2019年6月19日
横浜市長 林 文子 様
日本共産党市会議員団
団長 荒木 由美子
横浜市は、敬老パスのあり方について横浜市社会福祉審議会に専門分科会を設置して検討します。本日、第1回が開催され、12月までに全5回程度とされています。70歳以上のうちの希望者が、一定の負担でバス・地下鉄・シーサイドラインを利用できる敬老パスは、対象者の6割、約41万4,000人が利用しており、高齢者が元気であり続け、地域の活性化にもつながる施策として横浜市の誇るべき制度です。
市は同制度を「高齢者の社会参加を支援し、もって高齢者の福祉の増進を図ることを目的とした制度」と位置づけ、事業評価書では「高齢者の外出機会の維持・増加に有効な事業となっている」と事業目的に対する有効性が確認されています。当然のこととして事業費に一定の税金を投入することに市民合意はあるものです。審議に当たっては、これらの認識を土台とすることが必要です。
しかし、所管局の健康福祉局は専門分科会設置にあたっては「高齢化の進展により、更なる事業費の増加が見込まれることなどから、持続可能な制度となるよう見直しが必要」との認識を示しています。
これによって、審議の方向性が、利用者負担の値上げ、利用対象年齢の引き上げなど現行のサービス水準の切り下げに向かうことは明らかであり、多くの市民から不安の声が寄せられています。あり方検討というならば、名古屋市が敬老パス制度の対象交通機関を名鉄や近鉄、JRへの拡大を検討しているように、制度の拡充こそ検討すべきです。
利用者負担については、2003年に導入され、2007年に「あり方検討会」が設置され、その答申に沿って2008年に3割増、2011年に再度の見直しが行われ、現行となっています。2018年度では世帯全員非課税が対象となる3,200円負担が11万5,000人、本人非課税が対象の4,000円負担が約11万人と、厳しい家計状況の方が半数以上を占めています。
高齢者の生活を支える公的年金は、金融庁が「老後の資金は年金だけでは足りず、夫婦で2,000万円が必要」と示したように、老後の生活を賄うことができない制度だということが明らかになりました。今後減ることはあっても増えることはない年金収入ですから、高齢者の暮らし向きは厳しさを増すばかりです。利用者に今以上の負担を強いることはできないという認識に立ったうえでの検討が必要です。そのためにも、検討会として高齢者の生活実態の把握は欠かせません。
今回、外出支援、社会参加等、交付効果が検討事項に上がっています。前述した名古屋市は、2013年度に社会福祉審議会の専門分科会として設置した「今後の高齢者の生きがい施策のあり方検討分科会」において、業務委託で敬老パスの制度調査を実施しました。
敬老パス交付により、社会参加効果として外出率が3割アップ、健康増進効果として外出1回あたり1400歩増、経済効果としては使った予算の2.5倍、間接効果は4倍、環境効果として4万人が自動車利用を抑制、6,500トンのCO2削減と、交付効果が定量化されています。
本市でも、名古屋市と同様な調査を行って事業評価の裏付け調査を行うべきです。そのうえで市の財政負担の在り方を市民に問うてこそ公正な行政の本来の姿です。
また、2007年に設置された前回の検討会は、市民公募委員2人が入り、中間とりまとめへの市民意見募集をしましたが、今回、委員は前回より1人少ない8人で公募はなく、また、中間とりまとめも市民意見募集も示されておらず、審議の透明性と市民参加から問題です。市民の関心が高い制度ですから、市民参画型での審議が求められます。
ついては、以下の点を申し入れます。
記
1 対象交通機関の拡大を検討テーマとすること。
2 市民アンケートを実施し、高齢者の生活実態、市民意識を把握すること。
3 名古屋市にならい、交付効果の定量的分析を行うこと。
4 中間取りまとめを公表し、市民意見を募集すること。
5 審議はインターネット中継などでリアルタイムに情報公開すること。