市長が掲げた市民の声聞く市政を一緒に実現していく
大貫議員:日本共産党を代表して、2021年第3回定例会に提案された一般議案37件、補正予算を含む予算議案6件に賛成し、請願第6号の不採択に反対の立場から討論を行います。
今議会は、山中新市長が初めて本議場に登壇された定例会です。所信表明演説で市長は、「地域で活動されている皆様との協働による『住民自治』を実現してまいります」と決意を表明されました。これまで、「住民こそ主人公」の立場で9回の市長選挙に参画し闘ってきた私にとって、「住民自治」の旗印を高く掲げた市長が、市民運動と野党の共同によって誕生したことに、万感胸に迫る思いです。私の議員生活34年間で、これほど嬉しいことはありません。
「誰もが自分らしさを発揮して、生き生きと安心して暮らすことができる街」という市長の掲げた横浜のビジョンを一緒に実現していくため、わが党も全力で頑張ります。
感染者減少傾向にある今こそ、感染伝播の鎖絶つ体制の構築と事業者支援を
本題に入ります。補正予算は、新型コロナウイルス感染症緊急対策費として373億円が計上されました。予算額、対象事業ともその規模が小さいのが残念です。今定例会に提案された議案は、すでに決定された議会日程の関係から林前市長が策定したものを山中新市長が提案者として決裁したものです。その後、山中市長自身の判断で9月22日に追加の補正予算が提案されています。
新型コロナウイルスの「第5波」の全国的な下降傾向が見え始めています。しかし、まだまだ多くの潜在している無症状陽性者がいると同時に、いまだに入院できずに多数の方が自宅療養を続けられています。明日30日で緊急事態宣言が解除されることもあり、専門家からは冬場に向けて再拡大も指摘されています。
新規感染者が減少傾向となり、検査能力に余裕が生まれている今こそ、ワクチン接種と一体に大規模検査を実施し、感染伝播の鎖を断ち、感染源を減らす取り組みに全力を挙げる時です。ワクチン接種一本やりではなく「何時でも、誰でも、何度でも無料で」の立場で大規模検査の具体化をはかり実施することが必要です。市長が公約で掲げたPCR検査・抗原検査重点拠点の設置、高齢者施設、病院、学校、保育園等への集中検査を早期に具体化し、合わせて企業などが自主的・定期的に行っているPCR検査に対し、補助金を出し自主的検査を大規模に支援するよう国に求めることが必要です。
全国そして市内中小企業・小規模事業者は、長引くコロナ危機によって、崖っぷちに立たされ、年末に向けて年を越せるかどうか事態は深刻です。持続化給付金の再支給・家賃支援給付金の継続的支給の実現は急務です。「飲食店はもちろんのこと、それ以外で分断することなく、コロナ危機で困窮するすべの事業者を救う直接支給の実施を」との声を国に強く伝えることも、全国で最大の人口を持つ基礎自治体の長として果たすべき役割だと考えます。
指定管理者制度は全体を総括し、見直しを
次は、指定管理者制度についてです。
今議会に提案された指定管理者の指定は、スポーツ施設の指定管理者の指定をはじめ10件です。
指定管理者制度は今年で944の公の施設で運用されています。わが党は、これまで制度の弊害に着目し、制度の改善を求める立場から指定管理者の指定の提案に反対してきました。その立場は変わらないものの、制度が導入されて15年間運用されてきたことを踏まえ、「横浜市指定管理者制度運用ガイドライン」に照らし合わせ、一つ一つの事業者の実績・提案を調査し、議案の賛否を判断することとしました。
本市の指定管理者制度は、2006年から運用開始され、後追いするように2009年に「横浜市指定管理者制度運用ガイドライン」がつくられたことは、当初の制度設計そのものが不備のまま、フライング・スタートをしたことを示すものです。その後、共創推進室の制度改善の努力で、ほぼ毎年改訂版が出されました。14回の改訂は主なものだけでも33項目に及びます。今後、いっそうの制度改善のためには、運用ガイドラインが遵守されているか議会への報告、「見える化」をさらにすすめることが求められています。
指定管理者制度の問題点は、指定管理者・事業者選定が、原則5年に一度行われる事業内容の競争・コンペのための公募によって大半の施設で決定されることです。そのため、事業者は経営上、必然的に職員採用を有期雇用・非正規雇用にせざるを得ません。自治体にとっては、事業者による非正規雇用を織り込み、指定管理料の上限を引き下げることが可能となり、従前の管理委託制度に比べ経費の大きな部分を占める人件費が削減されるという制度設計となっていることです。非正規労働者を公の施設から作りだし、低賃金雇用や長時間労働など不安定な労働条件を招くことがあってはならないことであり、市民の暮らし生活を守る公の任務と相いれるものではありません。
指定管理者制度について総務省は「公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めたとき活用できる制度」としています。この立場に立ち返り、15年目の節目に立ち、本市の指定管理者制度全体を総括し、見直しすることを提案します。
所得税法第56条廃止を求める請願は採択を
最後に、請願第6号は、所得税法第56条廃止の意見書を国へ提出を求めるものです。
自営業・小規模事業者の多くは、事業主と配偶者、その家族の働きによって支えられています。にもかかわらず、白色申告をしている事業主には所得税法第56条によって配偶者をはじめ家族従業者に支払った給与が必要経費・人件費として認められていません。一方、青色申告者は給料を必要経費に計上できます。白色申告と青色申告の差をつける根拠に、白色申告に記帳の義務化がなかったことが挙げられます。しかし、2014年、国はすべての事業主に対し記帳を義務付けました。記帳問題を理由に所得税法第56条を残しておく必要はなくなりました。白色申告にするか青色申告にするかは事業主の裁量です。申告の仕方によって、実際に働いている事実を認めたり認めなかったりするのは納税者を差別するものです。
コロナ禍で苦しむ本市事業所の8割を占める、小規模事業者の事業継続を支援するためにも、税制の上での不公平は正さなければなりません。
また、所得税法56条は、女性差別の視点からも廃止しなければなりません。56条によって所得がないものとみなされ、経費計上できない家族従業者の多くが女性です。国連女性差別撤廃委員会は 2016 年 3 月「家族経営における女性の労働を評価するための所得税法見直し」を日本政府に勧告しました。第4次男女共同参画基本計画も同じ趣旨で「税制等の在り方を検討する」としています。
日本は、2020年のジェンダー・ギャップ指数 153か国中 121位に位置し、中国106位、韓国108位、アラブ首長国連邦120位の後塵を拝しています。第 56 条の廃止を求める意見書は、昨年4月で全国 543の自治体で採択されています。ジェンダー平等を実現するためにも、世界の先進を目指す国際港都横浜の市議会として国に意見書を提出しようではありませんか。
以上で討論を終わります。