私は日本共産党を代表して、市第71号議案「横浜市一般職職員の給与に関する条例及び横浜市職員に対する期末手当及び勤勉手当に関する条例の一部改正」について討論します。
横浜市人事委員会は10月12日、「給与に関する報告及び勧告」を行いました。その内容は、公民較差455円を埋めるため、月例給のうち扶養手当および住居手当を引き上げ、一時金を0.1月分引き上げるというものです。
今回の条例改正は、労働組合が政府に追随する給与制度として批判はしているものの、合意をしたと聞いています。労使の協議を尊重する立場から、本議案には賛成します。
しかし、一時金増額分のすべてを勤勉手当に配分して成果主義をいっそう強め、また勤勉手当には育児・介護の権利を行使する職員に対し、その期間を在職期間から除くことで減額になるような制度も盛り込まれていることから、あえて問題点を述べます。
まず、今回の賃金引き上げ水準は、職種別民間給与の実態調査の結果とはいえ、超低額であり、この引き上げ額で地域経済の回復と住民生活の改善を求める市民の切実な要求に応えているとはいえない内容です。
今回の賃金引き上げされる月例給は、扶養手当および住居手当の対象者に限定したことにより、企業局を除く職員の4割しか反映されないこととなり、職員から見ると不公平感が募る結果を招いています。さらに問題なのは、一時金増額分の0.1月分すべてを勤勉手当に配分し、成果主義をいっそう強めるものになっていることです。その増額する勤勉手当については、算定基礎から扶養手当を除外し、その原資を職員の勤務成績に応じて配分することとし、一般職員で年間2万円の差がつくと聞いています。このことは、勤務成績の良い職員を厚遇するという成果主義を強めることになっています。
もともと公務職場における勤務成績の評定自体、評価方法や基準はあいまいで、その科学性や客観性に疑問が投げかけられている制度です。
人事委員会は、引き上げ分を勤勉手当に配分する理由は、民間の特別給の支給状況等を参考にしたとし、民間の特別給は、能力・成果給的色彩が強いのが一般的であり、これに倣ったとしています。公務労働は、営利の追求を目的とする民間企業と異なり、憲法、地方自治法の諸規定の実現にあります。営利を追求しない公務労働に、能力・成果主義は馴染みません。
もともと公務労働は、住民のニーズや地域の実態を把握し、個々の課題に対応するだけでなく、それを施策化し、常に憲法、地方自治法の理念を具現化し、住民要求に的確にこたえていく政策的労働を伴っています。しかも、それを個々人だけでなく、チームや組織全体で対応する集団的労働を基本としています。また、その業務は、商品化されたサービスを切り売りする性格のものではなく、住民の暮らしや福祉増進のために総合的な対応を必要とするサービスです。こうした特質をもった公務労働には、職員の参加意識の高揚と自発性の喚起、より高い専門性と倫理性が不可欠です。かつ、民主的で効率的な業務運営を誠実に遂行する能力も求められます。個人の能力や成果だけを評価して賃金を決めるやり方は、公務職場のチームワーク・協調性を喪失させるマイナスの結果をもたらすだけです。また、評価は短期的な評価にならざるを得ず、長期的な人材育成にもマイナスとなります。
そのためには、公務労働の特質や業務執行のあり方をゆがめ、職員を差別・選別する手段となる評価と、昇給・昇格・特別昇給などを給与制度と連動させないことが必要です。
また、一部のエリート職員を特別に養成・登用することに力点を置くような選別的・特権的な制度ではなく、民主的・相互発展的に個々人だけではなく、その組織と組織の構成員全体の資質や能力につながるような方法に変えるべきです。
私が、公立保育園で保育士として働いていた経験から、子どもたちの成長・発達を支えるために必要なのは一人の保育士が頑張るのではなく、給食調理員、時間外福祉員そして園長と、職員全員で一人ひとりの子どもやその保護者に向き合い、信頼関係を築くことでした。そのために必要なのは、たとえ個々の職員の能力に差があったとしても、職員全員でカバーする。それができてこそ、保育の質が保たれ、結果的には、全体のレベルを上げることになりました。勤勉手当に成績率が導入されてから、職員のモチベーションは上がったのか、とかつての同僚などに聞くと、子どもに対する思いは導入される以前と以降で変わるはずがないと言っています。
そういう点からしても、公務員に対する能力・成果主義は必要ないことを主張し、私の討論を終わります。
議会での質問・討論(詳細)
2016年11月30日