市民の不安感に対応する方向性が見えない中期計画
かわじ議員:日本共産党を代表し、質問します。
まず、計画の理念についてです。
計画案では、達成指標について「市民から見てどのように生活が向上するかがより重要」であり、「施策や事業の『量』よりも、『成果』を重視して指標を設定」したとしています。しかし計画案の基本政策はこれまでの計画の延長線で、今年4月に出されたこの「新たな中期計画の方向性」で示された「市民生活を守るため、増大する市民の不安感に対応」するとした方向性も見えなければ、見込み額も極めて不十分です。
市民の意識調査では、この10年間で「生活の心配ごと」を抱える市民が増え、今年「心配ごとはない」と答えた人は、過去最低の11.9%です。
中期計画には、市民の苦難・不安を軽減し、生活の向上を実感できる方向性を鮮明にすべきです。市長の見解を伺います。
林市長:これまでも、その時代の社会経済情勢や市民ニーズをふまえ、福祉やまちづくりなどの施策にバランスよく取り組んでまいりました。中期4か年計画においても、市民生活の不安の高まりなど、今日的課題に的確に対応するため、市民生活の安心充実を基本政策の柱のひとつとして位置づけました。
具体的には、暮らしを支えるセーフティーネットの確保や、医療環境の充実など誰もが安心して暮らせるための施策を積極的に推進しています。
かわじ議員:計画案では、財政運営の不足750億円の対応として、本市独自の事業の見直しや市民利用施設の受益者負担の適正化などをあげていますが、敬老パスの新たな負担や、保育料の値上げ等はすべきでないことを申しあげておきます。
これは、日本共産党市議団が実施中の「子育てや暮らしの困りごと」アンケートです。今日で4187の回答です。アンケートには、「保育料が高い」「保育園に入れない」「子どもの医療費は18歳まで無料にしてほしい」「中学校まで給食実施にしてほしい」など、子育て世代の直面している悩みや要求など多岐にわたっています。
出生率の引き上げや生産者人口の転出抑制につながり、長期的には市税の増収につながる子育ての応援について、どのように計画に盛り込まれているのか、伺います。
小松崎副市長:いま先生がおっしゃったなかで、たとえば生産人口の減少に歯止めをかけていくと、こういう重要な課題があるわけございますけれども、これは一義的には国全体の課題でもあるわけでございますけれども、本市としても、次世代を担う若年層が横浜に住みたい、あるいは住み続けたいと、そういうふうになることが必要でございます。従いまして、子育て環境の充実、そういうことがキーポイントであることから、市長先頭に施策の柱として、全庁あげてそういった関連項目をこのなかに盛り込んで取り組んでいくというふうにしているわけでございます。
子育て世代の経済的支援ために子ども医療費無料制度の拡充を
かわじ議員:それでは具体的に、伺ってまいります。
最初は、安心して子どもを産み育てる施策についてです。
これですね、この「横浜市民生活白書2009」によれば、理想とする子どもの数は3人が最も多く54%ですが、実際に持つつもりの人数は2人です。理想より実際が少ない理由は、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が最も多く32%となっています。
子育ての経済的支援がもっとあれば「もう一人産もうかな」と思う人も増えるでしょう。経済的な支援の大きな要素であり、県下で最低レベルの子どもの医療費助成制度を拡充すべきと思いますが、伺います。いかがでしょうか。
立花健康福祉局長:子育て世帯の経済的負担を軽減して、子どもを産み育てやすい環境をつくっていくということは本市にとって重要なテーマでございます。ただ一方で、たとえば東京23区なみに中学卒業まで医療費を無料にするには、本市の場合、試算しますと、約77億7000万円かかると、毎年ですね。そういう状況があります。厳しい財政状況ふまえた慎重な検討も必要というふうに考えております。
ただ、本来医療費の助成は全国どの市町村にいっても同じ水準で受けられるということが望ましいというふうに思っておりますので、自治体間の格差を少しでもなくすように、そういう政策を打ち出すよう、国にも働きかけております。
かわじ議員:小学校卒業までだったら、いくらですか。
立花健康福祉局長:小学校卒業まで拡大をしますと、あと7億8000万円かかりますね。
かわじ議員:ぜひ、やっていただきたいと思います。
本市はこの間、保育所待機児童解消に向けて取り組んできたにも拘らず、解決に至っていません。景気回復が見込めない中、子育てしながら就労を希望する人が今後一層増えることが予想されます。計画案では、認可保育所等の定員枠を5万3300人としていますが、はたしてこれで足りるのでしょうか。また、一時預かりを拡充するとしていますが、保育の質をどのように保つのか、合わせて伺います。
鯉渕こども青少年局長:中期計画の原案では、今後とも保育所入所申し込みが増えることを見込んで、保育所等の定員を約9800人増やすことにしております。一方、需要の拡大に合わせまして、質の向上についても取り組みを進めます。現在、保育所における質の向上のためのアクションプログラムを検討しておりまして、年度内に策定し、研修等により集中を図っていきます。また、来年度から試行を開始する市立保育所を活用した広域支援ネットワークにおいても、認可外の保育施設も含めまして情報やノウハウの共有を進めてまいります。
(質問終了後に局長より数字の訂正がありました)
立花健康福祉局長:さきほど、小児医療費の試算を申しあげましたけれども、数字に訂正がございますので、訂正をさせていただきたいと思いますが、先ほど私は小学校3年までというふうに聞き取りまして、かつ小学校3年まで所得制限を撤廃した場合に7億8000万円かかるというふうに申し上げましたが、小学校6年までと言うことだと思いますので、それで試算をいたしますと、所得制限を撤廃してかつ年齢を小学校6年まで拡大するということになりますと、59億1000万円かかります。訂正させていただきます。
最低レベルの教育費を増やして、ぼろ校舎の改修と中学校給食の実施を
かわじ議員:次は、教育予算の拡充についてです。
本市の教育費は年々後退し、2009年度は833億円、一般会計に占める割合は5.7%で、政令市で下から2位です。ちなみに東京23区で最も高い品川区は18.1%です。計画案は「未来を担う子どもたちを育成するきめ細やかな教育の推進」としていますが、それにしては教育費が少なすぎます。ぼろぼろ校舎といわれる劣悪な教育環境を改善し、中学校給食を実施するためにも、教育費を増やすべきではないでしょうか。市長に見解を伺います。
林市長:未来を担う子どもたちを育成する上で、教育環境を整えることは非常に重要です。依然として厳しい財政状況ではございますが、引き続き教育予算の充実に向けて、努力してまいります。
かわじ議員:党市議団が実施中の市民アンケートのサンプル500通の集計では、中学校給食について、48.8%が「小学校のような完全給食が必要」と答えています。全国8割で実施されており、市民要望の強い中学校給食、先ほど検討しているとのことですから、期待しております。
それから、小学校の空調設備の設置として90億円が、計画原案で追加されました。子どもの健康を心配する市長のご決断に敬意を表しています。子育てに力を入れるとした市長、子どもの医療費無料制度の拡充についても、先ほど小学校卒業までは7億円ということですので、ぜひ英断していただきたいと思います。いかがでしょうか。
山田副市長:すいません、先ほどの市長の答弁に関して、若干補足をさせていただきたいんですけれども、伸び盛りの子どもが昼を抜かしたりパン2つで栄養が偏るとか、そういった問題についてどういった対応ができるかということについて、研究を始めているというふうに申し上げたわけでございまして。以上です。
かわじ議員:非常に憤慨しております。聞いたことに対して答えてください。
様々な施策を進めるにも、その財源を示さなければ、無責任です。財源確保の要は、不要不急の大型事業の見直しによる歳出の削減と、横浜経済の活性化により確実に税収の確保です。しかし計画案では、相変わらず横浜港のハブポート化に690億円、横浜環状道路整備に430億円、つぎ込もうとしています。
大型船を呼び込むための大水深港に莫大なお金をつぎ込むのはおかしい
そこで、港湾整備計画について伺います。
計画案では南本牧ふ頭整備を進めるとしていますが、競争相手としている釜山港の取り扱い物流量は横浜港の4倍以上、比較の対象になりえません。地理的条件からいっても横浜港が東アジアのハブ港になりうるのか、見解を伺います。
金井港湾局長:横浜港は、雇用はじめ、本市経済に大きな役割を果たしております。また、我が国の産業を支える重要な経済基盤であり、今般国から国際コンテナ戦略港湾の指定を受けました。このため、国、民間事業者とともに、この計画の達成に向け、全力で取り組み、様々な課題を解決し、ハブポートの実現を目指してまいります。
かわじ議員:計画案では、コンテナ貨物取扱量を400万~480万TEUを目標値にしていますが、2008年のリーマンショックの年の取扱量は348万TEUであり、既存ふ頭を再整備するわけですから目標数の処理能力があるのではないですか。直近の取扱量は280万TEUです。先行き不安な経済動向のいま、大型コンテナ船が来るとは限らず、MC-3の整備はとめるべきだと思います。伺います。
金井港湾局長:世界の海運動向を見ますと、基幹航路におきましては導入船舶の大型化が急速に進んでおります。次々の超大型コンテナ船が就航しております。そのため、横浜港においては基幹航路の維持・拡大を図るため、マイナス20メートルの大水深岸壁をもつMC-3コンテナターミナルの整備を進めているところでございます。
かわじ議員:はたしてこうした大型船が横浜にくる見込み、あるんですか。どんなふうに見込んでおられるのか、伺います。
金井港湾局長:現在でも南本牧ふ頭および本牧ふ頭において、一度に8000個から1万個を輸送できる大型船が寄港しております。今後、横浜港に大型船を寄港させる大型船社が一度にコンテナを1万3000個程度輸送できる船舶を基幹航路へ投入することが予定されています。同程度の船舶が寄港するためには、水深マイナス18メートル以上の岸壁が必要となります。
かわじ議員:あくまでも予定されているということで、横浜にそういった大型船が来るっていうふうな方向が、本当に先が見えているのか、伺っているんですが、もう一度お答えください。
金井港湾局長:現在でも横浜港には北米、欧州、アジアと結ぶ21の基幹航路が寄港しております。これらの基幹航路においては、順次先ほどの大型船が投入されておりますので、船舶の大型化に対応した大水深バースの整備は欠かせないということでございます。
かわじ:大型船を呼び込むために大水深の港を作る。これでは本当に見通せないにも関わらず、莫大なお金をつぎ込むのは、やっぱりこれはおかしいと思うんですね。
こんな少ない中小企業・商店街支援費で本当にできるのか
次は、中小企業支援策についてです。
計画案は、「市内企業の約99%を占める中小企業は、本市経済の発展と市民の雇用機会の確保に貢献しており」、「経営基盤の強化のため、基礎的支援サービスの充実を図る必要がある」としています。しかし、市内中小企業の活性化のための見込み額は4年間で2490億円ですが、2430億円の資金調達支援を除けば60億円です。年平均わずか15億円。求められる基礎的支援が本当にできますか。伺います。
渡辺経済観光局長:最近の急激な円高で、景気の持ち直しが一気に下方修正されたことにみられるように、我が国の経済情勢につきましては、引き続き先行き不透明だと。そうしたなかで、中小企業がおかれている状況は、現在はもとよりこの先についても大変厳しいといわざるを得ないというふうに考えております。そうしたなかで、少なくとも中小企業のセーフティーネット対策としての資金調達支援につきましては、十分な融資枠を設定する必要があるという考え方で、万全を期した枠を設定してものでございます。なお、それ以外の施策におきましても、経営相談などの基礎的支援はもとより、中小企業の成長支援としての研究開発あるいは設備投資支援、こうした施策についても大幅な拡充・強化を図っておりますので、ご理解をいただきたいというふうに思います。
かわじ議員:答弁にあったように、本当に対策というのが、支援・融資、あとはそのほかのことについては考えられていないというふうに、私はもう実感しました。計画案は「中小企業振興基本条例に基づき」、「総合的な施策実施を図る必要がある」としています。どの様にその条例を具体化しているのか、伺います。
渡辺経済観光局長:中小企業振興基本条例の主旨をふまえまして、中小企業の技術・経営革新を後押ししていくことが、市内経済の持続的な発展のためには不可欠でございますので、これを横浜版成長戦略のひとつに、ご承知のとおり、位置付けをいたしました。具体的には、新技術・新製品開発などのイノベーションの促進、経営相談や金融支援などの経営基盤の強化、さらには、販路開拓、企業間連携なども重視しているところでございます。
かわじ議員:たとえば、追加された小中学校の空調設置等、これは整備手法、これこそPFIではなくて、条例の精神で、地元中小企業の仕事興しにいかすべきではないでしょうか。意見として、述べておきます。
次は、商店街についてです。計画案では、商店街を市民の身近な買い物の場、地域の交流の場として、大切の存在と位置付けています。しかし商店街の活性化等の見込み額は2億円で、あまりにも少なすぎませんか。昨年度実施した商店街の実態調査の結果、これやったわけですから、これを活用して、地域の特性や要求など、まちづくり全体を網羅した商店街活性策に作り替えるべきですが、伺います。
渡辺経済観光局長:まず基本的な商店街に対する考え方ですけれども、これは先生と同じだと思います。商店街は身近な買い物の場であるとともに、地域の交流の場としての役割や強みがありますので、市民生活にとってあるいは横浜の街にとって、欠かせない存在であるというふうに考えております。従って、本市といたしましても、まず商店街の魅力づくりに向けた経営相談とか勉強会などを通じまして、先生のご紹介いただきました昨年の調査結果をまずご自分で受け止めていただく。そして、自ら商店街自身が民大認識を深めて意欲を高めていただく、まずそういうお手伝いから始めたい。また、従来にも増して、販売促進事業やイベント、環境整備と、こういったものに積極的に取り組む商店街や商店主の方々、これを様々な施策で全力で応援していきたい。施策の内容につきましても、けっこうスクラップアンドビルドとして、ニーズの高いもの、重要度の高いものに集中、重点配分をしていきたいというふうに考えております。
市内米軍施設の早期返還を中期計画にしっかり位置づけて目標を明確に
かわじ議員:最後は、市内米軍施設の返還についてです。
核兵器廃絶運動の世界的な広がりが見られるように、世界は戦争等力による問題解決ではなく、平和的・外交的解決への流れへと進んできています。こうした中で市政の重要課題である市内米軍施設の返還については、目標値も方針もなくコラムだけ。早期返還を中期計画にしっかり位置づけ、目標を明確にすべきと思いますが、市長の見解を伺います。
林市長:市内米軍施設・区域の返還は、継続的に取り組むべき重要な課題であり、中期4か年計画のなかで取り上げています。一方、米軍施設・区域の返還については、日米安全保障条約および日米地位協定にもとづき、国において取り扱われることから、具体的目標値を設定することが困難なため、達成指標をかかげておりません。今後とも市内米軍施設・区域の返還に向けて、市民、市会、行政が一体となって取り組んでいきます。
かわじ議員:たとえば、運動の目標なども、やっぱり明確にしていただきたいですね。
池子の米軍家族住宅建設戸数は当面400戸で日米合意され、本市は協議に応じるとしていますが、市是である「市内米軍施設の全面返還」に逆行しており、「協議に応じる」姿勢を転換すべきではないでしょうか。また、鶴見貯油施設やノース・ドックについては文字さえありません。見解を伺います。
小松崎副市長:本市は16年9月に発表いたしました市内米軍施設に関る本市の考え方、ここでお示しをしましたとおり、横浜市域での住宅等の建設、施設の返還に係る具体的協議に応じるとしたわけでございます。自然環境を出来る限り保全をして、周辺地域への配慮が必要と、こういう観点からも引き続き、国の動向をよく見極めながら、池子については適切に対応してまいります。
それから、返還合意がなされていない鶴見貯油施設、横浜ノース・ドックの返還、これにつきまして、毎年市内米軍施設の早期全面返還を国に要請してきております。今後も、市長を先頭に、様々な機会をとらえながら、積極的に働きかけてまいります。
かわじ議員:池子住宅の建設は、緑を破壊することですよ。CODO-30とも、逆行する、こういうことだと思うんですね。施設の増強そのものです。市長、本当にこれでいいんですか。協議に応じることは全面返還の市是の方向だと思っておられますか。こうした態度は改めるべきことを申し上げて、質問を終わります。