議会での質問・討論(詳細)
2015年10月21日

■「決算に対する討論」 あらき由美子議員(2015.10.21)

私は、日本共産党を代表して2014年度の決算について討論いたします。

  市民要望に目を向けずアベノミクスを忠実に実行

 市長は、2014年度予算案を積極果敢予算と名づけ、「積極的に投資すべきところには投資し、徹底した見直しも併せて行い、『施策の推進』と『財政の健全化』を両立した」としていますが、高速道路、国際ハブ港など国が国土強靭化、大企業支援の成長戦略として重点的に推進をはかる大型開発事業に財源を集中しました。その財源確保のために市債を、第三セクター債を除いて前年度比8.8%増の約1,400億円発行しましました。これまでの市債抑制路線の放棄です。
 その一方で、小児医療費助成、中学校給食、35人学級、特別養護老人ホーム整備などの切実な市民要求では、前進がありませんでした。
 大型開発事業としては、横浜環状道路北西線・南線、南本牧ふ頭の国際コンテナ戦略港湾整備、新市庁舎建設、2棟目のパシフィコ横浜展示ホール、山下ふ頭の再開発など都心臨海部再整備、本牧沖での新規ふ頭整備、カジノを含むIR、統合型リゾートの検討、横浜文化体育館の再整備の検討などを行いました。
 これらは、安倍自公政権がすすめるアベノミクスの地方での忠実な実行者という二期目の林市政の姿となっており、まさにその通りの決算となりました。また、2014年度予算案から横浜市中期4か年計画を実行する予算となり、市長は、中期計画素案発表の記者会見で、「安倍総理が新しい経済政策を推進なさってきて、私としては大変評価できる」、「このチャンス、市債の発行の考え方も変えてやるべきことをやる」、「基礎自治体こそが国の成長を支えている」等と述べていました。
市長は、「中期計画は横浜市基本構想を実現していく上で必要となる方向性や取り組みをより具体的に示したもので、今回の計画では、都市の活力をつくり出す人への支援や、まちづくりの視点を踏まえた未来のまちづくり戦略を示した。また、子育て支援や教育の充実、高齢者の福祉・医療など、市民生活の安心・安全を支えるための基本計画に取り組んでいる」としています。
こうした認識で提案された中期計画は、安倍政権の成長戦略をそのまま横浜で具体化した内容です。失敗が明らかな成長戦略に頼りきった中期計画では、横浜の展望は開けません。この中期計画の施策と考え方について、日本共産党は抜本的な見直しを要求していました。特に、都心臨海部偏重の都市基盤整備を突出させた中期計画の推進は、莫大な投資を余儀なくされます。これをまかなう財源対策として市債発行枠を拡大すれば、将来にツケを回すことになり、一般会計から支出しようとすれば、市民生活関連予算を削減することになります。事実そのとおりになってきています。
本市を財政破たんに陥らせず、市民の暮らしを守るためには、都市基盤整備に偏重した投資計画を根本的に見直すべきです。市長の考えは、臨海部を中心にした国際競争力強化に特化した都市拡張路線で経済を活性化させるということです。私たちは、人口減少・高齢化社会という時代の流れを見据えた、安全・安心な地域のコミュニティの再生、地域間格差のない成熟した都市づくりに転換することをこれからも求めていきます。

市長がトップにあげた子育て支援は極めて不十分

以下、今回の決算における具体的な施策の問題点について述べてまいります。
1番目は、市長がトップに掲げた子育て支援や教育の施策です。
市長は「全ての子育て家庭が安心して子どもを育てることができるよう支援する」と主張していたにもかかわらず、本市の就学援助制度は生活保護基準を引き下げた見直しをそのまま適用し、その結果2013年度まで受けてきた人のうち762人を対象外にしたことは極めて残念です。生活保護基準の引き下げによりその影響が起きないように配慮すべきという国の方針を覆してまで、機械的に適用したことは、子どもの貧困と格差が広がっている中で、所得の低い子育て世帯に対しての冷たい仕打ち以外のなにものでもありません。
「保育所整備等」による保育所待機児童解消の継続で待機児童解消を進めることは、市長の積極的な施策として受け止めています。問題はその整備手法です。2014年度は、民間保育園の定員を前年度比2,457人増とし、新設31園のうち20園が賃貸ビルフロアでの開園で、園庭なしという状況でした。都心部における用地確保が難しいことを理由に、市が補助金を出してつくる認可保育園が、賃貸ビルのフロアというのは、子どもの成長発達の面から見て問題です。 
ましてや鉄道や高速道路の高架下など、振動・騒音が常態している場所に幼稚園では認められない設置基準で、産休明けからの乳児を預かることをよしとすることは、保育の質の点から容認できません。親や設置する営利法人の都合を優先するのではなく、子どもの視点にたった保育所設置を改めて求めるものです。
また、保育所運営費補助金という公金を株主配当や法人税に充てている営利法人の保育園については、2013年度からその問題を指摘し改善を求めてきましたが、何ら問題ないとして指摘した営利法人の保育園の運営をそのまま認めていることも問題です。さらに、2014年度末で民間認可保育園565園のうち201園と、2013年度比較して26園も営利法人立が増え、新設31園の8割以上も占めていることも問題です。本来、保育所運営費補助金は子どもたちのためにつかうべきであり、株主配当や法人税の支払い、市外の保育所整備などに充てることは、即刻やめさせるべきです。
市立保育園の民間移管も、もう終止符を打つべきです。
子育て支援で、市民が望んでいるのは学校給食法の中学校給食の実施であり、小児医療費無料化の年齢引き上げと所得制制限の撤廃です。2014年に共産党市議団が行った約8,300人が回答した市民アンケートでは中学校給食を望む声が6割で、30代40代に限れば74%です。
それにもかかわらず、教育委員会は、業者による配達弁当のあり方に向けたアンケート調査等を実施し、業者弁当改善案を内定しました。この事業は、来年度中に実施することになっていますが、中学生が食べたいと望んでいる昼食弁当となるのか大いに疑問です。アンケート調査を実施するなら、給食を選択項目に入れるべきです。給食の項目をあえてはずし、配達弁当を前提にしていること自体が、教育委員会が成長著しい中学生の発達のことを考えず、食育の点や栄養の点でも学校給食そのものの良さを否定しているようなものです。
中学生の昼食の実態を見て、本来どういう姿がふさわしいのか、公教育として、中学校給食を実施している他都市の中学生と横浜の中学生の実態を教育委員会は正確につかむべきです。配達弁当を導入すれば昼食は改善できるという考えそのものに納得がいきません。

特定政党を慮った教育委員会の姿勢

2番目は、教育委員会の特定政党に対して慮っている姿勢とその異常さが際立ったということです。
その一つは、先ほど述べたように一貫して中学校給食の実施を検討しないことです。それは、自民党市議団が「中学校昼食は家庭弁当の持参を基本とし、他都市の動向に惑わされることのないように」と給食否定を繰り返し、市長や教育委員会に迫っていることからも明らかです。さらには、配達弁当のアンケート調査結果をもとに、11月の教育委員会所管の常任委員会で、配達弁当実施案が提案されました。その常任委員会へ向けての議員への事前説明では「経費の一部負担」「養育支援必要世帯への無料提供」が明文化されていた資料が使用されました。ところが、当日の常任委員会では、生徒負担を減らすという給食の要素を取り入れた提案が、急きょ理由もなく白紙撤回されたのです。
2つには、2014年に小学校の教科書採択の観点を変更し、今年度の中学校教科書の採択への布石をつくっていたことです。
前回2011年の中学校教科書の採択では、教科書取扱審議会で5位の評価だった育鵬社の歴史教科書と同率3位の育鵬社の公民教科書が選ばれたことに対して、審議会答申無視との市民の批判が集中しました。「子どもが学習問題や課題の解決に見通しを立てて、それにしたがって必要な情報を収集し、活用・整理していく能力を育むもの」「社会的事象を公正に判断する力を育むもの」「公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を育むことができるように配慮されているもの」など、子どもの成長や自主性を育むために必要な教科書として大切な観点が、ことごとく育鵬社が優位に立つ他の観点に差し替えられました。この新たな観点によって、審議会答申で育鵬社の歴史教科書は満点となるのは当然であり、先に育鵬社ありきの出来レースを行いました。
3つには、竹島を扱った絵本の作者による読み聞かせを実施するとして、学校を選定し、鶴見区の小学校1校の6年生と青葉区の小学校1校の4年生に、国語の読書活動の授業の一環として6月に実施したことです。 
市教育委員会の説明によれば、5月中旬に、自民党の市会議員から、絵本「メチのいた島」の作者が横浜に来るので、小学校で読み聞かせをしたいと要請があったとのことです。問題は、現行の小学校学習指導要領にないことを行ったことです。同要領では、日本の領土については小学5年生で北方領土だけ学ぶことになっており、竹島については中学校の地理と公民で扱うとされています。この読み聞かせはこれに反していたのは明らかです。しかも市内で韓国につながる子どもが多い鶴見区の学校が選ばれたのです。その子どもへの影響を配慮しない市教育委員会の判断は間違っています。
これらの3つの事実から、教育委員会と前教育長を新教育長にした市長の姿勢は、子どもの人権の尊重と公教育としての中立性・公平性の面からして、その視点が欠如しているといわざるを得ません。私たちは子どもたちの将来に対して大変な問題点を残したということを改めて指摘しておきます。

市民意見に耳傾けずしゃにむに推し進める新市庁舎建設

 具体的施策の3番目の問題点は、新市庁舎計画の強行です。市長は二期目の選挙の際、新市庁舎整備を公約に掲げ、東京オリンピックに向けて遮二無二に押し進めています。2014年度には、建物計画についての具体的な検討を進め、工事の発注に向けた設計要件を整理しました。その年の4月1日から5月12日の期間に横浜市公共事業評価制度に基づいて、新市庁舎整備基本計画に対する市作成の事前評価調書への市民意見を募集したところ、388名からの回答があり、東京オリンピック前までの整備に疑問を示す意見や、現市庁舎が耐震補強工事を行ったばかりであることから、移転には賛成できないといった意見が多くあったと新聞報道されていました。にもかかわらず、これらの市民の意見を一顧だにせず、9月の第3回定例会に「市の事務所の位置に関する条例」の一部改正及び「横浜市市庁舎移転新築工事技術提案等評価委員会条例」の制定を提案し、自民党などの賛成多数で市庁舎移転を事実上決定してしまいました。
 新市庁舎建設については、今後の市の窮迫する財政状況や、明らかに人口減、中でも生産年齢人口減となることをふまえ、本庁への一極集中から区への分権など、今後一層求められる都市内分権推進の立場に立ち、本庁舎と各区庁舎のあり方を見直すことが必要です。そして、何よりも東京オリンピック開催にこだわることなく、改めて費用負担が少ない手法で検討すべきです。

ギャンブル依存症や地域経済衰退させるカジノはいらない

最後にカジノについてです。カジノ法案が成立してもいないなかで、カジノ招致を前提に統合型リゾート、IRについての調査研究に市費を投じました。調査研究の如何を問わず、市民をギャンブル依存症に苦しめるような施策を市が行おうとすること自体が問題です。
日本共産党市会議員団は、依存症の実態とその対策を調査するため、この夏韓国へ視察に行きました。韓国人むけのカジノがあるカンウォンランドは、炭鉱が国策で閉鎖になり、地元住民の仕事確保と地域経済活性化という目的でカジノが誘致されました。
地元住民にこのカジノを含むIRができてどうなったか聞いたところ、「強盗・窃盗・暴力などの犯罪が増え、子育て世代は治安が悪くなったので、この地域から転出し人口減少になった。鉱山で働いていた時の賃金の3分の1に収入は減り、地域経済の活性にもなっていない」と言われました。
賭博依存症に対する公営的な相談センターが韓国内に12か所あり、それ以外に民間施設が25か所もできています。ギャンブル産業7社が売上金の0.35%を拠出して、これらのセンターを運営していますが、この金額では不足しているとのことです。ギャンブル産業が増えても、賭博依存症の広がりや地域経済の衰退など矛盾は拡大するばかりで、事後対策の限界も明らかであり、賭博そのものを廃止するのが一番の手だてであると確信しました。
本市も、カジノ誘致そのものについて、即刻やめるべきです。

以上の点から、2014年度の一般会計をはじめ、15件の認定に反対し、討論を終わります。ありがとうございました。


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