申し入れ等 ・ 見解/声明
2023年11月10日

市民の身近なところに公立図書館を 市図書館ビジョン策定にあたって日本共産党の提言

2023年11月9日

横浜市長 山中 竹春 様

横浜市教育長 鯉渕 信也 様

日本共産党横浜市会議員団 団長 古谷やすひこ

1.日本共産党の図書館の位置づけと政策について

日本において図書館は、無料利用原則が貫かれた、最も利用者が多い公共施設の一つです。生活、生業、学業のためには、資料や情報は欠かすことができないものです。日本共産党は図書館を、市民の読書活動、知りたい、調べたい活動を保障する役割をもった「生存権の文化的側面である学習権を保障する機関である」という位置づけを明確にしています。

市民のくらしにとって欠かすことのできない図書館を充実発展させるためには、図書館予算を増額し、資料費などを増やすこと、図書館で働く人が安心して働き続けられる雇用にすること、図書館の運営に地域住民が参加する図書館法に規定された図書館協議会を設置すること、また拡充すること、そして、市民の身近なところに公立図書館がある街を目指しています。具体的には中学校区単位での設置を目標とするなど生活圏域を意識した図書館設置をすすめることを提案しています。

2.横浜市の新たな図書館像(図書館ビジョン仮称)について

(1)市民の願いに沿った図書館づくりを

横浜市の中期的な方向性・姿勢をまとめた中期計画2022~2025の市立図書館に関わる政策では「老朽化が進む市立図書館の修繕や建替えとともに、まちの魅力づくりに資する新たな図書館づくりが必要」と明記しています。そして、新たな図書館像の構築と市民の豊かな学びの環境の充実の施策として「(市立図書館の)再整備の在り方を調査・検討し、ビジョンを策定」するとしています。
今回、図書館ビジョンについてのアウトラインが示され、市民参加のワークショップが開催されました。有識者の意見を聴取するときいています。
あらたな図書館への市民の願い・要望は、市が行ったアンケートで明らかです。「静かに調べものや読書ができる環境」、子育て世代の願いである「子ども連れでも安心して訪れられる、遊ぶ場所がある」、「蔵書を増やして欲しい」との要望も出されています。バリアフリー化も大切です。図書館は市民のためのものですから、これらの願いに応える図書館づくりが求められています。

(2)「1区1館」をやめ、身近なところに公立図書館を

政令都市で、1人あたりの蔵書数が最低という横浜市の汚名は今回の新たな図書館づくりで何としても返上したいものです。
図書館に対する人口比の全国平均は4万人に1館ですが、横浜市は「1区1館」としているため、市内最大人口の港北区では約36万3000人に対して1館しかないという全国でも異常な事態が続いています。横浜市が今回の図書館ビジョン策定にあたって比較対象としている
東京都の図書館の現状を見ると、人口57万3000人の杉並区は、図書館14館と3つのサービスコーナーがあり、人口73万3000人の大田区は、17館と1つの窓口です。横浜市と比較するとどちらも身近な生活圏に図書館があります。これはこの2区に限ったことではありません。

また、図書館が購入する図書購入冊数を県内で比較すると25万6000人の平塚市と、ほぼ同じ人口の神奈川区(24万7000人)の2022年度の年間図書購入冊数は、平塚市は一般書1万2877冊、児童書3837冊に対して、神奈川区は一般書5776冊購入、児童書2253冊です。市民一人一人が手に取れる図書が他都市と比べて圧倒的に少ない現状が見えてきます。
貸し出しについても、横浜市は、1人が一回に借りられる冊数の比較で20政令市でワースト2位であり、市民から「人気本や話題の本は何週間・何か月も待たないと借りられない」の声が聞かれます。
このように横浜市の図書館をめぐる課題の中心点は、蔵書があまりに少ないことと、市民に身近なところにないということに尽きます。
これらの現状や市民の声に向き合い、「一区一館」をやめ、公立図書館を増やしていくことに踏み出す計画に繋がることこそ、新しい図書館ビジョンを策定する最大の意義があると考えます。
人目を惹く、図書館を何十万人に1館ではなく、誰でも気軽に、子ども一人でも通うことのできる身近な図書館を横浜市にと強く要望します。

(3)郷土資料などの収集・記録・保存・活用を

図書館法第3条(図書館奉仕)の1には、「郷土資料、地方行政資料、美術品、レコード及びフィルムの収集にも十分留意して、図書、記録、視聴覚教育の資料その他必要な資料(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)を含む。以下「図書館資料」という。)を収集し、一般公衆の利用に供すること。」とあります。市民が所蔵している歴史的資料などが世代交代する中で散逸の危機にあるものも少なくありません。図書館としての収集・記録・保存・活用の取り組みが必要です。

(4)図書館ビジョンに学校図書館を位置付けること

また、今回の図書館ビジョンに欠けていることの一つとしては、学校図書館の位置付けです。
学校図書館は、学校図書館法で規定されたすべての学校(小・中・高等学校、中等教育学校、特別支援学校)に置かなければならない、教育おいて欠くことのできない基礎的な設備です。使うに足る学校図書館でなければ学校の教育活動を支えられません。
学校図書館の運営は、学校図書館法で「他の学校の学校図書館、図書館、博物館、公民館等と緊密に連絡し、および協力すること」とされています。また、図書館法第3条9には公立図書館の役割(奉仕)として「学校、博物館、公民館、研究所等と緊密に連絡し、協力すること」とあります。公立図書館が学校図書館と連携協力し、支援をしていくことは公立図書館が果たさなければならない重要な役割であり、新しい図書館ビジョンに学校図書館を位置づけることは欠かしてはならないことです。
学校図書館からの図書貸し出し要請などに親身に応えていくには、学校へ届ける配送ルートの確立や貸し出し対象を司書や教員などの個人とせず、学校にするなどの改善が必要です。

子どもたちの生活の第一の場である学校には、学校図書館があり、学校司書が配置されています。学校司書が安心して働き続けられる環境を保持し、子どもたちの豊かな読書体験と学びを深める学習資料の活用能力を身に着ける取り組みの充実こそ、力を入れるべきだと考えます。そのために、学校図書館の蔵書数の充実は早急な課題です。

2020年度の「学校図書館の現状に関する調査」の結果によると、文部科学省が学校図書館蔵書数について定めた学校図書館図書標準とその達成率を示した「学校図書館図書標準の達成率」では、横浜市の公立小学校は、全国20政令市の中で、圧倒的なワースト1位の11.9%です。19位の堺市が29.3%ですから、あまりに異常な状態が続いています。中学校の場合も達成率は35.6%です。子ども達の健やかな成長を保障する図書が全く足りていない現状を一刻も早く改善しなくてはなりません。国が定めた基準を達成する計画を作成し取り組むことを求めます。

(5)拙速に進めず、関係者と市民の声を汲みつくして図書館ビジョンを作成すること

① あと半年という年限を区切った性急な決め方ではなく、各図書館ごとの利用者懇談会で図書館についての声を集めること。
② 全市にわたる政策であり、十分に市民の中で図書館ビジョンについての情報が行き渡る取り組みとすること。

以上

申し入れ


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