議会での質問・討論(詳細)
2022年10月14日

■決算討論 大貫憲夫2022年10月13日

本会議の発言全文

2021 年度一般会計決算に賛成 最大の理由はカジノ・巨大劇場の中止

大貫:日本共産党を代表して、2021年度一般会計決算に賛成し、国民健康保険事業、港湾整備事業、市街地再開発事業、みどり保全創造事業、水道事業の5会計に反対の立場から討論を行います。一般会計決算に賛成する理由は、山中市長が市長選挙で掲げたIRカジノ誘致の中止と、不要不急の巨大オペラ・バレエ新劇場整備の中止という二つの最大の公約を果たしたことに尽きます。

特にIRカジノ誘致事業はアベ・菅前政権の国際観光戦略に位置づけられた最重点の国家的プロジェクトです。「国の経済政策を現場で具体的に実現するのが基礎自治体としての横浜の役割」という林前市長の持論のもと進められてきた典型的な事業です。先般出された「横浜IR誘致に係る取組みの振り返り」において、識者から「IRカジノ誘致で政策決定過程が『結論ありき』になっていた」「市長及び市当局は市民の声を踏まえた『住民自治』を体現することが、真の意味で、地域の発展と地方自治の充実強化につながっていくことを認識してほしい」と痛烈に批判されています。山中新市長の下でIRカジノ誘致が撤回され終息したことは、これまでの歴代市長の推し進めてきた政府言いなりの市政運営から脱却し、市民の声を聞き自治体自ら考え、施策を進める市政、住民参加・住民自治を基盤とする新市長時代の方向性を示すものです。わが党は、山中市長と政治的信条は必ずしも一致しないとしても、市長選で山中市長が市民と共同して掲げた公約の実現に全力を注ぐ決意を改めて表明します。

政権にいいなりの前市政

林文子前市政の基本戦略は「世界で一番企業が活動しやすい国」を掲げたアベ・菅前政権の成長戦略の横浜版そのものです。環境未来都市、国際戦略総合特区、指定都市再生緊急整備地域、グローバルMICE戦略都市、国家戦略特区、国際コンテナ戦略港湾など、これでもかという数の国家戦略プロジェクトの指定を受け、国から様々な規制緩和を与えられ、多くの市財源をつぎ込み、その路線を忠実に実行してきました。近年でいえば2020東京五輪を目指し、新市庁舎整備、高速道路北線、北西線建設、みなとみらい21地区への超豪華ラグジュアリーホテル誘致、グローバル企業の国家戦略特区住宅、東高島駅北口民間タワーマンションへの補助、南本牧などなどに多額の市費・市債を注ぎ込み、市財政を疲弊させています。実際、本市は20年度,21年度、減債基金を200億円ずつ臨時財源として取り崩さなければ予算を組めない事態になっています。

しかし、この赤字体質に至らしめた責任は、一人林前市長だけにあるのではありません。二元代表制と称して議会側からアベ・菅成長戦略を進めてきた林前市長の与党会派にもあることは誰の目にも明らかです。

今こそ地域循環経済へ大転換を

本市は2021年人口減少社会に一歩足を踏み込みました。そして、住民自治を掲げる新市長が誕生しました。時代が本市市政の転換・変化を求めているのです。

日本全体を俯瞰してみればわが国の総人口は2004年をピークに、今後100年間で明治時代後半の水準に戻っていくという予測を国立社会保障・人口問題研究所が行っています。本市の人口推計では今後毎年減少し、2060年には中位推計で320万人、下位推計で290万人前後になるとされています。今後の人口減少社会を直視し、将来に向けどのようなまちづくりをしていくのかが根本問題として問われています。地球温暖化における気候危機、そして、新型コロナウイルスパンデミック後の世界規模での情勢の変化のもと、人口減少社会という時代の趨勢に抗(あらが)い、これまでと同様に多額の市財政をつぎ込む成長戦略の路線を進めるならば、いっそうの本市の財源不足を招くことは必至であり、今来た道を歩むことになります。

今後の市政運営で求められていることは、人口減少という不可逆的な条件を能動的にとらえ、戦後、爆発的に膨張してきた横浜の都市環境を整え、地域循環経済を基本とした住民が根を下ろし生活できる、安全で住みやすい豊かな横浜市に大転換させることです。この大転換は、これまで人口減少の下での最大の課題として予想されている生産年齢人口の減少という人口動態に大きな変化をもたらし、出生率を向上させ、若い世代を呼び込み、まちは潤い賑わいを取り戻し、本市財政の好循環を生み出します。

中期計画素案は子育て支援・次世代育成に重点を置いたことを評価

先般、中期計画素案が発表されました。子育て支援・次世代育成に重点を置いた本戦略は本市の人口減少にブレーキをかけ、働く世代の割合を増加させる政策として大いに評価するものです。ただし、中途半端にせずに徹底することです。アベ・菅前政権の成長戦略に固執した林前市長の与党勢力の圧力にたいし、基本戦略を確固たる姿勢で堅持し、推し進めることが鍵となります。

中期計画素案で示された基本戦略を進めるには、当然としてそれに相当する財源が必要です。政府の不毛な成長戦略のクビキを外し、不要不急な大型公共事業の見直しを行えば財源ねん出は十分可能です。

今後の市政運営で直視しなければならないことは、林前市長2期目の2015年に国家戦略プロジェクトを踏まえスタートした目標年次を2050年とする「横浜市都心臨海部再生マスタープラン」に縛られていることです。同プランは横浜駅周辺、みなとみらい21、関内関外、山下ふ頭、東神奈川臨海部の5地区を指定し、現在も事業が進められています。さらに、今後の動きとして、新本牧ふ頭整備、上瀬谷米軍通信基地跡地での国際園芸博覧会花博、集客施設のテーマパーク構想などへの対応です。これらの事業が横浜IR誘致の振り返りで指摘されたように政策決定過程において『結論ありき』になっていないか、市民の声を踏まえた『住民自治』を体現しているかを判断の基準とし、素案でいう「創造・転換」を理念とする歳出改革を進めることです。中期計画素案で市長は、子育て支援・次世代育成に重点を置いた基本戦略への貢献度が強い策を優先するとの決意が語られています。基本戦略を徹底するためには政策の優先順位を明確にし、不要不急の事業の延期、もしくはIRカジノ誘致と同様、中止をも決断することを求めます。

最後に、住民自治を貫くための議会の在り方の問題です。率直に言って人口377万人の巨大都市横浜での住民自治の発展は容易ではありません。基本は何よりも市民の意見を聞く、そのための機会を保障することから始まります。その努力を徹底して貫くことです。その努力こそが住民自治を進める市政のあるべき姿です。

同時に議会にもその努力が求められています。IRカジノ誘致事業を振り返った時、議会として市民の意見をきき、議論に反映させる努力がなされていたかという問題です。21年1月に行われた臨時議会でIR誘致の是非を問う住民投票条例案に林前市長が付した「住民投票条例の意義は見出しがたい」「代表民主制が機能している」「議会における議論を基本とし、法定の手続を着実に進める」などとした反対意見に、同事業を二人三脚で進めた自民・公明の会派が同調し、法定数3倍を超える署名に託された市民の声を葬り去りました。確かに、議会では林前市長の与党会派が多数を占めていました。しかし、市会選挙で市民は、自分の投票した議員の考えすべてに賛同しているわけではありません。世論調査では市民の6~7割が誘致に反対していました。IR誘致問題で与党会派の議員の方々は本当に市民の声を聞かれていたのでしょうか。しかも、自民党の議員の大多数は、市長選でIRカジノ誘致に反対して立候補した元国務大臣の支持に回っていたではありませんか。すなわち、市民の意見が反映していない議会、議会の外では議会と違う態度をする議員が多数を占める議会では代表民主制は程遠いものと言わざるを得ません。何よりも市民の声を聞き市政に反映させることが、住民自治の市政を進める上での議会の任務であることを指摘して、討論とします。


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