議会での質問・討論(詳細)
2024年6月5日

■討論 白井まさ子 2024.6.5

白井正子です。日本共産党を代表して、賛成する議案3件、反対する議案1件、委員会で不採択となった請願3件について討論します。

国の保育士配置基準の引き上げに伴う予算増を活用し、市独自の基準の更なる引き上げを

賛成する議案のうち、市第3号議案、横浜市児童福祉施設の設備及び運営の基準に関する条例等の一部改正は、「子どもたちにもう一人保育士さんを」と願う国民の声に背中を押され、国が保育士1人が受け持つ子どもの数である保育士配置基準を引き上げたことに伴う本市条例の改正です。やっと国の基準が市独自の基準に近づいたもので、歓迎します。その上で、先の議案関連質問でも取り上げましたが、本市がこれまでも独自の予算措置を続けて国基準より手厚い配置基準にしていることは評価しています。そこで、ぜひその独自努力の効果の検証を行うとともに、今回の改正で国からの予算が増額される分を活用し、0歳児3人に保育士1人という現状の配置基準を保育現場から要望されている2対1に改善するなど、市基準のさらなる引き上げを求めます。

また、民間保育所での保育士確保への本市による責任ある支援が待たれています。近年、定員割れとなっている保育所の中で、保育士の確保ができないことが定員割れの原因の一つになっているとところもあると聞いています。保育士採用の倍率が高く維持されている公立保育所と同程度に民間保育所の保育士さんの処遇を引き上げることが問題解決の道だと考えます。必要な手立てを早く打っていただくよう、合わせて求めるものです。

ハイテクセンターの土地建物売却については、改めて施設を設置したことの検証を

次に市第10号議案、金沢区福浦一丁目所在市有土地および建物の処分についてですが、これは、金沢区にある横浜金沢ハイテクセンターの土地と建物を売却するものです。そもそも入居者確保には、企業立地助成制度によって市財政を投入し続けてもままならなかったのが実情です。改めて市としてこのような施設を設置したこと自体の検証を求めるものです。

妊婦・産婦健康診査事業の拡充、スクールカウンセラーの配置増など歓迎し、更なる改善を

市第17号議案 令和6年度横浜市一般会計補正予算(第1号)については、妊婦健診費用助成が今回5万円拡充され、政令市でトップクラスの公費負担となり、拡充を歓迎します。国は、出産までの健診の望ましい基準を14回程度としており、本市は14回分の補助券を発行しています。しかし、近年では出産年齢が高くなり、分娩リスクが高くなっている傾向があり、いざ「リスクが高い」状況になると、あっという間に基準よりも多くの健診回数となります。お金の心配なく出産できるよう、健診回数の更なる引き上げと、費用の全額補助を行い、よりよい制度にしていくことを求めます。

また、いじめ問題等への対応で、SOSを早期に察知して対応につなげるとしてスクールカウンセラーの体制を中学校等へ強化する事業については、さらに小学校での拡充とスクールソーシャルワーカーの増員を求めたところ、教育長は、「今後いじめ等に関する総合的な相談の仕組みづくりについては、小学校におけるスクールカウンセラーの拡充も含めて、他の自治体なども研究しながら取り組んでいく」、「スクールソーシャルワーカーとスクールカウンセラーとの効果的な連携、役割分担を見極めた上で総合的な仕組みを検討していく」と答弁されました。今回の中学校等での配置増を歓迎し、小学校での拡充に期待します。

また、中学校で教室以外に居場所を設ける校内ハートフルを全中学校に広げる事業について、専用教室の確保を求めたところ、教育長から、「まずは少しでも早く教室以外に安心して過ごせる場所を確保することに優先して取り組み」「生徒一人一人にあった支援、多様な学びを提供できる、より良い環境を学校と連携し整える」と答弁がありました。これまで不登校児童生徒支援を市民と市議団で求めてきており、一歩前進を実感しています。しかし、特別支援教室が専用教室として確保できていない学校も多い中で、新たに校内ハートフルの専用教室確保は容易でないことが想定されますから、専用教室が確保できるよう学校への更なる支援を求めておきます。また、小学生には保護者同伴でいく学校外の居場所しかありません。小学校での校内ハートフルが実施されるよう強く求めます。

「こどもの権利」明記のない条例に賛同できない

次に、議第1号議案 子ども・子育て基本条例の制定についてです。議員の皆さんの条例提案の取り組みには敬意を表するものです。しかし賛成することはできません。

その理由の1つは、子どもの権利についての記述がないことです。こども基本法が、子どもの権利条約にのっとって、基本的人権が保障される、年齢や発達段階に応じて自己に直接関係するすべての事項について意見を表明する機会が確保されると規定していることは重要です。「こども大綱」では、こども・若者を権利の主体とし、意見表明と自己決定を年齢や発達段階に応じて尊重し、こども・若者の最善の利益を第一に考えることを政府のこども施策の基本的な方針としています。

教育関係者などからの要望書には、横浜市の子どもが権利の主体として育って行くことを主目的とすべきと述べています。条例案が、こども基本法の精神にのっとったものでありながら、子どもの権利について記述がないのは、あまりにも不自然と言わざるをえません。条例案では、本条例を踏まえて、こども基本法の市町村こども計画を策定するとしていますが、子どもの権利の記述のない条例を踏まえれば、子どもの権利の記述のないこども計画となってしまうのではないかという恐れが拭えません。そのようなことにならないよう慎重な検討をお願いするものです。

日本が国連子どもの権利条約を批准してから30年です。この間、国連の委員会から社会的支出の少なさ、貧困率の高さ、いじめ・中退などの学校教育などへの勧告があっても、それを放置し続けた結果が表れています。子どもが権利の主体と高らかに述べることこそ、本市でこども・子育てに係わる条例を制定する意義ではないでしょうか。

理由の2つ目は、子どもの「養育は家庭が基本」と改めて本条例で明記し、強調していることです。「子どもの成長は、社会全体が責任を負う」ということは、近代国家の当たり前の原則です。保護者の経済不安などさまざまな生活上のリスクが直接子どもに影響しており、これは子育て支援が弱い表れです。ですから私たちは、誰もが子育てしやすくなるように、様々な社会的支援に力を注いでいるのではないでしょうか。養育は家庭が基本という考え方では、支援を手厚くすることに向かいません。国がこれまで、児童扶養手当や生活保護の改悪など子育て支援の後退を合理化する理由として強調されてきたもので、虐待や貧困、ヤングケアラーなど、家庭の中で苦しむ子どもたちや保護者をさらに追い詰め、一層孤立させてしまうことにつながる恐れがぬぐえません。

子どもの意見表明権は、大人に子どもの意見を聞く義務を課すものでありながら、今回、本条例案の策定過程に子どもの意見を聞いていないという問題があります。子どもに関わることは、当事者の意見をくみ取り、議会で慎重な議論を続けて、時間をかけて作り上げていくことが求められているのではないでしょうか。

不登校生徒の支援・権利保障を求める請願、地方自治法の改悪反対の請願は採択を

委員会で不採択となった請願についてです。
請願第1号は、不登校の児童生徒の多様な学びを保障するための経済的支援制度の確立で、学校に代わるフリースクール、フリースペース等の居場所に通所する際にかかる保護者の経済的支援、また、居場所運営のための家賃・光熱費・人件費等の経済的支援を求めるものです。東京都は今年度からフリースクール等に通う不登校状態の児童・生徒に対して月上限2万円で利用料の助成事業を始めています。鎌倉市は不登校児童生徒がそれぞれの特性に合った通いの居場所を確保し、不登校状態を起因とした孤立を防ぐことを目的として月上限1万円でフリースクール等利用児童生徒支援補助を行っています。本市のフリースクールでも授業料や通学交通費の保護者負担が大変と聞いています。また、居場所を運営している団体から出された、家賃・光熱費・人件費等の経済的支援の要望は切実です。学校以外の居場所への支援を求める請願は、切実な市民の声です。ぜひ採択していただくようお願いします。

請願第2号、不登校等の子どもの健康診断を受ける権利を保障するための制度確立を求める請願については、不登校中など、学校で健康診を受けることが難しい児童生徒が、学校外の医療機関で全診療科目の健康診断を受けられる環境整備と制度を作るよう求めています。学校保健安全法には、健康診断の「結果に基づき、疾病の予防処置を行い、又は治療を指示し、並びに運動及び作業を軽減する等適切な措置をとらなければならない」とその重要性がうたわれ、「必要があるときは、臨時に、児童生徒等の健康診断を行うものとする」としています。本市の実態は、昨年度、内科の健康診断未検査の人数が、小学生4474人、中学生3528人にのぼります。何年も受けていない児童生徒の実態把握が必要です。全国には学校医・学校歯科医の医療機関に行けるときに行って自己負担なく受けられる例があります。また、健康診断の実施日以外の日に学校で受けられるようにするなどで、臨時に行うなど、学校保健安全法に則り、本市が、現状の課題に向き合い、一人一人の子どもたちの健やかな成長のための責任を果たしていくことが必要です。本請願は残念ながら賛成少数で不採択になりましたが、この本会議においては、ぜひ採択していただきますようお願いします。

請願第3号は、国に対して地方自治法一部改正案を廃案にする意見書の提出を求めるものです。 国会で審議中の改正案は、政府が「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と判断すれば、地方自治体に指示できる、新たな「指示権」の枠組みを導入するもので、憲法で保障された地方自治の流れに逆行し、地方自治を根底から破壊するものです。「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」とは何か、その類型も、判断基準も、明らかにされず、さらに発生の「おそれがある」など判断はすべて政府に委ねられ、国会にも諮らず国の恣意的判断で、自治体を国に従属させることなど、断じて許されません。廃案にする意見書の提出を求める請願の採択が当然だと考えます。

教育委員会の傍聴妨害の徹底的な原因究明を進め、市民の信頼回復を

最後に、教員による児童生徒への性暴力事件の裁判に教育委員会が教職員へ傍聴動員を命じ一般傍聴を妨害した問題は、裁判公開の原則を定めた憲法擁護義務違反と言わざるを得ません。公務と位置付けた組織的な動員は大問題です。被害者のプライバシーを守るのは当然ですが、それは司法の役割であり、傍聴席を埋め尽くす発想は、事件を隠す意図だと市民からの声があります。本質を明らかにしない限り市民の信頼を取り戻すことはできないことを指摘して、討論を終わります。


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