議会での質問・討論(詳細)
2012年9月19日

■「議案等反対討論」 古谷やすひこ議員(2012.9.19)

 私は、日本共産党を代表して、今定例会に上程されています2つの議案と2つの請願の不採択、一つの請願の採択に反対し、討論をいたします。

「できる」からと安易に市民税を増やす条例改正には反対

 はじめに、市第35号議案「横浜市市税条例等の一部改正」についてです。これは、「全国的に、かつ、緊急に地方公共団体が実施する防災のための施策を実施する場合」、地方税法の特例として市民に一律500円の負担を課すということが「できる」という昨年成立した復興財源法に基づくものであります。
 今回、国による法律ができても、あくまでも地方自治体の判断で、市民に増税を課すか課さないかは選択ができる規定であります。これだけの長引く不況の中、市民の生活実態、たいへん厳しいものがあります。その中で市民負担を課すことを選択したことは、とうてい市民理解が得られるものではありません。
 そもそも、今回の増税については、「全国的に、かつ、緊急に地方公共団体が実施する防災のための施策」と規定されています。しかし、全国的な施策が必要であるならば国がしっかり責任を持つべきでありますし、財政力の弱い地方自治体において防災対策を強化できる裏付けは国の財政的な支援が必要だと考えます。その責任を果たさずに国民に負担させることは認められません。
 今回の増税にあたって、「防災のための施策」といいながら、その対象とされている整備メニューは従来から出されていたものの域をでていないものにもかかわらず、なぜ増税を押し付けるのでしょうか。かりに、これから防災対策でたくさんのお金がかかるんだということを見越しているのだとしても、使途も明確になっていないものに対して、増税を認めるわけにはいきません。そもそも防災震災対策は、「住民の命と安全を守る」という地方自治体としての基本的な仕事であるはずです。あらたな税金を取らなければやることができないという事業ではありません。
 さらに、増税の方法も、所得に関係なく、納税者に均等に負担を求めるのは、低所得者にとってはきわめて不公平なやり方です。税の基本は、能力に応じて支払うという応能負担が基本のはずであります。
 したがって、厳しい市民生活の実態の中、「徴収することができる」からといって安易に増税するような条例改正には反対します。加えて、あれだけ議案関連質問でも各党派から市民負担増についての異議が出され、また常任委員会の議論の中でも異議が出され、付帯決議まで出されたようでありますが、これで議論は尽くしたとして市民負担を押し付けることを決めてしまうことは、到底市民の理解が得られるものではありません。

子どもたちのためにも高速道路建設はもうやめよう

 続いて、市第51号議案「平成24年度横浜市一般会計補正予算」のうち横浜環状北西線について、また請願第15号「横浜環状道路の整備促進等に関する意見書の提出方について」の委員会の採択についてです。
 私は、これからの子どもたちやそれに続く未来の横浜を担うすべての人のために、北西線をはじめ横浜環状道路計画を促進させることには反対します。今回の予算を認めることは、今後、市費負担分の650億円もの借金を次の世代に背負わせることをよしとするものです。
 右肩上がりの経済成長が続いて、人口もまた右肩上がりで増え続け、相応のインフラ整備が必要な時代もあったかと思います。しかしみなさん、今はそんな時代ではありません。また、これからの横浜が人口減少する社会になることは、当局の方々も市長もそしてここにいる会派のみなさんも、もはや共通の認識になっているのではないでしょうか。人口が減ることが明らかであるのに、車の台数だけは増え続けるとでもいうのでしょうか。そんな中、高速道路を作り続け、さらに横浜の子どもたちの世代に借金を押し付けることは許されることではありません。
 3・11を受けて、あらためて市民の命を守るという防災対策が、これほど求められているときはありません。いざという時の緊急道路の確保の問題や、市で管理している1700の橋のうち64%が耐震診断すらできていない現状です。まったく対策がたてられていません。
 9月6日のわが党の荒木議員の質問に、林市長は「高速道路ネットワークは、大規模災害が発生した際に緊急車両の通行や物資の輸送に大きな役割を果たすことから、災害対策の観点においても不可欠」であるとお答えになっています。しかしよく考えてみてください。新たな高速道路ネットワークをどんどん作っても、それにつながる市内幹線道路の耐震対策ができていなければ、意味がありません。
 高速道路に出すお金があるのであれば、木造密集地の市街地の解消、緊急輸送道路の整備、橋の耐震診断・補強など、地震が起きても災害を出さない街づくり、「市民の命を守る、壊れない街づくり」のために、予算を早急につけて実施することの方が、はるかに市民の命を守る横浜市の姿勢が明確になります。
 その上、こういった身近な公共事業は、地元中小企業の振興にも直接的に役立ち、一石二鳥であります。高速道路では中小企業への経済波及効果は期待できないことは、昨年度の決算の中でも明らかであります。横浜市が支出している国等が実施する発注額総計約1080億円のうち。市内企業が受注しているのはたった約37億円、全体の29分の1にすぎません。市内企業の受注額の低さは、横浜環状道路のような大規模事業が本市企業・経済にはほとんど寄与していないということはこれで明らかであります。中小企業振興基本条例の精神にも明確に反するということをどうお考えになるのでしょうか。
 これは、お金の使い方の優先順位の問題であります。これから10年にわたって、必要性が定かでない高速道路を選択するのか、それとも市民の命を直接的に守るための、より身近な市内幹線道路などを整備することを選択するのか。私たち日本共産党は、未来の子どもたちに責任を負うべき横浜市議会として、後者を選択し、住民の命と暮らしをしっかりと守りきる立場を呼びかけます。

最低限度の市民生活を切り下げないよう意見を述べるのは当然

 続いて、請願第16号「生活保護基準の引き下げ等の制度の改悪をしないように国への意見書を求める請願」の委員会の不採択についてです。
 生活保護基準の見直しは、単に保護を受けている人たちだけの問題ではなく、国民生活の最低保護基準にかかわる問題であり、生活保護受給者にとどまらず、国民健康保険料や介護保険料の減免の問題、生活福祉資金の貸付、就労援助など様々な制度利用の可否に影響し、最低賃金にも影響を及ぼす大きな問題です。こういう大問題が検討され市民にも多大な悪影響が出ようかというときに、本市議会としても、最低限度の市民生活を切り下げないよう、国に対して意見を述べるのは当然のことではないでしょうか。
 さらに、最近の生活保護制度への異常なバッシング報道の中、普段から肩身の狭い思いをされている生活保護受給者はますます肩身の狭い生活を強いられています。今年の6月に法律家が中心となって「生活保護“緊急”相談ダイヤル」が実施されました。その中では、わずか9時間の間で全国から363件もの相談が寄せられています。寄せられた声の中には、「現在は病気で働けず生活保護で暮らしているが、周囲の人には知られないよう、毎朝ビジネスバックをもって出勤するふりをしている。話せる人がいない。今回の報道以来、声が出なくなり夜も眠れない」、あるいは「近所の人に、『受給者はクズ』だと言われた。お金のない人は死ぬしかないのか」と、切実な声が寄せられています。
 もともと生活保護受給者の中には精神的な疾患を抱えている方もたいへん多く、生活保護受給者の自殺率は一般の方の約2倍にのぼっています。今の報道被害ともいえる状況を放置しておけば自殺者が急増するような事態になりかねません。全体の自殺者数もここ数年3万人をくだることはありません。つまり、この日本で20分間に一人が自ら命を絶つという状態です。
 そもそも生活保護受給者が増えているのは、日本の医療や年金などの社会保障制度があまりにも貧しい制度になってしまったためであります。真面目に国民年金を支払い続けた自営業者の方が仕事ができなくなったときに、とうてい生活できないほど低い受給額しかもらえないことは、自営業者の方の責任ではありません。また、フルタイムで働いてもまともに生活ができないのは、低い最低賃金が問題なのです。こういった問題をわきに置いて、生活保護受給者だけを絞るようなやり方は絶対に間違いです。こういった社会の仕組みを変えていくのが、私たち政治家の仕事ではないでしょうか。
 よって、本議会の総意として、あらためて請願の採択を訴えます。

アスベストの危険性を知りながら規制しなかった国の責任は重大

 最後に、請願第18号「建設アスベスト訴訟の早期解決を求める意見書の提出方等について」の委員会の不採択についてであります。
 国は2006年に「石綿の健康被害の救済に関する法律」を成立させました。この「石綿新法」は、国や石綿関連企業の責任を不問に付し、対象疾病を中皮腫と肺ガンに限定するとともに、救済給付金も極めて低額に抑えられております。非常に不十分な救済制度となっております。そこで、アスベスト被害者の方々はいま裁判に立ち上がっています。
 今年5月に、横浜地裁で建設労働者や遺族87人が国・企業に対して約29億円の損害賠償を求めた集団訴訟の判決が出されましたが、その内容は国や企業の責任を免罪するものでした。今でもアスベストを吸った場所が明らかな工場労働者の場合、雇用主側に対して賠償を命じるのは定着しています。しかし、あちこちの現場を転々としている建設労働者の場合、特定の場所だけでアスベストを吸い込んだわけではないため、因果関係を明確にすることはたいへん難しい。これは当たり前ではないでしょうか。このことで、企業の集団責任を免罪してしまうのは誤りです。
 アスベストが発がん物質であり、危険だということが共通認識になったのは今から50年以上前になります。しかし、それにも関わらず使用が禁止されたのは2006年と、ほんの最近のことであります。
 今回、首都圏建設アスベスト訴訟の団長の平田さんは、中学卒業後、横浜の建設現場で約50年間左官業を続けてきた職人さんです。その方は、「いままで一生懸命仕事をした私たちの仲間は、アスベストの危険性を知らされずに害になるアスベストを吸わされてきた。国はそれを野放しにしてきた」とおっしゃっています。
 いま、この裁判に立ち上がっていらっしゃる原告の方々は東京・横浜を合わせて388人に及んでいます。そのうち、提訴以来50人を超える方々が次々と亡くなっています。混乱している国会の動向を見守っている時間はもうありません。国会議員もこの建設アスベスト訴訟の勝利の署名に対して、全政党の215人もの紹介議員・賛同議員となっています。県内の他の自治体でも、同様の請願、この間相次いで提出されています。各会派の立場の違いで否決する種類のものではありません。あらためて請願の採択を訴えて、討論を終えます。


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