◎実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように対応する質疑と答弁を交互に記載しました。
白井議員:私は、日本共産党を代表して、質問します。
人命被害ゼロ、中小企業の活性化、子ども施策を予算編成の優先課題に
はじめは、市長が示された「25年度予算編成スタートにあたっての市政運営の基本的な考え方」についてです。日本共産党市議団は、消費税率アップが実行されれば一層の落ち込みが懸念される経済状況の下、少子高齢社会への対応に迫られた情勢において、「市民の命とくらしを守る」という地方自治の精神を市政に反映するためには、これまでの延長線ではなく、3・11の教訓をしっかりと生かし、都市のあり方や都市の骨格そのものを変える発想の転換が必要だと申し入れを行いました。そのうち3点について伺います。
災害対策については、「防災・減災の取り組みを強化するため、防災計画を見直し、スピード感をもって対策を強化する」とされています。来年度を防災・減災のまちづくりに向け、第一歩を踏み出すとされていますが、市長は過日の本会議では、「大地震は大きな被害をもたらしますが、被害を軽減することは可能であるということが東日本大震災の一つの教訓でもあります」と答弁されています。人命被害ゼロを目標とし、壊れない都市を作るという災害予防対策の必要性の認識がうかがえません。防災計画見直しにあたって、災害発生時に市民の命は一人も失わない、人命被害は出さない、この決意を根本に据えた上での計画となるのか、大変不安です。予防重視に立った災害対策は緊急かつ最優先の課題として重点的にとり組むべきと考えますが、伺います。
また、経済・産業政策については、「都市の活力創出のためには、経済を元気にすることが必要です」とされています。そうであるならば、人や企業を外から呼び込むことで横浜経済を成長させるという外発的産業を中心とする政策は改めるべきです。本市経済発展の基礎は、市内中小企業が活性化する条件を整えることです。加えて、市民生活の安全安心を図ることです。市場(しじょう)と雇用を増やすために、中小企業振興基本条例に基づき、市民や市内中小事業者を拠り所として、日々の生業(なりわい)が活発になるような直接的な支援策に軸足を移すべきと考えますが、伺います。
本市の子ども・教育分野の遅れは深刻です。不登校やいじめ対応でも求められている30人学級に踏み出すことなく、全国で実施率80%となっている中学校給食も未実施、小児医療費助成は他都市が対象年齢を小学校卒業まで拡大している中で、やっと来月から小学1年生までに1歳引き上げるに留まり、図書館も区に1館のみです。これが横浜の現状です。恥ずかしくないのでしょうか。市長の認識がないことが問題です。「一人ひとりに応じたきめ細かな教育」を推進するというのであれば、実質その方向を担うのが、例えば先に挙げた項目です。他都市に大きく遅れた施策の実施に向け、大胆な発想と政策の転換を図るべきと考えますが、伺います。
林市長:白井議員のご質問にお答え申しあげます。
25年度予算編成スタートにあたっての市政運営の基本的な考え方について、ご質問いただきました。地震対策などの災害対策は重点的に取り組むべきとのことですが、施策推進方針には重要かつ優先度の高い施策を掲げており、災害対策についても25年度に重点的に取り組むべき課題として位置づけています。防災計画の見直しを踏まえ、建物の耐震化、津波対策などを進めるとともに、現在策定している地震に関する市民憲章を踏まえた自助・共助などの取り組みを浸透させることにより、災害に強いまちづくりを目指していきます。
経済政策に関する市民や市内中小事業者への支援策についてですが、施策推進の方針に中小企業支援の充実を位置づけており、市内経済を支える中小企業の経営基盤の強化に向け、金融支援や経営相談などの基礎的支援に引き続きしっかりと取り組みます。さらに、国際戦略総合特区のメリットの活用、健康・医療など成長分野への新規参入といった中小企業の経営革新を促進します。
一方で、将来の横浜経済の発展のためには外から活力を取り込み、それを市内中小企業の振興につなげることが不可欠であり、企業誘致や観光MICEの推進などにも力を入れていきます。
大胆な政策の転換を図るべきとのことですが、子育て支援の分野では、保育所待機児童解消という大胆な政策目標を掲げ、人や予算などの資源を集中投入し、解消まであと一歩までまいりました。教育分野では、いじめ・暴力行為などの諸課題に対応するため、新たに児童支援専任教諭を小学校140校に配置するなど、きめ細かな施策を推進しました。今後も現場の声や社会経済状況をしっかりと把握し、子どもの成長段階、家庭環境に応じた適切な支援策の充実に取り組んでいきます。
学校の耐震化や天井・照明器具などの点検の遅れは命の軽視
白井議員:次は、学校施設の整備についてです。
2002年から、文科省は学校施設の耐震状況について2階以上または200平方メートル以上を対象とし、毎年各教育委員会に報告を求めてきましたが、本市はわたり廊下などを報告対象から除外していました。2007年には、市として50平方メートル以上の施設を耐震補強の対象とするとされたにも関わらず、教育委員会による施設数調査が行われたのはやっと2011年でした。
このような経緯は、子どもたちには安心した施設で勉強してもらいましょうという施設整備にあたっての基本中の基本となる考え方がなく、子どもの命を守る視点がきわめて弱かったとしか思えません。教育委員会の根本的な姿勢が問われています。今後、施設などの教育条件整備に当たっては、何より子どもの命を守ることを第一義にすることを教訓とすべきですが、伺います。
学校施設は、災害時の避難所として位置付けられているところが多く、地域住民の利用もあります。3・11後、文科省では、天井や照明器具などの落下や転倒が想定される部分の耐震化にも重点が置かれ、点検が重視されています。本市では、校舎の落下物などの点検は、学校任せになっており、体育館の落下物などの点検は、業者委託で目視で行ってはいるものの、天井裏に入るような点検はされておらず、文科省が求める点検ができていません。ここでも人命軽視です。
私の息子が通う港北区内の中学校では、老朽化した屋上の柵が台風で危うく転倒・落下の危険があったことを校長先生から聞いています。すべての学校施設について、落下物・転倒物がないよう教育委員会が責任をもって、専門家による詳細点検をすべきと考えますが、伺います。
中学校プールの整備のあり方について、総務局が「新築や建て替えの際に、近隣の2校から3校のうち1校に屋内型プールを整備し、複数校で共同利用する拠点校方式を基本とし、モデル事業で検証していく」という今後の方向性を策定しました。教育的視点で判断すべき学校プールの設置を、行政改革の視点から論議すること自体問題です。
学校現場の先生から聞いているのは、限られた授業時間内に隣接の学校間を生徒が移動するのは無理であり、他校との生徒間のトラブルのもとになる懸念も大きいとのことです。また、ある小学校では、増築工事のために来年度は校庭のプールが使用できなくなるため、近接小学校のプールを借りて行き来しようかと検討したそうですが、子どもの移動は時間的にも安全上からも不可能と判断し、来年度はプール授業は実施しないことにしたと聞きました。
小学校の例がそのまま中学校にあてはまるわけではありませんが、どう考えても無理があります。この際、中学校プールを拠点校方式とすることは取りやめて、これまでのように各学校に整備するよう求めますが、教育長のお考えを伺います。
山田教育長:学校施設の整備について、ご質問をいただきました。
学校施設の整備につきまして本市では、渡り廊下なども含めて50平方メートル以上の建物を対象に、平成27年度までに完了するよう耐震対策を進めております。そのほか、学校の老朽対策などの施設整備についても、子どもの安全性を最優先に整備を進めてまいります。
非構造部材の詳細調査についてでございますが、学校施設の日常点検は学校が行いますが、学校からの要請により必要に応じて教育委員会が対応しております。なお、震災等の発災時に避難場所の中心となる体育館における天井や照明器具などの非構造部材の安全性については、専門家による調査を23年度に実施をしたところでございます。引き続き、学校施設の非構造部材の安全対策に努めてまいります。
中学校プールの拠点校方式による整備方針についてでございますが、中学校プールについては、新築や建て替えの際に、近隣の2校から3校のうち1校に屋内型のプールを整備しまして、複数校で共同利用する拠点校方式を基本とし、現在モデル事業で検証をいたしているところでございます。
神奈川県の補助金や県有施設の廃止などを中止するよう主張を
白井議員:次は、神奈川県緊急財政対策についてです。
黒岩知事は緊急財政対策本部において、「すべての市町村補助金・負担金について、その必要性や妥当性をゼロベースで検討し、『廃止』『削減』といった方向性とロードマップを明らかにし、その実現をめざす」としています。本市への県独自補助金は155億9300万円で、本市の小児医療費助成事業や重度障害者医療費援助事業も含まれていますが、現行水準を落とさないようにするにはどうするのか、危惧されます。県からの補助金がなくなった場合、本市へはどのような影響が考えられるのか、伺います。
県の検討事項には、補助金に限らず、県有施設など様々な項目が上がっています。既に市町村への説明が行われたと聞いています。市民負担増、サービス低下など横浜市民の生活に重大な影響が考えられます。県として意志決定される前に廃止・削減を中止するよう主張すべきと考えますが、伺います。
林市長:神奈川県緊急財政対策について、ご質問いただきました。
県の補助金がなくなった場合の本市への影響についてですが、現段階ではあくまでも調査会の中間意見を踏まえた県としての取り組みの方向性のみが示されており、具体的な内容は示されておりません。その上でということですが、県の財政状況が非常に厳しく、抜本的な見直しが必要であるということは理解しますが、財政状況が厳しいのは市町村も同じです。県と市の役割やこれまでの経緯などを含め慎重に検討してもらいたいと考えています。
県の検討事項に対して撤回すべきとのお考えについてですが、今回示されたものは県としての取り組みの方向性の段階であり、今後具体的な施設や補助金の見直しについての考え方が示された際には、本市への影響について精査した上で対応してまいります。
池子米軍住宅と上瀬谷・深谷施設返還は別々であることの確認を
白井議員:最後は、米軍基地にかかわる問題についてです。
8月16日、森本防衛大臣による上瀬谷通信施設・深谷通信所視察に市長が同行された際、大臣が「池子地区の住宅建設の進捗状況も見ながら、早期返還の実現に向けて努力したい」と述べられたと聞いています。2004年の日米合意文書では、池子住宅建設と上瀬谷・深谷施設返還は別々のものであることは明らかです。8月27日、私ども日本共産党が独自に行った防衛省への申し入れでは、池子住宅建設と上瀬谷・深谷返還は関連していないと説明されました。
市長自ら大臣の発言を聞かれたわけですから、修正を求めて別々の件であることを確認し、遊休状態が歴然としている両施設の早期返還を強く働きかけるべきと考えますが、伺います。
7月以降、県内で在日アメリカ兵による女性暴行などの犯罪が、市内も含めて連続4件発生しています。市内では、元町中華街駅ホームでの傷害事件などに、特に多くの女性から不安の声が上がっています。
また、予定されている新型輸送機オスプレイの沖縄配備による全国での低空飛行訓練では、緊急時には市内上空を飛行する可能性もあります。9日の10万人沖縄県民集会では、危険極まりない欠陥機の配備は許さない決議が上がりました。
370万市民の安全に責任を持つ市長の立場から、また、女性市長の立場から、アメリカ兵の犯罪再発防止とオスプレイ配備撤回を本市独自で申し入れを行うべきと考えますが、伺います。
林市長:米軍基地について、ご質問いただきました。
米軍施設の返還と池子住宅等の建設との関係についてですが、米軍施設の返還は日米安全保障条約および日米地位協定の目的のために必要でなくなった時は、無条件で行うことが大原則です。本市では住宅等の建設の進捗にかかわらず、環境が整ったものから返還すべきと国に対して主張しています。
先日、深谷通信所と上瀬谷通信施設を視察された森本防衛大臣に、私からも直接返還を要請いたしました。引き続き、この大原則を踏まえ、国に対し早期返還を求めていきます。
米兵による犯罪についてですが、これまでも神奈川県等と連絡し、犯罪が発生するたびに綱紀粛正や再発防止について国や米軍に要請を重ねてきました。しかしながら、いまだ犯罪がなくならないことに私も強い憤りを覚えます。今後も市民生活の安全・安心を守るためにも、引き続きしっかりと働きかけをしてまいります。
また、オスプレイの配備につきましては、現時点においてオスプレイに限った要請行動を行う予定はありませんが、その安全性について関係する各地の住民のみなさまが懸念をいだいていることは認識していますので、今後の国からの説明内容など状況を見極めながら適切に対応してまいります。