日本共産党横浜市議団は20・21日、京都市・大阪市を訪れ、ごみ屋敷条例、中学校給食について、視察しました。視察には、大貫憲夫、あらき由美子、古谷やすひこ、白井まさ子、みわ智恵美の各議員と政務調査員2名が参加しました。
京都市:当事者に寄りそってごみ屋敷解決に尽力
全国的に、自宅の敷地内に大量のごみなどをためこむ、いわゆる「ごみ屋敷」が問題になっています。ごみ屋敷では、悪臭や害虫が発生したり、道路にまで物がはみ出して通行のじゃまになったり、ごみの崩落による危険性があるなど、周囲の住民から区役所などに苦情が寄せられています。一方、「ごみ屋敷」の当事者は、認知症や精神障害がある場合や、高齢、一人暮らしなどで、ごみを片付けることが出来ない場合がほとんどです。
担当局の保健福祉局保健福祉総務課の担当係長にお話を伺いました。京都市では2014年11月に、ごみ屋敷解決の対策条例を制定。保健福祉局に専任の事務職2名と保健師5名を配置し、区役所とともに解決に取り組んでいます。解決にあたっては、ごみ屋敷状態を解決するとともに再びその状態にならないように、当事者が抱える生活上の諸問題を解決するために、当事者に寄りそった支援をすることに重点を置いているということでした。
昨年11月に全国で始めて実施した行政代執行に至った例では、対象者は50歳代の男性で、担当職員が126回当事者を訪問し61回会って片付けるよう働きかけましたが、解決に至りませんでした。自宅前の通路にゴミがはみ出し、車椅子を使っている近隣住民が一人で通行できない状態で、ベランダの物が落ちてくる可能性もあったため、やむを得ず代執行を実施。通路やベランダにあった新聞紙や雑誌など7.5立方メートル、45リットルのごみ袋167個分を撤去しました。実施には市職員が当たり、古紙回収や当事者が所有していた市指定の有料ごみ袋を使ったため、費用はかからなかったそうです。
昨年10月現在、ごみ屋敷として通報があったもの197世帯のうち、70件が清掃の実施など具体的な支援につながり、解決に至った後も、行政として見守りを続けているそうです。
京都市:選択制の弁当給食を食べているのは3割の生徒
都合により市教育委員会から話を伺うことができず、日本共産党の玉本なるみ・ほり信子両京都市会議員からお話を伺いました。
京都市では2004年から選択制の学校給食法に基づいた中学校給食を行っています。教育委員会の資料によると、「家庭からの手作り弁当の教育的効果を生かしつつ、弁当を持参できない生徒に栄養のバランスに配慮した食事を提供することを目的として実施」しています。小学校の給食施設を利用できる小中一貫校などを除く66の中学校で、希望者が業者弁当を注文する選択制で、1食310円です。学校給食法に基づいているため、生活保護世帯や就学援助を受けている生徒は無料です。
2014年度の給食の喫食率は平均32.3%。衛生上の問題でおかずは冷蔵されて業者から運ばれてくるため生徒には評判がよくなく、思春期のこともあってか弁当を注文するこどもは「弁当をつくってもらえない子」とみられることもあって、特に女子生徒には敬遠されているそうです。給食費が無料になる生活保護世帯や就学援助を受けている生徒でも、注文せずに家庭弁当の子どももいるそうです。
玉本・ほり両議員は、現在行っているものは中学校給食と呼ぶにはあまりにもお粗末で、ないよりもましという程度であり、小学校給食のように自校で調理する方式の給食が一番だが、業者弁当のデリバリー給食でもせめて全員喫食にするよう求めていると述べました。
大阪市:全員で食べるとおいしい中学校給食
大阪市では、大淀中学校を訪問しました。
大阪市では、2012年度から段階的に業者弁当による選択制の中学校給食をはじめ、2014年度から段階的に全員喫食に移行し、今年4月からは全校全員で全員喫食になる予定です。
弁当は、冷蔵のおかずと保温されたご飯と牛乳が基本で、週3回はあたたかい汁物やカレーなどが加わります。当日の献立は、ご飯、糸より(白身魚)の磯辺揚げ、豚じゃが、風呂吹き大根、ほうれん草と白菜のおひたし、雑煮、牛乳でした。試食した議員からは、薄味でけっこう美味しかった、あたたかい汁物とご飯が一緒なのでおかずが冷たくても食べられたなどの感想が出されました。
配食や給食風景を見学させていただきました。全員喫食の1・2年生では当番の生徒が配膳室に給食を取りに来て、教室まで運び、グループ毎に向かい合わせにした机で、楽しそうに食べていました。10食に1食の割合でご飯が余計についており、1食分ではご飯の足りない生徒はお代わりができます。選択制の3年生では、注文した生徒が直接配膳室に取りにきて、教室で家庭弁当の生徒と一緒に食べます。約3割の生徒が給食を注文していました。全市で5人いる栄養教諭が学校に出向き、食育指導を行ったり、生徒の喫食状況を見て献立作成の参考にしているということでした。
1食300円です。学校給食法に基づいた給食なので、生活保護世帯の生徒は無料ですが、子ども施策全体のバランスを取るためにとして就学援助の生徒は半額負担です。
学校訪問前に懇談した日本共産党の尾上やすお・井上ひろし両大阪市会議員のお話では、子どもたちからは「つめたい」「まずい」と評判がよくなく、共産党としては学校調理方式を求めているということです。昨年秋に初当選した吉村大阪市長は、自分の任期中に学校調理方式に変更すると、所信表明演説で述べたということですので、今後の進展が注目されます。
大阪市:環境局と福祉局と区役所で協力して「ごみ屋敷」解決に
大阪市環境局と福祉局の担当課長にお話を伺いました。大阪市では2014年3月にごみ屋敷解決のための条例を制定しました。条例制定にあたっては、対象を人が住んでいる所に限定し空き家は対象外とし、何を「ごみ」というかの定義が人によってことなるために「ごみ」や「廃棄物」の名前は使いませんでした。あくまでもごみ屋敷の解決が目的なので、科料や罰則は定めなかったということでした。
京都市と違って専任職員はおいていませんが、各区の実情に合わせた部署に担当職員(兼務)を配置しています。ごみ屋敷の苦情などが住民から区役所に寄せられると、区の担当職員と環境局と福祉局が連携して対策会議を開き、役割分担や進め方を確認して、解決に向けて取り組みを始めます。
2015年度は1085万円の予算を確保し、審議会の開催や現地の臭気測定、ごみ撤去時の消耗品代、精神科医の派遣などの費用にあてているということでした。
ごみ屋敷の通報は、2014年3月で95件(うち条例対象32件)、2015年8月で82件(同15件)に減少しました。しかし、実際にこの条例による実行例はないそうです。
日本共産党横浜市議団は、今回の視察で得られたことを活かして、今年中に予定されている横浜市のごみ屋敷条例の制定や中学校給食実施に向けて、取り組んでいきます。
視察報告書および資料集は、下記をご覧ください。
「京都市・大阪市視察報告書ごみ屋敷条例・中学校給食」
「同 資料集」