2017年11月9日
横浜市長 林 文子様
日本共産党横浜市会議員団
団長 荒木 由美子
介護をめぐる全国の状況は、「介護難民」と呼ばれる“行き場のない高齢の要介護者”が数十万規模とも言われ、家族の介護のために仕事をやめる介護離職が10年間で105万人を超えるなど、危機的な事態が深刻化するばかりです。国の施策は、公的給付の削減や利用料の引き上げ、介護報酬の引き下げなど制度改悪の連打で、現状打開に逆行するものとなっています。日本共産党は、安倍政権による介護切捨ての改悪に反対し、現役世代も高齢者も安心できる公的介護制度に転換する改革を政策として掲げています。
本市が「第7期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」策定にあたっては、介護サービスを必要としている人が確実にサービスを受けられるように、また、自立困難な方が、人間らしい生活が送れるよう確実に福祉につながるように、市民要望を最大限盛り込んだものにすることが重要です。
要望の第1は、お金の心配なく介護サービスが受けられることです。
市議団が今年4月に行った市民要望アンケートの回答では、高齢者、障害者、福祉施策について特に充実してほしいことのトップが、介護保険料・利用料の引き下げです。介護保険料の現行基準月額は5,990円ですが、素案では6,600円に引上げられ、2025年には8,100円程度まで上がる推計を示しました。しかし、年金が減り、消費税も医療費も増えるなか、介護保険料の負担はすでに限界です。あらゆる方法での保険料引き下げ努力が必要です。介護保険会計の黒字が続いていることは、現行の保険料が高すぎたとも言えます。約100億円の基金(積立金)を全額取り崩し、次善策として応能負担の強化による引き上げ抑制が求められます。65歳以上の1号被保険者のうち、保険料が天引きにならない年金月1万5,000円以下という方の保険料収納率は90.5%(2016年度)であり、生活困窮者への保険料減免制度を拡充すべきです。
介護保険利用料に関しての本市独自の負担軽減制度の適用者数(2016年度)は1,224人、給付額は約6,500万円です。低所得者にとって、1割負担は、サービス利用を阻むハードルです。現行の負担軽減制度を拡充し、経済的理由で介護を受けられない人をなくすことを目指すべきです。
第2は、必要に応じて受けられる介護サービスが確実に提供されることです。
特に、介護施設と住まいについてです。特別養護老人ホーム待機者数(在宅)は、2017年4月1日現在4,273人、うち要介護3以上は3,701人です。施設数は150か所、1万5,168床です。横浜市の現行の年300床という整備水準は、市長が本会議で「私は、一年強待たせるのは申し訳ないという気持ちをずっと持っていた」と述べられたように、水準の見直しがまったなしであることが明らかです。待機者が増える大元には、高齢世帯の貧困化があります。国民年金の平均受給額は月5.1万円、こうした低年金の人が要介護状態になったとき、最後まで入居できる施設は特養ホームしかありません。このことに目を閉じて、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅など月利用料で十数万円から二十数万円かかる低所得者には利用できない施設の整備ばかり応援してきた国と市の責任が問われています。素案では、特別養護老人ホームを計画1年目から2倍の600床で募集しますが、入所できるのは4年目からとなり、600床増やしても1年の入所待ち期間は短縮しないため、よりスピード感を持った増設が必要です。漂流する高齢者をつくらせない施策として低所得であっても入居できる施設・住まいの大幅拡充が必要です。
第3に、全国的に職員配置ができずベッドが空いている特養ホームが増えているように、介護現場の人手不足は深刻です。
有資格者が介護職場に就職していないのも、離職率が高いのも、最大の要因は賃金が低いことであり、処遇の問題です。処遇改善や安定雇用での介護人材確保に市が責任を持つことが必要です。
特に、地域包括支援センターを含む地域ケアプラザを中心に横浜型地域包括ケアシステムを推進するとしていますから、指定管理者制度で職員が不安定雇用となっている現状を解消することが必要です。また、施設や事業所の職員確保、人員配置、研修、介護職のキャリアアップに対する公的助成制度をつくることが不可欠です。総合事業においても、介護従事者の専門性を最優先すべきであり、有資格者で行うべきです。
第4に、高齢者一人暮らしや老々世帯では、病院を退院後に自宅での療養環境が整わないまま生活し続けることで、状態が悪化し再入院となる例が多くあり、入退院を繰り返す例もあります。在宅医療・介護連携推進にあたっては、療養環境が整っていることを確認したうえで退院する仕組み作りが必要です。
第5に、「介護の危機」を打開するには、介護保険制度にとどまらず、さまざまな制度・施策を総動員することが必要です。格差と貧困の拡大の中で、困難を抱える高齢者が増加しています。高齢者福祉において、市民が望むのは、近所で気がかりな高齢者を市に伝えたら、市の責任で福祉の制度で安心した生活につなげてほしいということです。近所の支援を拒否し孤立するなど、地域住民の努力では解決できない例が増えています。福祉職を増員し、自治体が直接救済する体制の確立など、老人福祉法に基づく、福祉対応の充実が求められます。
7期計画策定では、以上の問題意識と課題認識を踏まえて、以下の措置を講じられるよう要請します。
記
1、お金の心配なく介護サービスが受けられるようにすること。
1)介護保険の基金(積立金)を活用するなど、あらゆる方策で保険料を引き下げること。
2)保険料の本市独自減免を拡充すること。
3)年間収入500万円以上の層の保険料段階を増やして、低所得者の保険料の負担軽減をはかること。
4)利用料の本市減免基準を引き下げて対象者を増やすなど、低所得の利用者の負担軽減をはかること。
2、低所得の高齢者が安心して暮らせるように、施設と住まいを確保すること。
1)入所まで1年も待たなくて済むよう、特別養護老人ホームを整備すること。
① 市長の公約年間600床整備は、補正予算を組み、前倒しで整備すること。
② 地域偏在を解消し、市内にバランスよく整備すること。
2)市営住宅の単身高齢者募集枠を増やすとともに高齢者向け市営住宅を増設すること。
3)高齢者向け優良賃貸住宅の供給数を増やすこと。
4)増加しているサービス付き高齢者住宅に低所得者が入居できるよう、市として助成すること。
5)養護老人ホーム、軽費老人ホームA型、軽費老人ホームケアハウスは、利用者数の想定を引き上げ、増設し、市民へ周知すること。
6)認知症高齢者向けのグループホーム増設計画は確実に実行すること。
3、処遇改善・安定雇用で介護人材を確保すること。
1)介護人材の新たな確保、定着支援、専門性の向上を市独自にはかること。
2)介護職の処遇改善施策を市として行うこと。
3)地域ケアプラザの職員の雇用を安定させること。指定管理料を増額し、職員体制を充実すること。
4)市独自に人材不足の推計と確保計画を示すこと。
5)総合事業の基準緩和した生活援助サービスAはやめること。
4、病院退院後、自宅での療養生活を不安なくおくれるように、退院前に区役所の保健師などが家庭訪問をして、受け入れ環境が整っていることを確認するしくみをつくること。
5、介護困難なケースについて、市が責任を持って対応すること。
1)自立困難な住民を、地域包括センターや地域住民任せにせず、市として把握し、対応すること。そのための職員体制を確立すること。
以上