2011年7月15日
横浜市教育委員会 教育長 山田 巧 様
日本共産党横浜市会議員団
団 長 大 貫 憲 夫
2011年度横浜市中学校等教科書の採択が8月に行われると聞いています。2009年8月の採択では、自由社版中学歴史教科書「新編新しい歴史教科書」が市内18区中8区で採択され、2010年4月入学の中学1年生から使用されています。
日本共産党市会議員団は、2009年8月の中学歴史教科書の採択手続きには、教科書取扱審議会の答申無視や、歴史教科書だけを無記名投票としたことなど重大な瑕疵と疑惑があるとして、採択のやり直しを求める申し入れを田村前教育長に行いました。そもそも無記名投票は、教科書採択の公開の原則に反しています。堂々と各人の態度をオープンにしてはじめて教育委員会の「権限と責任」を果たしたと言えるのでないでしょうか。
問題は、採択手続きにとどまりませんでした。自由社歴史教科書について、史実の間違いや写真の裏焼きなど編集ミスが発覚、指摘されていることです。自由社は、写真裏焼き7か所を訂正しただけで、内容の間違いについては認めず、現在の1年生が使用している2011年度版でも放置されたままです。しかし、前近代部分を中心にした20か所以上の明白な間違いは、今回の採択対象となる新版(2012年度版)ではほとんどカットされています。子どもの教育に責任を負う立場の教育委員会として、教科書会社に訂正を求めることは、当然のことです。それをしないのは、間違いの多い教科書のままで学ぶことを容認することと同じです。
しかも、今般、同教科書の盗作疑惑問題が浮上しました。新聞報道によると、他社の年表に酷似していることについて、代表執筆者の藤岡氏は「関係者に迷惑をかけ、深くおわびする。夏にこの教科書が採択された後、来春の使用開始までに充実した年表につくり直す」と述べ、盗作を認めています。その後、年表盗作について、自由社は、市立中学校長宛に詫び状を出し、そのなかで盗作事実を認めています。盗作は社会的道義や規範に反する犯罪行為です。犯罪行為でつくられた教科書を子どもたちに使用させているのです。自由社の盗作疑惑は図版もあり、その疑惑は育鵬社歴史教科書でも指摘されています。
教科書の採択は、主権者・国民の教育権にかかわることであり、その手続きは市民への説明責任と納得が得られるものでなくてはなりません。盗作疑惑の全容解明はもちろんのこと、教科書会社自ら間違いと盗作を実質上認めた教科書の回収はまったなしです。
こうしたなかで、教育委員会として、つぎの措置を講じられるよう要請するものです。
1、 他社の年表を盗作した自由社が発行する教科書(歴史、公民)は、採択対象外とすること。また、盗作疑惑のある育鵬社の教科書については、疑惑が解明されるまでは、同様に採択対象外とすること。
2、 現在中学1・2年生が使用中の、他社の年表を盗作し、間違いの多い自由社歴史教科書は回収し、特例措置として別の教科書を配布すること。
3、 採択方法は、無記名投票でなく、教育委員の説明責任を明確にし、採択手続きの透明性を担保する、記名投票など公開の原則にふさわしい方法とすること。
4、 開かれた採択を保障するため、採択時の教育委員会議は、傍聴希望者全員が入れる会場で開催すること。開催期日の告知は、3日前ではなく、1週間前以上とすること。