日本共産党を代表して、2015年度決算の認定に反対の立場から討論します。
決算について、二つの角度から反対理由を述べます。
オリンピックを口実に、大型開発に偏重
第一の角度は、大型開発、大企業優遇に偏重した予算執行が行われた結果、市民が安全・安心にくらせる横浜のまちづくりが大きく損なわれた一年であったことです。
大型開発優先予算が続くおおもとに、本市中期4か年計画が、オリンピックを絶好のチャンスととらえ、2020年までに大型開発を一気に進める計画となって、高速横浜環状道路、新市庁舎、MICE施設など大型施設整備を急いでいることにあります。
オリンピックをとりまく世界の状況は、お金のかかる大会から、可能な限り財政負担を軽減する方向になっています。本市が何もかもオリンピックに間に合わせるとして多額の投資を行うのは、オリンピックの精神をも傷つけかねないものだと思います。決算審査をとおして、中期4か年計画の抜本的見直しが必要であることが明らかになりました。
高速道路整備優先で生活関連道路事業は置き去りに
まず、高速横浜環状道路整備事業偏重の弊害です。
横環関連事業費は、前年度決算額171億円から309億円へと急増し、2016年度予算では461億円へと膨れ上がりました。一方、管理距離が伸びる維持管理費は毎年250億円台に留まっています。その結果、生活関連道路関係事業の遅れが際立ち、市民生活に支障をきたす1年であったといわざるを得ません。
その表れは、私の地元の戸塚区で、はっきり見ることができます。
先日、私のところに苦情が寄せられ、「環2沿いの緑地帯が草ぼうぼう状態になっている。刈り取ってほしい」と土木事務所にお願いしたが、「草刈りは年1回になっているが、予算がもうなくなってしまったので対応できない」と断られたとのことでした。また、「スクールゾーンの安全対策でお願いしている、交差点付近の歩道の改善は毎年お願いしているが、実施してもらえない」と、こういう苦言も受けています。
各区の土木事務所関係予算は毎年ほぼ前年度並みですが、最近は資材の高騰などでこれでは到底足りず、市民の要望に対応できていないのが実態です。市民に最も身近な土木事務所関係事業費が全く足りないのは戸塚区だけのことでなく、18区ほぼ同様の状態だと思われます。
道路費予算を、高速道路施設整備の規模縮小、完成時期の先送りなどで、横環偏重の支出構造から改め、生活道路に係わる事業に比重を移すことを求めたいと思います。
臨海部再整備事業は大企業に事実上の利益供与
次に、大企業優遇で進められている横浜市都心臨海部再生マスタープランです。
横環事業や南本牧ふ頭整備事業の先が見えてきた今、スーパーゼネコンや大企業の狙いは、次の大型開発となる都心臨海部再整備事業になっています。
東高島駅北地区土地区画整理事業は、公有水面を埋立て、容積率を200%から約3倍にアップする地区計画の策定をめざすなど、開発条件を緩和して高さ180メートルの超高層高級マンションの建設を可能にする計画になっています。
また、横浜駅きた西口鶴屋地区市街地再開発事業は、もともと建築条件が有利な地区である上に、特区を導入して容積率を500%から850%へと膨れ上がらせています。
開発事業では、敷地面積や延べ床面積が事業規模や利益の規模を決定づける重要な要素です。容積率の緩和は事業者の側に直接有利に働くことから、事実上の利益供与となるものです。都心臨海部再生計画の一つひとつの事業が、ほぼ同様のやり方になっています。
さらにあげれば、みなとみらい21地区20街区での新たなMICE施設、横浜文化体育館再整備などPFI手法の導入で、大企業の参入に道を開いています。
港湾整備事業では、南本牧ふ頭MC-3が昨年4月に稼働したものの、横浜港全体のコンテナ取扱量は減少に歯止めがかからず、前年度比96.8%と落ち込んでいます。このコンテナ取扱量の落ち込みを見越して、南本牧MC-1、2を専用していたマースクラインが今年5月30日、日本・アジア・北欧州サービスを改編すると発表しました。この改編によって、横浜港の開港以来続いてきた欧州定期直行航路が途絶しました。つまり、なくなりました。このことに象徴されるように、今後も貨物取扱量の伸びは見込めないにもかかわらず、MC-4の整備に無理やり突き進む愚行を繰り返しています。
横浜駅周辺地下街の避難計画は民間まかせ
次に、都心臨海部の災害リスクに対する認識不足です。
横浜の都心臨海部は、全部、海を埋めてつくった人工の地盤です。この埋め立て地帯が、横浜の生産・事業拠点として今日の発展を支えてきたことは明らかです。都心臨海部は、今後も横浜にとって重要な区域であり、再整備等によって継続・発展させていくことは必要です。
問題は、都心臨海部地帯をかたちづくっているのが人工地盤であることです。自然の営みの前では人工地盤が極めて脆弱であることを、咋今の相次ぐ大災害が教えています。
鉄道も人も集中する横浜駅周辺地区は市内で最も標高が低い地点であり、大地震の津波や予想を超える風水害の際に、浸水・水没のリスクが極めて高い場所であります。都心臨海部の全域が横浜駅周辺とほぼ同じリスクにさらされています。
エキサイトよこはま22計画は、大地震の際に安全が保障されていない超高層ビルを林立させようとしています。また、国が風水害の新たなステージとする豪雨による洪水リスクに直面しているのに、築40年を経た巨大な地下空間がそのままであります。最大規模の降雨による洪水・浸水には、避難行動が決定的に重要です。決算審査で、横浜駅周辺地下街の来街者に対する避難計画が民間まかせになっていることが明らかになりました。
災害リスクに対する深い検証を行い、臨海部再生マスタープランを抜本的に見直すことを求めます。
11万の反対意見を無視した上郷開発の業者提案の計画容認
第二の角度は、市民の多数意見を無視した強行的な市政運営です。
市長は、現場重視とよく言われますが、市民のくらしの現場を本当に見ておられるのでしょうか。
まず、11万の反対意見を無視した、上郷開発の容認判断です。東急建設による上郷猿田地区の開発計画の容認判断は、間違っています。上郷の森は、緑・自然の宝庫であるとともに、歴史的価値の高い遺跡がある市民の貴重な宝です。
今日、国は国土利用計画において、市街化の抑制、市街地縮少へと舵を切っています。また、本市はみどりアップ計画を推進中です。こうした時代に、横浜スタジアム約10個分の樹林地を切り開く計画は極めて異常です。実際、市内では、12.5ヘクタールの樹林地を一気に切り開く開発事例は、ほかにありません。
人口減少・超高齢社会になる2025年まであと9年。上郷開発が予定する事業完了時期に重なります。その時に、新しい市街地が必要になるとは想定できません。40年前に開発事業者が土地を買い集めた時代とは全く事態は違ってきています。いまさら大規模開発する時ではありません。開発ありきで長い間、翻弄され続けた元々の地権者のみなさんは被害者といってよいのではないでしょうか。開発事業者はその責任も負わなければならないと思います。
緑・自然・歴史的遺産を守ってほしいとの11万筆の反対署名が市長に提出されています。この市民の声を無視して、開発容認の判断を行ったことは、住民自治の観点から許されないことです。上郷猿田地区開発は、根本的に見直すことが必要です。都市計画手続きを中止することを求めます。
当事者の声を無視して北綱島特別支援学校を閉校に
次に、当事者の声を無視した北綱島特別支援学校、俣野小学校の問題です。
港北区にある北綱島特別支援学校を2018年度末に閉校することを決定しました。市内北東部方面では、これから学齢期となる重症心身障害児が学校へ通えなくなる可能性のある重大問題です。保護者や地元から存続を求める3万筆を超える署名を添えた請願が教育委員会に提出されたにも関わらず、かたくなに閉校を押し付けました。
戸塚区の俣野小学校では、統廃合ありきで手続きが進められ、存続を望む保護者の声を反映しないまま決められました。今後、同様のことが計画される場合には、当事者の声が反映できる検討委員会の構成メンバーとするべきです。
保護者も中学生も業者弁当を望んでいないのに・・・
最後に、中学校給食実現と放課後児童クラブ支援です。
10万筆を超える(「万を超える」の間違い)中学校給食実現を求める保護者、中学生の要望を拒否し続け、その一方で「ハマ弁」と称して業者弁当の導入でお茶を濁すやり方は、あまりにも冷たいやり方です。
放課後児童対策では、放課後児童クラブの移転・分割が、2015年度予算の目標の半分も実現していません。
自治体の本来の役割「住民の福祉の向上」に立ち返った予算編成を
地方自治体本来の役割は、住民の福祉の向上、つまり市民のくらしが安全・安心・豊かになるように、様々な施策を推進することにあります。地方自治の本旨に照らせば、今の横浜市政はそこから大きくかい離しています。そのことがはっきりとみえた2015年度決算だったと思います。本市予算の支出構造を、大型開発偏重から市民の安全・安心・利便性向上に大きく転換することを、強く求めます。
横浜市の未来への戦略は、今の課題に重点を置きながら、その課題の解決と将来を豊かにする政策を太い線でつないでいくことではないでしょうか。それには、「今、生きている373万市民が安心してくらせる横浜を築いていく視点」と「安全なまち横浜を未来の市民に引き継ぐ視点」、この双方が必要です。
市長が、こうした視点をもって2017年度の予算編成をされることを期待し、私の討論といたします。