横浜市教委・育鵬社教科書採択に対して党市議団が声明 「市民の信頼に足る教科書を」
横浜市教育委員会は5日、市立147校の中学生が来年度から4年間使う教科書の採択を行い、歴史と公民には前回に引き続き育鵬社版を採択しました。
投票は、両教科とも2社の教科書が3票ずつの同数になったため、会議規則により岡田優子教育長の職権で決まりました。
育鵬社の歴史教科書は、日本軍国主義による侵略戦争であったアジア・太平洋戦争を「自存自衛」「アジア解放」のための戦争だったと描いています。また、育鵬社の公民教科書は、憲法の平和的民主的原則をゆがめて描いています。
背景に林市長と自民党の政策協定
2013年8月の横浜市長選挙で再選を目指した林文子市長は、同年6月に自民党市連と政策協定を締結し、その中で「新しい教育基本法の精神に基づいた教科書が採択されるよう、引き続き取り組む」と記されていたと各紙が報じています。岡田教育長の決定は、結果的にこの政策協定にそったものとなりました。
林市長は、自民党の政権復帰、安倍政権誕生以降、教育長と3人の教育委員を議会の同意を得て任命しています。今回の教育委員会での議論では、傍聴者などの話から、この内の2名が育鵬社の教科書を選んだことは明らかです。
林市長の政治責任が問われます。
採択の基本方針の改善を申し入れ
日本共産党市議団は、教科書採択にあたって、教育委員会の責任の重さを述べ、教科書採択の基本方針を改善するよう求めてきました。
今年5月には、教科書採択の基本方針に「日本国憲法」を加えること、教科別の観点での調査報告が必要であること、採択時は記名投票とすること、傍聴希望者が全員傍聴できる広い会場で審議するなどを、求めました。
観点差し替え、育鵬社歴史教科書満点に
しかし実際には、全教科共通の観点を用い、さらに観点を、前回の中学教科書採択から大きく変更し、前回育鵬社歴史教科書を評価しなかった8つの観点のうち7つを削除し、別の観点に差し替えました。その結果、今回の評価では育鵬社の歴史教科書は満点でした。
無記名投票では市民への説明責任放棄
審議にあたっては、審議会の答申のみが取り扱われ、専門家である教員の調査が生かされるような審議もありませんでした。また、どの委員がどの教科書を評価しているのか明らかにされませんでした。投票も無記名で、市民への説明責任を放棄するものでした。
審議会場の直接傍聴は20名で、あとは別会場で音声のみの傍聴となりました。
教科書採択はやり直すべき
日本共産党横浜市議団は6日、今回の教科書採択は意図的で不透明であるため無効であり、情報公開を徹底し、市民の信頼に足る教科書採択を実施できるよう、採択をやり直すべきとの声明を発表しました。
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「こんにちは横浜市議団です」2015.8.19号(PDF版)