施設の狭あい化が顕著にみられました。障害の有無にかかわらず、教育を受ける権利が保障され、安心安全で楽しい学校生活が送られるよう、教育予算と教職員を増やしていくことが重要だと実感させられました。合わせて、閉校予定の北綱島特別支援学校のPTA役員の訴えが実現するよう、引き続き力を尽くします。