2024年6月3日、横浜市は都筑区にある横浜国際プールのメインプールやダイビングプールなどを廃止し、「スポーツフロア化」などを行う「横浜国際プール再整備事業計画(素案)」を発表しました。現在、素案への市民意見を2024年6月24日~7月31まで募集しています。
神奈川県水泳連盟や横浜水泳協会などは素案が示された直後からメインプールの存続を求めており、7月1日には、日本パラ水泳連盟など障害者水泳4団が連名でメインプールの存続を求める嘆願書を横浜市に提出しました。
党市議団(古谷やすひこ団長、白井まさ子副団長)は、6月30日に現地に伺い、神奈川県水泳連盟の高橋憲司会長や吉川智己理事長に聞き取りしました。
国際プールの現状と再整備計画素案が作成された背景
横浜国際プールは、50m×10コースのメインプール、25m×25mのダイビングプールがあるメインアリーナ(観客席約5000席)と、50m×8コースがあるサブプール(観客席355席)、多目的ホールなどがある横浜市の施設です。1998年(H10年)に整備されました。メインアリーナは夏季はプール、冬季はプールを床に変えたスポーツフロアとして運用されています。
整備当初は市直営の施設でしたが、現在は横浜市スポーツ協会・コナミスポーツクラブ・トーリツグループの3者を指定管理者として選定し事業を行っています。
メインプールは、国際級の大会をはじめ各種大会の開催や選手・指導者養成など市民スポーツから各種競技大会の開催・観戦の場として幅広く活用できる総合的な室内水泳競技場として活用されていきました。また、駐車場から各プールまでフラットなつくりになっていて、障害者も安心して使えることから、多くのパラリンピックの水泳選手を育ててきた、障害者団体の水泳競技会の開催地となっています。
横浜市は、メインプールの現状について、①施設の老朽化が進んでいて、プール設備や空調設備等の大規模な設備更新が必要なタイミングを迎えている。②メインプールの利用者が2011年(H23)から7年間の統計で15%減っている(冬のスポーツフロアは111%増加)、③国際大会の開催が少ない、④冬のスポーツフロアへの床転換作業に年間二か月の休館期間が必要で年間5100万円がかかっていることなどの問題点を上げています。
その上で、今回の再整備事業は、老朽化が進んでいる施設の単なる長寿命化を図るのではなく、「本施設をエリア全体の魅力向上に寄与する施設にしていくこと」を目的にするとし、再整備にあたって民間事業者へのサウンディング調査を行い、事業者から利用機会の拡大及び収入増や、維持管理費の削減、多様な市民ニーズへの対応等の観点を踏まえ、床転換なしの通年スポーツフロア化の提案があったことから、今回のメインプールを廃止する再整備計画素案をまとめたとしています。
納得も合意もしていない 本当にこのまま押し進めるのか
県水泳連盟の吉川理事長は、横浜市の担当者から最初に「話」があった2022年(令和4年)から現在に至るまでの経過が述べられ、これまで市から「意見交換の場」としてセッティングされた場は、実際には、意見交換ではなく、監査の結果や、サウンディング調査の報告などを聞く場であり、素案が明らかになった時は、すでにこんなに具体化されているとは知らなかったと話します。
また、市が素案に示された「スポーツフロア化する場合、サブプールの機能充実が必要」などの意見が、水泳関係団体からあったとする記述については、仮にメインプールが無くなって25mのサブプール一本になった場合は、観客席を含めて相当な改修が必要であり、これまでのように様々な大会を開くことは不可能だと説明したものなのに、まるで私達が改修すれば良いとした見解を示したかのように書いてあることに憤りを感じている。素案を見てこれはひどいと思い、急いでメインプール存続を求める署名を作成し、2週間で約1万筆を集めた。市はこの思いを受け止めてほしい。私たちは素案に納得も合意もしていない。市は本当にこのまま押し進めるのかと話します。
バリアフリーで、県内最高のプール
また、現状の国際プールは、駐車場からメインプール、サブプールがフラットなつくりで、スロープでつながっていることから、障害者団体の水泳大会のなどに欠かせない施設になっていることや、観客席は、県内で横浜の次に大きい「さがみはらグリーンプール」の倍近い観客席があることから、関係者がゆったりと観戦できる県内で最高のプールだと話します。
プール利用が減っている、国際大会が少ないというが
市はプール利用者が減っていると言うが、利用者を増やす取り組みをしたのかと逆に言いたい。夏はプールで冬は床をひいてバスケなどができるような運営にしているが、水泳選手にとっては、冬はオフシーズンという感覚は無く、常に泳げる環境があった方が体もモチベーションも維持しやすい。東京の大きなプールは、冬に全国から選手が来て泳いでいる。横浜でもできるのではいかと指摘します。
また国際大会は、市も積極的に誘致に動かないとできないもので、プール側だけの努力では難しい。プール側の原因のように言われているとしたら納得できない。国際大会が決まったら、私達も成功に向けて協力するし、水泳人口を上げる知恵も出せる。もっと市としても本気になってほしいと話します。
メインプール存続を求める声 応援する
古谷団長は、横浜市の強引なやり方を批判しつつ、国際プールとして設置した目的や、求められている大切な役割があるのに、それに沿った運用や努力がされてきたのか、市に問うていくと述べ、今回の計画素案が、どんなプロセスで何を基準にして立てているのかなども調査を進め、メインプールの存続を求めるみなさんの声を応援する立場で力を入れていくと話しました。
白井副団長は、聞き取りの中で出された、「(国際プールは)新たに小中学校の水泳授業での活用も考えられる」というアイデアに共感。横浜市では、市民が反対する中で公園プールが廃止されたり、一部の小中学校での水泳授業が民間スイミングスクール等に委託されたり、学校の建て替え時にプールをつくらない方式などが進められています。市民や子ども達が水泳に関われる環境が少なくなっている中で、本市施設としての国際プールのメインプールは、新たな水泳授業の活用など可能性を見ても、その存在意義はますます高まっていると感じたと振り返り、市民意見募集を広く呼び掛けていきながら、市に存続を求める声をしっかり受け止めてもらうよう働きかけていきたいと述べました。
みなさんの声を市に寄せてください。
再整備事業計画(素案)への市民意見はこちらです。
期間は2024年6年6月24日(月曜日)9時00分から令和6年7月31日(水曜日)23時59分まで
素案の配架場所
・市民情報センター(市役所3階)
・市内18区役所区政推進課広報相談係
・各市立図書館
・各区スポーツセンター
・横浜国際プール
【関連資料】
横浜国際プール再整備事業計画(素案)(PDF:2,911KB)
横浜国際プール再整備事業計画(素案)概要版(PDF:1,579KB)
一般社団法人横浜水泳協会 横浜国際プールメインプールの継続利用について(お願い)文
日本パラ水泳連盟・日本知的障害者水泳連盟・日本デフ水泳協会・横浜水泳協会障害者委員会の連名による7月1日に提出された「横浜国際プールのメインプール存続のお願い(嘆願書)」(6/30の聞き取り時にいただいた文面)