河治議員:私は、日本共産党を代表して、今定例会に提出された議案のうち6件の議案、及び不採択となった請願のうち3件について、反対の討論を行います。
本人の意向を踏まえない年金からの税金天引きは
納税者の自主性を奪うもの
まず、「市第5号議案 横浜市市税条例の一部改正」及び「請願第11号 公的年金から個人市民税の特別徴収の中止を求める請願」についてです。これは今国会で成立し、4月30日に公布された地方税法の一部改正に伴うもので、来年10月から65歳以上の年金受給者の住民税が特別徴収、つまり天引きされることになります。本市では、65歳以上の年金受給者66万人のうち、約19万人が天引きの該当者です。
税は、納税者が定められた期限までに自主的に納付するのが、あるべき姿のはずです。
該当される年金受給者は、来年10月から2か月ごとの年金支給時に自動的に市民税が天引きされ、これはまさに納税者の自主性を奪うものです。年金だけが唯一の収入の人にとって、介護保険料や健康保険料が天引きされ、さらに住民税も天引きされるとなれば、生活への不安感が増大し、恐怖感につながる人も少なくありません。
政府は、後期高齢者医療制度と同様、地方税法の一部改正についてほとんど国民に周知しておらず、多くの国民はこのような法律ができたことすら知らされないまま、年金から市民税が天引きされることになり、これではまるでだまし討ちではありませんか。
「本人の意向を踏まえない年金からの税金天引き」に対する市長の見解は、「納税者の手間を省き、納税の利便性を向上させるとともに徴収事務の効率化を図る」という政府の説明をオウム返ししただけのものでした。これでは、市民に対する思いは何一つ感じられません。
利潤追求の民間企業に公施設の業務をまかせるのは問題多し
次は、市第7号議案及び市第10号についてです。いずれも、本市直営の施設に指定管理者制度を導入しようとするものです。
指定管理者制度は、公の施設の管理運営を、期間を定めて民間にまかせるものですが、継続性、安定性、専門性、さらに不安定雇用・低賃金化など、多くの問題を抱えています。
埼玉県ふじみ野市の市営プールで起きた死亡事故で、さいたま地裁は「不備のあるプールについて指揮・管理を主体的に行うべきだったが、ほぼ完全に管理委託したのは全く無責任だ」「業務がさらに丸投げされていることにも気付かず、過失は重い」として、市教育委員会の元課長らに有罪判決を言い渡しました。この事故は指定管理者によるものではないものの、利潤追求が目的である民間企業に公施設の業務をまかせたことが招いた、起こるべくして起きた事故であり、本市が指定管理者制度を導入した施設でも十分に起こり得ることです。
市が直接責任をもって質の高い市民サービスを保障するという点から考えて、指定管理者制度の導入には反対です。
市はデイサービスの供給に責任を
次は、市第20号議案についてです。本市は地域の福祉・保健活動の振興、身近な福祉・保健サービスを総合的に提供する施設として地域ケアプラザの整備をすすめ、高齢者介護の相談調整、地域交流、居宅支援、デイサービスを実施してきました。本議案は、野七里地域ケアプラザのための建物を取得するものですが、問題はデイサービスを実施しないことです。
野七里地域では民間事業者の参入が進み、デイサービスが供給過剰となり、稼働率が低いというのがその理由ですが、同地域のデイサービス事業の稼働率は平均74.1%で、栄区の平均65.1%と比べかなり高くなっています。ケアマネージャーの人は「稼働率100%はあり得ず、80%でも対応に余裕がない」と言っています。
介護保険の改悪によって、症状は変わらないのに介護認定が変更され、デイサービスの対象からはずされた人や、利用料が高くてデイサービスを利用できない人などの実態から目をそらし、あたかも供給過剰であるかのように理由付け、施設のデイサービスをやめることは、ごまかしとさえいえるものです。
また、デイサービス施設は厨房施設と入浴施設を有していることから、地震などの災害時に要介護者にとって必要不可欠です。住民の福祉と暮らしに責務を負う自治体が、デイサービスの供給にも責任をもつのは当然であり、自己都合でいつでも撤退できる民間事業者に、デイサービスの全てをまかせるべきではありません。
慶応に売却する土地価格54億円はあまりにも安すぎる
次は、市第21号議案についてです。本議案は市内の学校建設予定地のうち、青葉区あざみ野南3丁目等3か所、合計約5ヘクタールを、学校法人慶応義塾に約54億円で売却するものです。
今回の市有地売却は、本市自身が開発により子どもの数が増えることを予測して確保した学校建設用地を、不要と判断して売却する始めてのケースです。教育委員会は、同学校予定地周辺地域の今後の児童生徒の増加は以前からの予測を下回り、周辺校の学区割の変更で増加分は吸収できるとしていますが、青葉区全体では人口も子どもも急増しています。現時点で学校予定地として必要なしとしてよいのか、さらに、現在、少年野球やサッカーの練習場として貴重な場所になっていることを考え合わせれば、何も今土地を売却する必要はありません。今回の土地売却は慶応義塾開校150周年という慶応の要求に合わせたものといわざるを得ません。
さらに、売却価格が適正かという問題です。売却価格は本市の財産評価審議会の審議により決定され、さらに用途を学校施設と限ったことから32.5%減額が必要と判断したとしています。わが党の調査によれば、これら周辺の土地価格は平方メートルあたり約40万円から48万円、32.5%減額なら約27万円から32万円で、5ヘクタールでは約135億円から162億円となるものです。市長答弁の「宅地造成を想定して評価」したとしても、土地造成費を過大に見積もったものであり、議案の約54億円という売却金額はあまりにも低すぎます。
危うい南本牧ふ頭整備事業に337億円は市民に対する背信行為
次は、市第28号議案についてです。本議案は、国際競争力強化を目的とした国のスーパー中枢港湾推進政策に基づき実施される南本牧ふ頭MC3・4コンテナターミナル建設に係わる工事請負契約の締結です。
南本牧MC3・4コンテナターミナル建設事業費は概算で700億円、そのうち本市の負担額は337億円とされる巨大公共事業です。市長は、常々、民間企業の経営ノウハウに学べと口癖のように発言しています。その点で、民間企業が新たな事業を展開する場合は、シビアな将来予測をデータによって裏づけ、事業のシミュレーションを行い、その上で検討を重ねた上でスタートさせることを基本としています。
公共施設である港湾施設建設に民間企業の経営手法を取り入れることの是非については意見の分かれるところですが、少なくともこれだけの巨額を投資し、南本牧ふ頭に超大型コンテナ船対応の大水深岸壁を有する高規格ターミナルを整備しようとする以上、超大型コンテナ船についてのデータ、たとえば現在運行されている総数、今後の運行予想などのデータ等が必要です。
ところが、市長は、この最低限必要なデータを市民の前に示していません。あるのは単なる希望的観測であり、巨大港湾を整備すれば「国際競争力」を高め、大型コンテナ船が集まってくるだろう、またそうなってほしいという願望でしかありません。
したがって、この危うい事業に337億円に及ぶ本市の財政を投入することは、財政再建を願う市民に対する背信行為ともいえるものです。
高齢者差別の後期高齢者医療制度はただちに中止・撤回を
次は、横浜市社会保障推進協議会他236団体から提出された「請願第2号 後期高齢者医療制度の中止・撤回」についてです。
4月にスタートした後期高齢者医療制度は、高齢者いじめの差別医療制度として、全国から大きな批判が広がっています。国会では、我が党初め4野党共同提案の廃止法案が参院で採択されました。その内容は、後期高齢者医療制度を廃止し、老人保健制度にもどすこと、10月までの緊急措置として年金からの天引き中止、保険料の軽減などです。政府・与党も世論に押され、保険料の減免の拡充等を提案せざるを得ない状況です。本市においても、国保料の2割減免対象者でも3万円を超える保険料の事例が報告されていますが、その救済策はありません。
全日本民主医療機関連合会が制度実施直後に行った6,009人の高齢者との面接による聞き取りでは、保険料が「安くなった」はわずか6%であり、41%が「高くなった」とのことです。まさに心配が現実となったものです。
この医療制度は、75歳以上の高齢者を国保、健保から区分し、該当する高齢者の保険料を年金から天引きし、払えなければ保険証を取り上げ、さらに後期高齢者独自の診療報酬を設定する等、世界に例のない異常な制度であり、一部の手直しで問題の解決が図れるものではなく、まさに中止・撤回すべきです。
地方議会からの意見書・決議は、5月16日現在で581自治体にまで広がっています。請願に反対した自民、公明、無所属会派の一部議員は、厳しい世論に目をつぶるに等しいものです。
最低賃金は人間として生活できる金額に引き上げを
最後は、「請願第13号 最低賃金の大幅引き上げ等」についてです。請願は、横浜労働組合総連合によるものであり、請願項目は、改正された最低賃金法に基づいて最低賃金の大幅引き上げを国と神奈川県労働局に求めるよう、求めているものです。
昨年、約40年ぶりに最低賃金法が改正されました。あらたに「労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」との規定が盛り込まれました。その趣旨は「最低賃金は生活保護を下回らない水準にする」とのことだと、厚生労働大臣が答弁しています。
今、神奈川県の最低賃金額は1時間当たり736円で、1日8時間20日間フルタイムで働いても月収約11万円、年収にして130万円程度にしかなりません。税金や医療保険料、年金などを支払うと、生活保護基準さえ下回る、いわゆるワーキング・プアの状態です。改正された最低賃金法に基づくなら、生活保護基準を満たす賃金を保証するものでなければならないはずです。家賃を払い、人間としての最低限の生活をするには、少なくとも年収200万円は必要です。その額に接近できる「時給1000円以上」を保障すべきとの声は当然の要求であり、請願は採択すべきものです。
以上、訴え、討論を終わります。