※実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように、対応する質疑と答弁を交互に記載しました。
市民に罰則を科す条例案について広範な市民意見を聞かないのか
大貫議員:私は日本共産党を代表して、資源化及び適正化処理等に関する条例の一部改正について質問をいたします。
この条例改正案は、市の登録者以外の者が無断で資源物を持ち去る、いわゆる「持ち去り行為」を取り締まるために、刑事処分として取り扱われる罰金を適用しようとするものです。
質問の第1は、条例制定のための手順等についてです。
改正案は、刑事処分として罰金刑にすることにより、確かに持ち去りを抑制する効力をもつと思います。しかし同時に、結果的に市民に罰金を課し、犯罪人として履歴に前科をつけ、一歩間違えばその人の人生に大きな影響を与えかねないという重大かつ危険なという側面を持っています。したがって、条例改定にあたっては慎重の上にも慎重を期さなければならない、それには文句ないと思います。
そのため、事前の手続きとして改正案を市民に提示し、行政当局が行う方法に準じて、委員会として自主的にパブリックコメントを求めるなど、広範な市民意見を聞く必要があると考えます。今回、その手続きを省きましたが、その理由を伺います。
鈴木議員:温暖化対策・環境創造・資源循環委員会の副委員長の鈴木太郎でございます。提案理由を説明いたしました加納委員長の指示に従いまして、大貫議員のご質問にご答弁申し上げたいと思います。
まず、本条例制定のための手順等についていくつかご質問をいただきました。委員会として自主的にパブリックコメントを求めるなど、広く市民意見を聞く必要があったのではないかというご質問でございますが、我々議員は日々の活動の中で市民から資源物の持ち去りに対する苦情や対策を求める声を聞いており、今回のアンケートは条例改正にあたって追加的に実施をしたものでございます。また、議員提出議案は、横浜市パブリックコメント実施要綱によるパブリックコメント手続きの対象とはなっておりません。
設問の内容も数も不十分な市民アンケート
大貫議員:今回の改正案は、地球温暖化・環境創造・資源循環委員会が昨年12月から本年1月にかけて実施した「資源物持ち去りに対する市民アンケート」の結果をもって、条例改正を必要とする根拠にされているようですが、アンケートの設問はふたつだけです。設問の内容も数も不足しています。そのアンケート結果をもって、条例改正の根拠にすることということではできないというふうに私は考えています。いかがでしょうか。
鈴木議員:次に、条例改正を必要とする根拠として今回のアンケートを使ったのではないかということでありますけれども、いまご答弁申し上げましたように、我々は日々の活動の中で市民から資源物の持ち去りに対する苦情や対策を求める声を聞いており、今回のアンケートはそのような指摘を確認するために実施したものであり、これを根拠としたということではないかと思います。
大貫議員:また、アンケートの設問のひとつでは、持ち去り行為が行われているかどうかと尋ねていますが、設問でいう「いわゆる持ち去り行為」とする行為がどのような行為なのか明確ではありません。
なぜ、古紙やアルミ缶、ビン、布など具体的に例示せず、しかもその頻度や量、さらには被害額等を明確にするための設問をされなかったのか、伺います。
また、「あなたの地域(または回収地域では)」との設問ですが、市が行っている回収についてなのか、集団回収についてなのか明確ではありません。これでは持ち去りの行為の実態を知ることはできないと考えますが、いかがでしょうか。
鈴木議員:次に、アンケートの設問の中で、いわゆる持ち去り行為の中に新聞紙、アルミ缶、ビン、布などあらかじめ例示しなかったことについてのご質問でございますけれども、今回のアンケートはご質問のように具体的な細目などを明示して質問するのではなく、包括的な質問により相対的な意向というものを把握するために実施いたしました。また、今回のアンケートは市が行う行政回収と集団回収の双方を対象としております。
大貫議員:ふたつ目の設問は「持ち去り対策について」として、当該委員会の検討している罰金処分の適用について、「望ましい」か「望ましくない」か「分らない」かという選択肢から一つ選べというものです。
確かに、「持ち去り行為」は誰が考えても、社会通念上も許されることではありません。ましてや、日頃努力されている資源回収団体の皆さんです。持ち去り対策として罰金処分の適用だけをあげ、それに対しイエスかノーかと問えば、イエスと答える団体が多いのは当然です。したがって、その結果から持ち去り対策は罰金処分の適用しかないとするのはあまりにも短絡すぎると考えますが、いかがでしょうか。この指摘に対する見解を伺います。
鈴木議員:次に、アンケートの2問目の結果から、持ち去り対策は罰金処分の適用しかないとするのは拙速すぎると考えていらっしゃるがどうかというご質問でありますけれども、いま申し上げましたとおり、今回のアンケート結果だけをもって罰金規定を設けると判断したわけではなく、持ち去り対策にたいする総合的な抑止力を高めていくためには罰金規定を設けることがより効果的であると判断をいたしました。
大貫議員:アンケートは、市民の資源集団回収の実施団体が対象になっています。廃棄物の減量、資源化及び適正処理は市民との協働で行っていることはいうまでもありません。ごみを資源物として分別し排出する一般市民・家庭の意見を聞く必要があったのではありませんか。
見解を伺うと同時に、条例改正によって、具体的に罰金処分の対象と思われるアルミ缶を回収するホームレスの人々やその支援団体などに対する意見の集約は実施されたのでしょうか。それとも、その必要がなく、ホームレスの人々は切り捨てればいいと考えているのでしょうか。お考えを伺います。
鈴木議員:また、アンケートの対象についてご質問がございました。一般市民、家庭の意見を聞く必要があったのではないかというご指摘でありますけれども、そもそも今回の改正案の目的は、罰金を科すことではなく持ち去り行為を防ぐことであるため、資源物の持ち去り行為の被害を直接的に受けている集団回収の実施団体の方々を対象としてアンケートを行いました。
ホームレスの方々やその支援団体などに対する意見の集約は実施しておりません。
ごみ持ち去り対策は罰金刑しかないのか
大貫議員:次に、改正案の有効性について伺います。
持ち去り対策は、罰金という刑事罰のほかにはないのかという問題です。当然、なぜ現行の条例では対処できないのか、効果が上がらないのかという分析や検討がされたと考えますが、その結果から、何が問題だったのか明らかにしていただきたいと思います。そして、その結果を踏まえ、現行条例のもとで、持ち去り防止策や手立てを講じることなしに、罰金刑をつければ効果が上がるとするのも、これまた短絡過ぎると考えますが、いかがでしょうか。
鈴木議員:条例案の有効性について、いくつかご質問をいただきました。持ち去り対策は、罰金という刑事罰の他にないのかというご指摘でございます。現行条例のもとで持ち去り防止策や手立てを立てることなしにといったご指摘をいただきましたが、そもそもこれは私自身もでありますけれども、横浜市会においてかねてより持ち去り対策の必要性ということは議会の様々な場面で指摘をされてまいりました。それに応じで当局でもその対策を講じてきたところでありますが、なかなか実効があがっていない現状を私たちは確認をしております。常任委員会の視察として私たちは持ち去り行為の現場を撮影したVTRも見ましたが、現行の規定ではこのようなVTRを証拠として提出しても実際に窃盗罪としての起訴に至らないという現状を確認しております。今回の条例改正では、このような現状を踏まえ、持ち去り行為に対してより高い抑止効果を期待できる新たな罰金刑を設けることにいたしました。
大貫議員:改正案では、持ち去りという行為に対し、それを行わないように命令し、命令に従わないものに罰金刑を科すとされ、それが抑止効果を発揮するとしています。先行する他都市の事例について、計量的にどのように把握されているのか、伺います。
鈴木議員:罰金規定を設けて先行している他都市の事例について計量的にどのように把握されているのかということでございますが、先行する他都市を調査いたしましたが、計量的な効果の把握はなかなか難しいようですが、一定の効果があったというお答えをいただいているところでございます。
実質的にはホームレスのアルミ缶持ち去りに焦点
大貫議員:次に、改正案で危惧されている問題についてです。
資源物として出されるものとしては古紙、ビン、缶、布などがあります。また、行政による回収と町内会などの集団回収など、誰が回収するかによる違いもあります。今回の改正案でいう持ち去りは、これらのうち何に着目しているのでしょうか。
一番問題になっているのは、集団回収による古紙などを指定業者以外の業者が持ち去りことだと考えますが、いかがでしょうか。
今回の改正は、刑事罰をつけることによって抑制効果を狙っていると考えます。実際、現行の当局職員のパトロールだけでは、持ち去りの現場を押さえ、摘発することはなかなか難しいと考えます。
一方、アルミ缶等の持ち去りは、衆人の目につきやすいものです。したがって、今回の改正は、実質的にホームレスのアルミ缶持ち去りに焦点を当てたものとなってしまう恐れはないでしょうか。その結果、社会的弱者ともいえるホームレスの人たちが、今回の本市の改正案によって犯罪者の烙印を押されてしまう可能性があることについて、どのように考えているのか、伺います。
鈴木議員:資源物の持ち去りについて一番問題になっているのは町内会などの資源回収による新聞紙などの古紙の持ち去りではないかというご指摘でありますけれども、ご質問のとおりでございまして、先ほど委員長が提案理由の説明でも申し上げましたとおり、古紙の持ち去りが一番問題になっているのは事実でございます。条例改正の目的である循環型社会の形成を阻害する行為を防止するというためには、古紙のみならず資源物全般を対象とする必要があると判断をしたところでございます。
大貫議員:2012年に厚生労働省が行ったホームレスの実態に関する全国調査では、「現在収入のある仕事をしていますか」という設問に対して「している」と答えた人に、「具体的にどのような仕事をしていますか」と問いかけをしています。その結果、複数回答ではありますが、77.7%の方が廃品回収としてアルミ缶・段ボール・粗大ごみ・本集めと答えています。この結果から、今回の条例改正が、やむを得ずホームレスになってしまった人たちの生活の糧を奪うような事態になる恐れがあります。どのような対応を考えているのか、伺います。
鈴木議員:社会的弱者ともいえるホームレスの方々が今回の改正によって結果的に犯罪者の烙印を押されてしまう可能性についてどう考えるかといたご質問をいただきました。そもそも、資源物を持ち去る行為、これにかかわる対策と、ホームレスの自立支援策とは別の問題であると考えております。ホームレスの自立支援にあたっては、ホームレスが自らの意思で安定した生活を営むことができることを目標とした福祉施策をより推進することが重要であると認識をしております。
大貫議員:2008年7月31日、厚生労働省と国土交通省は連名で、「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」を告示しています。その自立支援の施策のひとつとして、「常用雇用による自立が直ちには困難なホームレスに対して、雑誌回収やアルミ缶回収等の都市雑業的な職種の開拓や情報収集・情報提供等を行う」としています。
私は、この改正案を提案された常任委員会の委員諸氏も、条例改正によって社会的弱者といわれるホームレスの人たちが社会的に排除されることを、決して「よし」としてはいないと思います。そうであるならば、今回の改正に際し、ホームレス自立のための支援策を具体的に立て、当局にその実行を要求する必要があるのではないでしょうか。その考えがあるのか伺って、私の質問を終わります。
鈴木議員:やむを得ずホームレスになってしまった人たちの生活の糧を奪うような事態になる恐れがあるというご指摘でありますけれども、いまお答えしましたとおり、持ち去り行為の対策とホームレスの自立支援の対策というのは別の問題であると考えています。
ホームレス自立のための支援策をたて、当局にその実行を要求する必要があるのではないかというご指摘でありますけれども、何度も申し上げますが、今回の改正条例案というのは循環型社会を形成していくために市民がまさに協力をして行っている集団回収という仕組み自体を著しく傷つけるような行為をさせないように抑止していくことが目的でございまして、資源物を持ち去る行為に係る対策とホームレスの自立支援策とは別の問題です。ホームレスの自立支援策をたてることについては、当然ながら重要な課題であると認識していますが、そのことは別の場で議論することであると考えています。
以上、ご答弁を申し上げました。