2019年8月7日
横浜市健康福祉局長 田中博章様
日本共産党横浜市議団
団長 荒木由美子
敬老パス制度を持続可能な制度とするために「あり方検討専門分科会」(以下検討会)が設置され、検討が始まっています。この検討に資するために3万人の市民を対象に敬老パス制度に関するアンケートが実施されます。今月の下旬に郵送されると聞いています。
アンケート自体は歓迎です。しかし、今示されているアンケートで使う回答用資料とアンケート用紙には看過できない記述が随所にあり、市民の意見集約の方法としては、その妥当性に疑問を抱かざるを得ません。
同封される回答用資料は、1ページで高齢化の進展等の図表を示して「今後の事業運営の見通しが困難」と断定しています。2ページで敬老パス利用状況を月22~25回(バス)と示し、3ページでこの25回/月を基準に事業費の見込みを積算し、交通事業者の負担割合が60%以上と結論を導き出しています。
党市議団が7月26日に視察した名古屋市の敬老パス事業は、ICカードが導入されています。2017年3月~2018年2月の12か月間の乗車実績は、市営地下鉄・市バス合計で月平均17.6回です。民営路線バスはほとんど走っていないので、この数値が利用実態の近似値と言えます。横浜市のバス月22~25回、地下鉄月7回合計29~32回の推計値とは大きな開きがあります。
敬老パスのバスでの22回~25回という利用状況は、4年間の利用実態調査からの推計と2018年に実施した敬老パス利用者アンケート結果を根拠としています。4年間の利用実態調査は、平日と休日の各1日、調査方法は、運転手によるカウントです。どこまで正確にカウントされているかは確かめようがありません。平日・休日の各1日では、曜日や季節による違いが捨象されてしまいます。利用者アンケートでは、平均月利用回数を市営バス12回、民営バス13回合計25回となっています。回答率42%で8月1か月の利用回数を聞いています。回答者のうち、無回答が約2割占めています。この集計表の推計では市営バス利用者約10万人のうち、民営バスを利用しないと答えた人が2.2万人、民営バス利用者約12万人のうち市営バスを利用しないは2.7万人となります。約8割が両方を利用したことになります。関係者からは考えられない数字との声が寄せられています。また無回答も市営バスで約21%、民営バスで約17%占めています。アンケートがどこまで正確に実態を反映しているか懐疑的にならざるを得ません。
現行の利用実態の調査について第2回検討会の議事資料5ページには、「正確な利用実態把握が困難」、利用回数は「推計値であり、利用実態の透明化が必要」と書かれています。推計値を金科玉条にした市費負担額見込みや事業者負担の大きさを試算し、このままでは制度自体がもたないと見せる手法であり、市民の判断材料の提供の仕方として間違っています。
この誤った情報提供が市民アンケート用紙でも行われています。3ページでは、実際の利用回数月22~25回で、超過分がバス事業者の負担と描いています。また、4ページでは、月25回で積算して、市の財政負担が185億円を超過するとしています。ちなみに名古屋市の一般会計(1.2兆円)にしめる敬老パス市費負担額(131億円)の比率で算出すると横浜市の場合は185億円となります。仮に185億円となったとしても一般会計での負担割合は名古屋市並みです。
繰り返しになりますが、こうした情報提供では、市民が正しい判断を下すことを妨げるだけです。急ではありますが、市民アンケートの正確性を担保するために次の措置を講じられるよう強く要請するものです。
記
1、推計値にすぎない25回という利用回数を基準として算出した市費負担と事業者負担の見込みにもとづいて制度の持続可能性に言及する記述部分は削除し、書き換えをすること。
2、書き換えにあたっては、検討会で委員から意見を聴取し、アンケートの主体は局から検討会に変更すること。