2014年12月25日
横浜市長 林 文子様
日本共産党横浜市会議員団
団 長 大 貫 憲 夫
現在、本市では、都市づくりの基本的考え方である「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針等」(整開保)と「線引き」の2016年度中の見直しに向けて検討が行われています。
私たちが、最も注目する点は、この見直しによって、現行の横浜市都市計画マスタープランで掲げられている「市街地の拡大を抑制」という基本方針が後退しないかという点です。これまで市街化調整区域として、都市に潤いを与える貴重な緑地として保全されているところが、市街化区域となって開発されてしまうのではないかという点です。
マスタープランは、「将来の人口減少はさけて通れないため、本格的な人口減少社会の到来時には、都市経営上の観点から、人口減少分に応じた市街地の縮退が必要です。このため、今の時点から、将来の市街地の縮退を想定した取組に着手します」と、市街地のコンパクト化の考え方のところで明言しています。横浜市の将来人口の推計値では、今回の見直しの目標年次としている2025年は371万8000人、5年後の2030年は368万1000人です。2020年を頂点して、横浜市は人口減少の一途をたどるという予測です。今後は人口減少に即して市街地の縮減が求められているのに、希少価値となっている緑地を削って、余っている市街地をさらに広げる必要性は総論としては皆無です。
今回の線引き見直し案は、市街化調整区域から市街化区域の編入について、「編入を行う必要がある区域」「編入を行うことが望ましい区域」「編入が考えられる区域」と、三つの基準を示し、それぞれの内容を説明しています。「編入が考えられる区域」として、「周辺の市街化の動向、骨格的なインフラの整備状況等を勘案しつつ、地域コミュニティの維持、地域の再生や改善などを目的に住民主体のまちづくりを検討し、合意形成が図られた区域等」と明示されています。また、見直し案では、線引きの随時見直しとして、「人口や産業の推計から、目標年次において必要とされる市街地の面積(フレーム)の一部を保留する制度を活用し、計画的な市街地整備の具体化に合わせて、随時線引きの見直しを行うことができる」としています。
この二か所の規定が、緑地破壊につながる大規模開発を誘導するツールとなる恐れがあります。特に、合意形成された住民主体のまちづくり区域という市街化区域編入の条件づけは、地権者の合意によって、市街化調整区域であっても、住宅地、商業地として開発できるというものです。これは、「市街地拡大の抑制、市街地縮退」を方針に掲げる現行のマスタープランに反していることは明白です。
地権者の合意による住民主体のまちづくりといえば、栄区における東急建設による上郷開発計画(市街化調整区域12.5haを市街化区域に編入し宅地開発)は、外形上は、住民主体のまちづくりであり、地権者の合意を踏まえています。結果として、この規定は、東急建設側の意向にそったものとの批判はまぬがれません。また、整開保での戦略的・計画的な土地利用の具体的な方策として「鉄道駅周辺は、そのポテンシャルを発揮できるよう、計画的にまちづくりを行う」とありますが、この記述も、JR港南台駅からの約1㎞の徒歩圏に含まれ、利便性の高い地区と開発の正当性を主張する東急建設を利する恐れがあります。
横浜市は、高度成長期に多くの自然の破壊と引き換えに発展した大都市です。その結果、特に旧市街地の市民は、少ない公園面積や低い緑被率という劣悪な環境を余儀なくされています。すでに西南部郊外では人口減が進み、空き家対策が新たな課題となっています。人口減少で生み出される空間的なゆとりは、自然環境の再生にあてるべきです。既存の緑の破壊は極力避けなくてはなりません。
以上述べてきたように今回の見直し案には、本来求められる横浜市のあり方から見て、重大な問題点があり、下記の通り、修正を求めます。
記
1.整開保、線引きの見直しの基本的考え方に、「市街化抑制」を明記すること。
1.市街化調整区域内に立地する鉄道駅周辺のまちづくりは、基本的に鉄道駅に接する土地に限定すること。
1.「周辺の市街化の動向、骨格的なインフラの整備状況等を勘案しつつ、地域コニュニティの維持、地域の再生や改善などを目的に住民主体のまちづくりを検討し、合意形成が図られた区域等」の規定は、塩づけ状態のある開発予定地など市街化調整区域の大規模開発を誘発する恐れがあり、削除すること。
以上