2008年9月2日
日本共産党横浜市議団
団 長 大貫 憲夫
国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第4次評価報告書は、「気候システムの温暖化には疑う余地がない」とし、その原因は「人為起源の温室効果ガスの大気中濃度の増加によってもたらされた可能性がかなり高い」としています。IPCC報告書の作成にたずさわった日本の科学者からの国民への緊急メッセージでは、「このままの排出が続けば、人類の生存基盤である地球環境に多大な影響を与えることも明白」と警告を発し、「子どもたちの未来を守るため、今こそ行動を開始すべき時」として「気候の安定化に向けて直ちに行動を!」と呼びかけています。
横浜市では、地球温暖化問題を人類共通の課題ととらえ、横浜市として率先して温室効果ガスの削減に強力に取り組む必要があるとして、「横浜市脱温暖化行動方針(CO-DO30)」を策定しました。また、温室効果ガスの排出量が相当程度多い事業所に対して地球温暖化対策計画の提出を義務付け、公表しました。日本共産党は、これらについては評価するところです。CO-DO30のすべてが実現すれば、温室効果ガスの排出量をかなり削減できるものと思われます。
しかし、この方針を実効あるものとするためには、次の視点が不足しているものと考えます。
1.IPCC報告書は、気候上昇を2度以内に抑えるためには、世界の温室効果ガスの総排出量を先進国では1990年比で2050年までに80%以上、2020年までに25~40%削減することを強調しています。
CO-DO30では、1人当たりの温室効果ガス排出量の削減目標を2004年度比で2025年度までに30%以上(1990年度比で24%)、2050年度までに60%以上(同56%)に定めていますが、IPCC報告書の警告に従って少なくとも2020年度までに1990年度比で30%以上にすべきです。
2.横浜市は、地球温暖化対策事業本部を立ち上げましたが、今年度予算は2億9580万円、職員は33人で、職員が一生懸命取り組もうとしてもその体制が薄く、取組計画が「絵に描いた餅」になりかねません。地球温暖化対策事業本部には、実効性ある予算と体制、権限を付与すべきです。
3.方針推進のカギは、市内事業者と市民が、地球温暖化を自らの問題として正しくとらえ、何をすべきか自主的に考え、行動することだと考えます。
G30によりごみを30%減少させた実績を持つ横浜市民は、CO-DO30についても目標を達成する十分な能力を備えています。市民はもとより事業者に対して、地球温暖化が及ぼす影響とその対策による効果などについて、あらゆる機会を利用して啓発を行うことが重要であり、市職員すべてが公私ともに脱温暖化行動のよき手本となるべきです。
4.英産業連盟は、「気候変動に対する強固かつ早期の対策を行うことによる便益は、そのコストを上回る」(スターン報告)の立場で、気候変動問題の解決を新たなビジネスチャンスととらえ、「長期的利益」を重視しています。
横浜市における温室効果ガスの総排出量の約7割は、産業・業務部門によるものです。最重要課題である事業者からの温室効果ガスの削減を進めるために、地球温暖化対策計画の提出事業者を拡大するとともに、これらの事業者に温室効果ガス排出量の削減義務を課し、排出量取引制度を導入すべきです。合わせて、経営規模の小さい事業所に対して、財政的補助も含めて脱温暖化対策のサポートを強化する必要があります。
5.自然エネルギーの普及も重要です。CO-DO30では、「公共施設等への再生可能エネルギーの公民協働での導入の推進」を掲げていますが、区役所、学校、地区センターなど市が管理する施設に自然エネルギーを導入することを最優先課題と位置づけ、市自らが率先して温室効果ガスを削減することが、大きな啓発効果をうみだします。
また、CO-DO30では再生可能エネルギーの拡大目標を現在の10倍(削減量204万t-CO2)と定めていますが、EUが2020年までに一次エネルギーの20%を自然エネルギーでまかなう目標を決定したのにならい、20倍に増やすべきです。
6.脱温暖化に向けて、温室効果ガスの排出量を減らすと同時に、森林の保護も重要です。「横浜みどりアップ計画(新規・拡充施策)」(素案)にあるように、市民生活の身近な場所に残された、まとまった規模の貴重な緑を少なくともこれ以上減らさないことも最重点課題です。
市都市計画提案評価委員会が上郷開発に対して「都市計画の決定または変更する必要はない」との判断を下したことは、将来的に横浜の緑を守っていくことに大きな意義をもつものです。
さらに、住宅開発に対する規制を強め、農地や樹林地を守るための努力が求められます。なお、緑の保全・創造を理由とした「新税の創設」については、市民合意なしの強行は認められません。
7.温室効果ガス排出原因の多くの割合を占める自動車交通を削減するため、横浜都市交通計画を見直し、自動車総量を削減するため高速道路建設は中止し、生活道路の整備を優先すべきです。
同時に、車に頼らずに不便なく生活できるよう、バス・電車・地下鉄・LRT(軽量軌道交通)などの公共交通の整備を急ぐことが不可欠であり、市バス路線の削減・減便などもってのほかであることはいうまでもありません。
日本共産党は、今年6月「地球温暖化の抑制に、日本はどのようにして国際的責任をはたすべきか」との見解を発表しました。この見解では、地球温暖化抑止を一刻の猶予も許されない人類的課題ととらえ、わが国が実効ある対策を早急に確立し、それをただちに軌道に乗せて国際的責任をはたすよう、1.温室効果ガス削減の中期目標を明確にする、2.最大の排出源である産業界の実質的な削減を実現する、3.エネルギー政策の重点を自然エネルギーの開発・利用へ転換する、の3つを強く求めています。
日本共産党横浜市議団は、CO-DO30 を実効性あるものにするために横浜市、事業者、市民の責務を定めた条例を早急に定めることを求めるとともに、地球温暖化を食い止めるために、横浜の市民、事業者、行政と力を合わせて、全力を尽くします。