(実際には、質問と市長答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように、対応する質疑と答弁を交互に記載しました。なお、第2質問とそれに対する答弁については最後に記載しました。)
後期高齢者医療制度は県・市町村の補助金などで負担を軽くせよ
関議員:私は、日本共産党を代表し、後期高齢者医療制度、敬老特別乗車証、公立保育園の民間移管に関わって、中田市長に質問いたします。
2008年4月から後期高齢者医療制度が始まります。この制度は、75歳以上の高齢者を他の世代の国保や健保から切り離し、際限のない負担増と医療の差別化を押し付けようとするものです。元厚生労動省局長の堤修三氏が「姥捨て山」と言いましたが、78歳の男性は「私たちは、焼け野原だった日本を必死で働いて復興させた世代です。後期高齢者医療制度を知ったとき、その私たちが今、国から棄てられようとしていると思いました。悔しい」と、私に訴えました。この制度への危惧や批判の大きさは、「制度の凍結・見直し」などを求める地方議会の意見書が280を超えていることにも示されています。
とりわけ4月から徴収される保険料の問題は、深刻です。11月16日の神奈川県広域連合議会は保険料率等の決定をしました。その結果、1人当たりの平均保険料は、東京都を抜き、全国一高い年額9万2750円となりました。主な理由は、被保険者の所得水準が全国平均より高いとして、国が調整交付金を4割削減したことです。神奈川県広域連合会は調整交付金の全額支給を求めてきた経緯がありますが、県内最大の被保険者を抱える自治体の長として、県広域連合福連合長として、引き続き国に求めるべきですが、うかがいます。
高齢者の生活実態は、厚労省2006年度国民生活基礎調査によると、高齢世帯の平均所得は301万円で、そのうち7割の211万円前後が公的年金収入です。高齢世帯の56%が「生活が苦しい」と答えています。国民年金の受給額は月平均4万6600円にすぎず、無年金の人もいます。貧困と格差の問題は高齢者ほど深刻と見るべきで、所得水準が全国平均より高いとして済まされる問題ではありません。
そこで、副連合長としての市長にうかがいますが、「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づけば、広域連合が県や市町村の補助金を確保し、減免制度の拡充を図ることは、法的に可能です。東京都広域連合は都や市町村に対し補助金を求め、一人当たりの平均保険料を下げたと聞いています。神奈川県広域連合としても、保険料軽減のため、県や市町村に補助金を求める考えはないのか、また、減免制度の対象についても、災害・所得減少・法定給付制限に加え、年額18万円の低年金者など生活困窮者もついても、要領等に規定し、公費負担で軽減すべきと考えますが、合わせてうかがいます。
滞納者への保険証取り上げ問題では、国会でも大臣が「機械的に資格証明書を交付するものでない」と答弁しています。保険証交付や短期証・資格証明書の発行事務等の窓口業務は市町村ということで、「資格証は発行しない」と明言する自治体も増えています。本市でも「発行しない」とすべきですが、見解をうかがいます。
40歳以上が対象の基本健診が、2008年4月からは「特定健診」に変わりますが、目的が「国民の老後における健康の保持」から「医療費の適正化」に変えられ、ここでも75歳以上は対象外とされ、まさに75歳以上の健診事業が医療費削減の標的にされたわけです。県広域連合会は市町村と調整し、健診事業を実施する方向です。そこで、市として受診率や健診費用をどう考えているのか、また、診査項目にがん検診、血液検査も含めるべきと考えますが、合わせてうかがいます。
中田市長:お答え申し上げます。まず初めに、後期高齢者医療制度についてのご質問をいただきました。
調整交付金の全額支給を国に対して求めていくということについてでありますけれども、これはご案内のとおり、後期高齢者医療制度の保険料については、神奈川県後期高齢者医療広域連合で決めると、こういうことになっているわけであります。これに関連する調整交付金の国への要望と、こういうことについても、議員に整理いただいたとおり、それは当然あり得る話だと思いますけれども、これは広域連合の判断で行っていくということになると考えております。
県や市町村に補助金を求めることについてでありますけれども、これは保険料については国が示す基準に従って広域連合において算定をするものでありますけれども、県や市町村に補助金を求めるかどうかということも、これは当然ですけれども広域連合の判断ということになるわけであります。そういう意味では、広域連合の判断がこれから先、そこにあるかどうかということになろうかと思います。
減免に関する要綱等の規定についてでありますけれども、保険料の減免でありますが、これは国が示す政省令等に基づいて、県内一律の基準として広域連合の条例で定めるということになります。
資格証の交付についてでありますけれども、高齢者の医療の確保に関する法律、これにおきまして、保険料滞納が一定期間継続をしている滞納者について、特別な事情があると認められる場合を除いて、被保険者証の返還を求めて、被保険者資格証明証などを交付するということになっているわけであります。これが法律でありますけれども、その具体的な取り扱いをどうしていくのかということについては、これは今後広域連合の中で決定をした内容に沿って、私の方として取り扱うということになってまいろうと思います。
受診率や健診費用、診査項目など後期高齢者の健康診査の実施についてでありますけれども、法律によって広域連合に努力義務が課されております。今般、広域連合におきましては、自ら実施主体となるのではなくて、各市町村が実施する事業に補助を行うということに決定をしております。実施要綱等の詳細については、1月に広域連合から示される予定となっておりますので、受診率や健診費用、診査項目といったことなどについては、その内容を見て、本市として検討をいたしてまいりたいと思います。
足りないのは「財政」でなく、高齢者に安心を与える「福祉の心」
関議員:次に、敬老特別乗車証制度についてです。「横浜市敬老特別乗車証制度のあり方検討会」が行ったアンケートや市民意見募集結果をみても、市民の声の多数は、現状維持・制度の拡充です。ところが、「最終とりまとめ」にはそうした市民の声は全く反映されていません。検討会のこのようなやり方についてどう受け止めたのか、また6か月という短さで報告を求めた市長のやり方も拙速すぎ、「はじめに結論ありきのやり方だ」との批判にどのように答えるのか、合わせてうかがいます。
敬老特別乗車証制度いわゆる敬老パスは、33年前に70歳以上を対象に福祉の制度として始まり、利用者も7万人弱から31万人と増え、高齢者の社会参加を支援する貴重な事業になっています。11月に出された「最終とりまとめ」は、福祉とは名ばかりの敬老パスに変質させる重大な内容になっています。それは、現行制度にはない利用回数に応じた負担と利用回数の制限を盛り込んだことです。このような「最終とりまとめ」を、市長としてどう受け止めたのか、うかがいます。
具体例としてプリペイドカード式がありますが、札幌市が2005年に導入しています。1万円分から5万円分までのプリペイドカードを購入するのですが、導入後の市の調査で、利用者の85%が「5万円分でも足りない」と回答し、負担増になることから老人クラブの活動にも支障がでたと市議会で問題になったようです。これでは、制度の目的にも反しかねません。本市として、どのような方式を検討しているのか、うかがいます。
この制度の効果は、「中間とりまとめ素案」で図示されたように、介護予防と健康増進、趣味・娯楽などの生きがい支援、引きこもりの抑止、仲間作り、買い物などの経済効果による街の活性化、道路渋滞の回避、高齢者の交通安全、エコ効果、交通事業者の経営安定と多岐にわたり、優れた制度です。しかし、効果を証明する数値がないとして検討会での検証はされませんでした。これでは事業の効果をまともに見ようとしない、市費負担削減ありきと思いますが、市長の見解をうかがいます。
高齢者への負担増は、住民税・所得税の増、連動した国保料・介護保険料の増、新たに後期高齢者医療による負担増など、経済的不安は限度を超えています。敬老パスによるさらなる負担増を本市として課すべきではありません。見直しの理由に厳しい財政状況をあげていますが、足りないのは「財政」でなく、高齢者に安心を与える「福祉の心」ではありませんか。見解をうかがいます。
中田市長:次に、敬老特別乗車証についてのご質問をいただきました。最終取りまとめまでの市民意見・期間など、その経過についてでありますけれども、検討会においては市民アンケートや中間取りまとめに対する意見募集の結果、こういったことも踏まえて、各委員が様々な立場から多角的にかなり活発な議論を行っていただきました。そうした議論の結果として、最終取りまとめがなされたということでございます。
最終取りまとめの内容でありますけれども、高齢者人口の増加や厳しい財政状況を踏まえて、今後も持続可能な制度となるように検討していただいた結果として、受益者負担などの考え方が示されたものと受け止めております。
方式の検討状況でありますけれども、現在検討会の最終取りまとめの内容を踏まえて、利用回数に応じた利用者負担や低所得者に配慮した応能負担といったことなど、様々な角度から慎重に検討をいたしているところでございます。
制度の効果に関する考え方についてでありますが、介護予防や健康増進など様々な効果が指摘をされていることは、これは承知を充分しております。それゆえに、今後もどうやってこの制度を持続させていくかということを考えて、そして手を打っていくということが、将来に対して肝要なことではないかというふうに思います。
高齢者の福祉についてでありますけれども、これはお元気な方も介護を必要とする方も高齢者の誰もが住みなれた地域で安心して暮らし続けられるように、限られた財源の中で、引き続き高齢者福祉の充実に努めていきたいというふうに思っております。高齢者それぞれの経済的負担、このことについても充分私たちは考えなければなりませんし、このことについて様々な調査などを含めて、また意見なども踏まえてですね、このことを考えていくことは、これはもうご指摘いただいたことは充分に私どもはしてまいりたいというふうに思っております。そのうえで、先ほど来申し上げているとおり、共産党がいうほど財政は簡単ではないわけであって、本当にいま横浜市のかかえている財政状況というのは実に難しいわけです。ひとつひとつの仕組みをどうやって持続可能なものになるべく高めていくか、そのことをもってしても全体としてはそれでも持続可能な財政を約束できる環境にはありません。そういう意味では、知恵をしぼって今後どうやって継続していくのかということに向けて、努力をいたしてまいりたいと思います。
市立保育園の民間移管は園児・保護者・現場の立場で慎重に
関議員:次に、市立保育園の民間移管についてです。11月15日、最高裁判所が大阪・大東市に、「民営化に際し、児童が心理的に不安になるのを防止し、保護者の懸念や不安を軽減する義務があった」「最低1年間の引継ぎ期間を設け、民営後も旧保育所の保育士数人を数か月派遣すべきだった」として損害賠償を命じ、上告を棄却しました。最高裁での保護者側の勝訴は全国で始めてです。本市においては裁判が継続中ですが、民間移管へのやり方が問われた点では同じです。市長として大東市の判決をどう受け止めたのか、また市の控訴を取り下げる考えはないのか、うかがいます。
そもそも民間移管は、市立保育園を選択した保護者に市側の都合で押し付けたものです。原因者は市だという認識に立ち、市が責任をもって保護者への負担や不安、児童への心理的な影響への解決にあたるのは当然です。問題は、市の対応の不十分さから、依然として保護者に強い不安と少なくない負担を与えている現状があることです。民間移管の入口である引継ぎ・共同保育については特に慎重さが必要です。保護者や現場から、一人ひとりの園児をきちんと把握するには期間も最低1年間は必要との声がありますが、現行6か月の期間や内容について再検討すべきと思いますが、うかがいます。
ある移管園では、正規職員の定着率が3年目で25%に落ち、事故件数も2004年度移管4園の場合51件も発生するなど、増え続ける移管園へのフォローの不十分さが問われています。法人や保護者の不安や負担に応じるため、移管園への市のフォロー体制の拡充、削った法外扶助費も元にもどすなど必要と考えますが、見解をうかがって質問を終わります。
中田市長:最後に保育所の民間委託についてご質問をいただきました。大東市の判決と本市の控訴についてでありますけれども、大東市の民営化の裁判については最高裁の上告の事由には該当しないとの決定によって、大阪高裁の判決が確定をしたときいております。大東市の裁判の事案や判決の内容、これは本市とは当然異なるわけでありまして、大東市の判決を持って控訴を取り下げるということはございません。
引継ぎ・共同保育の期間や内容についてということですが、これまでに民間移管を行った16園については設定した期間において保育の継承が円滑になされていると考えております。この間もより円滑な移行を図るために、引き続き共同保育に参加をする保育士の人数や内容の充実についても諮ってまいりました。また、来年4月に移管する園では引継ぎ・共同保育の開始時期をさらに1か月早めるということなど、様々な充実を図ってきたところであります。今後も保護者や法人の意見をうかがいながら、必要な充実策を講じてまいりたいと思います。
移管した園へのフォロー体制や法外扶助費についてでありますけれども、移管した保育園には移管前の園長や保育士、本市の園長経験者、心理発達相談員の定期的な訪問を実施をし、園児をはじめ、法人・保護者に対するフォローを行っているところです。また、保護者、法人、横浜市の話し合いの場である第三者協議会には、局・区職員が参加をしまして、移管後の保育内容や諸課題について話し合いを行っておりまして、こうしたフォロー体制が現状の円滑や園運営につながっていると考えております。
なお、法外扶助費でありますけれども、主として国基準と重複をした助成について見直しをいたしたわけであります。その一方で、本市独自に保育士配置基準を設けてきましたけれども、これは従来通り継続をしてございますし、障がい児保育等の助成の充実についても図ってきたところでございます。
以上、答弁申し上げます。
関議員:答弁もれがありましたので、2点、お願いします。
後期高齢者医療の減免制度ですけれども、低所得者に対する件については要綱等で、市長、副連合長ですから、ぜひ言っていただきたいという気持ちで質問したものでございます。これがもれています。
敬老特別乗車証のところですが、市長に対する6か月間というこの期間が非常に拙速じゃないかということでお聞きしたわけでございまして、その点でも答弁がなかったと思いますので、以上2点よろしくお願いいたします。
中田市長:ご自身の質問時間の中での再質問でございますので、速やかにお答え申し上げたいと思います。
まず、減免に関する要綱等の規定については、先ほどもこれはお答えをしたとおりなんでありますけれども、保険料の減免、これは国が示す政省令などに基づいて、県内一律の基準として広域連合の条例で定めるということになります。横浜市はあくまでその一員ということになりますので、その中での議論の結果ということになるわけでありまして、そういう意味で先ほども答弁をいたしたとおりであります。
次に、敬老乗車証について拙速ではないかということについては、先ほど私はその期間ということについてということで答弁をいたしたわけでありますけれども、市民意見などを反映をし、そしてこれまで専門家によって多いに議論をしてきていただいた中で私たちは決めているわけでありまして、そうした答弁をもってお答えをしたわけでありますが、一言で申し上げれば拙速というにはあたらないというふうに思います。以上、答弁申し上げます。