日本共産党横浜市議団がお届けするインターネットTV「JCPヨコハマチャンネル」。今回は、2014年11月22日に、日本共産党横浜市議団主催で開かれた、「横浜にカジノはいらない!カジノ解禁と横浜誘致について考えるシンポジウム」の静岡大学人文社会科学部教授・鳥畑与一さんの報告をお伝えします。
静岡大学人文社会科学部教授 鳥畑 与一
ご紹介をいただきました静岡大の鳥畑です。今日は40分で、非常に不安です。大学の職業がら90分、しゃべり始めたら自動的に口が動いちゃうもんですから、40分でどうまとめるか、非常に不安なのですが。IR型カジノというものが本当に日本経済の成長、それから横浜の活性化につながるのかと、そうじゃないんじゃないかというお話をさせていただければなというふうに思います。
アベノミクス賛成派のマスコミでもカジノ批判
(スライド1)なぜかなといいますと、実はカジノの本家本元はアメリカなんですが、そのアメリカで実はカジノが斜陽化しております。カジノに依存したまちづくりが次から次へと破綻をしております。そういう中で、たとえば、たとえば「アトランティック」という雑誌がこういう記事を書いております。8月7日付なんですけども、地域経済をダメにするいい方法は、それはカジノを作ることだと。地域経済を活性化させることをカジノに頼っちゃダメなんだと。それはそもそもカジノができる仕事じゃないんだよと。見当違いの話であるということなんですね。
(スライド2)本題に入る前に、おかげさまでカジノ推進法案が廃案になりました。また、来年通常国会で出してくるかもしれませんが、それに関して、産経の経済記者さんが、八つ当たりの記事を書かれましたですね。220名を超すカジノ議連の議員を要して、この春の通常国会で審議入りして、秋の臨時国会でさっさと可決できる雰囲気だったのに、それができなくなったと。できなくなったのは、反対派の安直な執拗なネガティブキャンペーンだということなんですね。その中身は、先ほども話がありました資金洗浄でありますとか、治安悪化、青少年への悪影響でありますとか、ギャンブル依存症、多重債務者増加の問題。一部のメディアがあおったおかげで、国民の6割がカジノ合法化に反対しちまったと。カジノが経済的にメリットが大きいのは明らかなのに、こういう訳のわからんやつがマスコミをあおったもんだから、できなくなったという八つ当たりなんですけども。
一部のメディアじゃないですね。ここに紹介しておりますが、「東京五輪に間に合わせようという安直な発想で、依存症の人や犯罪の増加などカジノの負の側面に正面から向き合おうとしないのは、きわめて問題である。」どこの社説かというと読売新聞なんですね。アベノミクス応援団の読売新聞ですが、カジノ推進、それはちょっとそっちの方が安直じゃないかというふうにいってるわけです。
(スライド3)さらにもう1紙、アベノミクス応援団の日本経済新聞も、それはやっぱり普通のまともな経済観を持っていれば、さすがにカジノで経済成長っていうのはやっぱり腰が引けると思います。日経も、社説では、「マイナス面を十分検討した上で議論を尽くすべきだ」ということで、つい先日、11月の6日と7日で、経済教室「カジノ合法化を考える、上下」ということで、推進派、反対派出しました。
推進派は美原さんといって、99年からカジノ推進派の中心人物で、この方は正真正銘、長年カジノを研究されてきたある意味筋金入りの本物のカジノ研究者なんですが。一方、私の方は、お恥ずかしい話ですけど、この4月からにわかにカジノ研究者になってしまった。大学では金融論の講義しておりまして、金融論の関係で元々多重債務問題、ギャンブル依存症深く関わっているということで関係しておりまして、4月の協議会の発足式に記念講演をやれと。経済学者の立場でカジノをちょっと問題だよと言っている人間がいないもんですから、第一人者みたいな扱いで。まあ、ひとりしかいないから第一人者ということなんですけども。
読み比べてくれた方もいるかもしれませんが。これを見ておもしろいなと思ったのは、美原さん、カジノでうまくいってないところとして韓国とマカオというのを具体的にあげざるを得なくなりましたんですね。それから、いままではうまくいっているモデルとしてシンガポール言っていたのが、シンガポールといえなくなった。先進事例をモデルにすればいいんだと言いながら、具体的な中身、言えなくなっちゃたんですね。
私の方は、推進派はとにかく経済的にメリットが明らかだというんだけども、本当にそうなんですかと。ちょっと、これで経済成長の目玉にはならないんじゃないんですかということで、書かせていただきました。具体的にはこれからそのお話をさせていただければなというふうに思うんですけども。
IR型カジノは地域は活性化するのか
(スライド4)推進派の方は、IR型カジノをつくれば世界中から観光客が殺到して、誘致した自治体に税収と雇用、観光収入がもたらさせて、地域は活性化すると、当たり前みたいに言っているわけですが、実はこれは当たり前じゃないんですね。
たとえば、アメリカでラスベガスに次いで2番目にカジノを合法化した有名なアトランティック・シティ。ここは1976年に合法化して、78年にカジノがオープンして、それ以来30数年間。12のカジノホテルでだいたい年間三千数百万人集めてきました。人口はたった4万人足らずのちいさな町なんです。そうすると、推進派のいうことが本当であれば、たった4万人の町に毎年三千数百万人が観光客として訪れるわけだから、バカスカお金が落ちて、4万人の町は本当に豊かな理想的な町になったはずですが、30数年経っても、ニュージャージー州の中でもきわめて高水準の貧困地帯、犯罪地帯、失業者の多い町なんです。
世帯の平均所得がニュージャージー州平均の4割の水準です。貧困率、平均所得の半分以下の割合が約30%で、これは州平均の3倍です。それから、犯罪率は昨年全米の中で13番目ですね。ニュージャージー州の中ではこれも有数の犯罪都市カムデンに次いで2番目なんですが、失業率も2番目の高水準ということなんです。
そうしますと、年間三千数百万人を集客してきたカジノは、たった4万人の町すら再生することができなかったんだよということなんです。
なぜでしょうか。たった4万人の町を救えなかったカジノが、横浜のような大きな町を元気にできるのかという話になるんですけども。
この話を考える時に、ふたつの欠点を確認をしておきたいんですが。そもそもギャンブルってなんでしょうか。ノーベル経済学賞をとったコール・サムエルソンという非常に偉い先生が、経済学というテキストの中で、ギャンブル、経済学からみた二つの欠点ということを指摘しております。
職業として行われるギャンブル、これは典型的にカジノですけども、これは基本的にはお客が負ける仕組みになっていて、何の新しい経済的富を生み出さない単なる貨幣の移動でしかないんですよと。これはわかりますよね。私と誰かがじゃあかけよう、かけた、ただお金が移動するだけです。そこに何ら新しい商品、経済的富が生まれるわけでもないわけです。
それから、経済教室では字数が足りなかったので紹介できなかったんですけども、ギャンブルというのは所得の不平等と不安定性を助長するっていうことをしっかり指摘しております。結局、自分が給料もらったら、ちょっと夢をもてギャンブルに行く。でもそのギャンブルというのは必ずお客さんが負ける仕組みになってると。つまりカジノのギャンブルというのは、お客さんを豊かにするんじゃなくて、貧乏にする、貧しくするビジネスなんですね。結局、その地域の貧困格差を拡大していくという性格を持っている。その証拠に、たとえばネバダ州のラスベガス、それから有名なレノというのもカジノ都市なんですけども、ここの貧困率はネバダ州の中で1番目2番目に貧困率の高い町ということになるわけです。
こういうギャンブルの欠点を、最も一番たちの悪いかたちで発揮するのがIR型のカジノじゃないか。地域経済を疲弊化させる、貧困格差を拡大させるパワーが最も強いのが、IR型カジノじゃないかということなんですね。
私は、雑誌「世界」に、これは9月22日が締切だったんですが、こういうふうにアトランティック・シティがうまくいってないって書きました。私、アトランティック・シティに行ったことがなかったものですから、見たこともない町についてうまくいってないって書いちゃうのはちょっと後で少しまずいかな、ちょっと良心が呵責をもちまして、雑誌「世界」の原稿料も入るだろうし、嫁さんが隠し持っていたマイレージを使わせてもらいまして、26日にアトランティック・シティに飛びまして、見て回りました。
破綻したアトランティック・シティの実態
(スライド8)ご存知のように、今アトランティック・シティはカジノが次々と閉鎖をしております。12あるんですけども。そのうち9つがボードウォークという板張りのユーボートに9つあるんです。9つあるカジノのうち、5つが潰れます。
(スライド5)すでに4つが閉鎖して、右側にあるタージマハールは12月6日に閉鎖ということで、この間つい先日新聞発表をされました。つまり、9つあるうちの5つがたった1年でつぶれちゃうんです。
それから真ん中の下レベルっていうのが、これは2年前にニュージャージー州が2億ドルの税金をぶち込んで24億ドルの投資でつくった、期待のIR型のカジノでした。一番最新鋭のIR型カジノだったんですが、2年持たずに潰れてしまいました。
(スライド6)それで、本当にどうなのかなということで行ったわけですけども、隣のフィラデルフィアから電車で1時間、片道10ドルで行けます。駅を降りまして、いきなりちょっとびっくりする体験をしまして。降りると、うら若き女性が私に寄ってきて、電車に乗りたいんで小銭を分けてくれないかと、いきなり言われまして。土曜日の朝の10時なんですけども、ちょっともうびっくりしました。電車に乗りたかったらそこが駅ですよと言ったんですけども。要するにもうすっからかんなんですね。カジノやると帰りの電車賃も残しておけないんですよね。
そういう体験をしまして、駅にいきなりりっぱなコンベンションホールがあるんですけども、土曜日曜ですけども、ガラガラで、全く使われていません。
(スライド7)それから、ちょっと私あれっと思ったのは、こういう立派なアウトレットがありました。けっこうきれいだなと。俺が言っていることは間違ったことを書いたかなと一瞬ちょっと後悔したんですけども。
これは実は10年前につくったんです。これはなぜかといいますと、あとでちょっと言いますけども、2004年にニューヨークがカジノを合法化しまして、2002年に隣のペンシルバニア州がカジノを合法化しまして、周りにカジノができるので、ニュージャージー州は生き残るために、単なるカジノの町からIR型カジノに転換を進めたんです。もっともっと観光客が楽しめる観光都市にしようとして、10年前にアウトレットをつくったんですが、土曜日曜ですけども、お客さん、いないことはないけども、ぱらぱらぱらですね。
(スライド8)それから歩いていくとカジノにたどり着くんですけども、ちょうど真ん中のシーザーズ、この真ん中の下ですね、シーザーズのショッピングモールがあります。入り口に、世界一エレガントなショッピングモールなんて書いてあるですけども、中入ると、潰れた店ばっかりです。世界一エレガントなシャッター通りというような感じでして。奥のエレベーターは節約でしょうか、とまってますしね。
そこから右下見て左をみると、ボードウォーク、それなりににぎやかなんですけども。ちょっとカジノのホテルから脇をのぞくと、左とか右端ですけども、もう空地空地で人が歩いていないというか、さびれた町並みなんですね。
(スライド9)それから2日目にタクシーの運ちゃんつかまえて、ちょっと町回ってくれと。このタクシーの運ちゃんが非常に地元のカジノに詳しい運ちゃんで、非常に一生懸命説明して回ってくれたんですけども。ボードウォークからひとつ道を入ったメインストリートがパシフィックストリートというところなんですけども、タクシーの運転手さん、昔はホテルとかレストランとか両側にぎっしり店があったんだけども、今はもう潰れちゃったみたいなことを言うんですが。
(スライド10)左端は潰れたお店ですね。右の下はホテルです。空地ばっかりなんです。ちょっと脇をのぞくと空地ばっかりで、下の真ん中、これ昔有名なホテルだったんだよと。左、これは昔有名なレストランだったんたよというようなかたちで、空地だらけで、人の流れがないんですね。
結局、IR型カジノというのは、後でいいますけども、コンプと呼ばれるようなサービスで客を集めて、自分たちの中でお金を使わせますので、外には人が流れていかないんですね。だから、三千数百万人がちっちゃな町に訪れても、カジノの外には行かない。結局、カジノが出来てからレストランが200件潰れたというふうにいわれているわけです。
地元の人の話も聞きましたら、昔はちゃんとそういうお店があって、コミュニティーがちゃんと成立していたと。この町はイタリア系中心、このまちはアイリッシュ系中心というようなかたちであったんだけども、そういういわば生業としての商売が全部潰されちゃったので、コミュニティーが崩壊しちゃったということを言ってました。
結局、やっぱりカジノにしか頼れない町になってしまって、今、何が問題になっているかといったら、そのカジノが潰れちゃって、どうにもならないという話なんです。
(スライド11)さすがに今年、アトランティック・シティで次から次へとカジノが潰れていきまして、日本でもマスコミが取り上げています。先ほども言いましたように、ニューヨーク州であるとかペンシルバニア州とか周りのカジノができたから、アトランティック・シティがだめになったんだというんですね。ところが、ニューヨーク州のカジノはスロットマシンだけなんです。それから、ペンシルバニア州のカジノは本当にテーブルとスロットだけなんです。IRじゃないんです。ホテルもなければレストランもなければ、ショッピングモールもない。
(スライド12)ペンシルバニア、聞きますと、地元経済にダメージを与えるからIR型はつくらせないということなんです。一方で、ニュージャージー州はIR型カジノに転換することで生き残ろうとしてきたんだけども、それがうまくいかなかった。
なぜうまくいかなかったんだといったときに、IR型カジノというのは結局投資が大きいですから、その投資や採算を取るためには、たくさん客が右上がりで増えていかないと成り立たないんですね。だから、ちょっと客が減っちゃうと、もう大幅な赤字で、破綻するような仕組みになっちゃったということですね。それから、もうお客さんを囲ってしまうので、地域経済そのものを衰退させちゃった。
それから、ギャンブルはギャンブル、カジノはカジノなんですよ。最近、にわか勉強でシンガポールにも行きました。アメリカにも行きました。スロット、みんなどこも同じです。テーブル、ルーレット、どこも同じです。バカラも同じです。
そうすると、どこで遊んだって同じギャンブルをするわけだから、ギャンブル、カジノの顧客獲得競争というのは、コンプと呼ばれるサービス合戦になっちゃうんですよ。そうすると、アトランティック・シティの場合は、ギャンブルで稼いだお金の3分の1くらいはお客さんの誘致のサービス費用に使っちゃうと。だから、ものすごい費用がかかっちゃうんです。
結局ここで何をいいたいかというと、カジノは小さな町を救わなかった。それから、IR型カジノもアトランティック・シティ再生の切り札にならなかったということなんです。
(スライド13)これ、実際ペンシルバニア、フィラデルフィアのカジノなんですけど、日本のゲームセンターのような感覚ですね。
(スライド14)これは郊外の方なんですけども、競馬場に並置したカジノというやつなんです。
(スライド15)アトランティック・シティだけじゃなくて、今アメリカのあちこちで、カジノに依存したまちづくりが破綻をしていて、推進派の方の成功モデルとしていつも言っているミシシッピー州のトュニカという町、「トュニカの奇跡」というふうによく彼らは言ってたんだけども、これも今年の6月に一番大きなカジノが潰れまして、地元紙は「トュニカの奇跡」は終わったと書いております。
なぜIR型カジノはうまくいかなかったのか
(スライド16)じゃ、なぜこういうIR型カジノはうまくいかなかったのかということですね。推進派の方は、日本で賭博を合法化すれば、この規制緩和で毎年400億ドルの儲けが生まれる巨大市場が生まれて、たとえばそこからのゲーム機器の注文であるとか、建設需要であるとか、雇用であるとか、税収であるとか、経済的波及効果は大きいんだと。カジノというエンターテイメントが生まれると、世界中から観光客が集まるんだと。この経済的メリットが明らかだから、コストが発生するのはわかっているけども、それを最小化して進めるのが経済的に賢い人間のやることですよというわけですね。
本当にそうなんでしょうかということなんですけども、先ほども言いましたように、カジノの400億ドルの儲けってどこから来るんですかといえば、結局お客さんが負けたお金なわけですね。そうすると、カジノの儲けというのは、たとえば地域のお客さんが、本来他で使うはずだったお金をカジノで散財して、その結果自分の生活をがまんしてみたいな話になるわけですから。アメリカでは「カニバリゼーション」という言葉を使っているんですけども、「共食い」っていうんです。要するに、カジノの繁栄は周りの地域を衰退させた結果じゃないかと。だから、カジノで雇用が生まれるといっても、周りの地域で失業者が生まれる。カジノで税収が生まれるといっても、周りで商業売り上げが落ち込むから、消費税が落ち込んで税収が落ち込んで、それを差し引きすれば、結局ゼロじゃないかという話なんですね。
そういった意味では、カジノ産業がいかに儲かるかということだけをみて、カジノはいいなって言ってちゃダメでして、その裏側、経済的な負の側面もしっかり評価をして、どうなんだということを評価しなければならないし。
そもそも人間の社会の営みというのは全てお金で換算できるものなんですかという話ですね。家族の絆であるとかというものはお金では換算できないわけです。いわば人を不幸にする、いろんな家庭を破壊することによって成り立つような産業で、経済的繁栄というのを享受していいのかということも問われるわけです
(スライド17)その中身を、一つひとつ少し話をしていきたいんですが。
最初に基本的なことを確認しますと、カジノの経済的影響を、マサチューセッツ州の報告書はこういうふうに整理をしています。
ひとつは、地域の外からカジノ客をどれぐらい獲得できるかということ。日本と置き換えれば、海外からどれぐらいギャンブラーを獲得できるか。これはプラスですよと。
もうひとつは、元々マサチューセッツの州民がマサチューセッツ州にはカジノがないので、隣の州のカジノに行ってお金を使ってたと。その隣の州で落としていたお金をマサチューセッツ州で落としてくれれば、お金を取り戻したかたちになるので、それもプラスでしょうと。
もうひとつは、先ほど言ったカニバリゼーションということで、結局マサチューセッツ州の中の州民がギャンブルで負けるということは、州としてはゼロサムで、何のプラス効果もないですよと。
日本で置き換えるとどういうことになるんですかと。海外に流出している日本のギャンブラーが戻ってくればプラスじゃないかっていうことですね。日本の富裕層でお金の使いみちに困って、韓国のパラダイスなんかに行って落とす人もいるかもしれませんが、突き詰めていえば、1%のお金持ちの道楽のために、日本の法律を変えて、99%の国民が犠牲になるような制度改正していいのですかという話になるかなと思います。
あとは、海外のギャンブラーがどれぐらい日本に来るの。輸出産業としてカジノというのがどれぐらい役に立つのかという話なんですけども、これはあとでお話をします。
あと、悩ましいのは、横浜市、今日ちょっと早めに来て、山下ふ頭とかあのあたり歩いてみましたけども、私や投資家からみるとおいしいですね。東京とか近郊から日帰りでたくさんの人が遊びに来てくれそうな、いい場所ですね。だから、カジノで投資して儲けようと思う人からみると、とってもおいしい。もしかすると、横浜市というのは、カニバリゼーションという意味では、食べる側にまわれるかもしれない。それは、あとでちょっと、本当にそうなのというお話をします。
(スライド18)それで、ちょっと時間もありませんので駆け足でいきますけども、IR型カジノがなぜうまくいかないんですか。IR型カジノの中核はギャンブルで稼ぐことです。そのギャンブルはどこでも同じギャンブルです。じゃ、お客の獲得競争は、お客さんに対してどれぐらいサービスするかの競争になってしまいますよと。どれぐらいギャンブルでお金をかけてくれたかでポイントをあげて、そのポイントを使って宿泊とか飲食であるとかエンターテイメントであるとかいろんなところが格安で使えますよと。アトランティック・シティの場合は、ホテル代収入の半分、飲食費の半分がこういうサービスで使われています。
(スライド19)たとえば、アトランティック・シティで今一番お客が入っているといわれているボルゴダというカジノホテル、これも典型的なIR型カジノなんですけども。カジノで6億ドル儲けているんですけども、2億ドルをコンプといわれるサービスに使っています。このサービスで延べ1154万人に対して、部屋代サービス、食事サービス、飲み物サービス、ゲーム代サービス、キャッシュバック、エンターテイメントサービス、買い物のサービスで、使っているんです。だから、これだけお金を使ってお客さんを集めて、とにかくギャンブルで遊んできてくださいと。じゃあ、これで黒字になっているかというと、そうじゃなくて、最終的な利益は赤字なんです。
なぜかというと、やっぱり投資が過大です。設備投資の回収、借金の金利支払い、経費がかかるので、アトランティック・シティで一番お客が入っているカジノホテルですら赤字なんです。
実はラスベガス、ストリップ地区43カジノがあるんですけども、ここもトータルすると、昨年大幅な赤字なんです。IRというのは、固定経費、経費がかかります。それを賄おうと思ったら、本当にたくさんのギャンブラーが右上がりで殺到してくれないと続かないビジネスモデル。これが今、アメリカで破綻をしているということなんです
(スライド20)さらに、カジノができると共食いで周りから購買力を吸収するので、周りで商業売り上げが落ちます。シカゴ、イリノイ州で、シカゴの近辺でカジノができたら、カジノで1000ドル売り上げが伸びたら周りの地域でどれぐらい売り上げが落ちたかというのをプリノールという研究者が実証研究で調べたらというのが、右上です。
(スライド21)それから、最近見つけたのは、アイオワ州でもカジノのある町とない町を比較をしたら、はっきりとカジノのある町の商業売り上げは停滞をしていると。売り上げがマイナスになっているという結果が出ましたよということです。
お客が必ず負ける仕組みのカジノ
(スライド22)それから、カジノっていうのは、お客さんが必ず負ける仕組みになっています。中条さんという推進派の方が「日本カジノ戦略」という本の中で、「ギャンブルに参加する人は『勝ってお金を儲ける』ことを目的とするにもかかわらず、結果的にほぼ確実に『お金を失ってしまう』という矛盾する現実を体験する」と。矛盾でも何でもなくて、必ず儲かるように設定されている商品なんです。
(スライド23)それはなぜかといいますと、ハウス・エッジというんですけども、お客さんが勝った時でも、カジノ側、胴元側が天引きするんですね。だから、賭けを繰り返せば繰り返すほど、勝っているのにお客さんの手元の資金がなくなっていくんです。とにかく、お客さんは必ず負けるようになっていると。
(スライド24)でも、それは集団としてのギャンブラーであって、勝つ人間いるんじゃないですかと。そういうデータを企業は持っているですけども、公開しない。ウォール・ストリートがあるオンラインカジノの企業がそういうデータを公開したのが出ていると報道しているんですけども、やはりギャンブル、ほとんどのお客さん負けてます。賭けを続ければ続けるほど、勝ち続けれるお客さんがいなくなります。
先ほど野末先生のお話で、ギャンブル、学生からですと言いました。私のゼミでもギャンブラーが2人ぐらいいまして、先日飲みながら話をしますと、やっぱりどちらも赤字です。ひとりはトータル100万円ぐらい負けてますという話でしたが。
そうすると、勝って終わる唯一の方法は、運良く大勝した瞬間にすっぱりやめることなんです。でも、すっぱりやめられるとカジノ企業側は困るので、もう一回勝てるよと夢を持たせて、とにかく続けさせる。この続けさせることに、その企業としてのノウハウ全てを凝縮してがんばるわけです。
そうすると、結局カジノというのは、ギャンブルというのは、ほとんどのお客さんを負けさせて貧乏にさせて成り立っている産業。けっして地域社会を豊かにする産業じゃないんですよという話です。
カジノは地方財政プラスになるのか
(スライド25)それから、地方財政プラスになるんですかという話で、アメリカで有名な推進派のウォーカーという先生が、ある小さな市レベルでカジノができると財政にプラス効果が出たという結果が出たモデル、このモデルを州全体に拡張して、全米の50州に全部やってみたと。そうすると、彼は本の中で、サプライズという言葉を盛んに繰り返すんだけれども、びっくりしたけれども逆の結果が出ちゃったよと。つまり、州レベルではマイナスになっちゃったよと。なぜかといえば、カジノのところで税金は増えるんだけども、商業売り上げが落ちて消費税が落ちた。それから、ほかの公営ギャンブル、宝くじなんかとかほかのギャンブルからの税収が落ちちゃう。結局マイナスになっちゃうよと。
(スライド26)最近では、ニューハンプシャー州が、今年カジノ法案を否決したんです。否決する前に、州が調査委員会を立ち上げて、かなりしっかりした調査をやりました。そうすると、ある州、地区ではカジノの税収の一方で、宝くじなんかのほかのギャンブルの税収が減っちゃうしということ、それからギャンブル依存症が増えて、社会的コストが増えちゃってということで、右側の北部の地区ですけども、この地区では州財政ではマイナスになっちゃったよと。
それから、カジノの雇用というところをみてください。カジノで3000人ぐらい雇用が増えるんだけども、カジノのおかげで周りのビジネスが潰れちゃうんで、新しく、たとえば北部であれば2215人失業者が生まれちゃうよという話なんですね。
(スライド27)それから、雇用は増えるといいますね。でも、アメリカの場合は典型的なワーキング・プアなんです。ディーラー、花形職種といわれてますけども、アメリカ、これはシンガポールでもそうなんですけども、カジノの払う賃金は最低賃金なんです。あとはチップで稼いでくださいということなんです。アメリカの場合は、半分以上チップが占めたとしても、ディーラーの平均所得は3万4000ドルなんです。他の窓口係とか両替係は2万ドルちょっとなんです。
つい先日、ニューヨークタイムスが書いてますけども、「カジノの雇用はミドルクラスの道は開かない」と。要するに、ワーキング・プア生産工場であるということなんです。じゃ、日本でできた場合、雇用は増える、その雇用のほとんどは不安定雇用、ワーキング・プアですよと。
さらに、どれぐらい日本人雇うんでしょうね。中国人ターゲットなのに、中国語しゃべれない人がディーラー務まらないですね。そうすると、TPPなんか利用して、外から安い労働力わーっと連れてくるんじゃないかなと思います。だから、雇用は増えるというのも、そんなに手放しで喜べない問題です。
(スライド28)一方で、今お話しましたように、カジノというのはマクロ経済レベルではプラス効果がない、意味のある経済的な富は生み出さない、一方できわめて有害な商品です。ギャンブル依存症というものをつくりだしていきます。その結果、犯罪が増える、失業する、自己破産をする、うつとか自らの健康を破壊をしてしまう、家庭が崩壊してしまうというかたちで、諸々いろんな社会的コストが発生をすると。そうすると、冒頭の林市長の話というのは、本当になんていうか、お笑いみたいな話ですね。
一方で、カジノをつくることによって、たぶん大学に行けなくなった子どもたちがたくさん生まれるとか、病気になる人がたくさん生まれるよとか、一方でつくりだしながら、そこに回すお金、なんかマッチポンプの典型みたいな話になるわけですけども。
とにかくこういう諸々の社会的な費用がかなりかかるというのがはっきりしてます。これ、どれくらいかかるのか、しっかりとした評価をしなければ、社会全体としてプラスになるのかという結論は出せないわけです。
カジノで観光客が来るのか
(スライド29)それから、IR型カジノをつくると本当に観光客が来るの。シンガポールは確かに2009年900万人台から昨年1500万人台に増えました。右隅の方は、観光客の目的はIRを目的にした客がたくさんいますよと。右下は、そういう観光客が落としたエンターテイメントの支出が非常に増えてますよと。これだけみたら、シンガポールはIRができて、ハッピーハッピーという話なんですが。
(スライド30)実は、カジノそのものの収益は落ちているんです。おかしいでしょ。カジノのお金で観光客が殺到しているんだったら、カジノの収益が同じように伸びてないとおかしいんだけども、カジノの収益は逆に落ちています。
そうすると、カジノを目当てにして来る人と、そうじゃない客層ではっきり分かれている。マリーナベイ・サンズのホテルのロビーをうろつきましたけども、カジノで遊んでる客層と、ホテルのロビーうろついている客層は全く違ってましたね。全くたぶん客層が違うんだろうと思います。そういった意味では、カジノをつくればお客が殺到するということじゃない。でも、そのお客は、中国からの団体客です。中国のVIPです。
(スライド31)じゃあ、その中国のVIPが本当に日本に来てくれるの。本当に東京、大阪でつくると、12か所つくると400億ドルの儲けが生まれる市場ができるのと。こんな景気のいい話になるのと。天からお金が降ってくるだけれども、たぶんその上の人っていうのは庶民、高齢者のポケットからどんどん落ちてるだろうなっていうふうに思いますけども。
(スライド32)ゴールドマン・サックスも、東京、大阪でつくると1兆5000億ドルぐらいの儲けが生まれて、3割ぐらいは外国客が占めてくれるよといっているんですが、本当にそうなのか。
(スライド33)つい先日、日本のセガサミーが韓国のパラダイスという資本と一緒に仁川(インチョン)空港の近くにIR型カジノの建設を始めたと報道されました。それから、アメリカのシーザーズというカジノがやっぱり仁川空港の近くにIR型カジノをつくるライセンス、許可を今年の3月にとってます。それから、ゲンティン、シンガポールのリゾート・ワールド・セントーサをつくっているマレーシアのゲンティンが、やはり済州島チェジュドにIRをつくるということで建設計画を進めています。台湾も、離島ですけども、大陸側の離島にIR型のカジノをつくるということで計画を進めています。韓国の場合は2018年の冬季オリンピック目当てです。
そうすると、2020年に日本がIR型カジノができました、その頃はアジアのカジノ市場は過当競争になっています。後からのこのこと乗り込んでいって、中国のVIPがわざわざ日本の一番遠い所に来てくれるでしょうか、こんな仲の悪い国にという話になるわけです。
推進派の方は、日本ではカジノの数を限定しているから過当競争にならないんだというんだけども、一番肝心の中国人のVIPは過当競争です。そうすると、日本人のポケット、高齢者のポケット狙いにしかならない。じゃあ、ほとんど日本人のお客さんだったら、日本全体としては共食いでしょうと。地域間格差、一極集中を拡大するだけじゃないですかという話です。
(スライド34)儲けたお金は、たとえばカジノ企業ががっぽり外に持ち出していきますよと。
横浜のカジノができたらどうなるか
(スライド35)時間がちょっとないですけども、横浜のカジノができたらどうなるんでしょうか。カジノをつくると50億ドルとか100億ドルとか投資が巨大ですよと。景気がいいねと喜んでちゃダメです。つまり、100億ドルを投資するということは、その100億ドルを3年から4年で回収をして、かつ、かなりの利益率を出すということなんです。つまり、投資規模が大きければ大きいほど、容赦なくギャンブルで儲けるということなんです。じゃあ、電車を通す費用をカジノ事業に持たせる。じゃ、その費用を結局日本人のポケットから持ってきますよという話なんです。それだけギャンブルで容赦なく儲ける圧力が大きいのがIR型カジノです。
ヨーロッパのようなちっちゃい店でちまちまとやっているわけじゃないんです。ヨーロッパのカジノは、会員制で営業時間、決まってますよね。だいたい昼の2時から明け方の6時とか、アメリカのようにコンプといわれるようなサービス合戦しません。ところが、アメリカの商業型カジノは営利目的ですから、24時間365日永遠とやります。
そうすると、たとえば横浜にできました、100億ドル儲けないと回収できませんよといった時に、どれぐらいのお客さんが必要かといったら、10万円負けてくれる人が1000万人必要なんですよ。じゃ、この1000万人どこから確保しますか。大阪、地方都市でできました。じゃ、横浜近郊でといったときに、かなりの市民がカジノに来てお金を落とすと。じゃ、この10年間で、関内の商業売り上げが半分に落ちたといってますけども、盛り返すんじゃなくて拍車をかけるんじゃないでしょうか。
(スライド36)それから、カジノができると、犯罪増えます。推進派の方は、犯罪増えても、訪れる観光客数が多いんだから、観光客数を母数にすると犯罪発生率は別に増えてないよといいます。でも問題は、この横浜市の、たとえば山下ふ頭のエリアで犯罪がどれぐらい増えたかですよね。このエリアで犯罪が増えたら、ここは犯罪が多い地域ということで、観光都市のブランド力が落ちちゃうわけですよ。そんな観光客数を母数にして、犯罪率増えてないよと言ったって、こんなのはただの屁理屈でして、カジノができて、犯罪率が増えれば観光都市としての横浜のブランド力はたぶん落ちちゃうでしょうという話です。
(スライド37)ともかくも、このカジノのギャンブルというのは、他のギャンブルとくらべてギャンブル依存症、ものすごいつくるものですよという話で。
(スライド39)これについてはシンガポールでもうまくいっていません。どんどんどんどん自分でコントロールできない。お父さん入れないでくれっていう家族申告、自分ではどうしようもないのでもう入れてくれるなっていう自己申告の数がどんどん増えていますということです。
カジノに地域社会の未来を託せるのか
(スライド40)従って、こういうカジノに地域社会の未来を託せるのかということです。一旦、ギャンブル税収に地方自治体が依存をすると、この税収が落ちるとますますギャンブルを拡大していくかたちで税収を確保しようとします。これ、アメリカでもうどんどん起きています。
そうすると、自治体が市民の生活と健康を守るんじゃなくて、市民をギャンブル依存症にして、その生活を破壊する、推進する側になっちゃうという話になってしまいます。実際、そのギャンブル産業があんまり長続きしない産業ですから、衰退した時にその財政に対する破滅的なダメージも大きいよと。アトランティック・シティの場合なんですけども、ギャンブルからの税収が5億ドルから2億ドルに落ちて、一般予算から補てんをして、それでもどうしようもなくなって、いままでそれで賄っていた医療関係の予算をばっさばっさ削らざるをえなくなっているという状況です。
従って、こういうギャンブル産業に地域社会の未来を託すというのは、それこそギャンブルですよということで、すいません。オーバーしましたけど、話を終わらせていただきます。