議会での質問・討論(詳細)
2013年5月30日

■「議案に対する討論」 あらき由美子議員(2013.5.30)

私は日本共産党を代表して、6件の議案に反対、1件の議案に賛成し、討論いたします。

市職員の退職手当平均430万円もの減額で苦しくなるばかり

まず、市第4号議案「横浜市退職年金及び退職一時金に関する条例の一部改正」と市第5号議案「横浜市退職手当条例等の一部改正」についてです。
市第4号議案は、法にもとづき国の普通恩給の年額が減額されたため、国の措置に準じて本市の普通退隠料の年額が230万円を超えている方を対象に10%減額するとしたものです。今回その対象となる方は一人ですが、年間約31万円の減額となり、生活に影響するのは避けられません。市長は、地方分権を進めることを前提に「特別自治市」創設を主張しているにも関わらず、このような議案においては国に唯々諾々と従うのは、その点から見ても問題であり、反対です。
市第5号議案は、国家公務員の退職手当の支給水準との均衡を図るという理由から、本市職員の退職手当を引き下げるものです。その内容は、一般職職員で現行59.28月を49.59月に引き下げ、3年間の経過措置を取りながら一人あたり平均約430万円もの減額を強いるものです。この削減の理由を市長は、「人事院が民間企業の退職給付額の調査を行った結果を受け、国は官民の均衡を図るため、国家公務員の引き下げを行いました。そこで、本市においてもこれまでと同様、国に準じて退職手当制度を見直し、民間との均衡を図りたいと考えています」としています。
しかし、退職手当の水準については、地方自治の立場から市の判断で決めることができるものであり、法の縛りをもって引き下げを強制されているものではありません。市長が常に述べられている「オール横浜で職員が力を発揮する」「地方自治の精神」という視点からも、今回の国追随の措置は職員のモチベーションを引き下げ、マイナス効果だけです。過去最高時は95月あった退職手当は、今回の提案までに12回も切り下げられ、最高時の約半分に減額されることになります。
政府はこれまで定年延長を検討し、今後公務員もその対象にするとしていますが、65歳になって年金がどの職種でも満額もらえるというヨーロッパの国々とは違い、100年安心年金プランどころか、年金受給額も減り、退職手当も減額され続けている日本の現状では、退職後の生活は苦しくなるばかりです。また、現在働いている20代から40代の若者たちは、今の日本の経済状況では、年金や退職金は自分たちの時はまともにもらえないだろうと思っています。その要因は、非正規雇用を増やしていることです。私たちは、非正規雇用を正規雇用に切り替えてきちんと税金を払ってもらい、世の中全体の景気を良くしていくとともに、年金や退職金制度をよりよくしていくことを国会で提案していることも申し述べ、この議案については反対を強く主張します。

開国博Y150の収支不足の責任を不問にしたままの税投入は認められない

次に、市第24号議案「業務委託代金等請求調停事件についての調停」についてです。
これは開国博Y150の受託事業者である株式会社アサーツーディ・ケイが提起した民事訴訟について、東京高裁から横浜市を含む当事者に対して示された調停条項に基づき、横浜市は財団法人横浜開港150周年協会に対し、同協会のアサツーディ・ケイ社への支払いで不足する額約2億6100万円を、市の税金で補助しようとするものです。
そもそも開国博Y150の収支不足となった要因について、その責任の所在を明らかにすることなしに税金を充てることは問題だと、私達は一貫して主張してきました。この点について市長は、「多くの要因が複雑に絡み合い、多数の人が関わった事業の中、特定の個人に負担を求めることは適切でない」と主張されています。しかし、それでは市民が納得しません。開国博Y150開催にあたり、適切な対応をしなかった中田前市長、その前市長に追従してきた当時の副市長と市幹部職員、そして前市長に同調して賛成してきた会派の責任であると、この際はっきりと申し上げておきます。これら当時の関係者の責任の解明なしには反省が生かされないという理由から、反対いたします。

コンテナ貨物量増加の見通しない中で、新たな南本牧ふ頭の橋整備は中止を

次に市第29号議案「南本牧ふ頭連絡臨港道路の整備に係る上部工事委託契約の締結」と市第32号議案「南本牧ふ頭連絡臨港道路の整備に係る基礎工事委託契約の変更」についてです。
この道路の必要性について、市長は「来年共用開始予定のMC―3コンテナターミナル、今年度着工するMC―4コンテナターミナルや物流関連施設の集積による今後の交通量の増加に対応するため、南本牧ふ頭連絡臨港道路の整備を行っています」としていますが、その根拠としている南本牧ふ頭のコンテナ貨物量は依然として増えていません。
コンテナ貨物取扱量の将来見通しの根拠として、日本や貿易相手国のGDP、人口などの社会指標との相関や実績により推計しているとしていますが、現場で働く港の関係者からは、コンテナ量が減り続けているために、大型トレーラー1台あたりの売り上げは、1年前と比べ1500万円から1200万円に約2割減っている」「アジアの物流動向は、日本の経済状況、人口減少が始まっていることなどを見ると、今後、横浜港の取扱量が減り続けるのではと心配している」と聞いています。また港湾局の資料では、横浜港全体のコンテナ取扱量の推移は、5年前の348万TEUから昨年は305万TEUへ43万TEUも減り、そのうち南本牧ふ頭は108万TEUから83万TEUへ25万TEUの減です。
こういう実態でありながら、将来見通しで増えていくという市長の答弁にはますます根拠がありません。昨年でも、コンテナ貨物の3割を超える自動車関係の輸出量は減少し、自動車の生産工場も海外へ移転している現状からみて、自動車にかわる主力産業が生まれていない中、コンテナ貨物量が増えるという将来見通しがいかに希薄であるかは明白です。今現在、1本の橋がかかっているのですから、急いで2本目を作る理由はありません。総額520億円もかかる事業を、国が推進する大型公共事業のバラマキ施策に乗り、多額の税金と借金を増やしてまで行うことについて納得がいきません。
また、市長は「横浜国際コンテナ戦略港湾である横浜港に貨物を集中させていくことが本市の責務です」と答弁されていますが、横浜港に貨物を集中するためとして補助金をつけて呼び込んでも、予算に限りがあるため長続きするはずがありません。これらの理由から、今回の事業については直ちに中止し、今後のコンテナ貨物の動向を見てから判断しても決して遅くはなく、それこそが賢明な判断です。

幼稚園就園奨励金は市費減額ではなく現状維持で保護者負担の軽減に

次に、市第33号議案「一般会計補正予算案(第1号)」です。
今回の補正予算案では、保育士の処遇改善のための助成や、理科教育の充実のため支援員配置の拡充、授業への集中などが困難な児童・生徒へのきめ細かな対応をするスクールサポート事業、ブルーラインの高架等の耐震補強事業が補助制度の対象となったことなどへの対応など、国の補助制度が活用されるものが提案されています。これらは必要とされるものであり、賛成です。
問題は、私立幼稚園就園奨励補助事業として、国が補助単価を引き上げた分、市費を6200万円減額することです。そもそも横浜市には公立の幼稚園はなく、私立幼稚園に通わせる保護者の負担は東京都の区立幼稚園と比較すると大変な負担額です。
たとえば江戸川区では、区立幼稚園の入園手数料は1000円、保育料は月額3000円です。しかし区立幼稚園が4園しかないため、入園するのは狭き門となっています。そこで、私立幼稚園に入園した場合、本市と同様に国費を使って私立幼稚園就園奨励補助金を、区民税所得割税額の21万1200円以下の世帯に対し、税額区分に応じて補助をしています。この国の補助制度を受けても保護者負担が区立の保育料月額3000円を超える場合は、その超過分を、月額2万6千円を限度として所得制限なく区が負担しています。入園料補助金も8万円を限度に支給しています。こうして保護者の負担軽減を区立幼稚園並になるようにしています。
横浜市の幼稚園は、平均で入園金は約12万7000円、毎月の保育料は約3万円、年平均で35万円かかります。就園奨励補助金を受けたとしても、保護者の負担額は3万円前後です。就園奨励補助金額の政令市比較で、市による上乗せ分の第一子で比較した資料によれば、本市は市民税所得割額が21万1200円以下では年間0円から4万5000円、超える区分では年間4万8000円と一番高くなっています。しかし、江戸川区のように、1か月の保育料は3000円を基準に補助をしている自治体もあることから、市長のいう「子育て支援を積極的に応援する」ためにも、国庫補助単価が増額されたことを理由に市費を減額するのでなく、その分上乗せして保育料の軽減に振り向けるべきです。

公助あっての自助・共助

最後に、議第1号議案「横浜市災害時における自助及び共助の推進に関する条例の制定」についてです。
この議員提案の前文には「自助・共助の役割を明らかにすることにより、災害を軽減する減災社会の実現をめざす」とされていますが、市の責務である公助については明記されていません。私たちは、減災を進めるための大前提として、公助があると考えています。まず、減災に対する公助についての考え方についてその必要性をあえて明記しなかった理由について、総務局の常任委員会で質問し、議案提案者から「公助を前提にし、それによって自助・共助の推進になる」ということを確認いたしました。
また、今年の3月11日に「よこはま地震防災市民憲章」が制定され、行動指針が示されています。その内容と今回の自助・共助の推進条例には多くの部分が重なっています。横浜市では、災害での被害をゼロに近づけることを目指してパンフレット「わが家の地震対策」を各区版で全戸配布していることもあり、「よこはま地震防災市民憲章」との整合性についても確認をいたしました。
「議会が今回の条例を制定することにより、市民および事業者の自発的な防災に関する活動の促進を図ることになる」という回答をいただき、その考えには異論がないので、賛成することといたしました。
以上で、私の討論を終わります。


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