コンビニでのマイナンバーカード機能を使った新たなサービス追加は拙速
宇佐美議員:日本共産党を代表し、今定例会に上程された議案に関連し質問します。
はじめに、市第5号議案 横浜市印鑑条例の一部改正についてです。
政府は、マイナンバーカードを使った自治体の事務のデジタル化を進めている中で、5月11日からスマホ用電子証明搭載のサービスがAndroidの端末で始まり、今回の条例改正で、サービスに印鑑登録証明の発行を追加するものです。
マイナンバーカードを使ったコンビニでの証明書の発行で、本市では、3月27日、証明書の交付の際に別人の住民票の写しが交付され10件、18人の個人情報が漏えいしました。再発防止について、本市は記者発表で「二度とこのような事態がおこらぬよう、事業者に対して再発防止の徹底を求めました」としています。しかし、国が再発防止の徹底を求めた矢先に、3つの政令市で再び不具合が起きたことが報道されています。
そもそもシステムの運営を事業者任せにしていることから、横浜市が事業者に対し不備を指摘できず、事故の検証の結果を鵜呑みにするしかできないはずです。事業者任せにしない再発防止策を本市ではどうしていくのか市長の見解を伺います。
山中市長:原因究明と再発防止のための対策についてですが、今回発生した事案については本市が利用しておりますシステムのプログラムに障害が発生したものであり、事案の発生後、速やかに原因を特定し、必要なプログラムの修正を行った上で、サービスを再開いたしました。引き続きシステム運用に係るサーベイランスの強化など再発防止に取り組み、市民の皆様の信頼回復に取り組んで参ります。
宇佐美議員:いま国では、従来の健康保険証を廃止してマイナンバーカードによる「オンライン資格確認」に一本化する「マイナンバー法等一括法案」の国会での審議が続いています。ここでもトラブルが相次いで起きています。厚生労働省は、5月12日、マイナンバーカードと保険証を一本化した「マイナ保険証」をめぐり、別人の情報を間違って本人の資格情報にひも付ける「誤登録」が2021年10月から2022年11月までの1年2か月の間で7,312件見つかったと発表しました。そのうち5件では別人の薬剤情報や医療費通知情報が閲覧されていました。誤登録で別人の診療情報がひも付けられた問題では、「別人情報にもとづいて医療行為や薬剤投与が行われることは、生死にかかわる重大事案だ」と国会で指摘されています。
また、申請しなければ交付されないマイナ保険証では、被保険者の「申請漏れ」などで「保険医療が受けられない『無保険』の国民が大量に生まれ、国民皆保険制度の根幹を揺るがしかねないとの懸念まであります。
このまま現行の健康保険証が廃止されれば、新たな混乱が起きることは、想像できることです。そんな状態が続いている中で、交付できる証明書の種類を増やすことは、不安材料でしかなく、市民のみなさんの不安は、増しているのではないかと容易に想像できます。このまま新たな機能を付加することは、拙速だと考えますが、市長の認識を伺います。
山中市長:新たな機能を実施することについてですが、今回の改正はデジタル社会形成整備法の施行に伴いコンビニエンスでの証明書を交付サービスにつきましてマイナンバーカードに加え、新たにスマートフォンに搭載された電子証明書でも利用が可能となることに対応をするものであります。国は年内に開始をすると予定しており、それに対応できるよう今回、条例の改正を行うものであります。
宇佐美議員:2015年に導入されたマイナンバーを含む特定個人情報の漏えいなどの事故は、本市区役所戸籍課で9区、17件起きており、転出証明書の誤送付や通知カードの誤送付、カードの紛失など、人的なミスによるものが多かったとされています。近年になって起きている不祥事は、コンビニでの交付によるものです。コンビニでの証明書交付数は、2021年、50万件、昨年は、70万件と年々増加していると聞いています。今後も更なる事故を招く恐れもあります。そもそもの問題として、行政機関が守らなければならない個人情報を次々と民間に委託というかたちで提供してしまっていることに大変な危機感を抱いています。個人情報を漏えいさせないという最低限の安全性でさえ確保されていないことが次々と起こっています。個人情報の扱いを民間任せにしていることに対しての市長の認識を伺います。
山中市長:行政が管理する個人情報の取扱いについてですが、民間への委託は個人情報保護法も想定するところであります。行政として責任を果たすために、委託を行う際は横浜市個人情報保護審議会に報告を行い、アドバイスを頂いております。また委託契約に合わせて、相手方と取り交わす特記事項を4月に刷新し、委託先での現地検査を年に1度実施するなど監督を強化していきます。
物価高騰で苦しむ全世帯、市内中小企業へ直接支援を
宇佐美議員:次に、市第21号議案 令和5年度横浜市一般会計補正予算(第2号)についてです。
この歴史的な物価高騰の中、今定例会前に、党市議団として、市民のみなさんからの声を取りまとめて市長へ緊急申し入れを行いました。今回、議案として示された中には、学校給食物資購入のための予算や保育施設・高齢者施設・障害者施設への光熱費や食材費に対する補助も含まれており、多くの市民が求めているもので歓迎します。
しかしその一方で、例えば「商店街プレミアム付商品券」や省エネ家電のエアコン、冷蔵庫、LED照明器具などを購入する際、購入金額の20%還元、上限3万円などの施策は、支援の効果も限定的です。
この3年に及ぶコロナ禍での失業や収入減に加えて、物価高騰が市民生活に追い打ちをかけています。そんなときに、省エネ家電の購入補助よりも先にやることがあるのではないでしょうか。本市として、市民生活の実態をしっかり把握する必要があると考えますが、市民生活の実態をどう把握しているのか、市長の見解を伺います。併せて、歴史的な物価高騰の波を受け、6月からは、電気代の値上げが決まっています。この電気代の値上げについて、何らかの手立てを打つことが必要と考えますが、市長の認識を伺います。そして、国へ、市民生活を守るための働きかけを行うことを要望します。
山中市長:市民の厳しい生活自体に対する認識についてですが、これまでのコロナ禍の影響に加え長引く物価の高騰が生活を直撃して、様々な不安を抱える方々が多くいらっしゃると認識しております。今後も引き続き市民の皆様の声に耳を傾け状況を把握していく必要があると認識しております。
電気料金の値上げに対して、市として対策を打つべきとのことですが、電気料金の値上げに対しては国が対策を講じてきたところであり、9月までその措置が行われます。その後も国において必要な措置がなされると認識をしております。
宇佐美議員:今回の補正でも非課税世帯への支援が盛り込まれています。非課税世帯への3万円の支給を速やかに実施することを強く要望します。そして、非課税世帯だけではなく、多くの市民が困窮しているのが現状です。分断と格差を生むような施策ではなく、全世帯への給付型の支援を検討し、市民生活を支えることを検討してはどうかと考えますが、市長の見解を伺います。
山中市長:低所得世帯への支援だけでなく、全世帯へ給付型支援を行うべきとのことですが、今回の給付金は物価高騰の負担感が大きい低所得世帯への支援といった交付金の趣旨と、限られた財源の中でより支援を必要としている生活者への支援という観点から対象者を決定いたしました。
宇佐美議員:市内の畜産業をされている方々への支援は盛り込まれていますが、今回は、農家への支援がありません。飼料代の高騰幅が肥料代と比べて大きいこと、JAが肥料については、補助をしているということが理由と聞いていますが、農家のみなさんも様々な影響を受けています。畜産業同様に農家への支援も検討してはどうかと考えます。市長の認識を伺います。
山中市長:畜産業同様、農家へ支援することを検討するべきとのことですが、これまでも畜産や野菜・果樹などを栽培する農家の皆様が安定的に経営を持続できるよう様々な支援を実施してきております。特に肥料や飼料等の価格高騰に対してや国・県さらには、JA横浜と協力をしながら農家の営農環境に応じた支援を実施してきております。引き続きJA横浜とも十分に連携をした上で、農家のための施策を展開してまいります。
宇佐美議員:市内中小業のみなさんへの支援が今回の補正では『ものづくり成長力強化事業(グリーンリカバリー設備投資助成事業)』となっており、こちらも新たな設備を購入する際に補助を受けられるというものでしかなく、これが直接事業を継続させるための支援になるのか疑問です。原材料の価格高騰を取引先への請求として転嫁できずにいる経営者を支える支援を検討してはどうかと考えますが、市長の見解伺います。
山中市長:価格転嫁出来ない業者に対して直接支援をすべきとのことですが、民間の調査によると価格転嫁できた理由として、既存の商品やサービスの改良・新商品や新サービスの開発・新たなアフターサービスの提供などが挙げられております。引き続きIDEC横浜のワンストップ相談窓口におきまして、それぞれの事業者に寄り添い提供する商品やサービス水準の向上を図ることにより、必要な価格転嫁ができるよう支援をしてまいります。
宇佐美議員:価格転嫁については、弁護士が同行し、取引先に転嫁させても、取引を続けるようにという説得を行うことをしていると聞いていますが、問題は、価格転嫁だけではないということも認識し、もっとしっかり中小企業・小規模事業者に寄り添った施策を実施していただきたいと考えます。まずは、中小企業の経営者のみなさんが苦慮している労働者のみなさんへの賃金を上げるための後押しができるような施策を実施していただきたいと考えますが、市長の見解を伺います。
山中市長:中小企業で働く方々の賃金が上がることも必要とのことですが、物価高騰で生活に大きな影響を受けている働く方々にとりまして賃金が上がることは、大変重要であると考えます。
国はリスキリングや税制の優遇などによる賃上げの働きかけを強力に実施しております。本市ではリスキリングや賃金でインセンティブが加わる国の補助金の活用支援を行い、賃上げに繋がるよう事業者に応じた支援を継続して参ります。
宇佐美議員:さらに小売店では、客足が遠のき、売り上げが減少する中でも、固定費は必ずかかる経費です。この支払にも苦慮している経営者も多く、経営を続けることが困難になっているという声が私の所にとどいています。こういった小売店などへの家賃補助などを検討してはどうかと考えますが、市長の見解を伺います。
山中市長:固定費を支払いに苦しむ小売店への家賃補助などを検討すべきとのことですが、固定費の支払いなどにあてる資金繰りの支援に加え、商店街プレミアム付商品券事業、商店街集客力促進事業、省エネ家電購入促進事業など小売業の売上増に繋がる施策にスピード感をもって取り組んで参ります。
軍事費を増やしても国民の暮らしは豊かにならない
宇佐美議員:今後、いつまで続くのか予想できない物価高騰の中、政府は、5年間で43兆円もの軍事費を増額することを言明しています。軍事費を増やしても国民の暮らしが豊かになることは、ありません。なぜならば、武力では、平和はつくれないからです。 憲法9条を持つ国として、他国の戦争に加担することは、絶対に許されません。
日本共産党は、市民・国民の命と暮らしをしっかり支えるために軍拡ではなく、労働者の賃金を上げる、年金の引き下げではなく、引き上げを行い、生活保護費の増額など社会保障の充実で、しっかり市民・国民の懐を温め、消費喚起を促し、経済の好循環を生み出すことを求めています。さらに消費税の5%への引き下げで、多くの市民・国民が恩恵を受けられる社会に変えていくために引き続き力を尽くしてまいります。
以上のことを表明し、質問を終わります。