議会での質問・討論(詳細)
2010年3月26日

【2010年第1回定例会】「請願討論」 河治民夫

 私は日本共産党を代表し、今予算議会に提案された請願第52号「すべての子どもにゆきとどいた教育をすすめるための請願」の不採択に反対の立場から討論を行います。
 請願は、経済危機の拡大と深刻化するリストラや雇用破壊・賃金切り下げなどが、子育て世代の家庭を直撃し、子ども達を取り巻く環境が著しく悪化している中で、全ての子ども達に行き届いた教育をすすめ、のびのび、健やかに成長できる学校をつくることを願って出されたものです。以下、請願項目にそって理由を述べます。

“お金がなくて退学”はあまりにも非情

 最初は、教育費の父母負担の軽減と、全ての子どもたちの就学の保障を求めていることについてです。
 利益優先、効率優先の新自由主義に導かれた小泉構造改革は、労働環境を大きくゆがめ、派遣労働者を生産現場にまで雇用できるように緩和しました。その結果、働く人の3人に1人、若者や女性は2人に1人が非正規雇用となりました。そして景気後退の中、調整弁のように派遣切りが行われ、労働者本人とその家族、とりわけ子育て世代に深刻な影響を与えました。政府の調査によっても、子育て世帯の多くは所得が低く、経済的支援を求める声が7割にも達しており、子どもの7人に1人が貧困とのことです。マスコミ報道では「小学生以下の子どもがいる家庭の教育費の割合は、低収入ほど高くなる傾向にある。年収200万円以上400万円未満では48%にもなり、なかには食費を削って教育費を捻出している家庭もある」と、ありました。まさに低所得者世帯の貧困と格差拡大が子ども達の教育・生活を脅かしています。
 横浜総合高校に通う子どもの親御さんから、「教材費が未納になっていることで、単位がもらえず、進学できない。子どもがかわいそう」「公立高校なんだから、教材費は何とかならないのだろうか」等と悲痛な叫びを受けました。同校の美術科や家庭科では授業料の他に実習教材費がかかるのです。同校に通う母子世帯や生活保護世帯の子どもの中には、実習教材費が未納のため単位が取れず、退学する生徒も生まれているとのことです。また、高校授業料の無償化に伴い、これまであった学校諸経費の減免制度を廃止するとしています。低所得者世帯にとっては、減免されていたPTA会費や生徒会費等、年間6590円が負担増となり、大きな痛手とのことです。お金がないことが原因で退学に追いやられるとは、余りにも非情です。経済的に厳しい世帯への教育費の父母負担の軽減は当然ではないでしょうか。市長は「ぬくもりのある市政サービスの充実」を標榜されています。であるなら、こうした厳しい家庭・子ども達にこそ支援すべきです。

困難をかかえる定時制高校生の教科書・夜食等の完全無償化を

 次は、定時制に学ぶ生徒に対する、教科書・夜食等の完全無償化を県・国に要求することを求めていることについてです。
 定時制高校生の夜の給食が昨年4月から希望制になり、そして値上げになりました。そのことで、給食希望者が大きく減ったと聞いています。さまざまな困難を抱える生徒が多い、定時制高校の特質からいって、安心して勉学に励んでもらためにも、教科書・夜食等の無償化は進めるべきです。

公立高校の募集枠を増やして入学希望者全員の受入を

 次は、全日制公立高校募集枠の拡大を県に要求することについてです。
 今、不況に伴う家計所得の減少により、私立高校生の学費滞納や退学が広がっています。同時に高校入学希望者にも大きな影響を与えています。経済的理由により、子ども達の志望校が私立から公立にシフトしていいますが、公立高校の受け入れ枠がそれに比例していません。予算局別審査で我が党が明らかにしましたが、本市の昨年の全日制高校進学率は全国最低の神奈川県よりさらに低く、87.4%、9492人もの生徒が、公立高校への進学の道が閉ざされたのです。請願の「高校入学希望生徒の進路を保障するために、全日制公立高校募集枠の拡大を県に要求すること」は当然です。

どの子に目配りできる30人以下学級の実現を

 次は、横浜市として、小・中・高の30人以下学級の実現を求めていることについてです。
 どの子にも目配りができ、行き届いたきめ細やかな指導・教育を進めるためには、少人数学級がとりわけ重要です。日本の小・中学校の1クラスの人数は、OECD諸国の平均と比べても多く、教育条件が劣っています。日本の1クラス平均人数は、2007年度において、小学校28.2人、中学校33.2人であり、OECDの平均21.4人、23.9人を大きく上回っています。少人数学級は世界の流れです。しかし日本の学級編成の基準は40人で、先進国の中で大きく遅れています。こうしたなか、国に任せてはおけないと、川崎市、浜松市、京都市、広島市など、多くの政令市で、独自の予算措置をとって教員の増員を図り少人数学級に踏み出しています。少人数学級で子どもに、行き届いたきめ細やかな指導になれば、さらに子どもの個性・意欲を引き出すことができ、学力の向上につながり、学校の荒れ防止にもつながるものではないでしょうか。

極端に低い横浜市の教育予算の増額を

 最後は、ゆきとどいた教育をすすめるために、教育予算の大幅な増額を求めたことについてです。
 すべての子どもたちがお金の心配をすることなく、のびのびと学べるようにするためには、憲法26条の教育を受ける権利を保障する立場に立つことが肝要です。憲法26条は「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする」とあり、行き届いた教育にするためにもその財源が重要です。
 一般会計に対する教育予算の割合について2010年度で18政令市を比較すると、高いほうから、1位さいたま市9.7%、2位広島市9.1%、3位仙台市8.8%となり、本市は16位5.7%で下から3番目です。順位においても構成比からいっても、教育予算が極端に低いことが数字から見えてきます。先に述べた請願要求項目を実現するにはその保障となる予算の増額が不可避です。子育て・教育は未来への投資です。次代を担う子ども達の教育環境の整備は他ならぬ横浜の未来のためです。教育予算の増額に向けて、議員の皆さんの請願へのご理解をお願いいたしまして、私の討論を終わります。


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