2019年6月24日
横浜市長 林 文子様
日本共産党横浜市会議員団
団長 荒木 由美子
私たちは、第2回定例会に林市長が提出された新たな劇場整備検討委員会を設置する条例案には賛同しませんでした。それは新たな大規模な劇場を横浜市が有することの必要性を市民に自信をもって説明できなかったからです。文化芸術を豊かに発展させたいからこそ、市民的論議がなく、オペラ・バレエ等の上演に関する需要・供給調査もない、設置ありきの進め方に異を唱えたものです。
新たな劇場の必要性について、市長は「374万人都市として劇場がないのは異例の状態」、「観劇やコンサートに行く市民の多くは東京に行っている」、「国際都市としてやらなくてはいけない」、「世界レベルのものが横浜にあることを世界に示したい」などと本会議場で語られました。この説明で市民の納得を得られるとは到底思えません。
横浜市が日本経済研究所に調査委託した「最終報告書」には、国内には実演団体は多くなく、自主公演もほとんどないのが実態と記されています。同報告書の有識者へのヒアリングでは、オペラは、エンタテイメントに占める観客数の割合は低い、鑑賞者の高齢化の進行、チケットが高額なため創客が必要、新国立劇場、神奈川県民ホールとの競合が課題だとしています。また、関係団体等へのヒアリングでは、オペラ・バレエのマーケットは厳しい、オペラ・バレエだけでは施設稼働は確保できないなどと事業の収益性、継続性等を疑問視する声が多く記載されています。
「日本のオペラ年鑑2017年」によると、日本全国の客席数756席以上の会場でのオペラ公演は、2015年の505回から2016年は463回へと減り、2017年は430回とさらに減少しています。現実を直視すると横浜での新たな劇場で果たしてどれだけオペラが上演されるか不安が募るばかりです。
市長が描くオペラ、バレエ、歌舞伎等を上演する大劇場に類似するものとして新国立劇場(東京都渋谷区)があります。同劇場は建設だけで555億円の巨費が投じられ、年間運営費71億円のうち利用料収入は24億円だけです。国立だからこそ設置・運営が可能だったと言えます。新たな劇場設置・運営への国からの財政支援については何の担保もありません。
以上述べたように、新たな劇場を横浜市が設置するとなると、クリアしなければならないさまざまなハードルが横たわっていることは誰しもが認めることではないでしょうか。
新たな劇場整備検討委員会で審議するにあたっては以下の措置を講じられるよう要望するものです。
要望項目
1、まず、需要把握です。オペラ、バレエに特化した新たな劇場を横浜市民が求めているのかどうかの定量的調査を行うこと。
2、オペラ、バレエの上演状況を都内、県内、市内の劇場ごとに調査すること。あわせて横浜市民の利用状況をあきらかにすること。
3、新たな劇場を設置した場合、使用するオペラ、バレエ等の上演団体(国内外)の見込み数を把握すること。
4、劇場規模を定める場合は、想定される整備事業費、年間運営費を示すこと。
5、中間とりまとめをおこない、市民意見を募集すること。