2021年4月15日
横浜市長 林 文子様
日本共産党横浜市議団団長 荒木由美子
新型コロナウイルスの感染拡大は、格差と貧困の拡大、ジェンダー不平等、地球環境の危機など、さまざまな課題を浮かび上がらせました。国内景気は1月に発令された2度目の緊急事態宣言で接客業を中心に雇用環境が一段と悪化し、とりわけ収入が断たれれば、とたんに生活困窮に追い込まれる非正規雇用労働者への影響は深刻です。昨年6月、安倍前首相は「国民には文化的生活を送る権利がある。ためらわずに申請、相談を」、今年1月、田村厚労大臣は「扶養照会は義務ではない」とそれぞれ日本共産党の質問に答えています。ところが、扶養照会が生活保護を利用する上での阻害要因なっていることが、民間団体のアンケートで明らかになりました。その上、今年2月、神奈川区生活支援課において、申請権を侵害する事案が発生しました。国から「申請権が侵害されないことはもとより、侵害していると疑われるような行為も厳に慎むべきである」との通知が出されていたにもかかわらずです。これでは、必要な人に支援は届きません。
3月26日、市長は横浜市社会福祉審議会に対して神奈川区の不適切な対応についての詳細調査、原因究明と再発防止の取り組みについて諮問されました。今求められているのは、再発防止にとどまらず、これを機に誰もがためらわずに利用できるように、生活保護制度を抜本的に改善・拡充することです。
生活保護法第1条は、「この法律は日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」と定めています。法制定時の厚生省社会局保護課長は、法1条は単なる装飾的条文ではなく、最も実働的な条文であって、その制度の運用にあたっては、常にその指針となる性質のものと指摘しています。市民の命と暮らしを守るセーフティネットとして、文字どおり「誰でもためらわずに利用できる」市民に開かれた生活保護制度となるよう、以下申し入れます。
記
1.健康福祉局から発出された3月11日付通知「面接相談における適切な対応の徹底について」の留意点を、ホームページへの掲載や区役所窓口に張り出すなど、生活困窮に追い込まれ不安を抱えている市民に対し、「安心して相談・申請ができる窓口対応である」とのメッセージを見える形で発信すること。
2.窓口対応について、健康福祉局から発出された3月11日付通知「面接相談における適切な対応の徹底について」に沿った対応がされているか否かのチェックを局が定期的に行い、申請権の侵害がないようにすること。
3.相談はプライバシーが確保できるよう、個室で行うこと。
4.生活保護制度の仕組みをより分かりやすく伝え、疑問などに応えられるよう、しおりとホームページを抜本的に改定すること。
①保有可能な手持ち金について明記すること。
②定まった住居がない人でも申請できることを明記すること。
③施設に入所することが要件ではないことを明記すること。
④申請意思があることを伝えれば、申請ができることを明記すること。
⑤収入や資産の状況等を確認できる書類は、申請が受理されて審査の段階で必要であることに修正するなど、添付書類についての記述を正確にすること。
5. 申請をためらわせる義務ではない扶養照会はやめること。
6.住まいのない方については、一時的にビジネスホテルなどの利用も選択肢に入れると
もに、住まいの確保を支援すること。
7.生活困窮者にきめ細かな支援と迅速で的確な対応ができる人員体制にすること。
8.生活保護のしおりと申請書を窓口に常置すること。
9.市として、「ネットカフェ難民調査」を定期的に行うこと。
10. 上記を踏まえ、利用者の視点に立った業務の見直しと改善を図ること。
以上