決算余剰金64.7億円で切り捨てた市民サービス・福祉を元に戻せ
私は、日本共産党を代表して、2006年度一般会計歳入歳出決算および事業費会計決算等の認定に反対し、討論を行います。
2006年度は一般会計歳入1兆3,186億余万円、歳出1兆3,186億余万円と、両決算額とも3年ぶりに対前年プラスに転じました。市税収入は、年金課税の強化や定率減税の縮減などの庶民増税等により、前年度決算比2.7%増の6,855億円となり、2年連続の増収となりました。
市長は、2006年度を「市民がこれまでの改革の成果を実感できることをめざす」と、胸をはってきましたが、「内部経費の削減・受益者負担の適正化」、あるいは「社会的公正・公平」「選択と集中」の名で、市民サービスの切り捨てや人員削減などの見直しを行い、2006年度における市民負担増等への直接的影響は、通年ベースで13.8億円となり、中田市政下の4年間の累計で約400億円にものぼります。
中田市長になってから、「財源不足」を大々的に打ち上げ、それを理由として、予算段階で徹底的に市民サービス・福祉を削減した上に、「事業執行の効率化」「メリットシステムの定着」などで予算執行を切り詰め、決算段階では、一般会計における実質収支、いわゆる決算剰余金を2003年度以降、38.3億円、44.1億円、47.8億円、2006年度は64.7億円も絞り出しました。また、不用額も、2006年度は一般会計全体で270億円、とりわけ福祉費は105億円も生じさせています。こんなに決算で剰余金や不用額が出せるなら「切り捨てた市民サービス・福祉を元に戻せ」という市民の怒りは当然であります。
「庶民に増税・大企業には減税」、自立を阻害する障害者自立支援法や、現代版「うば捨て山」といわれる後期高齢者医療制度導入など、社会保障の相次ぐ改悪に対し、国民からノーの厳しい審判を受けた、自・公政権の構造改革路線と、中田改革の流れは同じであることを、この際、強く指摘をしておきます。
格差と貧困の拡大に追い討ちをかける弱者切り捨て
決算認定に反対する具体的な理由の第一は、格差と貧困の拡大に追い討ちをかける弱者切り捨ての問題です。
生活保護世帯に対し、この間、夏・冬の慰問金の支給や水道料金等の軽減の廃止につづき、2006年度は特別乗車券まで取り上げてしまい、さらに、原則1割の応益負担を押し付ける障害者自立支援法によって負担増で苦しむ障がい者に対し、ガイドヘルプ事業を削減したことも問題です。
介護保険料が標準月額で3,265円から4,150円への値上げによる負担増だけでなく、国の言いなりになって、福祉用具である電動ベッドの貸与を要介護1・要支援からはずし、3,178人から163人と利用者を激減させました。
格差と貧困の広がりの中で、国民健康保険料の滞納を余儀されている世帯に対しても、情け容赦なく保険証を取り上げ、資格証明書がなんと3万世帯以上に発行されている本市の対応は、他都市に比べて余りに異常であり、医療を受ける国民の権利を市民から奪うもので、断じて容認できるものではありません。
年金課税の強化や定率減税の縮減などで、過酷な増税が庶民を襲いました。こういう時だからこそ、条例で定める個人市民税の減免規定を最大限活用すべきであります。にもかかわらず、本市において失職等で所得が減少した場合の2006年度における減免適用はわずか228件で、人口3分の1の川崎市における1,738件に比べて余りの低さであり、市民に減免規定の周知など行政の姿勢が疑われるものであります。また、滞納者に対して1万6,000件以上におよぶ「差押」処分も、他都市と比べて突出しており、強権市政の表れと言わざるを得ません。
高齢者の住民税障害者控除についても、「国基準」を口にするだけで、他都市で行っている「市独自基準での運用」や、対象者に対する周知の面で、制度の活用を怠っている姿勢も問題であります。
市長は、市民サービスや福祉の切捨ての理由として「将来にわたって持続可能」のため、あるいは「負担の公平性」を言い、「4年間で扶助費を695億円も増加させてきた」と反論されますが、本市の扶助費が、2005年度で見れば13政令市中10番目の低さであることを知っての言い分か、見識を疑わざるを得ません。
次世代を担う子育て・教育行政が市民要求に応えていない
第二は、次世代を担う子育て・教育行政が、市民要求に応えたものになっていない問題です。
よりよい保育をと、長年にわたる市民や保育関係者、行政が積み上げてきた、本市の保育水準に、情け容赦なく大なたが振り下ろされました。「国基準に重複した助成の見直し」として、劣悪な国の保育基準を補ってきた、民間保育園に対する法外扶助費を13億円、07年度を合わせれば24億円も削減しました。その影響は一園あたり年間で約1,000万円の助成金のカットになります。市長には、きびしい労働条件のもとで懸命に頑張っている保育士など保育関係者の悲鳴が聞こえませんか。コスト主義で公立保育園の民営化を強行する姿勢に相通ずるものと指摘しておきます。
学童保育の分野でも、2006年度から委託方式を補助方式へと改悪し、行政の責任を後退させ、1施設あたり基本補助金を平均で200万円も削減し、40万筆の署名に寄せられた市民の切実な要求を踏みにじりました。国の放課後児童健全育成事業の考え方に沿って、元の委託事業に戻し、運営や指導員の待遇改善を実施すべきであることを強く求めます。
教育の現場では、いじめ・不登校・学級崩壊、学力・体力の低下など、児童や生徒、教師にとっても深刻な事態が続いています。これら問題の解決の重要なひとつに、一人一人の児童に目が行き届く30人以下学級などの実施が叫ばれている中で、本市として手立てが全く見られません。教員についても毎年700人前後の欠員を生じさせ、入学式に担任が決まらない事態なども看過できません。中学校給食の実施という市民の願いにも背を向けたままであります。
教室の夏場の暑さ対策について、扇風機等の設置が遅れている背景には、他都市と比べて極端に低い本市の学校運営費があり、その拡充は待ったなしであります。
市立大学において、2年次から3年次への進級要件として、英語能力テストTOEFL500点以上という制度を強引に導入し、5人に1人の学生が進級できないという、異常な事態を引き起こしました。さらに、進級できない学生の奨学金が打ち切られ、なんの暫定措置も救済措置も取らない、市と大学の対応を厳しく指摘しておきます。また、独立行政法人にし、やみくもに運営交付金を削減した結果、老朽化した校舎の耐震対策など、大学の整備・改善もままならないとの悲鳴も、大学現場から聞かれているところであります。
子育て・教育行政は、次世代にむけた市民の財産作りです。必要な予算付けを含め、施策の抜本的な拡充を強く求めます。
生活基盤を削減する一方で、大型開発や大企業支援には大盤振る舞い
第三は、「選択と集中」とする公共事業が、生活基盤を削減する一方で、大型開発や大企業支援には大盤振る舞いだという問題であります。
大さん橋国際客船ターミナルでは収支見通しの甘さが露見し、南本牧埋立て事業、上大岡駅西口再開発事業など大型開発の失敗の原因も、その責任の所在もあいまいにしたまま、「しかたがなかった」と安易に税金で尻拭いをするような態度は、厳しく問われなければならないことを、まず指摘しておきます。
2006年度は、新規および借上げ市営住宅の整備ゼロにするなど、多くの生活基盤に関わる事業が削減されました。これらは市民生活だけでなく、市内中小企業の仕事減らし、地域経済に否定的な影響をおよぼすものでした。また、みなとみらい21地域など2地域から9地域に税金軽減・助成金など企業誘致インセンティブを拡大し、また、さらなる南本牧等の埋立て事業や、高速道路建設などを推進する一方で、既存の中小企業や商店街への支援には、商工業・サービス振興費の名目で、経済関係予算全体の1%にも満たないような実態では、「地域経済の活性化」とは名ばかりで、どこを向いて本市経済の舵取りを行っているのかが問われるものであります。
また、本市の公共事業における入札・契約制度においても、低入札やダンピング競争を引き起こす競争主義から、地域振興に必要な要件の配慮やランク別配分、分割発注の手立てなど、競争型でも癒着型でもない、制度改善が求められています。
市民との「協働」とは裏腹に、極端な効率主義・拙速で強引な市政運営
第四に、市民との「協働」とは裏腹に、極端な効率主義等を持ち込んだ、拙速で強引な市政運営の問題です。
わが党は、単に「民間活力」を否定するものではありません。下水汚泥の改良土プラントや消化ガスによる発電など、企業の技術力活用がより有効な事業もあります。しかし、教育や福祉、公共交通など市民サービスに直結する公共的な事業を、「コスト・効率主義」、「民営化ありき」とする行政運営は、自治体の自殺行為であります。
市立保育園、学校給食、直営動物園、公園、市立病院や市立大学に、見境なく民営化や指定管理者、法人化導入するなどは、市民サービスや福祉の増進を目的・役割とする自治体の責任放棄として、厳しく指摘します。
金沢区に日本最大の産業廃棄物焼却施設を建設する問題では、健康被害や環境悪化などの地域住民の不安を解消することなく許可したのは看過できません。
協働のパートナーとしている自治会・町内会に十分な説明も合意も得ないで、地域活動振興費の名目で助成金を減額したことも、行政への信頼を著しく傷つけました。
一方的な市営バス路線の廃止等再編についてですが、市民生活の利便性を第一の目的とする市営バスに、単なる「採算性」を持ち込み、さらに、行政路線等への任意補助金の全額カットを交通局に強要した、市長の異常な市政運営に端を発しています。
市民の怒りが沸騰し、短期間に16万人のバス路線廃止反対・存続を求める署名が寄せられ、市民の声に押されて、市は「生活交通維持路線」や「暫定運行」などの措置を取りました。しかし、これはあくまで暫定的なものであり、市民の足を守るために、バス路線の維持・拡充、市営バス事業の堅持を強く求めるものであります。
合わせて、敬老パスについても、新たな受益者負担、利用制限などの見直し・改悪の検討を止め、現行制度を維持するよう、この際、強く申し添えておきます。
米軍基地の早期返還、「平和都市宣言」を
最後は、米軍基地や憲法の平和原則に対する対応の問題です。
「戦争司令部ノー・爆音も原子力空母もゴメンだ!」と、12月2日、座間市で首都圏大集会が開催され1万3,000人が結集しました。
横浜港の米軍ノースドックは座間キャンプと直結し、戦略的位置が高まり、横須賀への原子力空母母港化と合わせて、市民の安全への大きな脅威となります。2006年度に小柴貯油基地が一部を除いて返還されましたが、池子の米軍住宅建設と引き換えに約束された、その他の基地返還については、いまだに目途が立っていません。
座間市は、基地再編交付金の指定排除という不当な国の対応にも屈せず、市役所や公共施設に「垂れ幕」を掲げ、全市一体となって、キャンプ座間への米陸軍第一軍団司令部の移転に反対しています。横浜市も、米軍基地の早期返還への運動とともに、他都市にならって「平和都市宣言」を行うことを求めて、日本共産党を代表して私の討論を終わります。ありがとうございました。