私は、日本共産党を代表して、市第182号議案「横浜市国民健康保険条例の一部改正」に反対し、討論を行います。
国言いなりに国保の限度額を引き上げていいのか
提案されている条例改正は、国保法施行令の改正に伴うもので、保険料の賦課限度額を引き上げるものです。現行の限度額は、基礎賦課分51万円、後期高齢者支援金等分14万円、介護納付金分12万円、総計77万円です。これを後期高齢者支援金等分・介護納付金分、それぞれ2万円を合わせて4万円引き上げ、限度額を81万円とします。後期高齢者支援金が導入された2008年度は68万円でした。6年間で13万円の引き上げとなります。
厚労省は、低所得層、中間層に配慮したものと説明し、市長は、所得の高い方は保険料が上昇する一方で、一定以下の所得の方は所得割が下がることで保険料の軽減効果が得られるとしています。しかし、配慮というのであれば、国の国庫負担率を大幅に引き上げ、国民の負担を軽減するのが筋ではないでしょうか。
全国最大の基礎自治体の横浜が、国いいなりで限度額を引き上げるだけでは、現行の国のやり方をベストとして認めることになってしまいます。
国保の財政難と国保料高騰を招いた根本原因は、国庫負担の引き下げにあります。歴代政権は、1984年の国保法改悪で、医療費に対する国庫負担率を引き下げたのを皮切りに、国保に対する国の責任を次々と後退させてきました。その結果、国保の総収入に占める国庫支出割合は、1984年度49.8%から2010年度25.6%に半減しています。
こうした国庫負担の削減が国保世帯の貧困化と同時に進んだことが、事態を一層深刻にしています。国保制度は、もともと、農林水産業と自営業を主な対象としたものでした。それが現在では、本市でみると非正規労働者をはじめとした被用者と年金生活など無職の人が国保世帯主の78%を占めています。年金生活者や失業者、非正規労働者が加入する国保は、適切な国庫負担なしには成り立たない医療保険となっているのです。
ところが、歴代政権は、先に述べたように、国庫負担を削減し続け、国保世帯の構造的変化、貧困化のもとでも、それを見直そうとしませんでした。この二重の失政により、財政難、保険料高騰、滞納増という悪循環に陥っているのです。これらの失政により、国保は、住民の医療保障という本来の役割を大きく後退させ、逆に重い負担や過酷な滞納回収で住民の生活と健康、命まで脅かすという本末転倒が広がっているのです。こうした国保の危機的事態を打開する、抜本的な制度改革がいまこそ必要です。
限度額引き上げ方式はもう限界、独自に市費繰り入れを
今回のような、限度額を引き上げてその増収分を中間層部分に回して、負担増を抑制するという方式は、2012年度500万円超の所得階層の保険料滞納世帯が約2500世帯になったように、限界に達しています。被保険者間で負担をやり繰りすることで負担増を回避しようとする国の方針は、抜本的改革を先送りするだけです。政令改正にあわせて市が賦課限度額を引き上げるのみとすることは、この先送りに手をかすことにつながります。
国保は、住民のいのち、健康を守る社会保障の制度であり、地方自治体が、独自に公費を繰り入れ、住民負担軽減の努力をするのは、制度の本旨にかなったものであります。中間層の保険料抑制はまったなしです。今回の措置による負担増は、約8億円です。一般会計の規模からいって繰り入れ可能な金額であります。
住まいを取り上げられ、生きていけない事態にも
市長は、現場主義を強調されます。国保の現場は、世帯ごとの実態にあります。私が相談を受けた事例を紹介したいと思います。
Aさんは、国保料と市税の滞納が納められず、家を差し押さえられた、どうしたらよいかという相談でした。その時のAさんの状況は、自営業者、66歳、妻は61歳の二人世帯です。住居は持ち家、普通に働ければ月収30万円程度、国保料は月額3万円程度という方です。
2年前にがんを患い入院、その後は入退院の繰り返し。収入が不安定になり保険料を収められない状態に陥り、保険料の滞納額が48万円を超え、市税と合わせて200万円近い滞納額になっていました。そのため保険証が取り上げられていました。医療費が払えないため、親戚からお金を借りて保険料を一定額納付して、やっと短期証の発行を受けました。さらに、担当窓口で滞納についての今後の対応について相談を始めた矢先、この度、家を差し押さえられたというわけであります。Aさんは、収入の見込みがない上に、住まいを失う事態に追い込まれました。
生活の唯一のよりどころである家を失うことになれば、世帯主が闘病中のこの家族は、生きていくことができないではありませんか。ここに、本市の国保の現場の一端が示されています。市民の生活実態に思いを寄せられない回収業務は、直ちに根本的に改めるべきであります。
国保料の滞納回収は本市だけでなく、国の指導で同様の画一的、強引なやり方が、全国で行われています。
報道によれば、市町村が預金や給料、住宅などの資産を差し押さえ、強制的に滞納分を取りたてています。しかし、国保加入者は、年間所得が100万円未満の世帯が半分を占めているうえ、保険料負担も協会けんぽが5%なのに対して、国保は約10%であり、負担の度合いが極端にきついのが実態です。滞納世帯に対して一律に差し押さえを行えば、生活ができなくなる世帯が必ず出ます。
こうした状況に、ある都市の、他の都市という意味です、保険年金課の幹部職員は、「払う金があるかないかを確かめずに差し押さえると、その世帯の生活基盤を壊すことになる」とコメントしています。
市費繰り入れで、市民負担の軽減を
国民健康保険は、そもそも社会保障制度です。命、健康、暮らしを守るための制度です。
本市は、国に負担割合の引き上げを毎年、要望していますが、それだけで済ませるのではなく、全国最大の基礎自治体として、国の言いなりでない独自の判断で一般会計から繰り入れを行い、市民負担増を軽減して市民の健康と暮らしを守る気概を示してはどうでしょうか。そのうえで、国に対して、抜本改革を迫るべきだと思います。以上で、反対討論とします。