2023年11月9日
横浜市長 山中 竹春 様
日本共産党横浜市会議員団 団長 古谷やすひこ
はじめに
学校図書館法公布70周年にあたる2023年を新たな契機として捉え、市内の学校図書館が抱える様々な課題を整理し、法が謳った内容に沿って、抜本的な拡充を進めることを求めます。
学校図書館は、学校図書館法で規定されたすべての学校(小・中・高等学校、中等教育学校、特別支援学校)に置かなければならない、欠くことのできない基礎的な設備です。そこで、学校の教育活動を支えるに足る学校図書館が求められます。
学校図書館の役割は、①児童生徒の「読書センター」及び「学習センター」「情報センター」としての機能、②教員の授業研究へのサポート機能、③子どもたちの「居場所」の提供と家庭・地域における読書活動その他の支援です。学校図書館の役割を十分に発揮し、横浜の子ども達の健やかな成長を保障するために、横浜市立学校図書館が子どもたちの豊かな読書習慣をはぐくみ保障すること、学校教職員の授業実践に貢献できることを目指して、下記の改善を行うことを求めます。
1. 政令市ワースト1位の学校図書館図書標準達成率を早期に100%にするための計画をつくること
文部科学省が発表した2020年度「学校図書館の現状に関する調査」の結果によると、文部科学省が学校図書館蔵書数について定めた学校図書館図書標準(学校ごとの蔵書数)とその100%達成率を示した「学校図書館図書標準の達成率」では、横浜市の公立小学校は、100%達成しているのは11.9%です。1割の学校でしか達成していないという低さで、全国20政令市の中で達成率が最下位です。中学校の場合も100%達成しているのは35.6%でしかなく早急な改善が必要です。
しかも現在、学校に配当された図書資料費が満額活用されていない実態があり、実際の蔵書増、刷新につながっていない問題があります。学習資料として価値のない古い本、表紙が日焼けして手に取られない本など廃棄するべき本を廃棄し、新しい本が増えることで児童生徒はワクワクしながら学校図書館を利用するはずです。教職員にとっても頼れる図書館となるはずです。教育委員会として全校が学校図書館図書標準100%を達成する計画をつくり、実施することを求めます。
2. 学校図書館支援センターを設置し、学校図書館の支援強化を
学校図書館の図書資料の収集や展示、蔵書管理などは、校長の方針に基づき、司書教諭の企画のもとで、学校司書が担っています。優れた実践を行っている学校図書館も多くありますが、現状では、経験や教訓などを組織的に蓄積し共有する機能に課題があります。学校司書や司書教諭の業務をバックアップする機能の強化も必要です。そのために、学校図書館の運営や活用、学校図書館間の連携などに対する支援、学校司書や司書教諭への系統的な研修、業務支援を行う学校図書館支援センターを設置し、学校図書館への具体的な支援強化を行うことを求めます。
3. 学校司書の正規雇用化を
学校教育にとって欠かすことができない学校図書館。その利活用推進のために専門職である学校司書の役割は重要です。現在、横浜市では、学校司書は非正規の会計年度任用職員です。経験がキャリアとして蓄積される仕組みとなっていないことは、あまりにも人材の無駄遣いだと感じています。学校司書は正規雇用にしていくことを求めます。
4. 学校図書館と公立図書館の連携確立を
学校図書館条件整備の課題として、学校図書館と公立図書館との連携の確立があります。現在、学校図書館と市立図書館はオンラインで結ばれていません。現在の年3回学校司書が図書館に出向いて手続きし、学校まで30~40冊に及ぶ本を運ぶことの困難さは想像に難くありません。オンラインネットワークと図書取次サービスの物流を組み合わせれば、学校図書館が一気にグレードアップされます。学校図書館と公立図書館との連携の確立を求めます。
5. 横浜市の新たな図書館像(図書館ビジョン仮称)に学校図書館を位置づけること
図書館ビジョンには、学校図書館を位置付けることが必要です。
横浜には500を超える学校図書館とそこには素晴らしい人材が配置されていることを認識し、存分に生かす取り組みを進めるときです。
子どもたちの生活の第一の場である学校には、学校図書館があり、学校司書が配置されています。学校司書が安心して働き続けられる環境を保持し、子どもたちの豊かな読書体験と学びを深める学習資料の活用能力を身に着ける取り組みの充実こそ、力を入れるべきだと考えます。学校図書館の運営には、「他の学校の学校図書館、図書館、博物館、公民館等と緊密に連絡し、および協力すること」とあります。図書館法第3条9には図書館奉仕として「学校、博物館、公民館、研究所等と緊密に連絡し、協力すること」とあります。公共図書館が学校教育を援助するためには公共図書館の蔵書も豊かでなければなりません。その意味でも新しい図書館ビジョンに学校図書館を位置づけることは欠かしてはならないことです。
終わりに
横浜市として公立図書館の増設計画を持ちながら、市民が願う図書館へと今の図書館のリニューアルを図り、蔵書を増やすことを進めながら、子どもの頃から図書館を利用する習慣を身につけるため、今ある学校図書館の有効活用として、夏休みに子どもたちが気軽に本を借りたり、自由研究の調べモノをしたりできるよう学校図書館がいつも開館しているようにすることが必要です。