白井議員:日本共産党を代表して、2021年第4回定例会に提案された一般議案と予算議案の50件のうち、議案7件と、請願3件について討論を行います。
コロナ対策補正予算に賛成 PCR検査拡充を要望
まず賛成する議案の1つ目は、市第98号議案、補正予算の新型コロナウイルス感染症対策です。オミクロン株への警戒を含めた第6波への備えとして、市民の安心につながる内容が盛り込まれており、3回目のワクチン接種は、2月から個別接種で始まり、3月から集団接種が追加されます。高齢者施設や医療従事者への前倒し接種も発表されており、1回目接種の際、予約殺到で大混乱した教訓から、今回は個別接種から始め、区ごとに接種券配布数よりも多い予約枠が確保され、区役所で予約を代行してもらえるなど、さまざま改善が図られます。また、オミクロン株を特定できるようゲノム解析が市でも行える体制づくりも進められています。年末年始の発熱患者の診療体制を確保する医療機関等への支援が市独自の予算で行われることは重要です。本市のホームページで新型コロナ関連の情報が、区ごとに提供されるなど、市民との情報共有も進んでいます。
感染した自宅療養者を支援するため、医師によるオンライン診療や、民間事業者が保健所の依頼に基づき行う電話相談や往診も始まります。第5波の際、医療につながらないまま自宅療養を余儀なくされ、救急車へのコールが急増しました。自宅療養の不安が軽減される改善です。日本共産党市議団は、11月に第6波に備える緊急申し入れを行い、今回の補正予算に新たな対策が盛り込まれていることを評価するものですが、一方で、すすんでいないPCR検査の拡充について要望します。ワクチン接種の推進と併せた「いつでもどこでもPCR検査」の実施は、市長公約にも掲げられており、市内感染者数が落ち着いている状況だからこそ、市民が日常生活をとり戻すために必要となります。神奈川県が、国の事業を活用して感染に不安を感じる無症状者のPCR検査等を無料化するとして、検査実施者に薬局などが想定されています。市内で検査が受けられる場所を増やす方法として、本市の身近な公的施設において民間事業者に委託して実施することなども検討するよう求めておきます。
IRカジノ事業者選定委員会、新劇場検討委員会の廃止と予算カットに賛成
上瀬谷ラインの予算減額を要望
2つ目は、市第65号議案、横浜市新たな劇場整備検討委員会条例の廃止、及び、補正予算、新たな劇場計画検討費の執行残1,800万円の減額です。整備ありきという前市長のあまりにも独りよがりな主張に、行政がデータを無視し新たな調査もなく従ったもので、廃止は当然です。
3つ目は、市第66号議案、横浜市特定複合観光施設設置運営事業者選定等委員会条例の廃止、及び、補正予算、IR推進事業費の減額です。市長によるIRカジノ誘致の撤回に伴い、事業者選定等委員会が廃止され、IR推進事業費の当初予算から執行見込み額を引いた1億5,600万円の減額で、当然の措置です。前市長のもとでの誘致に至った市の意思決定の経緯についての検証が実施されるにあたっては、解明が待たれるのは、政府・経済界から市長サイドにどのような働きかけがあったのか、いつどこで誰がどういう議論の上で最終決定したのか、誘致決定後、政府とどういう折衝を行ったのか、本市への財政貢献・経済波及効果は客観的で現実性のある数値であったのか、2015年策定の山下ふ頭開発基本計画はIR誘致のための前提づくりではなかったのかということです。本市が取りまとめて外部有識者に評価を仰ぐやり方では、客観性・公平性に限界がありますから、第三者委員会を設置しての検証を改めて求めておきます。
この際、減額補正に関連して、要望があります。2027年に予定されている花博に間に合わせるとして推進してきた新交通システム上瀬谷ラインの事業費の速やかな執行停止です。本市が事業参画を依頼した第三セクターの横浜シーサイドラインは参画しないことを決定したことから、花博前の開業には間に合わないこととなりました。花博跡地を含む将来のまちづくりに向けて採算性・事業性を検討するとしていますが、テーマパーク構想が見通せない中では、上瀬谷ラインの事業化は成り立ちません。よって、上瀬谷ライン事業関連の2021年度計上予算8億1,063万円は、早急に減額補正すべきです。
プロスポーツ優先で、市民利用の制限につながりかねない横浜市スポーツ施設条例の一部改正に反対
次は、さまざまな問題点があることから、賛成できない議案、及び、請願の態度についてです。
1つ目は、市第60号議案、横浜市スポーツ施設条例の一部改正についてです。磯子区にある、たきがしら会館には、体育室・武道場・ホールなどがあり、スポーツや文化活動に利用されており、今回、公の施設に位置付けられ、指定管理者制度が導入されます。都筑区にある横浜国際プールのメインプールは冬場はスポーツフロアとしてテニス・バレーボール・フットサル・バドミントンなどに利用されています。たきがしら会館の体育室、及び、横浜国際プールのスポーツフロアは、10年以上プロバスケットボールの試合・練習で優先利用されていることから、特例として、他の利用申請者と競合した場合に、指定団体に優先利用を認めることをスポーツ施設条例に規定するとしています。プロスポーツチーム支援の観点から行われるものですが、一方で市民利用の機会が損なわれることが懸念され、公の施設のあり方としては問題です。
「旧市庁舎街区の地区計画の変更」に関わる条例改正と関連請願の不採択に反対
2つ目は、市第64号議案、横浜市地区計画の区域内における建築物等の制限に関する条例の一部改正、及び、請願第12号、旧横浜市庁舎建物売買・土地貸付契約の取り消しを求める請願についてです。関内駅前地区の再開発事業において、本市は巨大な集客力を目指した「国際的な産学連携」「観光・集客」というコンセプトを策定し、これにより大手デベロッパーから提案を募集し、旧市庁舎街区は、高さ160メートルの高層ビルをメインにした計画が採用されました。基本協定締結時の事業計画は約170mに変更しています。そしてこの計画を実現するために、本市は建物の高さ制限を現行の31mから170mに大幅に緩和です。横浜の1丁目1番地という歴史を持つ街が、規制緩和により大きく変貌しようとしています。提案はコロナ禍前の2019年に出され、巨大な集客力をめざしたコンセプトのデータはパンデミック前に集められたものです。そのデータを使った提案はコロナ禍を経験した社会では成り立ちません。国際的な産学連携の企業の入居状況をチェックする仕組みもありません。ゼロベースで地域全体のバランスのとれた街づくりへの見直しが必要です。
請願で問題とされている、旧市庁舎の土地の賃料は、土地鑑定2社の価格に乖離がある中で年額2億1,000万円としたことについて、せめてもう1社鑑定を加えるべきであり、建物売却価格についての未実施となっている格差率の定量的検証を追加して行うことと併せて、第三者による検証のやり直しが必要です。「旧市庁舎街区の活用事業の見直し等を求める」陳情も多数出されているように、市民は旧市庁舎街区の開発そのものに納得していません。採択が当然であり、不採択に反対です。
横浜こども科学館、3つの海づり施設の指定管理者の指定に反対
3つ目は、指定管理者の指定議案2件についてです。市第86号議案は、横浜こども科学館の指定管理者に、現在の指定管理者が引き続いて代表企業となる事業体を指定するものです。横浜こども科学館の設置目的は「青少年に対して科学に関する知識の普及・啓発を図るとともに、学校などの教育機関と連携することで、青少年の創造性をはぐくむための科学体験、学習機会を提供すること」とされており、直近の職員体制は、37名中、正規雇用が1名と伺っています。こういった職員体制では、設置目的の達成に限界があるのは明白です。まさに指定管理制度の問題点が現れており看過できません。
市第92号議案は、港湾施設の指定管理者の指定で、本牧、大黒、磯子の3つの海づり施設を一括で募集し、1社しか応募がなかったため、継続して市外の大手企業を指定するとしています。3施設一括でなく、1施設ごとの募集であれば、市内の団体が応募することも可能となります。中小企業振興基本条例に盛り込まれている市内企業育成の観点がなく、コスト削減を最優先とした一括募集に問題があり、賛成できません。
保育・子育て、教育の拡充求める各請願は市民に願い
続いて請願の不採択に反対の立場から、述べます。
請願第13号は、1万5,000筆を超える署名とともに出された、保育・子育て支援施策の充実を求めるもので、補助金の改善、保育料軽減、保育士の配置基準の改善、保育現場で働く看護職員、事務職員、栄養士、調理員の正規化や増員をするための予算措置、職員の賃金や労働環境の保障など、保育環境の改善、保育予算の拡充、保育政策の充実が挙げられています。特に、2年にわたるコロナ禍の中で、浮き彫りになった、社会維持に不可欠な仕事に就くエッセンシャルワーカーの脆弱な勤務体制と処遇の改善は待ったなしですから、採択が当然です。
請願第10号は、教育格差をなくし、子どもたちに行き届いた教育を求めるとし、20人学級を展望したさらなる少人数学級、教職員の増員等を求めるものです。国の35人学級が進み始めていますが、世界標準となっている20人学級に比べて、あまりに遅れている日本の少人数学級ですから、市独自の予算で求めるのは当然です。趣旨に沿った採択を求めて、討論を終わります。 (3,656文字)
「市大圧力」請願は不採択に
請願第8号、横浜市立大学が発出した文書等への不当圧力問題について討論します。委員会不採択の結論には賛成です。
請願の趣旨は、8月の市長選の告示前に、当時立候補予定者だった山中氏及び横浜市会議員らが、横浜市大当局に対して、理事長・学長名の文書再発出を要求したことが不当圧力であり、大学の自治・政治的中立性を侵害した疑いが生じたとして、横浜市会において、事実解明等を求めているものです。
市大が最初に発出した理事長と学長名による6月16日付の「今朝(6月16日)の新聞報道について」と題する文書は、横浜市大の市長選挙に対するスタンスを徹底するためのものであり、「横浜市の設置する公立大学として教職員の選挙活動および政治活動へ関与することはありません」等の内容で、教職員3000人に一斉にメールで発信しました。それがそもそもこの問題の発端です。そこに書かれていることは、構成員の教職員であるならば誰でも承知しておかなくてはならない常識ではないのでしょうか。しかも、被選挙権は憲法で保障されていることであり、立候補する・しないは、本人が決めることです。新聞報道を受けてその日に教職員に向けて発信した文書としては、必要のない内容であり、「ご本人への連絡がつかない状況が続いています」との不適切な表記など、慎重さに欠けていると言わざるを得ません。請願審査では、多くの会派からこの文書発出は適切な判断との表明が繰り返されましたが、日本共産党は、それには与していないことを明確にしておきます。以上、請願不採択の賛成討論とします。