2023年12月21日
日本共産党横浜市議団 団長 古谷やすひこ
はじめに
11月30日から開催された第4回定例会は、12月20日の本会議で、主に非課税世帯に向けた7万円緊急支援給付などを具体化する補正予算案や、みどり税の5年間延長提案などの市長提出議案は、すべて賛成多数で可決し、閉会しました。
請願は、日本共産党が紹介議員となった、35人以下学級の早期実現、保育・子育て支援施策の拡充、中学校給食調理鍋にタバコ吸い殻混入に対する徹底調査を求める3件と賛同した2件は、自民・公明・立憲、維新、国民(民主フォーラム)等の反対によって不採択になりました。
初日の市職員給与条例の質疑に古谷やすひこ党市議団団長、議案関連質問をみわ智恵美議員、一般質問は白井まさ子議員、最終日は大和田あきお議員が討論で登壇しました。
本会議での党議員の質疑(大要)は以下の通りです。
1、市長や議員の期末手当が一般職と一緒に引き上がる仕組み 見直し方向示される
給料条例議案関連質問
第4回定例会初日の11月30日は、市職員等の期末手当や給料等を定める、いわゆる給料条例の改定案が提案されました。日本共産党は、人事委員会からの勧告を受け、常勤職員の給料及び期末勤勉手当の支給割合の引き上げや会計年度任用職員の期末手当の支給割合の引き上げを行ったを評価しつつ、引き上げ額0.1月分では、実質賃金が年間24万円減っている中で物価高騰の影響には到底追いつけないと指摘しました。また、現在の横浜市の仕組みでは、市職員の期末手当等が引き上がると、市長や市会議員の手当ても自動的に引き上がる仕組みになっていることは市民の理解は得られないと批判。分けて議論できるよう条例改正を行うことを提案しました。
また、会計年度任用職員については、国から常勤職員と同じように給与改定分を本年4月まで遡及して支払う通知が来ていることを示し、本市でも遡及して支払うべきだと提案しました。
山中市長は、特別職と一般市職員の期末手当を分けることについては「現在の課題も踏まえて今後検討を進めていく」と答弁しました。会計年度任用職員の4月までの遡及改定については、必要な関係部門との調整や近隣他都市の状況等を勘案し、今年度は遡及改定をしないことにしたと述べ、次年度から要件を満たす職員について遡及改定を行うと答弁しました。
採決の結果、条例案は日本共産党(5人)も含めて賛成多数で議決されました。
2、横浜みどり税の延長はやめよ
議案関連質問
12月7日は、みどり税を5年間延長する議案や物価高騰緊急支援給付金の補正予算案案など市長提出議案への関連質問が行われました。
日本共産党は、横浜みどり税の延長については、市内の貴重な緑を守るとして15年間実施されてきたが、緑の減少を止めることが出来なかったと指摘。今後も、三ツ沢公園の再整備や、大規模な緑の喪失を止められない上瀬谷米軍跡地の区画整理事業などでみどりを減らし続ける計画が進められていると市の姿勢を批判。さらに、今後5年間も市民に所得に関係なく、一律に年額900円の負担を求めるみどり税の延長することは、市民の理解を得ることは到底できないと主張。また、みどり税を調査する「税制調査会」の答申には、緑地の減少要因は宅地開発によるものと指摘されていることを示し、緑地の減少要因である宅地開発にこそ、手を打つべきだと提案しました。
山中市長は、「計画の開始以降、約1,000ヘクタールの樹林地を保全してきた」と述べ、宅地開発については「法令に基づき緑化や公園の設置の義務付けに加え、樹林地の保全について事業者と協定を結び、開発等の機会を捉え緑の保全と創出に努めている」と答弁しました。
3、出産費用ゼロ、横浜園芸博、気候危機対策
一般質問で市長公約と横浜の大きな問題に迫る
12日の会派代表の一般質問では、出産費用ゼロへの実現、省エネ・再エネを基軸にした気候危機対策や、国際園芸博覧会の過大計画の見直しについて問題点を指摘し改善提案を行いました。
出産費用ゼロの具体化を
山中市長が公約されている「3つのゼロ」のうちの出産費用ゼロに向けて、出産費用調査が行われました。調査の結果、横浜市内の出産にかかる基礎的費用は平均55万円だったと示されました。国の一時金より5 万円程高くなっています。日本共産党は、基礎的費用は各施設によって変わることから、どの施設でも基礎費用の全額がゼロとなる支援が必要だと提案しました。
山中市長は、「(基礎的費用)は施設によりひらきがあることが分かった。こうした状況を踏まえつつ経済的な負担を軽減し、安心して出産できる環境を整えることが重要だと考えている」「支援方法や内容など本市独自の支援について、今回の調査結果などを踏まえつつ、今後検討を進めていく」と答弁しました。
市の気候危機対策は、水素・アンモニアではなく省エネ・再エネに集中を
横浜市が「脱炭素」や「カーボンニュートラル」の名で活用を進めようとしている水素やアンモニアは、既存の火力発電に「混焼」して使うもので、石炭火力の代替えになり得ないと指摘。また生産時に大量の二酸化炭素を発生されることから実質的な二酸化炭素排出削減にならないと批判しました。その上で、国に追随して横浜港を水素・アンモニアを大量輸入・貯蔵する基地にする計画を進めているが、世界では全廃に進む石炭火力発電の延命策に乗るのではなく、省エネ・再エネの普及促進という気候危機対策の本道にこそ全力をあげるよう提案しました。
山中市長は、「本市は国の動きや技術の革新と合わせ、火力発電の脱炭素化である水素等の混焼、CO2の回収・再利用等によるCO2排出量の削減の取り組みを進め、臨海部全体での脱炭素化を進めていく」と述べ、「将来も見据えた次世代エネルギーの利活用や、省エネと再エネの普及に向けて脱炭素イノベーションの創出、脱炭素のまちづくりを実践する脱炭素先行地域の取り組み、脱炭素ライフスタイルの浸透など、横浜のポテンシャルを活かした取り組みを市民や事業者の皆様と共に進め、カーボンニュートラルの実現を目指す」と答弁しました。
大阪万博の現状を踏まえ、2027年横浜園芸博の抜本的な計画見直しを
2025年大阪万博は、会場建設費が物価上昇で1850億円から2350億円へと2回目の増額が示され、資材高騰や人手不足で工事契約が進まず参加国が取りやめる事態になっています。日本共産党はこれらの実態を示し、横浜の園芸博の整備費320億円も積算時点から2年たっており、資材高騰などで費用が増加するのは必至だと指摘。その上で、今後本市の負担はどうなっていくのかと問いました。さらに、主にチケット収入で賄おうとしている運営費360億円についても、有料入場者数が目標通りにいかず、赤字になった場合、国は補填を行わないとしており、「園芸博協会」が責任を負うことになっているが、協会の副会長は横浜市長であることから、横浜市が赤字補填をすることになるのかと問いました。その上で、有料入場者数1000万人目標を現実的な数字に減らさないと、整備費や運営費、道路整備費等も、本市の負担増加は避けられないと述べ、計画見直しを行うよう求めました。
山中市長は、物価高騰の会場整備への影響について、「物価高騰等の状況やコスト抑制策等も含めて開催主体である、博覧会協会が整備内容を精査・検討しているところ」と述べ、運営費が赤字になった際については、「そのようなことにならないよう市民の皆様をはじめ国内外の皆様に多く来場をいただけるような魅力感動あふれる、グリーンエキスポに向けてしっかりと準備を進めていく」と答弁。また、有料入場者数の目標見直しについては「博覧会の規模と開催期間等を前提にし、地域ごとの居住人口や開催地までの距離・交通アクセスの状況などを総合的に考慮した数理推計モデルに基づいて算定を行っている」「また海外からの来場者数も考慮して、需要予測を行った結果で、適切な計画である」と答えました。
4、7万円緊急給付金の早期支給を。帯状疱疹ワクチン補助、中学校給食タバコ吸い殻混入事件の徹底解明を求める請願などの採択を
討論
12月20日、第四回定例会の最終日は、市長提出議案や請願の採決が行われました。採決に先立ち、日本共産党として、みどり税条例の一部改正の議案に反対、補正予算については、物価高騰支援対策に見過ごせない問題を指摘しつつ、非課税世帯への7万円給付の早期支給を求め賛成する討論を行いました。
また、委員会で不採択となっていた「帯状疱疹ワクチン接種費用の補助を求める請願」や「中学校給食にタバコの吸い殻混入事件の徹底調査を求める請願」「少人数学級の前進で、子どもたちにゆきとどいた教育を求める請願」「横浜の保育・子育て支援施策の拡充を求める請願」など5件の請願の採択を全議員訴えました。採決の結果、37件の市長提出議案が原案通りに可決。7件の請願はいずれも反対多数で不採択になりました。
帯状疱疹ワクチンへの助成については、全国で204の自治体で帯状疱疹予防ワクチンの公的助成が導入され、神奈川県内においても、海老名市、清川村、松田町、箱根町、愛川町、南足柄市などで助成が拡がっていますが、横浜市ではワクチン接種への助成を行っていません。自民党の神奈川選出の国会議員も、公明党横浜市議団も、帯状疱疹ワクチンの定期接種化や財源措置を掲げており、請願の趣旨に十分賛同できるはずだと指摘し、採択を求めましたが不採択に。残念です。
中学校給食に煙草の吸殻混入事件については、市教育委員会はその原因を未解明のままにしました。このことに納得できない市民団体から徹底調査を求める請願が出され、常任委員会審査の中で、保健所による立ち入り調査の報告書に、同一銘柄の喫煙者の存在が記載されているとの事実が明らかになり、これまでの方針を一転し、原因を再調査すると表明するにいたりました。深刻なのは、これらの問題が常任委員会や議会には、一度も提起されていなかったことです。日本共産党は、市民からの請願がなければ、この問題点が明らかにならなかったと批判し、再発防止策の徹底を求めました。
【市政トピックス】
ガザ即時停戦など求める決議 全会一致であがる
第四回定例会の初日の11月30日、横浜市会は「ガザ地区における平和の早期実現を求める決議」を全会一致であげました。岸田首相が「休戦を求める」にとどまっている中、横浜市会の決議には、「人道目的の即時停戦及び人質の即時解放」が明記されています。決議は内閣総理大臣と外務大臣に届けられました。
10月中旬から、12月までに6件の申し入れ
第三回定例会が閉会後(10/20以降)の申し入れ
- 「中学校給食の調理中の鍋に煙草の吸い殻が混入していた事案について、原因を究明し、事業者名含む調査内容を公表し、再発防止を行うこと」(10/26)
- 「市民の身近なところに公立図書館を 市図書館ビジョン策定にあたって日本共産党の提言」(11/10)
- 「学校図書館法70周年を新たな契機として、横浜市立学校図書館の抜本的な充実を」(11/10)
- 「第9期横浜市 高齢者保健福祉計画 介護保険事業計画 認知症施策推進計画」素案に対する意見提案」(11月30日)、
- 「気候危機対策は水素・アンモニアではなく省エネと再生可能エネルギーに集中することを求める申し入れ」(12月7日)
山中市政になって2年4か月
山中市政になって2年4か月経過しました。山中市長はカジノ・新劇場の中止、コロナ対策、中学校給食の全員制への転換、小児医療費の完全無料化など、自ら掲げた選挙公約実現に尽力しています。小児医療費助成は2023年8月から中3まで完全無料化に、75歳以上の敬老パス無料化と出産費用の無償化は実態調査を行い結果を公表。次の段階に進みます。しかし市長の公約実現には様々な課題と障害が横たわり、市民要望実現を迫る市民運動の広がりが必要です。
日本共産党は、抜本的な見直しが必要な上瀬谷の国際園芸博覧会やその後の巨大テーマパーク誘致などは問題点を指摘し計画変更を要請します。また、気候危機対策は、国の石炭火力延命策である水素・アンモニア活用に左右されず、再エネと省エネの促進に全力を上げるよう求めていきます。中学校給食は学校調理方式を柱にしたものに。横浜港の米軍出撃拠点化は許しません。市民のくらし支える市政になるよう、市民のみなさまと力を合わせます。
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