見解/声明
2024年6月7日

2024年第二回定例会を終えて

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妊婦健診の拡充、いじめ・不登校対策の強化など歓迎し、園芸博の問題点など見直し求める

2024年6月7日

日本共産党横浜市議団 団長 古谷やすひこ

2024年第二回定例会は、5月17日から開催され、最終日の6月5日に補正予算案など全ての市長提出議案と議員提出議案を賛成多数で可決し、閉会しました。

今議会に提案された補正予算は、妊婦健診の公費負担額の拡充や、市立学校へのスクールカウンセラー(SC)の配置の充実(中学校、高校などで週一回から週二回に)、不登校児童生徒支援の校内ハートフル事業の全校実施が盛り込まれました。これまで市民と党市議団が求めてきたものでもあり、市政が一歩前進したと考えます。

また、不登校生徒の支援・権利保障を求める請願、地方自治法改定の廃止を求めるの請願が提出され、日本共産党横浜市議団(以後党市議団)として紹介議員となり採択を求めました。しかし、議会では自民・公明・立憲・維新などの反対多数で否決されました。

党市議団の本会議登壇者は、議案関連質問に大和田あきお議員(戸塚区選出)、一般質問に宇佐美さやか議員(神奈川区選出)、討論に白井まさ子議員(港北区選出・副団長)が登壇。また、常任委員会には各議員が臨みました。

議長選挙や監査委員の選出、担当常任委員会の決定

5月20日の本会議1日目は、議長選挙や県後期高齢者医療広域連合議会議員、常任委員会、市監査員の選任などが行われました。議長には市会第一会派の自民党(35人)から鈴木太郎氏が選出されました。党市議団は最大会派から議長が選出されることは民意の反映の一つと考え、鈴木氏に投票しました。

党市議団の常任委員会等担当

〇古谷やすひこ(鶴見区選出・団長)
こども青少年・教育委員会、大都市行財政制度特別委員会

〇白井まさ子(港北区選出・副団長)
建築・都市整備・道路委員会、健康づくり・スポーツ推進特別委員会

〇みわ智恵美(港南区選出)
政策経営・総務・財政常任委員会、郊外部再生・活性化特別委員会、神奈川県後期高齢者医療広域連合議会議員

〇宇佐美さやか(神奈川区選出)
脱炭素・GREEN×EXPO推進・みどり環境・資源循環委員会、減災対策推進特別委員会、市会運営委員会

〇大和田あきお(戸塚区選出)
健康福祉・医療委員会、基地対策特別委員会

一方、議員からの監査委員の選出(2人)については、反対しました。他都市では「監査委員の独立性及び専門性をより良く担保する観点から議員のうちから監査委員を選任しないこと」と決めている議会もあります。そもそも議会は2元代表制の元、議員が行政のチェック・監視役としての使命があり、議員歳費とは別に月額92,000円の報酬を受領して引き受けるものとして適切ではないと考えます。引き続き監査委員の選任について根本から見直しを求めていきます。採決の結果、賛成多数で議員の監査委員には、清水富雄氏(自民)、大岩真善和氏(立民)が選任されました。

5月23日、マイナンバーカードの普及に関する条例改定の提案と議決も行われました。党市議団は、保険証を無くしマイナンバーカードへの一本化に反対しており、当然反対しましたが、賛成多数で可決されました。

【議案関連質問】

補正予算の妊婦健診の拡充、スクールカウンセラーの配置増、校内ハートフル全校実施を歓迎

23日の議案関連質問では、大和田あきお議員(戸塚区選出)が登壇。補正予算案の拡充方向を歓迎しつつ、妊婦健診の補助回数増と全額補助を行うことを提案。スクールカウンセラーの配置拡充については、ニーズが高い小学校への配置拡大を進めること、校内ハートフルについては専用教室の確実な確保などを求めました。また、議案に関連して市独自の保育士配置の更なる拡充、「貧困ビジネス」を規制する条例改定をもとめました。

下田教育長は「小学校におけるスクールカウンセラーの拡充も含めて、他の自治体なども研究しながら取り組んでいく」「スクールソーシャルワーカーとスクールカウンセラーとの効果的な連携、役割分担を見極めた上で総合的な仕組みを検討していく」と答弁しました。

【会派代表一般質問】

一時間に50本のシャトルバス?現実的な園芸博の入場者目標を

5月28日の会派代表の一般質問には宇佐美さやか議員(神奈川区選出)が登壇。地方自治法改定案、2027国際園芸博覧会の見直し、関内駅前の再開発ビル建設、地域における学校のあり方と統廃合計画の問題について質問しました。

国際園芸博覧会については、今年3月に策定された「来場者輸送基本計画」について、メインのシャトルバス運行は、瀬谷駅では、混雑時に1時間に約40本が運行が見込まれ、十日市場駅では1時間に約50本の想定になっていることなどを問題視。実際、計画通りにバスが準備でき、運行されたならば、通常から渋滞の激しい道路がさらに大渋滞となり、地域住民に多大な環境負荷をかけることが容易に想像できると指摘。さらに、バスは、運転手不足、車両の確保等の深刻な課題を抱えていることから、計画は実現性が乏しいと批判しました。その上で、現実的な来場者の目標を持ち、輸送計画を見直すべきと提案。また、会場建設費320億円は、最近の物価上昇が反映されていない数字だと指摘し、厳しい財政と言いながら、さらなる建設費の増額となることに市民理解は得られないと主張。整備計画自体を見直し、開催規模を縮小することを求めました。

山中市長は、「国際イベントとして国内外から多くの人をお迎えする規模として開催されるもの」と述べ、規模の縮小については言明を避けました。

輸送計画について平原副市長は「輸送計画の具体化を図り、来場者の快適な輸送を実現していく」と述べ、見直しについては応じませんでした。

【常任委員会の特徴(党市議在籍の委員会)】

政策・総務・財政常任委員会

地方自治を破壊する国の地方自治法改定は廃案に 

地方自治法改正案の廃案を求める意見書提出の請願について審査がおこなわれました。党市議団としては、今回の地方自治法改定は、地方自治を壊すもので認められないことから、本請願を採択し、市として国への意思表示をするべきと主張。しかし、委員会での採決の結果は不採択に。

定額減税…実質賃金が減り続けている中、4万円では見合わない。

財政局では、いわゆる4万円の定額減税の行政手続きなどの市長専決処分の議会承認について議論されました。
党市議団は、実質賃金が21か月連続で低下しているなか、一人4万円減税では見合わないとの見解を示し、しかもそこには膨大な各自治体の事務負担が発生することを指摘しました。

また、福島原発事故に伴い横浜市が市民の安全と環境のために実施してきた放射線対策事業に対して、東京電力が支払いに応じていない費用について和解あっせんを求める議案が審議されました。党市議団は、全額を東京電力が支払うような和解となるよう求めました。

建築・都市整備・道路常任委員会

緑を守り創ることを最優先にしたまちづくりを  

都市計画素案(「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」「都市再開発の方針」「住宅市街地の開発整備の方針」「防災街区整備方針」)の策定の報告がありました。党市議団としては、今年2月に行った「これからのまちづくりは緑の保全・創出を最優先へ 第8回全市線引き見直しへの提言」で主張した「気候危機対策と緑の保全・創出を都市づくりの最優先課題に据えること」を再度示し、開発優先のまちづくりから卒業することを求めました。

省エネ住宅の効果等の説明の義務付けに賛成   

市住生活環境の保全等に関する条例の一部改正の議案については、建築物省エネ法の改正に伴い再エネ施設の導入および省エネ性能の一層の向上の効果について建築主への説明を建築士に義務づけるもので、気候危機対策に資することから賛成しました。その上で具体的な数値目標を持って推進することを求めました。

健康福祉・医療常任委員会

敬老パス…介護予防効果が公表される。自己負担の軽減と利用交通機関の拡大を

市の調査による敬老パスの分析結果が報告されました。内容は①一人当たりの月平均回数などの利用実績と将来設計、②区ごとの交付率などの地域の状況、③パス保有の有無と外出頻度、要介護認定の関係など敬老パスの効果と高齢者の状況など。その上で、「新たな制度の構築」に向けて、利用者負担の検討、地域交通への提供、公平性を高めるための対応の検討を行うとしています。党市議団としては、敬老パスの社会的な効果の検証を歓迎し、市長公約である75歳以上の負担ゼロと相鉄やJRなどにも利用できる制度に拡充することを求めました。

脱炭素・GREEN×EXPO推進・みどり環境・資源循環委員会

旧上瀬谷通信施設跡地の再開発は、保留地増による41億程度の増収は市負担の軽減に活用を

旧上瀬谷通信施設の基盤整備についての状況報告が行われました。園芸博覧会会場の整備の進め方、土地区画整備事業及び周辺道路等の整備、公園内のインフラ等の基盤整備などです。党市議団としては、区画整理事業の総予算約766億円のうち、すでに半分以上の370 億円の契約を済ませているが、このままだと想定予算をオーバーするのではないかと指摘。これ以上の市負担の増額は認められないと主張。また、全体の事業費の 83%を保留地処分金で賄う計画となっていますが、先日示された基本協定で観光賑わい地区の保留地が当初見込みより 5ha 増えて、41億円程度増収になる見通しになるが、この費用を活用し市負担分を減らすよう求めました。

教育委員会・こども青少年常任委員会

国の保育士配置基準の引き上げに伴う予算増を活用し、市独自の基準の更なる引き上げを

「子どもたちにもう一人保育士さんを」と願う国民の声に背中を押され、国で保育士1人が受け持つ子どもの数である保育士配置基準を引き上げられたことに伴う市条例の改正が提案されました。やっと国の基準が市独自の基準に近づいたもので歓迎できます。その上で、党市議団としては、本市がこれまでも独自の予算措置を続けて国基準より手厚い配置基準にしてきたことを評価しつつ、その効果の検証と、今回の拡充で国からの予算が増額される分を活用し、保育現場から要望されている0歳児3人に保育士1人という現状の配置基準を2対1に引き上げるなど、市基準のさらなる拡充を求めました。

また、民間保育所での保育士確保への本市による責任ある支援が待たれていると主張。近年、定員割れとなっている保育所の中で、保育士の確保ができないことが定員割れの原因の一つになっていることから。保育士採用の倍率が高く維持されている公立保育所と同程度に民間保育所の保育士さんの処遇を引き上げることが問題解決につながると提案しました

不登校対策が対象児童の半数以上に届いていない課題に向き合うこと、健康診断の保障を

不登校の児童生徒の多様な学びを確保するための経済的な支援制度の確立を求める請願の審査が行われました。党市議団としては、現在横浜市内8000人以上にのぼる不登校児童・生徒のうち、市の現状の学校を中心とした対策・施策が届いているのは半数以下になっているとみられることから、学校以外の居場所をつくる支援は重要だと主張。請願の採択を求めました。

不登校等の児童生徒の健康診断を受ける権利を保障するための制度確立を求める請願の審査では、党市議団が資料請求した昨年度の小学校・中学校の定期健康診断検査について、小学校の内科健診は4474人(全体2.6%)、眼科は6217人(全体3.6%)が受けておらず、中学校では内科3528人(全体4.6%)、眼科4682人(全体6.1%)が受けていない実態を明らかにし、課題解決の必要性を訴えました。また、長期に不登校状態になっている児童生徒は何年も健診を受けられていなことが予測されることから、日曜日などに学校で実施すれば、保護者付き添いで受けることができるのではないかと具体的な提案を行いながら、請願の採択に賛成しました。しかし2つの請願は、賛成少数で不採択となりました。

他にも図書館ビジョンの具体化に向けた検討、中学校給食の取り組み状況(市給食工場の業務委託契約、事業者区分の基本協定の締結、事業者区分の地域で事業予定者が未定だったエリアの事業者公募の開始など)の報告が行われました。

教育委員会による裁判の「傍聴妨害」の問題   

横浜地裁でおこなわれた教員の性犯罪事件の裁判をめぐり、横浜市教育委員会が、多数の職員を動員し、第三者が傍聴できない事態を発生させていたことが明らかになりました。地裁では注目事件を除く多くの裁判の傍聴が、抽選ではなく先着順になっています。問題の発覚を受け、教育の常任委員会で各議員から批判と指摘が相次ぎました。

市教育委員会による職員の動員は、19年度に3回、2023年12月に1回、2024年1月に2回、2月に1回、3月に3回、4月に1回の計11回。延べ約500 人(1回あたり最大50 人)に呼びかけていました。報道では、市内の4カ所ある学校教育事務所や人事担当部署などから毎回、傍聴席を埋められるよう最大50人を業務として出張させており、旅費を支給する場合もあったとされています。

市教委は、傍聴席を埋めた理由として、被害者のプライバシー情報が拡散されるのを防ぐためだったと説明し、今後はこのようなことは行わないと表明しましたが、報道や常任委員会の追及を受け、第三者に調査を依頼しました。山中市長は「あっては」ならないこと」「前教育長からの聞き取りが必要」との認識を示しました。

党市議団は、教育委員会常任委員会でこの問題を追及。48席しかない傍聴席に対して50人を動員して埋めてしまったことは、教育委員会という公の組織が、憲法で保障されている公平な裁判を保障する裁判の公開の原則を犯したと考えられることから、憲法擁護(ようご)義務違反の責任等を問いました。

【討論】

「子どもの権利」が明記されない「子ども・子育て基本条例」には賛同できない

6月5日の最終日、採決に先立ち、白井まさ子議員(港北区選出・党市議団副団長)が登壇。妊婦・産婦健康診査事業の拡充などを含む補正予算などに賛成、議員提出議案の「子ども・子育て基本条例」については反対、委員会で不採択となった請願3件については採択を求めました。

自民党が主導し、公明党や立憲民主、維新の会などが共同提案した横浜市子ども・子育て基本条例については、日本共産党としては賛同しませんでした。理由の1つは、子どもに関わる条例なのに、子どもの権利についての記述がないことです。2つ目は、子どもの「養育は家庭が基本」と改めて本条例で明記し、強調していることです。白井議員は「子どもの成長は、社会全体が責任を負う」ことは、近代国家の当たり前の原則だと述べ、保護者の経済不安などさまざまな生活上のリスクが直接子どもに影響しているなか、「養育は家庭が基本」という考え方では、子育て支援を手厚くする方向には向かわず、家庭の中で苦しむ子どもたちや保護者をさらに追い詰めることにつながる恐れがあると指摘。また、本条例案の策定過程で子どもの意見を聞いていないという問題もあり、当事者の意見をくみ取り、議会で慎重な議論を続けて、時間をかけて作り上げていくことが必要だと主張しました。


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