申し入れ等 ・ 見解/声明
2023年8月31日

全国の優れた経験に学んで、できたてのあたたかい中学校給食を

2023年8月31日

横浜市長 山中竹春 様
横浜市教育長 鯉渕信也様

日本共産党横浜市会議員団
団長 古谷やすひこ

横浜市は、2026年4月から中学校給食の全員実施に向け、8月31日から事業者募集を開始し、今年11月~12月に提案書の提出・審査に進み、12月には事業者(優先交渉権者)を決定、2024年4月に業務委託契約や基本協定などの締結を予定しています。全員給食の実施方式は民間事業者が自前施設で調理し、弁当箱に盛り付け、配送する「デリバリー方式」としています。(義務教育学校2校を除く)

市内144校ある市立中学校を対象に全員制の中学校給食を実施するには、約8万1,000食/日が必要です。市教育委員会が事業者公募で示した計画では、市域をA・Bで区分けし、A区分は、市有地を活用した民設民営の給食工場を建設し、そこで2万8,000食(全体の約35%)を調理・配送し、残り5万3000食(約65%)をB区分として、複数の民間工場で調理・配送するとしています。各事業者との契約期間は、A区分の市有地活用区分は15年(委託契約期間は準備も含め17年間)。B区分は5年間(委託契約期間は準備も含め7年間))とし、市内工場の新設と、既存工場の活用を求めています。配送については、工場から学校への配送時間は、横浜市独自基準を設けて「4時間以内」としています。これは現行の選択制デリバリー給食の基準を踏襲したものです。

A区分の契約については、契約期間中に変更ができるよう「特記事項」に、委託者(横浜市)の要請などにもとづき、契約変更を有する合理的な事由が生じた場合は、事業者と協議のうえで、市が変更内容を定めて通知し、事業者はそれに従うこととする旨が示されています。

日本共産党横浜市会議員団は、この方向性が明らかになった時から、デリバリー方式によるAB区分けのみで計画を押し進めるのではなく、「自校調理方式」や「親子方式」と呼ばれる各学校で調理する「学校調理方式」も取り入れた計画変更に見直すべきと求めてきました。

党市議団は、宝塚市や高崎市など全国でも優れた中学校給食を実施している自治体を視察してきました。また、デリバリー方式でスタートしたものの学校調理方式やセンター方式に切り替えた自治体(大阪市等)にも足を運び、経過や教訓について深めてきました。視察を通じてはっきりしたことは、食育やアレルギー対応、地産地消、防災、長期的な経費などあらゆる観点から、「学校調理方式」に勝るものはないということでした。他都市より何周も遅れた横浜の中学校給食として最も相応しいものは、学校調理方式を軸にした計画にすることであり、それは子どもたちの健やかな成長を保障する行政の責務だと考えています。

山中竹春市長が目指す「生徒みんなが食べられる中学校給食」にしていくことは、長い間、まかり通っていた「愛情弁当」論からの決別であり、横浜の教育にとって画期をなす前進です。しかし、全食数をデリバリー方式で行うことは、抜本的な見直しが必要です。

デリバリー方式は、大工場で調理したものを運ぶことから、配送に時間を要するため、食中毒対策として、おかずを急冷せざるを得ません。さらに、生徒1人ひとりに合わせたおかずの量の調節も困難なため、残食を多く出してしまいます。また、調理を深夜から始める必要があるため、過酷な労働現場と非正規雇用によって成り立つものになってしまいます。働き手の確保は容易ではなく事業の継続性が危ういと言わざるを得ません。さらに、学校給食法に基づき文科省が定めた学校給食衛生管理基準に示された「調理した食品を調理後2時間以内に給食できるようにする」とした規定を曲げて、「4時間以内の配送」という独自の基準運用を続けることになります。

また、事業募集に向けて、3回行われたサウンディング型市場調査で最終的に、A区分での事業サウンディングには3社参加したものの、参入意欲を示したのは1社でしかなく、他都市ではやっていない給食施設の「民設民営」という特殊なやり方のリスクを示しているのではないでしょうか。

全国の政令市で全員制の中学校給食を実施及び実施予定の17市(横浜市を除く)で横浜市のようなすべて民間事業者まかせの方式を採用している自治体は皆無です。(京都市教委調べ)

全員制給食を始める2026年4月までの期間に、現在の選択制給食の喫食率・供給食数を上げるための新たな事業者がサウンディング調査で見つからなかったことは、B区分についても、実現性と将来性に大きな不安要素を示すものと考えます。

山中竹春市長は、2026年度に全校一斉にスタートするには、デリバリー弁当方式しかないとしていますが、一斉スタートにこだわらなければ、市内全中学校144校のうちの半数の72校で可能とされている自校や親子などの「学校調理方式」を主流に、「給食センター方式」と組み合わせた「ミックス方式」も考えられます。経費の面でも、市教委が試算した30年単位で見れば、大差はありません。
以上のことから、事業者との基本協定締結にあたっては、少なくとも下記の①②を盛り込み、③④については市教委としての実施をそれぞれ求めます。

① A区分事業者(2万8,000食)との契約締結にあたっては、15年間の長期固定化は到底容認できません。工場を市の給食施設として位置づけ、「給食センター」に転用できる規定を明記すること。

② B区分事業者については、市の中学校給食の実施方式が「学校調理方式」を軸にしたものに変更されても、市として損失なく即対応できる契約内容にすること。

③ 生徒・保護者に中学校給食アンケートを毎年実施すること。

④ 学校調理方式を軸とした計画を持つこと。

以上

申し入れ


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