議会での質問・討論(詳細)
2024年3月26日

■新教育長の任命についての討論 みわ智恵美 2024.3.26

日本共産党を代表し、市第167号議案、横浜市教育委員会の教育長の任命について討論します。

「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律について(通知)」で、「教育長の任命の議会同意に際しては、新「教育長」の担う重要な職責に鑑み、新「教育長」の資質・能力を十分にチェックするため、例えば所信表明を行った上で質疑を行うことなど、丁寧な手続きを経ることが考えられる」としています。本来ならば、この場で候補者ご自身からの所信表明とそれに対する質疑ができてこその人事案件であると考えます。それは実施されませんので、重大案件であるいじめ重大事態の件を含め、私たちの教育委員会への要望を述べます。

私たちは、横浜の教育をめぐっては3つの大きな問題があると考えます。第1にいじめ問題、第2に不登校、第3に教員の未配置と働き方の問題です。新教育長にはこの横浜市の教育における問題解決のために、全身全霊教育委員会と一緒になって尽力されるよう強く求めるものです。

日本における子どもの権利侵害は、貧困、虐待、いじめ、不登校、自殺など極めて深刻です。経済先進国の中で、予算に占める教育文化予算が最低水準という状況で、国が示した高等教育の無償化は名ばかりです。

日本政府に対する、2010年の国連子どもの権利委員会「総括所見」で、過度な競争がいじめや不登校を助長する可能性があり、過度の競争で引き起こされる悪影響を回避するために、学校制度や教育制度を再検討するよう勧告されましたが、学級編成も小学校でやっと35人学級。こんな中だからこそ、横浜市教育委員会が子どもの権利条約が掲げた「子どもの最善の利益」「生命、生存及び発達に対する権利」「意見表明権」「差別の禁止」の4原則を重視した教育行政を進めていくことへの市民からの期待が大きく、責任があります。

今回明らかとなった深刻ないじめ自死問題は、その期待を大きく裏切る不適切極まりない対応が明らかとなってきました。教育委員会による、いじめ自死が起きた現場への対応も、こどものその苦しみに寄り添った対応も行われていませんでした。自らが決めた「いじめ防止推進基本方針」に自らが従わないというずさん極まりない事態です。

失われた命は戻っては来ません。だからこそ、何があったのかを一刻も早く明らかにしていくことが、失われた命の尊厳を何とか守るすべではないではないでしょうか。二度と起こさないという誓いではないでしょうか。それができていなかった、故意に見えなくした事態はあまりにも深刻です。

昨年度のいじめ認知件数は12,248件。不登校児童生徒は8,170人。ところがいじめ要因の不登校は小学校で1人。どう考えても教育委員会の調査報告の乖離はけた外れです。横浜市の中学校では、36人以上のクラスが全体の58.7%。ひとり一人に行き届いた教育を実践する教師の働き方は、月80時間超え残業が中学校では19.6%で、5人にひとりが過労死ラインを超えています。その上「先生がいない」「教育に穴があく」職員未配置は、2022年度は162件、今年度は半年で110件、122日間の未配置もあったときいています。教員配置を最初から欠員でスタートすることで、時間とともに産休・育休や病休の代替が見つからない事態が起こっています。教職員が安心して休めない、子どもたちに授業を十分に保障できないなどの問題が深刻化しています。

最初から先生をきちんと定数通り採用するという決断が足元から求められています。子どもたち一人ひとりに寄り添える基本をまず整える教育委員会の職責を果たしていただきたいと思います。

また、一方で教育委員会の機能不全は、大きな図体をもはやコントロールできないことを示しているのではないでしょうか。もっと小回りの利く、学校現場を集団的に掌握できる教育委員会にしていく必要があるのではないでしょうか。例えば、港北区の36校を担当する指導主事は4人。小学校671学級と個別支援級122学級、中学校180学級と個別支援級28学級、合計で1001学級を4人でどのように指導しているのでしょうか。各区に教育事務所を設置するくらいの改革がどうしても必要です。是非、人口20万人から40万人くらいの他自治体の教育委員会の視察をされるなど足を踏み出していただきたいと思います。

また、今回の事案では改めて学校現場だけではなく教育委員会が自分事として研修に取り組むことが不可欠です。
次に、横浜市において外国につながる子どもたち、経済な困窮の下にある子どもたちへの教育の充実も進めていく必要があります。

またLGBTQなど性的少数者に対する理解啓発や包括的性教育の推進についても、まだまだ課題となっています。差別や偏見のない学びの環境を築いてください。誰もが安心して学ぶことができるよう、そのために教育委員会がすべきことを追求していただきたいのです。学校現場こそが虐待や貧困、ヤングケアラーなど、家庭の中で苦しむ子どもたちや保護者に寄り添える場所として機能できるようSSWやSCの配置を格段に増やしていただきたいと思います。

 今年の夏には、昨年に続き、中学校教科書採択が行われる予定で、就任直後から、採択手続きが始まります。教科書取扱審議会に教科書調査員が置かれるだけでは、こどもたちの状況に沿った教科書選定を行うには極めて不十分です。本来あるべき教科書採択のありかたである各学校・教員の意見が反映される仕組みとなるよう、教科書展示会のあり方や、学校現場の採択への参加の仕方などしっかりと取り組んでいただきたいと思います。また、採択の審議における発言では、教科書会社名を出すことや、採択における委員名を明らかにする、直接傍聴希望者が全員入れる会場で採択会議を行うなどさらなる公開性、透明性の向上に教育委員会として尽力いただきたいと思います。

また、中学校給食の全員制については、学校給食法を名実ともに実行できる栄養が損なわれていないできたてを中学生に提供する計画へと進めていくことを改めて求めます。

 「GIGAスクール構想」によって、「教育のICT化」がものすごい勢いで加速しています。現場を見ると子どもたちもついていくのに精いっぱいという状況が見られます。また、公費負担で導入した「一人一台端末」も次回更新時には私費負担になる懸念があり、保護者の教育費負担が増加するおそれがあります。そして、学校教育へのデジタル化推進の中で、子どものデータ連携を推進する規定は、子どもの個人情報が集積され、本人の不利益な情報がデジタルタトゥー(ネット上に消せずに残る負の情報)として将来にわたり影響を及ぼしかねないものです。

プライバシー権の侵害やプロファイリング(人物像の推定)、スコアリング(点数化)などによる権利侵害が生じる恐れを高めるものです。慎重な対応が求められています。

何より今、必要なのは、子どもを権利の主体として明確に位置付け、子どもが自由に意見を表明し反映される権利を保証する仕組みが必要不可欠です。
「こんな学校にしたい」「勉強が分からない」「いじめがある」と言える学校へ。多様性と包摂性が存分に発揮される横浜の教育へと前に進めていただきたいと思います。

新教育長と新教育委員が加わった教育委員会が、子どもたちの最善の利益を実現するために働かれることを心より期待して、討論を終わります。


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