かわじ議員:かわじ民夫です。
討論に先立って、9月3日の豪雨、台風15号、16号で被災されたみなさんに、心よりお見舞い申し上げます。
それでは、日本共産党を代表し、2018年度横浜市一般会計歳入歳出決算の認定に反対し、討論を行います。
異常な税金の使い方
少子高齢化が大きく進んでいます。住民にとって最も身近な行政である地方自治体が、「住民福祉の機関」として果たす役割がますます求められています。しかし、横浜市は2018年度においても住民に寄り添うどころか、安倍政権に迎合し、大企業優遇、市民サービスの切り捨て等、市政を一層ゆがめてきました。中でもカジノ誘致への前のめり、市長の私的願望である劇場への踏み込み、公共性が疑われる民間大型開発への補助金支援は異常です。
カジノIR事業者の提案を鵜呑みにしたカジノ検討報告書
2018年度は林市長3期目就任の最初の予算編成の年であり、IRカジノをめぐっても大きな動きがありました。国会では7月20日、IR整備法が成立しました。横浜市はその直後、7月23日から、カジノを含む統合型リゾート施設IR誘致検討の情報収集だとして、市内設置を想定した構想案の募集を始めました。8月20日には参入の意向を持つ事業者向け説明会を開きました。参加したのは米カジノ大手シーザーズ・エンターテーメントや京浜急行電鉄、大林組など22の企業・団体です。横浜市はカジノIRについてのノウハウを持ってないことから、構想などは全て事業者頼みです。そして誘致の是非では「白紙」としながら、「IRを導入する、しないの判断の材料のために、事業者の構想案を募集する」としたものです。構想案はIRを導入した場合の経済効果や、ギャンブル依存症対策などの懸念事項対策、想定しているIRのイメージ、賑わい創出策も必須としたものでした。構想案には12の事業者が報告し、それをまとめたのが、IR(統合型リゾート)等、新たな戦略的都市づくり検討調査(その4)報告書です。
また、2018年に中期4か年計画(2018~2021)がまとめられました。中期計画素案のパブコメでは総数2129通の意見があり、その20.3%、433件がカジノ・統合型リゾート(IR)に関する意見で、その内、否定的なものが407件(90.4%)でした。にもかかわらず、中期計画には「統合型リゾート(IR)については国の動向を見据え、検討」と素案から一文字も変わらないものでした。
今年度、6月、市内4か所で市民説明会が所で行われ、8月22日、市長は誘致宣言しました。この基になったのが、前に述べた、IR(統合型リゾート)等、新たな戦略的都市づくり検討調査(その4)報告書です。報告書は明らかに、カジノ推進の立場で恣意的なことは否めません。以下、主な点を述べます。
その1、横浜市「中期計画」パブコメの、IRに対する肯定・否定意見を紹介するも、その割合は示さず、大多数を占めた否定意見だった事実を隠しています。
その2、シンガポールの事例を強調していますが、横浜市との類似点はほとんどなく、参考にはなりません。シンガポールは東南アジアにおける交通の要衝であり、東南アジア諸国やオーストラリアに近いことなどもあり、約7000社の多国籍企業の拠点です。日本は北東アジアの外れに位置するため、中国、韓国、ロシア、など周辺国の交通要衝にはなりえません。ましてや韓国やマカオにはカジノがあり、カジノ目的に日本や横浜を訪れることは低いでしょう。インバウンド目的のカジノ誘致ならば、誘致計画時点で破綻です。だから調査報告書は、カジノの標的を日本人としたのです。
その3、観光庁のデーターを基に、観光客の日帰りや宿泊、消費金額を、横浜市と全国・東京都・大阪府とを対比し、グラフで示していますが、比較の仕方が間違いです。観光庁は市区町村別と都道府県では、数値の表章根拠が違うものを、比較の統計資料にすべきでないとしています。ところが、報告書は横浜市の訪問観光客の日帰り・宿泊・消費金額などを恣意的に低く見せる為に使っており、市民・議会を欺くものです。
その4,訪日外国人の旅行消費額に占める娯楽サービス費の割合が諸外国と比べて低いとしています。しかし、観光庁の訪日外国人の消費動向調査では「日本食を食べること」96%、「ショッピング」82%、「繁華街の街歩き」74%、「自然・景勝地観光」64%です。これは、日本の観光産業の成長に必要なことはIR設置ではなく、日本の文化・観光の魅力の発信だとするものです。
その5、今後GDPの伸びが停滞し、国際的地位の低下や少子高齢化で税収が落ち込むとしています。これは、必要な経済政策や少子高齢化対策を実施しない、政府の無策によって引き起こされたものであり、それに追随する横浜市の状況を示したものです。日本のGDPの6割は家計消費です。低賃金の改善による経済成長や、経済的理由による結婚や子育てでの高いハードルなどの打開こそ急務です。
その6、IRは街づくりで様々弊害をもたらします。IRは客を施設内に囲いこむビジネスです。カジノ掛け金にポイントなどを付与し、IR内のホテルや飲食店を格安で利用可能にすれば、IR施設外のホテルや飲食店は太刀打ちできず、地域経済は疲弊です。
更にIR事業者は様々な規制緩和や都市計画の変更求めてきます。みなとみらい線のIR内までの延伸や、幹線道路の延伸などの基盤整備は、莫大な市民負担です
これまで、恣意的な調査検討報告書の欺瞞について述べてきました。
市長は18行政区全てに直接説明するとのことですが、なんの根拠もない事業者の調査データーで、市民を欺くことはやめるべきです。また、現在の横浜市会を構成する議員は、誰一人としてカジノ誘致を公約した議員はいないということも申し述べておきます。
実現性が不透明のまま建設ありきで進められているオペラ・バレエ新劇場
次は、新たな劇場整備についてです。我が党は、市民が低廉で文化を親しめるための政策と事業には、賛成です。しかし、市長の本格的なオペラやバレエを上演できる多面舞台を備え、2000席以上収容できる劇場整備の方針には、慎重に時間をかけ議論すべきです。
昨年度、新たな劇場整備の調査検討費が648万円執行され、2月末に報告書が出ました。その報告書をもとに、今年度は3000万円の調査費を計上し、新たな劇場整備検討委員会を設置し、これまでに4回開催されました。
中期4か年計画では、劇場整備の事業化検討・事業推進とあるだけで、21年までに完成とはなっていません。しかし、9月の検討委員会の中間とりまとめでは、劇場整備や運営の方向性などを検討し、年内には提言書にまとめるとし、みなとみらい21地区へと建設場所まで提案です。
オペラの実演には、指揮者1名、合唱指揮1名、舞台総監督1名 オーケストラ200名、メインキャストの歌手10数名、バレエ団数十名、合唱団100名、舞台装置、照明など少なく見積もっても総勢5~600人を要します。欧米の一流オペラハウスでは、常時1000名の劇場関係者が働いています。
欧米ではその運営を、国の多額の補助が支えています。日本では、国の多額の補助金実現見通しは全く不透明です。また劇場の運営には、音楽と舞台のそれぞれを理解している一流の監督・演出家や有名歌手と交渉できるマネージャーなど、専門家の常駐が必要です。期間契約の指定管理者などではできません。さらに、劇場運営に関する金額の多寡を正当に判断できる市の職員はいません。こうした問題を明確にせずに、市長の拙速な劇場整備は問題であり認められません。
公共性が乏しい大型開発への多額の税支援は認められない
次は東高島駅北地区開発事業についてです。三井不動産レジデンシャルなどが、主に195メートルもの超高層マンションを3棟も建設するための事業費92億円の土地区画整理事業に対して、横浜市として53億円もの補助金を出すものです。交付の根拠としている「都市再生区画整理事業」は、防災上危険な密集市街地や空洞化が進行する地方都市の中心市街地など、整備が必要な既成市街地の再生などを対象としているもので、法の趣旨からもふさわしくなく、法的義務もなく市の裁量での巨額の補助は認められません。
次は横浜駅北西口鶴屋地区再開発事業についてです。
東急や相鉄が進める総事業費388億円の再開発ビルに対し横浜市は「防災性向上、都市機能の更新などの公共性を踏まえた補助」として、総額20億円を補助するものです。ビルの低層部は商業施設で、その上部はホテル・マンションです。公共性の無い民間マンション・高層ビルへの補助は認められません。
次は、拡大解釈し逸脱した企業立地促進条例の適用についてです。
2018年8月、リゾートトラスト社「ザ・カハラホテル&リゾート横浜」、同年11月に積水ハウス社「ウエスティンホテル横浜」を、みなとみらい21地区に立地する2軒の贅沢を意味するラグジュアリーホテルを条例適用認定し、前者に約40億円、後者に48億円の支援を決定しました。
認定理由は、グローバルMICE戦略都市の推進、また、オリンピック・パラリンピックを機に国内外から観光客を呼び込むため、ラグジュアリークラスの集客力の高い施設の誘導です。ビジネスホテルの認定はなく、ラグジュアリークラスホテルに絞ったことは、MICEの補完施設とした高級ホテルが欲しいだけです。市内のホテル産業立地集積という経済的視野は考慮していません。
企業立地促進条例について、わが党は、かねてより、財政的支援中心の手法は問題あるとしてきました。その上、今回、指摘したラグジュアリーホテルへの条例適用は、条例の目的を拡大解釈し、逸脱するものであり認めることはできません。
港北区箕輪小学校用地の高額な購入費は認められない
次は港北区の箕輪小学校用地の高額な購入についてです。
港北区の箕輪小学校は、2020年4月開校予定で建設工事が進んでいます。学校用地は、隣接地にマンションを建設する大手デベロッパー野村不動産から横浜市が40億5,650万円で購入したものですが、高額だとして、2018年度に住民監査請求が出されました。学校用地は高圧電線の下にあり、道路付けや土地の形が悪く、地下埋設物や汚染土壌などがあり条件の悪い土地ですが、隣接マンション用地と同じ高額での購入に対し、かながわ市民オンブズマン等、2団体と住民による住民訴訟が起きました。高額用地の購入は「最小の経費で最高の効果を上げるよう」規定した地方自治法と地方財政法の精神に反するものであり、認められません。
ハマ弁ではなく、市民が求める中学校給食を
最後は、中学校給食についてです。
2017年度から全校実施になったハマ弁は、喫食率が低く、生徒からは歓迎されていません。なんとか喫食率を上げようと、値下げやイベントでおまけを付けるも喫食は増えません。2018年度8月から試行された当日注文は、大量の廃棄処分を生んでいます。資源循環局が推進している食品ロス削減にも逆行です。ハマ弁への固執はやめ、全国の95%以上の自治体で実施している中学校給食こそ実施すべきです。子どもたちの健やかな成長のために、できたての温かい小学校と同じような自校方式の中学校給食を早急に実施するよう求めて、討論を終わります。