※実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように、対応する質疑と答弁を交互に記載しました。
古谷議員:私は、日本共産党を代表して、3点にわたって質問いたします。
間違いだらけの自由社版歴史教科書を子どもたちに使わせるな
まず、中学校の教科書の問題です。
現在、市内8区の中学1・2年生が使っている自由社版歴史教科書は、教育関係者からは多くの間違いが指摘されていますが、同社は写真の裏焼き以外の間違いを認めていません。しかし、来年度使用の検定本では、指摘を受けた部分はほとんど削除・訂正されています。新版では訂正された部分を、市内8区の中学生は、現在もなお訂正もされておらず使わされ続けています。国の規則では、誤記など訂正は発行者が文科相の承認を受け必要な訂正をしなければならないとしており、発行者の善意を前提としております。横浜市の子どもたちが間違ったことを学ぶことは、絶対にさけなくてはなりません。
そこで、現行版で間違いと指摘されていた部分を検定本で修正したことについて、その理由を自由社に問いただすことが当然だと考えますが、いかがですか。
そして、間違いかどうかを教育委員会としても、独自に調査する必要があると思いますが、教育長の見解を伺います。
この問題について、間違いの訂正は教科書会社が行うものとして、国と教科書会社に対しても事実確認や調査依頼など一切主導的に動こうとしない教育委員会の態度は、あまりにも無責任だと考えます。異常な事態で、至急改善が求められていると思いますが、市長の見解を伺います。
同時に、自由社が他社からの盗作を認めた年表の歴史教科書はそのまま使用されております。道徳教育上からも子どもへの影響が心配です。教育委員会に対し、改善を要望しておきます。
次に、来年度採択の決まった育鵬社についてです。この会社の歴史教科書も自由社と同じように盗作の疑惑が指摘されています。教育委員会の盗作疑惑の問い合わせに対して、同社は「検定申請の際、原典・出典を明らかにしている。事実無根」と弁明したと聞いています。しかし、教育委員会独自には調査せずに、教科書会社の弁明だけを聞くだけの調査では、疑惑は晴れたとはいえません。いまからでも調査すべきだと思いますが、教育長の考えを伺います。
疑惑のあるまま育鵬社の歴史教科書を採択した教育委員会の責任は重大です。このままでは、疑惑のまま、4月には子どもたちに渡ってしまいます。疑惑の全容解明に市長としてなんらかの能動的関与が必要と思いますが、市長の見解を伺います。
林市長:古谷議員のご質問にお答え申し上げます。
教科書採択について、ご質問いただきました。
教科書に関する調査についてですが、教科書の取り扱いに関することについては教育委員会が判断するものと考えております。
育鵬社版教科書についてのご指摘の件ですが、採択につきまして教育委員会の権限と責任において適正に行われたものと考えています。
山田教育長:教科書採択についてご質問をいただきました。
自由社版教科書の新版についてのご指摘の件についてでございますが、教科書発行者は修正や訂正を含め、新学習指導要領に準拠したものになるように内容を検討した上で、新しい教科書の検定申請を行い、検定を通った教科書が採択の対象となります。検定の過程で、修正等の理由や内容の確認を行うのは、文部科学省であり、各自治体の教育委員会の権限ではございません。
現在使用している自由社版の歴史教科書に対するご指摘の件についてでございますが、自由社の教科書に限らず一般的に検定を経た教科書に誤記等があった場合は、発行者が文部科学大臣の承認を得て、必要な訂正を行っており、これらの手続きは検定を行う文部科学省と発行者との問題であります。
育鵬社版の歴史教科書に対するご指摘の件についてでございますが、育鵬社からは、盗用の可能性などとは事実無根であり、そのような事実はいっさいないとの文書をいただいております。また、他の発行者からもそのような話はうかがっておりませんし、教育委員会として調査を行うことはありません。
花月園競輪場跡地利用は地域住民の声をよくきいて行え
古谷議員:次に、鶴見区の花月園競輪場跡地利用についてです。
昨年12月、「花月園競輪場関係県有地などの利活用に係る検討結果の取りまとめについて」という報告書の中で、防災公園を整備するという方向性が出されました。それに基づき、横浜市から事業化要望が国土交通省に対して出され、国土交通省からUR都市機構に事業化要望が通知され、現在事業候補地区を決定する作業に入っています。
本市が国に提出した事業化要望書の中で、防災公園の予定面積は全体10ヘクタールのうち4ヘクタールとなっていますが、鶴見区の緑被率は18区中17番目の13.7%ときわめて低く、緑とオープンスペースを確保し、そして本市で始めての防災公園街区整備事業にふさわしいものにするために、もっと広げるべきだと思いますが、考えをお聞かせ下さい。
平塚の桜ケ丘公園や千葉県市川市の大洲防災公園などでは、住民と行政とのワークショップ方式で公園を作り上げてきています。また、本市都市整備局が発行している「住民合意形成ガイドライン」によると、「合意形成はプロセスを重視する」と出ています。この花月園競輪場跡地の防災公園整備についても、ただ住民意見をききおくというだけではなく、地域住民と行政が共同してワークショップ方式で一緒に作り上げていくべきだと思いますが、いかがですか。
また、公園以外の街区整備事業についても、同じように地域住民との共同で作り上げていただきたいと思います。地域住民からは大変多くの要望が寄せられています。もともと競輪事業の前は花月園遊園地として、子どもたちの施設として賑わっていました、競輪事業が始まり、地域住民にも多大な迷惑をかけてきた、こういった経緯もあります。住民ニーズを調査するために行政として市民アンケートを取る用意がありますか。また、地域住民の要望をきく機会を設けていただきたいと思いますが、いかがですか。
林市長:花月園競輪場跡地の活用について、ご質問いただきました。
防災公園としてふさわしい規模の整備を行うべきとのことですが、事業化検討の中で、道路や宅地の配置、事業全体の採算性、本市の財政負担などを考慮しながら、防災公園の規模について検討します。
防災公園の整備にあたって市民意見を取り入れることについてですが、現在都市再生機構において、本市とも調整を図りながら、防災公園街区整備事業の事業化に向けた検討を行っております。本市としては、その結果を踏まえて、事業化の可否を判断していくことになります、公園の施設・内容等については、事業化が決定した段階で、具体的な検討を行いますが、その時にはほかの公園整備と同様に、市民のみなさまのご意見をいただきながら検討を進めます。
住民の声を十分にきく機会を設けるべきとのことですが、これまでも地域のみなさまから広域避難場所機能の維持や公益施設整備などさまざまなご要望をいただいています。今後も地域のみなさまのご意見を伺いながら、防災公園街区整備事業の事業化に向けた検討を進めてまいります。
市は放射能汚染牛肉を給食に出した責任をとれ
古谷議員:最後に、放射能対策とエネルギー政策の転換についてです。
いま原発事故による放射能汚染の問題が広がっており、特に学校給食の汚染が、小さなお子さんをもつ保護者の方々を中心に大きな社会問題となってきています。成人より放射線の影響をより大きく受ける子どもたちをできうる限り守ること、そして外部被爆だけではなく内部被爆の原因を少しでも除去することを基本とするように、あらゆる施策を行うこと、その観点からいくつか質問します。
まず、横浜市が提供した学校給食を食べて内部被爆の原因を作ってしまった問題についてです。
先日、南部市場に検査体制の視察に伺うと、市場での放射線検査は1か月に2日間測定日を決め、野菜については6%、魚については3%程度のサンプル調査にすぎません。しかも、私が視察にいった9月1日の時点では、まだ機器の試験運用の段階ですということでした。さらに、産地の検査についても、横浜産の野菜や果物に関して、基本は1品毎に年に1回、出荷前に測るサンプル調査にすぎません。産地でも市場でもサンプル検査では、検査体制としては大きな穴が開いており、現に汚染牛肉が給食に使われてしまったわけです。
そこで。汚染食材が市場に流通する可能性がある、その前提で対応策を練るというのは当然だと思いますが、5月議会の中では「市場に流通しているものについて安全である」という市長の認識を変えるべきではありませんか。あらためて市長の見解を伺います。
「直ちに健康上に問題はない」とよく言われますが、低線量被爆の人体への影響についてお伺いします。食品に含まれる放射性物質の健康に与える影響を検討してきた内閣府の食品安全委員会が、7月26日に公表した「評価書案」によると、100ミリシーベルト未満の健康影響について言及することは「現在得られている知見からは困難」として、低線量被爆の問題に対する科学的検討を避けています。国が即答せずに検討を避けた低線量被爆の健康への影響について、本市が独自に「直ちに健康上問題はない」と言われるのは、どんな根拠に基づいているのですか。お答え下さい。
汚染牛肉が給食に使われた学校の子どもたち8万4000人とその保護者の方々は、とてもいま不安を抱いています。市長は9月2日の本会議で、「今回の摂取量では健康影響はないといえる線量であると複数の専門家の意見を聞いている」と繰り返し答弁されていますが、不安を訴える保護者や子どもたちへ、どう対応をするのですか。「直ちに心配ない」というだけではなく、健康不安を起した行政の責任として不安を払拭するために、市の責任で健康調査をすることは当然だと思いますが、考えを伺います。
いま行っている給食食材検査は、1日1検体のみです。牛肉も豚肉も魚も行い始めたと先ほど答弁されていましたが、1回ずつ測っただけときいています。先ほど述べたように、市場流通している食材が汚染されている可能性があると言う前提で検査をするべきだと考えます。1日1検体、外注して2万5千円の費用しかかからないわけですから、子どもたちの健康第一に考えて、給食食材の1日の主要食材を全て測定すべきだと考えますが、いかがですか。
そして、せっかく全学校に空間放射線量を測る測定器を導入するのであれば、食品まで測定できるようなシンチレーションカウンターも一緒に導入すべきではないですか。そして、その運用については保健所とも協力し、近隣住民が食品を持ち込んで測定できたり、市民への啓発活動もするような地域測定所のようにすべきだと提案しますが、いかがですか。
放射能対策をしなければならない状態になった最大の責任は原発事故をおこした東京電力にあり、それを監督してこなかった国にあるはずです。林市長は9月2日の本会議で「必要に応じ東京電力に求めることを検討する」とおっしゃっていましたが、369万市民の命と健康に責任を持つ市長が、給食食材の汚染をはじめ、子どもたちや横浜市民を放射能汚染にさらしてしまったことについて、横浜市民を代表して東京電力と国に抗議し、その責任の追及をすることと、本市が測定器購入など放射能対策に費やした費用を含めて、損害請求を行うべきだと思いますが、市長の見解を伺います。
林市長:エネルギー政策の転換と放射能対策について、ご質問いただきました。
市場に流通している食品は安全という認識についての見解ですが、食品の放射性物質に関する検査は、4月4日に国が定めた出荷制限等の考え方を踏まえ、農産物等では出荷前に検査を行い、食品衛生法に定められた暫定規制値を超えたものは出荷制限し、超えていないことを確認したものを出荷しています。
しかし、7月8日に残念なことに牛肉について飼育状況調査の不徹底から暫定規制値を超えるものが流通しました。このような状況を受け、本市では8月8日から全国に先駆けて、食肉市場でと畜する牛の全頭検査を開始し、その後出荷制限のかかった福島、宮城、岩手、栃木の4県で全頭検査を開始しました。流通している食品は本来安全でなければいけないと考えておりますので、それを確かなものとするために、継続した検査を行い、その結果を迅速・的確に公表し、市民のみなさまの不安を払拭するよう努めてまいります。
低線量被曝が健康上問題ないと判断する科学的根拠についてですが、放射線防護に関する国際的な見解の中では、低線量被曝とされている100ミリシーベルトより少ない線量では、がん発症への影響は報告されていないとのことです。ただ、発がんリスクはきわめて小さいということまでははっきりしていると、複数の専門家から伺っています。
汚染肉を接種した児童の健康調査を行うべきとのご意見ですが、放射性セシウムに汚染された牛肉を給食で食べたお子様について、保護者の方が心配になるお気持ちは本当によくわかります。しかし、今回の摂取量は食品からの自然放射線量と比較しても健康に影響を与えるものではないとの複数の専門家の見解も聞いておりまして、現時点では健康調査の必要はないと考えています。
食材検査など放射線対策に要する経費を東京電力や国に対して請求するべきとのお考えについてですが、九都県市合同で国に全額負担を求める国家要望を行っているほか、今後必要に応じて東京電力に対しても補償を求めることを検討してまいります。
山田教育長:エネルギー政策の転換と放射能対策についてご質問をいただきました。
1日の主要食材すべてを検査すべきとのことでございますが、48ブロック、約350校の主要食材をすべて検査することは、現在の検査機関の体制や費用の面からも難しく、また仮にすべての食材をミックスしたものを一度に検査しても、汚染された食材があったとしても、その特定には再度検査が必要なことになることから、現実的には困難だと考えております。
各学校に食品を検査できる放射線測定器を導入すべきとのことでございますが、給食食材については現在実施している民間検査機関による精密な各種分析検査を今後も実施してまいります。また、学校を地域測定所のように運用すべきとのことでございますが、食材については出荷元や本市の市場においても検査を行っておりますし、またただいま申し上げましたように、各学校へは精密な食品検査ができる放射線測定器を配布する考えはありませんので、学校を地域測定所として運用することは考えておりません。
市長ははっきりと脱原発・自然エネルギーへの転換の表明を
古谷議員:最後に、そもそもこれらの放射能汚染の原因を作り出した原発依存のエネルギー政策の転換は待ったなしです。どの世論調査を見ても、脱原発・自然エネルギーへの転換は7割以上を超えています。6月21日の定例記者会見で、市長は「原子力発電所についてはないほうがいいと思う」「自然エネルギーの活用を進めていかなければならないと思います」とおっしゃっています。最大の政令市の市長として、林市長にはもっとはっきり原発からの撤退と自然エネルギーの積極的活用に向けて横浜市として本腰を入れていく、このことをはっきり表明すべきだと思いますが、市長の考えをうかがい、私からの質問を終えます。
ありがとうございました。
林市長:脱原発、自然エネルギーへの転換を打ち出すべきとのことですが、今回の未曾有の事故により、原子力発電にまつわる課題が広く認識されたことを受け、国のエネルギー政策について国民的議論が必要となりました。本市としては、省エネ意識やライフスタイルの見直しなどの機運が高まっているなかで、地球温暖化対策とエネルギーの安定供給という観点から、再生可能エネルギーをいっそう普及・拡大してまいります。
残りの質問については教育長より答弁いたします。以上、お答え申し上げました。