日本共産党を代表して、3件の議案と11件の請願について討論を行います。
物価高騰対策補正予算に賛成
診療所なども対象にいれるよう要望
まず、市第42号議案 一般会計補正予算 電気・ガス・食料品等価格高騰対策については、保育所等の児童福祉施設、高齢者施設・障害者施設等の社会福祉施設、病院などへの物価高騰支援が含まれており、必要な支援と考え賛成します。病院への支援は、今年度の前半分は、対象が59 の救急病院だったものが、今回の今年度の後半分は、病床のある132の病院に拡大されたことは歓迎するものです。ただ、公定価格が適用されている医療機関には、診療所や薬局もあり、市民に身近な医療機関ですから、診療報酬の改定を待たずとも、支援の対象に加えることを要望します。
今回の支援の補助額は6月の物価指数が光熱費等・食材費において顕著として算定されたものですが、送迎を行っている施設では直近のガソリン代の高騰に直面しています。また、各施設では新型コロナ感染症の5 類移行後も対策を日常的に行っており、物品購入費支援が制限されたこともあり、痛手になっていることを聞いています。補助額の拡大、物価高騰対策にとどまらない市独自の支援を要望します。合わせて、全市民を対象とした物価高騰対策を求めます。
旧米軍上瀬谷通信基地跡地の再開発の予算に反対
次の2件の議案には賛成できません。
市第34号議案は、2027年開催の国際園芸博覧会の会場の基盤ともなる、新たな65haの公園の区域を決定するものです。原案の45haより20ha広がったことは歓迎するものです。しかし、当該区域の土地利用は、本来であれば、「首都圏全体を見据えた防災と環境再生の一大拠点」として位置付けられた2006年の「米軍施設返還跡地利用指針」に沿ったものであるべきですが、指針に沿わない、観光・賑わいゾーンを最大面積とする「旧上瀬谷通信施設土地利用基本計画」の土地利用ゾーンを具体化する点において賛成することはできません。
市第43号議案は、旧上瀬谷通信施設土地区画整理事業に伴う道路・上下水道などの基盤整備について、国際園芸博覧会開催の前年度まで、年度を越えた工事費枠250億円を確保する特別会計補正予算です。土地区画整理事業の想定総事業費約776 億円のうち、基盤整備費は今回の250億円を合わせれば、すでに400億円となります。
本市は先ごろ、観光・賑わいゾーンの事業予定者を決めました。事業予定者の提案には、2031年ごろテーマパークを開業、50年以上の事業期間、総来街者数年間1500万人超を目指すとして、本市が整備する新たな交通の新駅や車両基地と想定されるスペース、新たなインターチェンジが図で示されています。本市から新たに、さらなる周辺道路交差点の立体交差化も示されました。いったい、どれだけの税金がここにつぎ込まれるのでしょうか。
年間1500万人を集めるとすると、テーマパークの集客が命綱となる新たな交通の、その内容も、本市の財政負担も、採算リスクも明らかにされないまま基盤整備事業が進められようとしています。将来世代への負の遺産とならない確かな保障、見通しがない中で、このような超大型事業に関連する補正予算は認められません。
市民の切実な声である請願は採択を
次は、請願についてです。
全会一致で採択された2件の請願のうち、請願第41号は、学童保育における安心・安全な居場所の充実を求めるもので、職員の人材育成や雇用の確保のための環境整備が一層重要としています。請願に添えられた本市への要望書には、指導員の雇用を長期的に安定した形態にするために、待遇改善を行うよう求めており、子どもたちに安全で豊かな放課後を保障する要になります。国・県の財源とともに、本市独自予算の拡充が求められます。
また、請願第46号は、国へ計画的な教職員定数の改善、義務教育費国庫負担制度の堅持、教育予算の拡充の意見書提出を求めるもので、請願を採択した常任委員会から提出の意見書には、長時間労働是正を実現するためとの文言も盛り込まれています。本市の学校現場で抜本的な対策が求められている教員の超過勤務、教員未配置解消のため必須となっている抜本的な教員採用増や過大なコマ数削減には、本市独自予算の拡充も必要となります。
続いて、以下の請願は市民の切実な願いであり、委員会不採択に反対し、採択を呼び掛けます。
請願第43号は、小児医療費助成制度の助成対象を18 歳年度末まで拡充するよう求めるものです。これは先の地方選挙で少なくない方が党派を超えて掲げられていたと記憶しています。本市は、6月の国への要望書に、「全ての⼦どもが、18歳の年度末まで、全国⼀律の医療費助成制度の構築」を求めており、国の制度の創設が必要ですが、制度がなくても、県内33市町村のうち予定を含めて22市町村が18歳まで拡充しています。神奈川県が今年4月から助成対象を12歳まで拡充したことから、本市の財政面でも条件があります。18歳への拡充を求める請願は、採択が当然です。
請願第45号は、国が保育士配置の改善加算を行った場合、本市独自の加配をやめずに、現行を上回って加配するよう求めるものです。
本市の民間保育所等では、国の配置基準及び加算を超えた保育士配置が確保できるよう、本市独自の配置基準を設けて、毎年予算付けが行われ、今年度は81億8000万円です。頑張っておられると思いますが、保育園や保護者から「子どもたちにもう一人保育士を」と更なる配置を求める声が上がっています。本市は6月の国への要望書の中で、配置基準そのものの改善を提案しています。
国では、やっと保育士配置を拡充する方向を打ち出しましたが、その範囲は横浜の独自配置にとどまる見直しです。国が拡充しても本市の予算付けをやめずに、その分を現行に上乗せして配置するよう請願は求めています。採択を求めます。
請願第44号は、介護事業所や障害福祉事業所の職員の処遇改善に向けて、2024年度の介護・福祉サービス等報酬改定にあたり、引き上げるよう意見書提出を求めるものです。職員の離職や応募がないことによる人材不足は、過酷な労働環境と低い処遇が背景にあります。介護職給与は全産業平均より「月8万円低い」とされており、「全産業平均」並みへの引き上げ、雇用の正規化、長時間労働の是正など、労働条件改善が急務です。保険料・利用料に連動させることなく、賃金アップを図るためには、国費による賃金引き上げの仕組みの創設が必要となります。本市の6月の国への要望書には、「保険料や利⽤者負担の引き上げにつながらないよう、介護職員等⽀援補助⾦の創設により、全額国庫負担で介護職員等の処遇改善を拡充すること」とあり、議会からも国へ意見書を上げれば、処遇改善への力となります。
請願第42号は、現行の健康保険証の存続を求める意見書の提出を、また、
請願第50号は、現行健康保険証廃止の撤回及びマイナ保険証利用は任意であることを周知徹底することを求める意見書の提出を求めるものです。国が保険証を廃止し、任意取得であるはずのマイナンバーカードへ一本化することで、横浜市は、このままでは、本人申請がなくても届けていた国民健康保険証を届けなくなります。マイナンバーカードを取得しない被保険者は、保険料は収めているのに、医療にかかる際に資格確認がとれず、保険医療が受けられないという事態が起きかねません。解決策はこれまでの保険証の発行を続けることです。国民皆保険を守るためにも、本請願の採択を呼びかけます。
請願第48号は、自衛官募集事務において本市が自衛隊に対象者情報の提供を行っていることについて、除外申請を可能とする条例制定を求めるものです。本市は、2021年度から、18歳と22歳の個人情報を宛名シールにより自衛隊に提供しており、今年度は7万5000人分です。しかも、提供しているという事実を、市民へ知らせず行ってきました。
6月27日に、自衛隊への名簿提供は行わないこと、市民からの除外申請を受け付けること、閲覧対応から名簿提供へ変更した事実を市民へ速やかに知らせることを申し入れました。本請願審査の委員会で、まずは除外対応に進む方向性が示されたことには、ひとまずほっとしています。除外申請を求める本請願の趣旨に賛同して、採択することを求めます。
請願第47号は、女性差別のない世界を目指して、国連の女性差別撤廃条約の実効性を高めるための付属の条約を日本が早期批准するよう求める意見書提出です。日本は1985年に条約を批准しながら、大きな問題になっている「男女賃金格差の縮小」も「選択的夫婦別姓への法改正」も、繰り返し国連の女性差別撤廃委員会から是正勧告を受けてきたにもかかわらず、具体化できずにいます。世界各国の男女平等度を示す今年のジェンダーギャップ指数は146か国中、日本は125位と過去最低で、先進国として異常な低さを続けています。女性の権利を国際基準にする重要な第一歩ともなる早期批准が求められます。19日には横須賀市議会が全会一致で同趣旨の意見書を可決させました。横浜市会として、国を後押しするためにも、請願の採択を求めます。
請願第40号は、所得税法第56 条の廃止を求める意見書提出を求めるものです。
所得税法56条は、妻などの家族従業者の働き分が必要経費として認められていません。これを廃止して、必要経費と認められるようにすることが必要です。国連女性差別撤廃委員会からも日本政府に見直しが勧告されています。採択を求めます。
選択的夫婦別姓の実現遠ざける国への意見書は認められない
最後に、委員会で採択された請願に反対し討論を行います。
請願第49号は、旧姓の通称使用の拡充を周知し、「第5次男女共同参画基本計画」に沿った政策推進を求める意見書の提出であり、採択され意見書が提出されますが、内容は市民世論と乖離するものです。
2020年12月に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」については、計画の策定にあたり政府が諮問した専門家会議の答申は、「選択的夫婦別姓の導入」「女性差別撤廃条約の総括所見等も考慮」との文言を盛り込み、政府も「必要な対応を進める」と記述していましたが、特定勢力の反対を受け、選択的夫婦別姓などを削除し、「さらなる検討」とされ、導入は先送りとなりました。代わりに、「引き続き旧姓の通称使用の拡大やその周知に取り組む」の文言が盛り込まれました。夫婦同姓を法律で規定するのは世界で日本だけです。夫婦同姓を義務付けている民法750条を改正することは喫緊の課題です。自民党以外の国政政党が公約に掲げてその実現を求めている中で、基本計画に沿った政策が推進されれば、民法改正による選択的夫婦別姓の実現が遠のくことになります。このような意見書を、市会の意思表示として国に挙げるべきではないと考えます。
ジェンダー平等社会へ実現へ 力を尽くす
今回市民から出された請願には、保育・福祉など女性比率の高いケア労働者の処遇改善、妻の働き分の正当な評価、特に男女賃金格差に表れている女性差別の撤廃など、女性差別を解消せよと上げられている市民が声を不採択として無視し、さらに、先送りさせる意見書を国へ上げるなど、ジェンダー平等への足をひっぱる力が議会の中にあることが明らかとなりました。日本共産党は引き続き、市民と力を合わせて、女性差別解消へ力を尽くす決意を表明して、討論を終わります。